雁夜おじさんのバオー来訪者ネタ Staynight編 作:蜜柑ブタ
前半は、ツツジとライダーの百合?
後半は、前回のことで魔力回路が焼けた影響で魔力の暴走を起こしてしまった桜を助けるため、血を口移しで与える雁夜……。
雁夜が、ファーストキスです。注意。
ライダーとアーチャーの奪還に成功。
これにより、キャスターは、戦力を失い、ツツジに葛木を救ってもらった恩義に報いて、今後セイバー陣営、及びアーチャー陣営にも手を出さないし、場合によっては聖杯戦争をそのものを降りると約束した。
キャスターは、あくまでも葛木と共にいられればいいいと主張し、元々の願いであった故郷に帰るということを捨てて、また、繰り返し行っていた魂食いもやめて、霊脈のある柳洞寺で落ち着くことで、葛木の傍にいることだけを選んだ。
雁夜との戦いでボロボロになったアーチャーが、キャスターの正体が、神により愛に狂わされ裏切りの魔女という烙印を押された人物であることから難色を示したものの、最終的には折れ、こうしてキャスターとの戦いは終結することとなった。
「ところで、なに、この状況?」
「あら? 分かりませんか?」
戦いが終わり、それぞれ家に帰った矢先に、ツツジは、ライダーによって押し倒されていた。
なお、雁夜は、怪我をしてぐったりした桜を桜の部屋に運んで看病していたため、この場にはいない。
「私がこうしてここへ戻ることになれたのも、貴女のおかげです。それはとても感謝しているの。」
「そう? それは、よかった。桜ちゃん達が頑張ったおかげだよ。」
「ええ。もちろん、桜にも雁夜にも感謝していますわ。ですが、それ以上に…。」
ライダーのしなやかな指がツツジの首をするりと撫でた。
「私のことを大切な仲間だと言ってくれた、貴女には特に感謝しています。」
「事実でしょう?」
「私のような本来なら反英霊として召喚されるはずだった化け物を、仲間だと受け入れてくれた。それだけでも…私は……。」
「う~ん…。そう言ってくれるのは嬉しいし、そういう指向性も理解できるけど、……ごめんね。」
「私がお相手では不十分かしら?」
「いやいや、ライダーは美人だから十分すぎるけど…。私の中の、モノがそれは、ダメだって言ってる気がするの。」
「それは…。」
「私の中の、コレは、強い子が産まれることを望んでる。早くしろって…、言ってる気がするの。それは、私が初経を迎えた時からずっと聞こえてるもの…。」
「ツツジ…。」
そう言って切なそうに微笑むツツジに、ライダーが顔を近づけ、口づけを落とした。
「……こーら。」
「あうっ。」
口づけを続けていたら、ペシンッとツツジに頭を叩かれた。
頭を押さえるライダーの下からツツジが抜け出した。
「今、変な“流れ”が入って来たよ? その気にさせたかったんだろうけど、下手にすると私が暴走するから気をつけてよ。」
「貴女も、雁夜のように?」
「うん。この“流れ”を魔力として逆手にすれば、ライダーを殺せちゃうよ。」
「…それもいいかもしれませんわ。」
「こら。そんなことしたら、桜ちゃんに怒られるから。」
「…そういえば、桜の様態は…。」
「うーん。ライダーの魔眼に抵抗して、少し魔術回路が焼けたらしいからね…。」
「すみません…。」
「キャスターに服従を強いられてはとはいえね…。」
その時だった。
廊下の方からドタバタと足音が聞こえ…。
「大変だ!」
雁夜だった。
「どうしたの?」
「桜ちゃんが!」
青い顔をしている雁夜の様子に、ツツジとライダーは顔を見合わせた。
***
そして、雁夜と共に桜の部屋に急行すると、布団の上で胸を押さえてのたうっている桜がいた。
「桜ちゃん!」
「どうする、ツツジ!? 病院に連れてった方が…。」
「いや…、これは…病院じゃ治せないよ。」
「つまり!?」
「たぶん、魔術回路が焼けた影響だよ。」
「そんな…。私のせいで…。」
「ど、どうしたらいい!?」
慌てふためく雁夜と、真っ青になるライダー。
ツツジは、落ち着いて、うーんっと考えこみ…。
「雁夜。血をあげて。」
「はっ?」
「魔術師の治療は、魔術師がすべきだと思うよ。」
「なるほど! 魔力供給もできますしね。」
ライダーが名案だと言った。ライダーだけが感じていたが、桜と繋がっている魔力供給のパスが軽く乱れていた。
「わ、分かった…。」
「ただし、この状態じゃ、桜ちゃん、血を吐いちゃうと思うから……、口移しで無理矢理飲ませた方がいいかも。」
「……………………………はい?」
たっぷり時間をおいて、雁夜がキョトンとして言った。
その間にも桜は苦しそうにうめき声を上げた。
ハッとした雁夜が、桜とツツジを交互に見た。
「ほら、早く! 桜ちゃんが苦しんでるんだよ? 恥ずかしがってる場合じゃない。」
「わ、分かってるって……。でも…。」
「なに?」
「…ファーストキス……。」
「…経験無かったの?」
「ああ…、じゃなくて! 桜ちゃんの!」
「それ気にしてたら人命救助なんてできない! ほら、早く!」
「は、はいぃぃ。」
ドンッと背中を叩かれた雁夜は、よろつきながら、桜の傍にきて、のたうっている桜を掴んで押さえた。
「……あぁ…うぅう…かり、や…さ…ん…。」
「桜ちゃん…。」
雁夜は、自分の指の表面を噛みきり、口の中に鉄の味を広げてから、桜に口づけた。
「ん…。」
桜の口の中に、鉄の味が広がる。
魔術回路の軽い暴走で赤らんでいた顔が、徐々に元の色を取り戻していった。
それから数分ぐらいだろうか、口移しで血を与え続けていると、桜の動悸は治まっていき、やがて、暴れていた桜の体からフッと力が抜けた。
「っ…、桜ちゃん!」
口を離した雁夜が、ぐったりしている桜を見た。
桜は、目を閉じ、ハーっと、楽になったという感じで息を吐いた。
「どう? 桜ちゃん?」
「……楽になった…。」
「魔力の暴走も止まったようですね。」
「よくやりました。雁夜。」
「あ、ああ…。」
「雁夜さん…、ありがとう。」
桜が、微笑んだ。
雁夜は、ホッとして桜の頭を撫でた。
桜は、気持ちよさそうに目を細めてた。
あれ? 百合のつもりはなかったんだけど、なんか流れでしてしまった。
雁夜おじさんは、おそらく葵さんへの恋患いでファーストキスすらしてなかったと思う。
ファーストキスは、レモン味?とか言うけど、このネタでの桜雁のファーストキスは、鉄の味でした。
なお、士郎の方は、鞘があるから魔力回路が傷ついても治ると思うので、桜の方は魔力暴走という形で異常が起きたということにしました。