雁夜おじさんのバオー来訪者ネタ Staynight編 作:蜜柑ブタ
ほんのり、申し訳程度に、桜→雁夜?
最後の方は、セイバーに魔術回路移植イベント。
凜の読み通り、アインツベルンの森の人よけの仕掛けは、凜ほどの魔術の感覚の持ち主ならすんなりと中心部であるアインツベルンの城への道を見つける程度に弱められていた。
雁夜は、森の中を進みながら、昔のことを思い出した。
そういえば、第四次聖杯戦争の時に、この森で、当時のセイバーとランサー(ディルムッド)と共に、キャスターを迎え撃ったなぁっと。
「そういえば…、柳洞寺にいたキャスターと葛木が討たれたわ。」
「えっ?」
森を進んでいく途中で、凜が唐突に言った。
「アサシンは、キャスターの下にいたし、バーサーカーの気配も残ってなかった。おそらくは、ランサーの仕業ね。」
「あいつ…。」
間桐邸に連れ帰ったときのランサーがそんな素振りひとつ取ってなかったことを思い出し、雁夜は苦虫をかみつぶしたよう顔をした。(ツツジは知ってる)
「マスターであるキャスターが討たれた以上、アサシンは、自然消滅するでしょうね。っとなると…、残るサーヴァントは、アーチャー、セイバー、ライダー、そして…、ランサーとバーサーカーだけね。」
つまり、ほぼ味方同士のサーヴァントが残る勢力の半数以上を占めたことになる。
もし、バーサーカーを討てれば、残る敵陣営は、ランサーのみとなるだろう。
ランサーのマスターが誰なのかは、まだ分からないので、注意するに越したことはない。(ツツジは知ってる)
「見えたわ。」
「こんなところにヨーロッパ式のお城があるなんて…。」
「アインツベルンの趣味よ。」
桜の呟きに、凜がそう答えた。
「シロウ…。」
「待ってください。」
ライダーが、セイバーを止めた。
全員が物陰に隠れると、城の扉が開いて、そこからイリヤが現れた。
そして、スタスタと後ろにバーサーカーを連れて歩いて行った。
「チャンスね。」
「………罠じゃないか?」
「どうしてよ?」
「…さっきから、この森に入ってからずっと、視線の匂いを感じる。たぶん、俺達はずっと見られてる。」
「なにそれ、視線の匂いってなによ。」
「例えそうだとしても、懐に飛び込まなければ…、シロウは救えません。」
セイバーは、おそらく焦っているようだ。
あとで、凜から聞いたが、士郎がさらわれたタイミングは、凜が士郎とセイバーの魔力供給問題をなんとかするため奔走している最中だったらしい。方法を実行する手前で士郎がいないことに、魔力不足で寝ていたセイバーが気づいて、凜に助けを求め、そして雁夜達に助けを求めたのだ。
イリヤとバーサーカーが出て行くは、しっかり見たが、先ほどから感じる視線を匂いとして感じている雁夜は、不安は拭えないものの、セイバーの言うとおり懐に入らなければ士郎を救えないと思い、セイバーに同意することにした。
そして、イリヤ出入りした玄関に入り、セイバーが士郎の令呪を辿って廊下を走り、その後を雁夜達が追いかけた。
そして、とある一室を開けると、途端中から士郎が飛び出してきて、セイバーと接触しかけた。
「シロウ!」
「セイバー!」
「先輩。」
「間桐まで…。」
「とりあえず、無事なようね。」
「ああ…なんとかな。」
「シロウ…、気が乱れています。だいじょうぶですか?」
「イリヤの暗示を解くのに、ちょっとな…。」
「ほら、ふらついてるところ悪いけど、イリヤが帰ってくる前に、急いで逃げるわよ。」
「ああ。」
士郎を見つけたので、さっさとこの場から去るべく、全員で廊下を急いで走った。
「……いる!」
「雁夜さん?」
雁夜と平行して走っていた桜が、雁夜の呟きを訝しんだ。
そして、玄関のある広間に出たときだった。
「なーんだ、もう帰っちゃうの?」
「ああ、帰らせてくれるか?」
「雁夜さん!?」
玄関に向けて移動していたとき聞こえた、イリヤの声に、ひとり冷静に雁夜は対応し、凜はハッとして振り返った。
イリヤは、玄関先の広間を見渡せる階段の上にバーサーカーと共に立っていた。
「あの、女といい、あなた達って、変。」
「君に言われたくないな。森に入った時点で、俺達の存在を見ていただろう?」
「そうね。あなただけは気づいてたわね。そうよ。この森には、私の感覚が張り巡らされてる。だから、例え、トオサカの才媛でもどうすることもできないわ。」
「初めから、私達を誘い込む気だったの?」
「違うわ。」
凜の問いに、イリヤは否定した。
「士郎を連れて来たのは、私の意思。それ以上でもそれ以下でもない。でも…士郎は、私の物になってくれなかったわ。あなた達をここへ入れたのは、この私を切嗣のように捨てる、士郎への見せしめにするためよ。」
「イリヤ! 遠坂達は関係ないだろ!」
「いいえ。士郎。言ったでしょ。私を拒絶したことを後悔させるって。それから、殺してあげるから。」
「くっ…。」
士郎の言葉に、イリヤの聞く耳を持たないようだ。
「そっちには、セイバーに、ライダー、アーチャーがいても無駄よ。私のバーサーカーは絶対に負けないもの!」
すると、イリヤの傍らに佇んでいたバーサーカーが跳び。広間の床に飛び降りてきた。
セイバー、ライダー、アーチャーが武器をそれぞれ構える。
「セイバー、あなたは下がりなさい!」
「しかし!」
「甲冑も身につけられない状態でよく言うわよ。」
「……っ。」
「セイバー…。」
「アーチャー。」
「分かっている。」
「遠坂?」
アーチャーに命じ、そして名を呼ばれただけで察したアーチャーが前に出る。
「…ひとりで、アイツの足止めをして。」
「凜! そんなっ…!」
「遠坂…おまえ…。」
その命令が、アーチャーに死ねと言っていることと同意義だということを、士郎もセイバーもすぐに察した。
「ならば、私も…。」
「ここは建物内よ。あなたの騎乗は使えないわ。」
ライダーも残ろうとすると、凜がそう言って止めた。
「それに、あなたの魔眼は、イリヤには通じない。」
「…っ。」
前にバーサーカーと戦った際に、バーサーカーは、おろか、イリヤにも魔眼が通じなかったことを思い出し、ライダーは俯いた。
「へえ? リン、あなた、そんなどこの誰とも分からないサーヴァントで、私のヘラクレスを止める気なんだ?」
「アーチャー…、いいわね?」
「ところで、凜。」
「…なに?」
「時間を稼ぐのはいいが…。アレを倒してしまっても構わんだろうな?」
「! ……ええ。もちろんよ。遠慮はいらないわ。ガツンと痛い目にあわせてやって、アーチャー!」
「そうか。ならば、期待に応えるとしよう。」
「待て待て。俺を忘れてないか?」
髪の毛をザワリッと揺らした雁夜が話に割って入った。
「雁夜さん!」
「桜ちゃん、行け! ライダー、頼むぞ。」
「ええ。」
「待って! ライダー、離して!」
「シロウ! 行きましょう!」
「アーチャー…、雁夜さん…、必ず戻ってきてください!」
「ああ。もちろんだ。」
そして、雁夜の体が変化を遂げ、バオー・武装現象を発動した。
「自分から死にに来るなんて、愚かね。バーサーカー! 殺しちゃえ!」
『アーチャー、聞こえるか?』
「っ! ああ、聞こえる。なんだ?」
武装現象状態では、実は口がきけないため、念話に近い形でアーチャーに話しかける雁夜。
『あの時の、アレ…、使えよ。』
「言われるまでもない。」
そして、アーチャーが、双剣を構え、詠唱を始めた。
同時に、雁夜が前に飛び出し、バーサーカーの一撃と突進を止めた。
「 I am the bone of my sword 」
ギリギリとバーサーカーの斧剣を腕の刃で止め、つん張り合いになる。
「 Steel is my body, and fire is my blood 」
バーサーカーがうなり声をあげ、その巨体からは想像も出来ない速度で、斧剣を振り回す。そのたびに、ガン、ギンっと、雁夜が腕の刃でその攻撃を受け止め弾いた。
「 I have created over a thousand blades 」
バーサーカーの巨体が、徐々に後ろへ押されていった。
「 Unknown to Death 」
イリヤは、驚愕する。
雁夜は、身長はそこそこだが、体格に恵まれてはいない。
それが、300キロ超もあるような筋肉の塊のような大英霊ヘラクレスを圧倒しているのだ。
「 Nor known to Life 」
雁夜の腕の刃が、バーサーカーの首を狙う。
バーサーカーは、咄嗟に首をのけぞらせて、首の表面だけを切られただけですませる。
「 Have withstood pain to create many weapons 」
たちまち傷は癒えるが、素早く突き出された雁夜の掌を、バーサーカーは、その巨体からはあり得ないような速度で横にそれて避けた。
途端、バーサーカーが背にしていた階段の手すりに雁夜の掌が当たり、手すりがドロドロに溶けた。
「 Yet, those hands will never hold anything 」
イリヤは、直感する。
あの溶解液に触れたら、例えサーヴァントといえど、無事では済まないし、自身のバーサーカーの秘密があれど、意味はないと。
そして……。
「 So as I pray, unlimited blade works 」
アーチャーの詠唱が完成し、途端、中世の城を思わせる玄関の広間にまったく異なる景色が広がった。
赤土色の空と、背景を彩るのは、巨大な歯車。そして、焼け野原にとてつもない数の剣や武器が突き刺さっている圧倒的かつ、異様な光景だった。
「これは! 固有結界!? あなた…何者!?」
「そんなことを言ってる場合か?」
「っ、バーサーカー!!」
アーチャーが剣を矢として弓を構える。
直後、放たれたのは、無数の剣。
雁夜が、後ろへしゃがみながら跳び、直後、バーサーカーの巨体をアーチャーが放った矢に見立てた剣が貫いて抉った。
「無駄よ。その程度じゃ…。」
「ブロークン・ファンタズム!」
「っ、バーサーカー!!」
バーサーカーの周りに突き刺さった、無数の複製の武器が大爆発した。
バーサーカーが爆炎を越えて、全身のあちこちを大きく抉られた状態で飛び出した。
その瞬間、雁夜が横を通り過ぎる。
そして、バーサーカーの首がゆっくりと、切れて、落ちた。
「バーサーカーーー!!」
『この程度じゃ死なないか!』
切り落とされた首を手で受け止め、元に位置に戻すバーサーカーを見て、雁夜がそう呟きつつ、方向転換する。
「ならば…。」
『ああ…。死ぬまで…。』
「殺し続けるまで!!」
前から、後ろから、アーチャーと、雁夜がバーサーカーに攻撃した。
***
森の中を走っていた士郎達だったが……。
セイバーが自身を保つ魔力の限界を迎え、消滅寸前になってしまった。
「セイバー…。」
「すみません…シロウ…。」
「謝るな。俺が未熟なせいで…。」
「どうするのです、凜?」
ライダーが凜に聞いた。
今、士郎達は森の中で、事前に見つけておいた、廃墟の建物の中にいた。
そして、凜が意を決して語り出す。
今のセイバーは、魔力供給の不全で、消滅寸前であり、それをなんとかしなければ、いずれ追って来るであろうバーサーカーには勝てないと言った。
凜は、直感していた。アーチャーと雁夜では、あのバーサーカーには勝てないと。
それを察した桜が、ギュッとスカートを握りしめ俯いた。
「桜…。だいじょうぶです。彼は必ず…。」
「…雁夜さんに何かあったら…私…。」
ブルブルと震えている桜をなだめようとライダーが背中を摩った。
「で…、ここから大事な話よ。士郎。よーく聞いて。」
「なんだ?」
「これから、あなたの魔術回路を、セイバーに移植するわ。」
「えっ?」
「な…!?」
ライダーが桜をなだめている間にも、話は進められており、凜が士郎にそう言い、士郎はキョトンとし、セイバーは驚いた。
凜の話を総合すると、今のセイバーは、体内になる魔術回路という小さな歯車が動いておらず、そのため自身を維持するための魔力が練れていないらしい。
「サーヴァントとマスターの契約は聖杯の力を借りて行われる強固なものよ。当然新しく繋ぐ経路(パス)にも、それに見合うだけの強さが求められる。だから、霊的に重要な機関である魔術回路を移植するくらいのことをしなければ、意味がないのよ。知っての通り、魔術回路をなくして、私達は魔力を錬成することができないわ。万が一移植によって全ての回路を失うことになれば、二度と魔術は使えない。つまり……、あなたは、もう魔術師ではいられなくなるかもしれないわ。」
「ま…待ってください。凜! 魔術は、シロウの礎であり、シロウという存在の根幹を成すもの…。それを奪うなど、あまりにも酷い!!」
「………だいじょうぶだ、セイバー。」
「ですが、シロウ…。」
「例え、魔術を失っても、すべてを失うわけじゃない。その経験が俺の中で生きるだろ? この道が途切れたなら、また新たな道を行く。それだけだ。だけど、それは、命あっての話だ。……遠坂。」
「…覚悟はいいわね?」
「ああ。」
「シロウ…。」
「誤解しないでね。魔術回路の移植といっても、それが必ずすべての魔術回路を失うわけじゃないわ。残される回路のが数が多いほど、そのリスクは狭まる。そのためには……。士郎。脱ぎなさい。」
「………はっ?」
「セイバーも。」
「えっ?」
「ほら、さっさとする! 時間が無いのよ!」
そして、士郎とセイバーは、上半身を裸にされた。
凜曰く…、二人の精神の同調が高まるほど移植の成功率は上がるらしい……。
「万が一って事もあるから、ライダーには、見張りと、バーサーカーの足止めを、お願いするわ。」
「分かりました。」
「分かったわ。」
ライダーと桜は、建物から出て、警戒に当った。
「うまくいくといいな…。」
「桜…。」
「ライダー…、私…怖い…。死ぬ以上に…雁夜さんが、私のところに二度と帰ってこないかもしれないってことが…。」
「だいじょうぶ。だいじょうぶですよ。桜。」
震えながら、目に涙を溜める桜を、ライダーが優しく抱きしめた。
「ぐあああああああ!!」
その時、建物の中から士郎の絶叫が聞こえた。
「っ、先輩!?」
「行ってはいけません!」
「でも…。」
「今は大切な儀式の最中。それをジャマしては全て水の泡です。」
「…そんな!」
次から次に発生する問題に直面し、桜は愕然とする。
その時、遠くから……、いや、アインツベルンの城の方角から、凄まじい破壊音が聞こえた。
たぶん、アーチャーひとりじゃないから、バーサーカーの残り命のストックを多く削れるかと……。
ほんと、反則レベルですよね…。Staynightのバーサーカーの宝具は。
次回は、決着かな…?