「要点を纏めようか。
僕は見てもらった通りここの現人神。まあ証拠は行く…逝く先々で増えるだろうからそこはご心配なく。そして僕のプロフィール!イエーイパチパチパチー……そこ、白い目で見るな。名前は先程の通り、ゆいととでも呼んでくれ。年齢は大体8000万…年くらい?途方もないと言えばそうだろうけどここじゃもっと古株もいるだろ。性別は男。なぜ龍神が俺を呼んだか…まあここが1番気になってるだろうからしっかり話すか。」
いつの間にかしっかりとこたつの一角を確保し、ものの数分でしっかり馴染んでしまったここの神(仮:一応)が言う。
ここの主…かは微妙なところだが、その馴染みようを見ては二人も出す口が引っ込むというものだ。
納得は少々強引だったが。
「元々僕はどこにも属さない神でね。大体の神はそれこそこういう神社だっかり、そういう【社】を依代みたいにして活動してた。神ってのは元々信仰心とかが集まって出来た概念みたいなもんだから…その辺は霊夢、君が良く知ってるだろ?…話は戻るが、僕はその殆どに属さない、ただ創られた神なんだよ。尤も、西洋だとか仏教だとかじゃなくてれっきとした神道だ。この辺りは魔法使い…魔理沙、君がよく知っているはずだね。そんな自由な存在だから…という理由も中々怪しいが、実際にそうだったわけだし…まあそんな訳で、長らく…永らく…でもないか、言うなれば乍くかな、あちこちで信仰を集めちゃ人助けしてったら、お宅の龍神言う奴に見定められたわけだ」
「そしてなし崩し的に幻想郷の創造の片棒担がされて、その代わりここの神社の用心棒みたいな役を押し付けられたってわけ。神は信仰を集めれば生き長らえる…逆に言うなら、忘れ去られればそれは死だ。概念の死ってのも中々難しいがな。そして、ここは奇妙なことに【忘れられた者達の楽園】って言うじゃあないか。神々が恋した幻想郷とも言うが、要はそういう事だ」
「…はぁーなるほどね。神にとっては忘れられても生きていられる場所ってことなのね」
「だから恋い焦がれる、って訳か。納得だな」
「察しが良くて助かる。存外頭の方は悪くなさそうで安心したよ」
「…もう一戦やるかしら?」
「結果は目に見えてるだろ」
傍観者は時に対戦者の千手先を見通すとも言うが、この場合一手先も千手先も知れたものだ。それ程に、別次元だった。
「で、ひょんな事に龍神の眼鏡に適った結斗がここの現人神になったわけだ」
「そういうこと。元々ここの主は龍神で、巫女の銘も決まっていたしな。その代わり僕は、ここ、幻想郷が危機にさらされた時に護れ、と言う訳。用心棒そのものだろ」
「言えてるわ」
「言い得て妙とも言うがな」
「二人して口揃えなくてもいいだろ…ま、そんな訳でここに降り立った訳だが、……これ、危機か?」
血の匂いすらしない。あるのはただ静けさと雪と寒さ、そして遠ざかる春の音。
はぁ、と、お茶を啜りつつ霊夢は言う。
「今は弥生の末よ」
「はぁ!?…こんなん、睦月の中じゃないか」
結斗が呆れた声を出す。何より、これ…こんな異常事態を弥生の末まで放っておいても何の害もないこの世界の平和のなりように、呆れて。
「一応言っておくけれど異常気象でもないし、妖怪でもないわ」
「霊夢が言うなら間違いないと思うんだが…一応、これは異変ってことでいいのか?」
「まあそうなんじゃねーのか?私も一応言っとくが、魔導の類でもなかったぞ」
「あんた、やっぱり気になって調べてるじゃない」
「言葉の綾ってやつだ」
「どんな綾よ」
「まーまーその辺にしとけ。それで、異変ならなぜ解決しないん?」
「あんた、どんどん馴れ馴れしくなってくわね…まあ神様だから仕方もないか。異変と呼べるだけの状況証拠がなかっただけよ」
「……はー……」
あの頃と比べれば、随分と平和になったものだ。あの頃は良く呼び出されては闘っていたが、今は平和すぎるほど平和だ。
ぞっとするほどに。
だが、同時に思う。
この…平和すぎる平和こそが、この世界の本質だったのかもしれない、と。
「……?」
霊夢が、思案顔でこちらを覗き込む。
何でもないと首を軽く振りつつ、頭の中ではある1つの疑問。
「……何故、こんな平和な時に呼び出された…?」
後に彼は、この疑問の答えを身をもって知ることとなる。
嫌でも知ってしまうのだ。
「……平和なのかしらね、果たして」
乍く…ながら運転とかのながらの字ですね。
ながら運転良くない。僕未成年ですけど。