雁夜おじさんのバオー来訪者ネタ Staynight編 作:蜜柑ブタ
中盤は、雁夜無双?
後半は、キャスターと葛木vs士郎、桜、凜、セイバーの多勢に無勢?
アーチャーが奪われた。
数こそこちらが勝っているものの、サーヴァントの数による質で見たら、キャスターの方が上だろう。
最優のサーヴァントと言われるセイバーがこちらにいるとはいえ、マスターである士郎からの魔力供給が足りないため本来の力を全開で出せないのが現状だ。
「一時的とはいえ、マスターを交換できればいいのにね。」
「それができたら、簡単に令呪を取られちゃうわよ。」
雁夜、または桜にセイバーの令呪があれば、セイバーの魔力不足を一時的に補えると思ったツツジがそう口にすると、凜がそう反論した。
「なあ、遠坂…。」
「なに?」
「セイバーの魔力供給をなんとかする方法ってあるか?」
「……あるにはあるけど…。でもそれをしたら、あんた、魔術師としての才を失うかもよ?」
「なっ…。」
「それはともかく、今はキャスターをなんとかすることを優先すべきよ。」
凜は、そう言って話を切り上げた。
「セイバーをキャスターにぶつけるって案は、そのままで行くのかい?」
「ええ。セイバーは、保有スキルに強力な対魔力があるわ。事実上、これがあるから魔術ではセイバーを殺せないし、それどころか傷ひとつつけられないのよ。キャスターにとって、これほど分の悪い相手はいないでしょうね。」
「でも、向こうには、令呪ごとサーヴァントを奪えるルールブレイカーなんて武器があるんだよ?」
「それは抜きにしてよ。」
ルールブレイカーは、論外だと凜は首を振った。
「まあ、とにかく…、キャスターが教会にいる内に倒すこと。…だよね?」
「キャスターは、教会にいるのか?」
「うん。全然動いてない。たぶん、そんな身動きが取れないのかも。」
「マスターの葛木に魔力が無いから、魂食いを繰り返してる奴だもの。そう簡単に移動はできないでしょうね。」
「なんで?」
「最近、謎の失神事件とかガスが原因なのか分からない集団卒倒事件があちこちで起こってるのよ。おそらくキャスターが生気を魔力に変換したせいね。」
「なら、これ以上被害を出さないためにも、決着を付けよう。」
「言われるまでもないわ。」
「じゃあ…、いってらっしゃい。」
魔力が無いツツジは、ライダーの魔眼を防ぐため、留守番となった。
***
教会の入り口の扉の前には、アーチャーが陣取っていた。
隠れることなく、やってきた雁夜を、アーチャーが見据える。
十メートル以上離れた位置で、雁夜は立ち止まった。
「…一人か?」
「ライダーは?」
「さてな…。」
その時、甲高い馬の鳴き声が後ろの方から聞こえた。
雁夜が、バッと横へ跳ぶ。すると、雁夜がさっきまで立っていた場所を、光の塊が通り過ぎ、アーチャーの眼前で軌道を変えて、上空へと飛び上がった。
「速いな…。」
「それを避ける貴様もどうかと思うがな。」
「事前に気づいてたからさ。」
匂いでライダーが上空から、天馬に乗ってこちらを狙っていたことを感知していた雁夜は、ニヤッと笑った。
「貴様に恨みはないが…。」
アーチャーが二本の双剣を生み出し、構えた。
「俺だって恨みはないさ。」
雁夜は、集中し、バオー・武装現象を発動した。
「それが、貴様の力か。」
アーチャーが目を細めて聞くが、雁夜は答えなかった。
両者が動き、アーチャーの双剣と雁夜の腕の刃がぶつかった。
凄まじい金属音を鳴り響かせながら、両者の打ち合いが続いた。
「くっ! これほどとは!」
アーチャーが押されていた。
凜から、雁夜が単身でサーヴァントを殺せるほどの力があるとは聞いていたが、これほどとは、と、アーチャーは、雁夜を侮っていたことを悔いた。
ならばと、距離を取ろうとすると、それより速く距離を詰められ、懐に入ってくる。
「なっ!」
そして首を狙われ、顎を逸らして辛うじて首の表面を切られただけに終わった。
顔が上になったため、もう片手がアーチャーの首を掴んで、アーチャーの長身を持ち上げた。
「ぐっ……。」
ギリギリと首を絞められる。このまま、気絶させる気なのか、雁夜は溶解液を使わなかった。
その背後から、最高時速で迫るライダー。
直後、グルンッと反転した雁夜が、アーチャーを使ってライダーごと天馬を殴った。
そしてそのまま、アーチャーを手放し、結果アーチャーは、横へ吹っ飛ばされた天馬とライダーの上に叩き付けられた。その際に、カランッとアーチャーの双剣が雁夜の足元に落ちた。
「…ブロークン・ファンタズム!」
アーチャーが唱えた瞬間、双剣が大爆発した。
雁夜が爆発の中に消える。
もうもうと上がる煙と炎。それをアーチャーは、見つめ、アーチャーの後ろの方でライダーが呻いた。
すると、煙と炎が不自然に揺らいだ。
そして、人の影が炎の中から歩いてくる。
服があちこち破れて、煙を纏っているが、雁夜自身は無傷だった。
「……さすが、化け物か…。」
アーチャーは、ヨロリッと立ち上がりながら呟いた。
***
一方その頃…。
アーチャーのブロークン・ファンタズムによる爆発で、教会全体が揺れた。
「雁夜さん…。」
「間桐。心配なのは分かる。雁夜さんのためにも、早く終わらせるんだ。」
「…はい!」
教会の中の裏口から侵入し、キャスターと葛木を倒すため行動していた。
「…いたわ。」
葛木がいた。
しかし、キャスターの姿がない。
「いい? 葛木はあなた達で止めて、捕まえれば万々歳よ。」
「分かってる。」
「先輩。行きましょう。」
「ああ。葛木!」
「……衛宮か。」
広く開けた場所に、葛木は一人立っていた。
「なぜ、キャスターに協力している?」
「…彼女が聖杯を欲していたからだ。」
葛木は感情のないような単調な口調と表情で言った。
その答えに士郎は目を見開いた。
「本気で…言ってるのか? そのためなら、どれだけの犠牲者が出てもいいってのかよ!」
「私には、関係のない話だ。」
「葛木?」
「私は、“私”を尊重するだけだ。」
ゴウッと葛木が動いた。
直後、強化により強度を高めた二本の木刀で、士郎は葛木からの攻撃を防いだ。
桜は、後方で集中しながら、影の魔術で葛木を捕まえるタイミングを計った。
「シロウ…。」
「私達が相手をするのはキャスターよ。」
「分かってます…。」
物陰から様子を見ていたセイバーと凜が、キャスターの出方を待った。
その時、陰からルールブレイカーがセイバーに迫った。
「っ! セイバー!」
「!!」
凜がいち早く気づき、間一髪のところでセイバーは、その刃を避けた。その直後、凜が放ったガンドの光が陰に隠れていたキャスターに命中した。
「……よく避けられたわね。」
開けた場所に転がり出たセイバーと凜を見据え、ルールブレイカーと杖を手にしたキャスターが陰から現れた。
「行くわよ、セイバー!」
「はい!」
セイバーが剣を構え、凜が手に魔力を集中させた。
「やはり…、……無理をしてでもセイバーを奪っておけばよかったわ!」
「過去を悔いたところで無意味よ!」
凜がそう叫ぶ。そしてセイバーが駆け出す。
その直後、天から何かが降ってきた。
「! ライダー!?」
それは、ライダーだった。ライダーは、天井から降りてきながら、両手握る短剣を振りかぶった。それをセイバーが迎え撃ち、弾かれたライダーがズザザっと床を滑ってキャスターの傍らに行った。
「これで、少しはマシなはず…。」
キャスターが令呪を使ってライダーを呼び寄せたのだ。
「ライダー! 彼女達を見なさい!」
「…はい。」
ライダーが目の封じを外し、セイバーと凜を見た。
「ライダー!」
「桜! こっちを気にしないで!」
桜の注意がライダーに向いたことで、凜がそう叫んだ。
目を見ずとも、認識しただけで魔眼の力がかかってしまうため、桜にライダーの魔眼の重圧が来た。
「ホホ…、存外使えるわね。ライダー、そのままその娘を石にしておしまい!」
「…うっ…。」
「あら、今更、抵抗? 元マスターだからかしら。」
「あぁ!」
魔眼に抵抗した結果、桜の魔術回路が焼け始めて、桜は悲鳴を上げた。
「間桐!」
「気にしている場合か?」
「ぐあっ!」
「きゃああ!」
桜に気を取られた瞬間、葛木に吹っ飛ばされた士郎の体が桜に衝突した。
「桜! 士郎!」
「シロウ!」
「あなた達の相手は私よ?」
自身の周囲に無数の光の塊を発生させたキャスターが、それを凜とセイバーに飛ばした。
セイバーは、剣でそれを弾いたりし、凜もガンドを放って相殺したりした。
「ライダー。セイバーを見なさい。」
「……っ。」
ハアハアっと呼吸を乱しているライダーが、セイバーを見た。
途端、強烈な重圧がセイバーを蝕む。
「チェックメイトね。」
「シロウ…!」
「せい…ばー…。」
葛木に首を片手で締められ持ち上げられている士郎を見せられ、セイバーは、戸惑った。
「マスターを殺されたくなければ、そのまま大人しくなさい。」
キャスターがルールブレイカーを手に、セイバーに迫ろうとした。
その時。
「……つかまえ…た…。」
倒れていた桜が、小さくそう呟いた瞬間だった。葛木の足元から、凄まじい数の影の帯が現れ、葛木を絡め取った。桜の手が、士郎の影を通して、葛木の影に触れていた。
「ーーっ!!」
ギリ…、ミシ…っと強く締め付けられる葛木。だが士郎を捕まえている手は離さなかった。
「先輩を…はなさ…ない、と…。」
ヨロヨロと上体を起こした桜は、葛木に触れている影の箇所から、吸収分解を行った。
強くはないが弱くもない、吸収による焼ける痛みに、葛木はついに士郎から手を離した。
「宗一郎様!!」
「よくやったわ、桜!!」
「お…、おのれぇぇぇぇぇ!!」
「さあ、キャスター! 葛木を助けたかったら、右手を出しなさい! 令呪を剥がすから!!」
「くっ!」
「私のことは気にするな…。」
「えっ?」
「宗一郎…さ…!」
次の瞬間、葛木が舌をかみ切った。
大量の血が口から流れ出て、葛木の体が重力に従って倒れていった。
「宗一郎さまーーーー!!」
「なんてやつ!」
両手で頭を抱え、大きな悲鳴上げ、キャスターは、葛木に駆け寄った。
「いや…いやぁ!! 宗一郎様! 宗一郎様ぁぁぁぁ!!」
泣き叫ぶキャスター。
その時。
「……ライダーとアーチャーを返してくれたら、助けてあげる。」
「な…?」
通路の影から現れたのは、ツツジだった。
「まだ間に合う。」
「宗一郎を…、たすけて…くれるの?」
「…その代わり…。」
「返すわ! 返すから!! 宗一郎様を!!」
「凜ちゃん。」
「えっ…、あっ。」
ツツジに促され、凜がキャスターに駆け寄った。
そして、すぐに儀式を行い、奪われていた令呪をキャスターから剥がした。
外した令呪が倒れている桜に戻り、支配から解放されたライダーがガクンッと膝をついた。
凜は、自分の腕に令呪が戻ったのを確認すると…。
「セイバー、とどめを。」
「…いいえ。」
「この女は、いずれまた貴女を狙うわよ?」
「ダメだ、遠坂…。もうキャスターは、戦意を喪失している。」
「…甘いわね。」
「ちょっと、どいて。」
「ちょっ…!」
凜をどかしたツツジが、グッと拳を握って、垂れた血を葛木の口の中に流し込んだ。
すると……。
「うぅ…。」
「宗一郎様!!」
「私は…なぜ、生きている?」
「私が生き返らせたの。」
「……お前は…?」
「私は、ツツジ。初めまして。」
「宗一郎様…。」
起き上がった葛木に、キャスターが涙を零しながら抱きついた。
そして大声を上げて、泣き出した。
葛木は、そんなキャスターを見おろし、少し戸惑いながら、ソッとその体を抱きしめた。
キャスター陣営は、ここで生き残ります。
でも、後々…?
たぶん、戦いさえしなければ、自分を維持するだけなら魂食いしなくていいのかな?
それができるなら、あの霊脈があるという柳洞寺にいるだけでいいし。
次回は、もう戦わない、サーヴァントを取らないという約束をして、それから……。まだ決めてない。
Staynightのキャスターと葛木のカップルは、嫌いじゃないんだよなぁ……。