雁夜おじさんのバオー来訪者ネタ Staynight編   作:蜜柑ブタ

17 / 27
ツツジが、おかしくなります。


ランサーが弱いんじゃない…、ツツジが強いんです。注意。


SS15 気狂い

 衛宮宅から出て、しばらく歩いていたツツジは、ふいに立ち止まり、はあ…っと息を吐いた。

「そこにいるんでしょ? 出てきたら?」

 

「…気づいてたのかよ。」

 

「サーヴァントは、独特な匂いがするもの。」

 ツツジの後ろに、ランサーが飛び降りてきた。

「例え、霊体化してても、分かるようなった。」

「ほー。いよいよ、人間離れも極まったわけか。」

「言峰さん、元気?」

「……嬢ちゃん…、どこまで知ってやがる?」

 ランサーに対して背中を向けたままのツツジの首の横に、顔を僅かにしかめたランサーが槍を置いた。

「……全部ってわけじゃないけど、少なくとも、この冬木市内ののことは、だいたいかな。」

「結構な範囲じゃねぇかよ。」

「頼みがあるの。」

「なんだ? 藪から棒に…。」

「……食べさせて。」

「はっ? っ!?」

 次の瞬間、ランサーがツツジの首の横に置いていた槍を、ツツジが掴んだ。

 そして、ガリッと槍の先端を、ツツジが囓った。

「おい! 何してやがる?」

「…コレじゃだめか……。直接本体から行かないといけないかな。」

「……おめぇ…。」

 ランサーは、握っている槍が、ツツジに掴まれており、抜くことも押すこともできずにいた。

「血の味がする…。この匂い…、キャスターを?」

「……ああ、そうだよ。」

 キャスターは、すでに討たれていた。おそらく葛木も、生きてはいないだろう。

「じゃあ、アサシンも今頃…。」

「ああ、マスターのキャスターがいなくなっちまったからな。自然消滅するだろうよ。」

「…キャスターでもよかったけど、一応休戦してたし…。ライダーは、桜ちゃんのだし…。」

「何をする気だ?」

「……魔力が欲しい。あと、出来れば子種も。」

「おい…。どうしたんだ? 変だぞ、おまえ?」

「どうしたんだろうね? 私にも分からないの。」

 次の瞬間、とんでもないスピードで、ツツジの掌がランサーの顎の下に決まり、ランサーはのけぞった。

 その瞬間を狙って、足払いをしたツツジが、そのままの勢いで倒したランサーの上に乗った。さらに、奪い取った赤い槍で、ランサーの右手の掌を貫いて地面に縫い止めた。

「…サーヴァントってさぁ、極端な話、単なる魔力の塊なんだって? ライダーから聞いた。」

「っつ…、この野郎…。気でも狂ったか? 嬢ちゃん…?」

「…そうだね。気がおかしくなったんだろうね。だから…。」

 地面に仰向けで倒れているランサーの首に、ツツジは顔を近づけた。

「………いただきます。」

「っ!!」

 ランサーは、首を噛みきり、肉ごと血を貪るツツジの行為に顔を苦痛に歪めた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「…っ?」

「雁夜さん、どうしたの?」

「いや…、なんだ、この変な匂い…。ツツジ?」

「ツツジさんが?」

「ごめん。桜ちゃん、ちょっと行ってくる。」

「私も…。」

「いや、俺だけで行くよ。猛烈に嫌な予感してるから…。」

「お気を付けて。」

 桜とライダーに見送られ、雁夜は、急いで出て行った。

 

 

 匂いを辿ってついた場所では……。

 

「なにやってんだ、おまえ…?」

「なにって…、見たままだけど?」

「…おせぇよ……。」

 仰向けで倒れているランサーの上に、馬乗り乗っているツツジが、口元を真っ赤に染めていた。

 ランサーは、ゼェゼェっと荒い呼吸をしており、その首の横は、無残にも抉れていた。

「雁夜さん…、悪いんだけど…。今から衛宮くんのところに行こうと思うの。」

 ランサーの上から、ユラリッと立ち上がったツツジが言った。

「そんな有様で行ったら、びっくりされるぞ?」

「いいもーん。その方が…、隙が出来る…し。」

「ツツジ…、どうしたんだ?」

「…早いとこ…、どうにかしろよ…、お前んところの、嬢ちゃんだろ?」

 失血のため、まともに動けないでいるランサーが雁夜を睨みながら言った。

「ふふふ……、子供…欲しいなぁ…。衛宮くんの子種なら、強い子が出来るはず…。」

「ツツジ!!」

「なに?」

「おまえ、どうにかなっちまったのか!?」

「私は、私だよ…?」

「嘘吐け…。いや、お前かも知れないが、お前であって、お前じゃないな。強いて言うなら……、お前の中の…。」

「そう呼ばれてる。」

 その直後、ツツジの顔から表情が消えた。

 フッと消え、直後、雁夜は、突撃してきたツツジの体を受け止めた。

「あはぁ。ほんと、強くなったね。雁夜。」

「ツツジ…!」

 雁夜の体が武装現象を発動しようとして……。

「マザー(母体)に勝てると思ってる? ただの子(兵)が。」

「ぐっ!!」

 次の瞬間、頭が割れるように痛くなった。この感覚には覚えがある。そう…、ツツジにマザー・バオーの力を向けられたときのアレだ。

「あは…、ハハハハハ!!」

 ツツジが口元を歪めて、狂ったように笑い出した。笑い声に同調するように、雁夜の中のバオーが暴れているのか、凄まじい連続した痛みが走る。

「ぐ、あああああああ!!」

「おまえに、ヨウは、ナイ…。」

 

「雁夜さん!!」

 

 スッと手を雁夜にかざそうとしたツツジに、ライダーの鋭い蹴りが入って吹っ飛ばされた。

 倒れている雁夜に、桜が駆け寄った。

「雁夜さん、雁夜さん!」

「だ、だいじょうぶだ…。それより…。」

「アナタまで、ジャマする、気?」

「ツツジさん…?」

「あなた…、ツツジではありませんね。」

「ワタシは、ツツジ…、ツツ……、ジ…。」

「あれで気絶しませんか。仕方ありませんね…。」

「ライダー!」

「気をつけろ! そいつは…。」

 ライダーが目の封じを外し、石化の魔眼を向けた。

 しかし、バチンッと紫電の閃光が弾けた。

「気をつけろ! ツツジやつ…、ランサーから魔力を食ってやがる!!」

「私の魔眼を…。」

 ライダーは、魔眼の力を、ツツジが強引に取り込んだ魔力で弾いたのを見て驚愕した。

「ツヨイ…子が…イル…。魔術師のチカラ…、ソレを得た…子供…。」

「なるほど? …で、衛宮くんをか。」

「あぁぁ…、うぅぅ……、私の…、子…、欲しいだけなのに…。」

「ツツジ?」

「……………………………ごめんね。」

 紫電をまき散らしていたツツジが、唐突に両膝を突いてそのまま倒れた。

 シーンっ、と、場が静まりかえった。

「おーい…、ツツジ?」

「…………………………一歩も動けない…。」

「無理をしてサーヴァントから、大量の魔力を吸引するからですよ。」

 弱々しく声を漏らしたツツジの姿に、ライダーがヤレヤレという感じで言った。

「あたま…グルグル~…。」

「どうしたの?」

「おそらく…魔力で酔ってるわ。」

「結局、なんだったんだ?」

「…………………………あくまで、私の推測ですが………………………、発情期という奴だったんじゃないでしょうか?」

「はっ? 今の今まで、十年もそんなことなかったのに?」

「ツツジ…、貴女…生理中ですよね?」

「うん…。」

「女性の体は、そういう時期は、人によっては大きく、変動しますから、原因はそれかと…。」

「なんじゃそりゃーーー!!」

「……いい迷惑だぜ…。」

 雁夜が絶叫し、倒れているランサーが、はあ…っと息を吐いていた。

 

 

 ツツジの暴走は、こうして、終わりを告げたのだった……。




ツツジも生き物ですからね、おかしくなる時期もあります…っということで。

ランサーの魔力を強引に、大量に吸引したので、逆にぶっ倒れたので暴走はほぼ未遂(?)で終わったかな。
もし止まらなかったら、士郎が大変なことになってました。

あと、なにげにキャスター(と葛木)が、退場してます……。ごめんよ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。