雁夜おじさんのバオー来訪者ネタ Staynight編 作:蜜柑ブタ
何を見込んだのか、ツツジが士郎を気に入ります。
「なにやっとんじゃーーーー!!」
「ぶげふっ!?」
緊迫した英霊同士の戦いの初戦は、男一人と少年のような少女のその叫び声と共に、二人が槍兵クラスの英霊にラリアットを前後で食らわしたことでぶち壊しになった。
槍兵クラスの英霊は、バタリと倒れ、カランカランと、先ほど高校生男児の心臓を射貫いた槍を落とした。
遠坂凜は、困惑した。
そして彼女の英霊である弓兵のサーヴァントもポカーンっとしていた。
「ああああ! ちくしょう! サーヴァントの匂い辿ってきたのに、早くも犠牲者かよ!」
「仕方ないなぁ…。じゃあ、これ…。」
少年のような少女が、モゾモゾとどこからか何かを出した。
それは、ソレを摘まんでいる指の間でピチピチと跳ねている。
「おいっ! 待て!」
「早くしないと、この子完全に死んじゃうよ?」
「いや…、でも…それ…。」
「待ちなさい!」
「ん?」
凜がたまらず叫んで止めた。
「なにをしようとしてんのよ!?」
「えっ? なにって…、コレを埋め込んで…。」
「ダメ! ダメよ! そんなことさせないわ!」
「でも、そうしないと、この子完全に死んじゃう…。」
「私が生き返らせるから!」
「えっ? そんなことできるの?」
「だから、あんたはどっか行って! 雁夜おじさんも、もっと本気で止めなさいよ!」
「えっ? もしかして、凜ちゃん? …大きくなったね。」
「ええ、久しぶり…、じゃ、なくて! もういいから、ここは私がなんとかするからさっさと帰って!」
凜は、泣きたくなるのを堪えて、雁夜と呼ばれた男と、少年のような少女にさっさと帰れと言った。
「えー、でも…。」
「いい加減にしないと燃やすわよ!」
名残惜しそうに、血を流して倒れている高校生男児を見つめる少女。
「……むう、仕方ないなぁ。」
「ツツジ…、なんだ、急に、唐突に…。」
「いいじゃーん。あの子って…、桜ちゃんの知り合いじゃないの? ほら、鞄の名札に、衛宮士郎(えみやしろう)って…。」
「あ…。」
「帰りなさーーーい!!」
「うわわっ!」
帰らない二人に、凜がキレて、ガンドを放ってきた。
雁夜とツツジは、慌てて帰って行ったのだった。
二人が帰っていったあと、凜は、蘇生の魔術を使って、衛宮士郎を蘇生させたのだった。
***
「へえ…、ほんとに出来るんだぁ。」
帰らず、物陰から様子を見ていた雁夜とツツジであった。
「でも……。」
「どうする気だ? まさかだけど…、おまえ、あの高校生をバオーにする気か?」
「うん。」
雁夜からの問いに、ツツジは軽く返事をした。
「おまえな…、俺と違ってなんの了承も無くそれをやるってのは…、さすがにどうかと思うぞ?」
「そうだね。だから今度は生きている内になるかどうか聞いてみるよ。」
「おい! なにを見込んでそこまでするってんだ!?」
「単純に…気に入ったから。」
「なんだその不純な理由!?」
「不純じゃないよー。」
「いや、十分不純だっつーの! 今まで色恋沙汰ゼロだったお前が、なに!?」
「なんか失礼だね。私だって普通の人間の感性は持ってる…と思ってるよ。」
「微妙なこと言うな!」
「まあ、それはそうと、早く行かないと、また殺されちゃうから…行ってくるね。」
「待てよ!!」
雁夜の制止も聞かず、ツツジは、生き返った士郎を追って行ったのだった。
***
ランサーに追われた士郎を追って、彼の自宅まで来たツツジは、そこでもう一つのサーヴァントの匂いが発生したのを匂いで感じた。
「この匂い……、セイバー?」
覚えがある匂いだったので、記憶にある名前を呟いた。
それから遅れて凜がやってきたりもして、ランサーは、撤退。
そして隠れていたツツジも…。
「そこにいるのは分かっている。出てこい。」
「ん? あなた……。」
アーチャーに見つかり姿を見せたが、ツツジは、近くで感じ取ったアーチャーの匂いに少し驚いた。
「ちょっと、どうしているのよ!?」
「これを渡そうと…。」
「!?」
ツツジの手の上で、ピチピチ跳ねているそれを見て、パーンッ!と凜が手ではたき落とした。
地面に落ちたソレに向けて、ガンドをありったけ撃ちこみ、ハーハー…っと凜は荒い呼吸をした。
「なにもそんな、Gがつく生き物を徹底的に殺すみたいに…。」
「Gよりたち悪いわよ! あんたが誰よりも分かってるでしょうが!?」
「へー、私のこと知ってるんだ?」
「ええ…。お父様から色々と聞いてるわ…。」
「おとうさま?」
「遠坂って言えば分かるかしら?」
「ああ、時臣さん? あの人の娘さんって事は……。」
「ええ。あの子の姉よ。」
「ふーん。」
特に興味はなさそうに、ツツジは声を漏らした。
「どうでもいいけど、帰ってくれる?」
「どうしたんだ、遠坂?」
そこへ騒ぎに気づいたらしい士郎がやってきた。
凜は、舌打ちをしかけた。
「誰?」
「初めまして。私は、ツツジ。桜ちゃんがいつもお世話になってます。」
「桜? ああ、間桐か。こちらこそ…。どうしたんです? こんな藪遅くに…。」
「士郎、あんたは家の中入ってて!」
「えっ? なんでさ?」
「コイツは、たち悪いのよ! だから関わっちゃダメ!」
「えっ? 間桐の家の同居人って聞いてるけど?」
「いいから!」
「今日のところは帰るから。じゃあね、衛宮くん。」
「あ、はい。」
ツツジは、ニコニコ笑いながらやっと去って行った。
ツツジがいなくなり、緊張の糸が解けた凜が、その場にへたり込んだ。
「おいおい、遠坂? だいじょうぶか?」
「……絶対…、また来るわ…、アイツ…。」
今日のところは…っと明らかにまた来ることを匂わせる言葉を残していったことに、凜は、プルプルと震えた。怒りとかなんや分からん感情で。
ツツジ。
その名は、父・時臣から聞いている。
母・葵の知人である雁夜に、バオーという力を与え、異形の者へと変えた張本人だと。
そして、雁夜と共に魔術師としての桜の進路を絶ったのだと聞いていた。
……最後の方は、時臣の認識違いもあるだろう。なぜなら、ここ数年の間に凜は桜に尋ねたのだ。なぜ魔術の道を捨てて、雁夜と共にいるのかと。
『他人の貴方には関係ない。』
桜は、キッパリと凜を他人だと言い答えなかった。
第四次聖杯戦争から五年間、どこで何をしていたのかも知らない。聞いても答えてはくれない。
父・時臣からは、もし隙があれば雁夜から桜を取り返したいと言っていたが、桜は、遠坂に帰ることを拒絶している。
母・葵は、約十年前のある日を境に、塞ぎ込むようになり、今日も部屋にこもってしまっている。これは、時臣にも言えることで、あれほど熱心だった魔術の研究もせず、日がな一日廃人のようにぼう然としている姿がよく見られるようになった。
言峰綺礼から、かつて使役していたサーヴァントに裏切られたとは聞いていた。あの王の中の王だと言っていた英霊に裏切られたのだ、そのダメージは計り知れないだろう。しかし凜は、あの時、同時に弟子である綺礼にも裏切られていることを聞いていないし、聞かされていない。時臣自身があの時のことを思い出したがらないので、彼の口から語られないし、凜も聞いちゃいけないと思ってあえて聞かないでいたためにこうなったのだ。聞いたら最後、恐らく時臣はぶっ壊れるだろう、そんな予感がして…。父のそんな姿を見たくない凜は、いつか真実にたどり着けるだろうか……。
凜は、多くの不安を抱えたまま、第五次聖杯戦争に挑む。
いかなるイレギュラーによる困難が待ち受けていても……。
時臣も葵も死んでません。でも、第五次聖杯戦争に関わらない程度に存在感無いです。
士郎をバオーにしようと企むツツジさん。
それを全力で止めるため頑張る凜……。恐らくメッチャ苦労するであろう。
桜と士郎は、先輩後輩で、お互いに料理を教え合うけど、それ以上でもそれ以下でもない関係。雁夜に恋する桜を士郎が応援してます。
桜は、凜のことを他人だと言い切っており、遠坂とは縁を切ってます。基本的に雁夜とツツジさえいればいいと思ってます。
早く給料日ならないかな……、そしたら原作漫画買うのに。