雁夜おじさんのバオー来訪者ネタ Staynight編 作:蜜柑ブタ
大百科によると時間が経てば回復するってなってたけど……。
ちょっと、グロ注意かも。
あと、アーチャー退場。
ガラガラっと、アインツベルンの城の玄関が崩れる。
次の瞬間、ドカーンと瓦礫の一部が吹っ飛ばされ、中からイリヤを抱えた、ボロボロのバーサーカーが立ち上がった。
「……はあ…、まさかここまでやられるなんて思わなかったわ…。でも…。」
イリヤは、大きな瓦礫に挟まって飛び出している、雁夜の右腕を見て呟く。
その雁夜の右手はピクリとも動いていない。
「いくら、どんな化け物でも、ここまで殺されれば…、さすがに死ぬはず。あの分からないアーチャーも消えたことだし…。さあ、行くわよ、バーサーカー…。」
イリヤを降ろしたバーサーカーが、一瞬よろついた。
「ちょっと、まさか“この程度”で、へばる気? まだ、二回は残ってるでしょ? でもそうね…。少しだけ回復させといてもいいか…。」
そう言ってイリヤは、バーサーカーの大きな手を握り、集中した。
一瞬、イリヤの体が輝き、やがて治まる。
その頃には、バーサーカーの体の傷は癒えていた。
「とりあえず、これで残り六つよ。今は、逃げた残りを殺すことを優先するわ。文句はないでしょう?」
しかしバーサーカーは、答えない。
しかしイリヤは、それを肯定ととり、歩き出した。するとバーサーカーはイリヤの後ろについて行った。
二人が去った後の二分後……、瓦礫に挟まっている雁夜の手が、ピクッと動いた。
***
廃墟の建物の前で、桜はへたり込んでいた。
空は白み、朝日が上がる。
「雁夜さん…。雁夜さんが…!」
「落ち着いてください、桜! まだ死んだとは決まっていません!」
「でも…、でもぉ…。」
「桜。」
すると廃墟の戸が開いて、凜が出てきた。
「とりあえず…、成功したわ。」
「そうですか。」
「雁夜さん、雁夜…さん…。」
「桜…。気の毒だけど…。」
「!」
ハッと顔を上げる桜に、凜は、自分の右腕を見せた。そこには、令呪が無くなっていた。
桜の顔からますます血の気が引き…、ハクハクと口を開閉させ、涙をボロボロと流し出した。
「桜、気をしっかり!」
「ぁぁあ、うぅぅ…!」
「…間桐!」
そこへ、意識を取り戻した士郎が駆けつけた。
桜は、錯乱していた。凜は、唇を噛み、桜の首に当て身をして、気絶させた。
「遠坂!」
「中に運んで。こんな状態じゃ、戦えないわ。」
「おまえ…!」
「いい? 今は生き残ることを最優先にするのよ。」
「っ…。」
凜にそう言われ、士郎は黙らざる終えなかった。
ライダーは、気絶した桜を抱きかかえ、建物の中へ運んだ。
そして、セイバーと入れ替わりになり、セイバーの状態の確認と、どうやってバーサーカーに勝つかという作戦を練ることになった。
まず、セイバーの魔力であるが、宝具を一度使う程度ならなんとかなっていること。
ただし、エクスカリバーのようなとんでもない必殺の一撃は、消滅を引き換えにしないと放てそうにないこと。
セイバーは、アーチャーを失った凜に対し、戦線を離脱すべきだと進言した。
「そうね。」
「遠坂!?」
「私も、そう思ってたところ。」
「遠坂!」
「いい? 聞いて。士郎。」
そして、凜は作戦を語り出す。
逃げるといっても…、あくまでもフリだと…。
そう言って凜は、魔力をため込んだたくさんの宝石を見せた。
***
間桐邸で寝ていたツツジだったが、ふと目を覚ました。
「雁夜……。」
ツツジは、匂いで辿る。
そして、雁夜が、アインツベルンの森の中を、桜を探して、死にかけの体でさまよっている光景を匂いで感じた。
頭は無残にも半分潰れているが、完全ではない。おそらく雁夜の深層心理に辛うじて生き残っている脳内の血管の中に住むバオーが死にかけの体を動かしているのだろう。もはやその様は、ゾンビだ。
「……行かなきゃ…。」
ツツジは、まだ、大量の魔力摂取でグルグルしている頭を押さえながら起き上がり、間桐邸から出発した。
***
セイバーは、甲冑を身につけ、士郎と共に森の中を歩いていた。
「緊張しているのですか?」
「ああ…。さすがにな。」
「シロウには、私の援護を頼むことになりますが…。」
「分かってる。ここからは、自分達だけの力で切り抜けないといけない。しっかりしないとな。」
「だいじょうぶ。」
セイバーが、士郎の手を握った。
「私達は…、きっと勝てます。」
「ああ…!」
力強く返事をする士郎。
その時だった。
「追いついたわよ。士郎。」
無理の木々の先から、イリヤとバーサーカーが歩いてきた。
「死ぬ準備はできた? ふぅん…、セイバーは治ったんだ?」
イリヤは、そう言った。
セイバーが前に出て剣を構える。
「リンの姿が無いわね? もしかして逃げた? そっかぁ…、恐れをなして逃げたのね? アハハハ! それは、そうよね! 頼みのアーチャーは、私のバーサーカーがズタボロにして殺してやったもの! あと…、雁夜って男もね。」
「っ!!」
「たいしたものよ…。ほんとびっくりした。あの男…、頭を潰してやってやっと死んだのよ? まさか下半身を潰したぐらいじゃ死なないなんて。」
「イリヤ…!」
「それで? 勝ち目がないと分かってて、たった二人でやるつもりなの? 惨めに命乞いするなら命だけは助けてあげなくもないけど?」
「……俺は、俺達の答えは変わらない。お前が敵である限り! 俺はセイバーのマスターとして戦う!」
「…………そう。」
イリヤの顔が凍てついたように無表情になった。
「じゃあ…、本気で殺してあげる。」
次の瞬間、ブワッとイリヤの服の上からでも分かる、令呪の光がイリヤの全身から輝いた。
「なっ!」
「なんて大きさの、令呪!」
「さあ…。狂いなさい! バーサーカー!!」
イリヤの令呪による命を受け、バーサーカーが狂化された。
士郎とセイバーは驚愕する。
今の今まで、バーサーカーは、そのクラス特有の狂化をされずに戦っていたのだという事実に。
つまり、今、ステータスを大幅に強化する、狂化を使うということは……。
「ふふ。何を驚いてるの?」
イリヤが笑う。
「今さら命乞いしても無駄よ? 聞かないからね。さあ! バーサーカー! みんな、殺しちゃえ!!」
狂化されたバーサーカーが咆吼をあげながら迫ってくる。
すると、上空から、凄まじいスピードでバーサーカーの背後に迫る、光の塊があった。
バーサーカーは、瞬時に反応し、武器を手にしていない片手でそれを掴んで止めた。
「くっ!!」
騎乗している天馬の首を掴まれ、ライダーは、手綱を握りしめ、天馬を暴れさせた。
バーサーカーが、斧剣を振り、ライダーを天馬ごと切ろうとした時、セイバーがバーサーカーの背中を切った。
深く切られたが、傷は一瞬で閉じ、バーサーカーは、振り向きざまにライダーを天馬もろともセイバーに投げつけた。
セイバーは、咄嗟に横へ飛んで避けると、ライダーと天馬は、木々を倒しながら吹っ飛んでいった。
「これほどとは…。」
「対軍宝具程度じゃ、バーサーカーは傷つけられないわ。」
「く…!」
バーサーカーの一撃を剣で防ぐが、セイバーの小さな体が数メートル飛ばされた。
あまりにも大きく強い一撃。
そして、繰り広げられる攻防は、一撃一撃が、まさに人外の境地。まさに……神話の再現だった。
士郎は、即席の弓矢を手にし、イリヤを狙う。
しかし、放たれた矢は、瞬時に対応したバーサーカーによって防がれた。
その際に振られた武器の風圧で、士郎の体が吹っ飛び、背後の木に激突した。
「ダメだよ。士郎。私を狙うなんて、見え見え。ちょっと…、お仕置きが必要かしら?」
そう言って笑ったイリヤ。その意思に反応したバーサーカーが、士郎に迫った。
しかし…、イリヤとバーサーカーの本当の狙いは違った。
士郎のピンチに冷静さを一瞬欠いたセイバーが背後に迫ると、すぐにバーサーカーが振り向き迎え撃つ。
大きく弾かれた剣と、それを握る手が上へ大きく上がり、セイバーの腹の部分が大きく開いた。
そこを狙ってバーサーカーが武器を振るおうとした。
「真っ二つになって死んじゃえ!!」
「いいえ。」
「えっ?」
イリヤが一瞬キョトンとする。
その直後、セイバーの胴体をバーサーカーの一撃が襲う。
「セイバーーーー!」
士郎が絶叫した。
しかしセイバーは倒れなかったし、胴体が二つになることもなかった。むしろ着地、構えて、大振りの攻撃をして隙が出来たバーサーカーの腕を狙った。
その攻撃をバーサーカーが斧剣で防ぐ。だがセイバーの渾身の一撃によって、バーサーカーの巨体が浮いて、吹っ飛んだ。
だがダメージとはならず、すぐに着地される。
その直後。
「引いて! セイバー!」
木の上から、凜が飛び出し、無数の宝石を手にし、バーサーカーに向けて投げた。
そう、これは賭け。
バーサーカーを確実に倒せるかどうかは分からないが、油断を誘うための賭けだった。
凜は、遠坂家の本気をみせるのだと、あの時言ったのだ。
大量の魔力を含む無数の宝石の強大な一撃が、バーサーカーの頭に直撃する。
「バーサーカー!」
イリヤが悲鳴じみた声を上げる。
しかし、頭を攻撃されたバーサーカーは、降ってくる凜の腹を片手で掴み、ギリギリと握りつぶそうとする。
煙をまとった頭は、焼け、続いて凜は、凄まじい数の氷の攻撃を隙間無くというぐらいの数、撃ち込む。それによって、凍らせ、打ち砕くつもりだったが…。
「無駄よ。」
イリヤが言った瞬間、バーサーカーは、咆吼をあげ、氷をすべて弾き飛ばした。
「そんな…、む、無傷! ぐあ…!」
「アハハハハ! そのまま握りつぶして内臓をぶちまけちゃえ!」
「ふふ…。」
「? 何がおかしいの?」
ギリギリと握りしめられながら、凜が笑ったのでイリヤが訝しむ。
その直後、凜は、もう片手に手にしていた無数の宝石を指で挟んでいた。
「こうなることは、分かってたわよ…。こっちが…本命よ!!」
「ば、バーサーカー!!」
至近距離から放たれた宝石による熱線が、バーサーカーの頭を焼き……抉り……、ついに消滅させた。
頭を失ったバーサーカー。イリヤはそれを見て愕然とした顔をする。
「や、やった!」
「やりましたね、凜!」
二人が喜び、立ったまま事切れているバーサーカーから、凜を救うべく駆け寄ろうとした。
その時だった…。
「…えっ?」
今度は、凜が、そしてセイバーと士郎が愕然とする番だった。
「うそ……。そんな…?」
肉が焼けるような音を立てて、バーサーカーの失われた頭部が再生していく。
途端、イリヤが大声を上げて笑い出した。
「見直したわ、リン! まさか一回だけでも、バーサーカーを倒すなんて…。でも、残念。」
イリヤは、堪えきれない笑みを浮かべたまま衝撃の言葉を放つ。
「バーサーカーはね…。十二回殺さないと、死ねない身体なの。」
「!?」
「そ、そんな!」
「じゅう、にかい…!?」
「そうよ。ギリシャの英雄ヘラクレス。十二もの試練を制し、そのご褒美に不死の権利を与えられた。つまり、バーサーカーは、かつて乗り越えた死の数だけの命を、ストックとして持つ。『十二の試練(ゴッドハンド)』。それが英霊の標(しるし)たる、バーサーカーの宝具よ!」
「そんな…、肉体そのものが宝具だなんて!」
「フフフ! バーサーカーには、あと五つの命が残ってる。あなたのアーチャーと、雁夜って男が削ってくれたおかげで、あの時は残り二個しか無かったけど…、私が魔力を供給して六つまで回復させてたの。あー、危なかった。惜しかったわね、リン。私が二個でも十分って油断したり、さっきの宝石の五倍の量を使っていれば、バーサーカーを倒せたのに。」
「が、は…!」
完全復活したバーサーカーに腹を握りしめられ、凜が息を詰まらせた。
「遠坂!! 離しやがれぇぇぇ!!」
「シロウ!」
士郎が、駆け寄ろうとすると、バーサーカーが斧剣を振るい、士郎を吹っ飛ばし、その際に士郎の腹を傷つけた。
セイバーがその体を受け止めたが、士郎は、露出した肉も気にせず、痛みを忘れたように立ち上がる。
「ダメです! シロウ!!」
その時、倒れている木々を吹っ飛ばしながら、天馬と共に光の塊となったライダーが最高時速でバーサーカーに突撃した。
バーサーカーが、斧剣で防ごうと斧剣を振るうと、凄まじい分厚さを誇る魔力の壁が武器の刃を阻み、上へと弾かれ、バーサーカーの胴体にライダーがぶつかった。
それでもバーサーカーは、踏ん張り、ズルズルっと後方へとどんどん押されるが、凜を離さない。
「ライダー程度じゃ、殺せないわ。」
バーサーカーは、押されながら、何度も何度もライダーの上から斧剣を振り下ろした。その都度、ガンガンっと大きな音を立てて、紫電が舞う。
「チッ…、魔力の障壁が無駄に厄介ね。片手じゃ壊せそうにない。なら…。」
「…う、ぁ…。」
バーサーカーが、凜を離した。凜は、地面に落とされた。
そして両手が自由になったバーサーカーは、両手で斧剣を握り、凄まじい力と振りのスピードでライダーをたたき続けた。
先ほどより舞い散る紫電の量が増し、あちこちを破壊する。
それでも、ライダーは、歯を食いしばり、耐えながら突撃を続ける。
限界が近かった。桜からの魔力供給も限界だった。
バシンッと音を当てて、ライダーと天馬を覆っていた魔力の障壁が消える。そこにバーサーカーが斧剣を振り下ろそうとした。
「ライダーーー!!」
セイバーと士郎が叫ぶ。
ライダーは振り下ろされる斧剣を見つめ、覚悟を決めた。
その時だった。
「捕まえた。」
少年のような少女の声と共に、バーサーカーの太い胴体に、後ろから血まみれの青白い両腕が回された。
「!?」
バーサーカーが、途端に止まる。
「バーサーカー?」
イリヤが訝しんだ。そして、バーサーカーの後ろにいる存在を確認しようとして、見る。
血まみれではあるし、腕から生えた、折れた刃の痕跡がある。その腕には見覚えがあった。
「………………………うそ。」
「…か…、雁夜さん?」
バーサーカーの胴体を掴んでいるのは、バーサーカーに殺されたはずの、雁夜だった。
ライダーがいるので、ちょっと頑張ってもらったけど、狂化したバーサーカーは、一回も殺しきれなかった…っということにしました。
雁夜さん、頭半分潰れてるけど…、ギリで生きてます……。
そして、次回……。