しかし、最近は妙にスランプで上手く書けていませんがご容赦を。
あれだけあった夏休みももう終わっちまって、今日から二学期の始まりだ。
他の奴等がどう過ごしたのかはわからねぇが、皆エンジョイしたって面をしてるなぁ。まったくもって羨ましい限りだ。
俺もそんな清々しい面をしてみたいもんだね。
そんな風に思いつつ辟易してると、お嬢様がこっちに近づいてきた。
何だか久々に会ったような気がするねぇ。実際に約一ヶ月ぶりなわけだが。
「れ、レオスさん、お久しぶりですわ!」
「おう、久しぶりだな、お嬢様。相変わらずの美人で何よりだ」
「そ、そんな、美人だなんて………」
挨拶を返すとお嬢様は顔を赤くして恥じらうもオレに微笑む。
その可愛らしい笑みにオレの心は癒されるよ。ここ最近荒んだことしかしてねぇから、こういうのは本当に和むねぇ。
「お嬢様はこの夏休み、どうだった? エンジョイ出来たかい?」
「はい。確かにオルコット家のお仕事もあって忙しかったですけど、イギリスの友人にも会えましたし、楽しかったですわ」
「そいつはよかった。やっぱり休暇ってのは楽しまねぇとなぁ」
お嬢様の様子からエンジョイしましたって感じが伝わってくる。
やっぱり学生ってのはこんな感じなんだろうねぇ。
嬉しそうに微笑むと、今度はお嬢様が不思議そうに聞いて来た。
「レオスさんはどうでしたの? ずっとIS学園に帰ってこなくて今日も寮にはおりませんでしたし、一番最後に教室に入ってきましたから……」
その質問に対し、俺は疲れ切った様子でお嬢様に答えて見せる。
「オレは残念ながら昨日の夜までみっちりお仕事だったよ。帰ってきたのはついさっきだから遅れたんだ。お嬢様が帰った後は毎日仕事と書類のダブルパンチの効いた日々だったよ。いくらタフネスが売りのオレでもこいつにはノックアウトされちまいそうだ。あの鬼畜上司様とクソオヤジは学生の長期休暇を仕事させ放題のサービスタイムだと思ってるのさ」
「まぁ! でも、それはレオスさんがとても頼れるからですわ」
お嬢様はオレの文句を聞いて笑う。こんなもんが面白いのかねぇ?
「お嬢様に持ち上げられるのは気分良いが、奴さん達はそんな事一欠片も思ってねぇよ。連中の言い分なら『学校で遊んでた分仕事しろ』だろうよ。まったく……あそこで一番の働き者になんて言いぐさだ。少しはバカンスを楽しませてくれる余裕くらい欲しいもんだ」
「うふふふふ。きっとレオスさんにもっと成長してもらいたいからですわよ。クロードさんやブリュッケンさんはレオスさんに期待しているようですから」
「だとしても、昨日の深夜までずっと仕事漬けなのは感心出来ねぇなぁ。その内使い潰されるんじゃねぇかってヒヤヒヤしちまうよ」
「それは大丈夫ですわよ。レオスさん程丈夫で精神が強い人はいませんもの」
面白そうにクスクスと笑うお嬢様。随分と言うようになったもんだ。
「だから今日まで帰って来れなかったのですね」
「まぁね。日本に戻るまでずっと仕事だったんだよ。やっぱり世界通して夏ってのは頭のぶっ飛ぶ奴が多いらしい。御蔭でオレ等は仕事にまったく困らねぇ」
何で世界ってのは平和にならねぇのか不思議でしかたねぇよ。
せっかくの長期休暇だったんだから、俺も若いなりに色々と楽しみたかったのによぉ。そう言うときに限って仕事が殺到して来やがる。
女尊男卑を掲げる馬鹿共に妄想全開なイカレテロ屋共。それ以外にもメシの種に困るマフィアやら妙な陰謀担いでる政治家やら資本家やら。
オレ等が駆り出される案件は後を絶たねぇ。
そりゃあ確かに仕事があった方が人間嬉しいもんだが、流石に過剰だとその内過労で倒れるんじゃねぇかって心配にまっちまう。
まぁ、休みだからってするような事もねぇんだが。街に出て飲むか、本部内で他の暇そうな連中と賭けポーカーに興じるかのどちらかだろうよ。
そんな俺を見かねてか、お嬢様は俺に優しい笑みを向けて労いの声をかけてくれた。
「本当にお疲れ様でした。レオスさんが頑張ってくれるから助かる人も多いのですのよ。あの人質立て籠もりの事件でも、レオスさんが頑張ったからこそ、人質は皆無事だったのですから」
まさに女神のような慈愛に涙が溢れそうになっちまう。
流石はお嬢様、人の心を思いやってくれる優しさをもったイイ女だ。
これがクロードだったら、労いに心は籠もってねぇし、こっちの改善点を指摘してもっと仕事をさせるに違いねぇ。
こうしてお嬢様の声を聞いてると、本当にIS学園に帰ってきたって思えるよ。
「おっと、いけねぇなぁ。せっかくの土産話が愚痴ってのはいけねぇ。すまなかったな、お嬢様」
「いえ、そんなことはありませんわ。レオスさんのお話はとても面白いですから」
謝ると眩しいくらい楽しんでる笑顔で返してきたお嬢様。本当に様々だよ。
なら、少しでも楽しんでもらわねぇとなぁ。
「そうそう。そう言えばお嬢様が帰った後は大変だったんだぜ」
「何かあったのですの?」
「周りの奴等が毎日五月蠅かったんだよ。『レオスをクビにしてお嬢様に帰ってきてもらおう』ってなぁ。その所為で毎日文句を言われる始末。お嬢様のはすっかりウチのアイドルになっちまったてわけだ」
「ア、アイドルだなんて………そんな…恥ずかしいですわ……」
お嬢様はオレの話を聞いて顔を真っ赤にして恥ずかしがる。
いいねぇ、この恥じらう感じ。
どうも最近はこういう癒しが無かったから見てたくなる。
野郎の不細工な面ばかり見てると、人間心が荒んでいく。
清涼剤ってのは必要だよ。その点だけは、あの文句を言ってくる連中に同意だ。
そんな風にお嬢様と話していると、今度はイチカの野郎が近づいてきた。
「久しぶりだな、レオス! 元気にしてたか」
「よぉ、イチカ。相変わらずの調子みてぇだな」
「? 何がだ?」
不思議そうに首を傾げるイチカだが、奴さんはまったく気付いてないらしい。
後ろでお前さんを睨んでる四人がいるということに。
「一夏~! 何故最初にハーケンに声をかけるのだ!」
「やっぱり一夏ってそっちの気があるのかしら。急いで修正してあげないと!」
「一夏ってば、もう~~~~!」
「嫁よ、何故そんな男になど構う! 私だけを見ろ!」
相変わらずのコメンタリティーで早速何かしでかしやがった。
久々に見るが、やっぱりこいつの周りは飽きが来そうにねぇなぁ。
「うわぁっ! みんな何でそんな睨んでるんだよ! 俺、何かしたか?」
「「「「一夏~~~~~~~~~~!!」」」」
イチカの煽りを受けて暴れ出す四人。これも懐かしい光景って奴だな。
見ててお嬢様同様に帰ってきた気になるもんさ。
そんなオレの顔を見て、お嬢様が笑いかける。
「助けないんですの、レオスさん?」
その笑みはオレが言おうとしていることが分かってる笑みだ。
お嬢様もそいつを理解してる辺り、成長してるってことだねぇ。
オレはお嬢様の問いに対し、ニヤリと笑いながら答えてやった。
「お嬢様、こういうときの状況を何て言うのか知ってるか?」
「………『自業自得』……ですわね」
「正解だ。なら、それをオレが助ける義理はねぇよなぁ」
「ですわね」
お互いに笑い合い、追っかけられているイチカを見ていく。
あ、捕まってボコボコにされてるなぁ。お嬢様は成長したようだが、イチカの野郎のこういった所は成長してないらしい。
夏は若者に関して変化の季節っていうらしいが、そいつはまちまちだな。
お嬢様みてぇに一回り成長したのもいれば、イチカみてぇに何も変わらねぇのもいるようだ。
オレはどっちなのかはわからねぇけどな。まぁ、これもまた『いつもの日常』ってやつなんだろうよ。
そんな風に思いながらボコられてるイチカを見続けていると、教室の扉が勢いよく開かれた。
「は~い、皆さん、お久しぶりです。夏休みは楽しめましたか!!」
元気よく声を出しながら入って来たのはマヤだった。
もっとも相変わらずな感じだ。周りの奴等もマヤ相手にはまったく気を遣ってねぇようだしな。
その後来た千冬に一喝されて全員バタつくのもかわらねぇ。
それらを見て聞いて、やっとIS学園に帰ってきたって実感が湧いた。
多少暇だが、悪くはねぇ生活を楽しむことにしようか。