雁夜おじさんのバオー来訪者ネタ Staynight編 作:蜜柑ブタ
死にかけ雁夜も復活します。
序盤、ちょいグロ注意。
「何をしてるの、バーサーカー! そんな死にかけの奴さっさと、振り払いなさい!」
イリヤの言葉でハッと我に返ったのか、バーサーカーが胴体を振った。
「うっ!」
「か、雁夜殿…。」
すると士郎達の方に雁夜の体の状態が見え、その有様に二人とも絶句した。
雁夜の頭は、無残にも半分近く潰れており、血と、青白い髪の毛で隠れているが、おそらく脳が露出しているだろう…。
目に光は無く、バーサーカーに振られてもその腕を放さない様は、まるでゾンビを思わせる。
「…思い出しなさい。間桐。」
その時、再び声が聞こえた。
そちらを見ると、木の陰から、ツツジが現れた。
ツツジは、雁夜を睨むように見ていた。
ツツジは、雁夜を、雁夜ではなく、間桐と呼んでいた。
「思い出しなさい。間桐。あなたの、力を。否…、歴史を。」
「あなたが、操ってるの? ハハ…、死体も同然のくせに…!」
「まさか、ツツジ殿!?」
イリヤの言葉にセイバーが声を上げた。
今の雁夜を動かしているのがツツジだと理解したからだ。
「聞きなさい。間桐。あなたの細胞に、血に問いかけているの。マキリというかつての名を間桐という名に変え、歴史の潰えた今となっても、その細胞が、血が覚えている。否、それはあなたの、本能そのモノであるはず。」
「バーサーカーは、何をしてるの? さっさと…。っ…、な、なに?」
イリヤは、令呪を通じて異変に気づいた。
やがて、バーサーカーに触れている雁夜の腕の部位から、電気のような光がバチバチと鳴りだした。
「これは…、まさか…!」
「間桐。思い出した? その調子だよ。」
「な…ぁ…、そんな…。」
イリヤの体の令呪が浮かび上がり、バチバチと電気のようなモノが弾け始めた。
バーサーカーは、体を振るのを止め、斧剣を杖のように突いて、膝を折りかけた。
「バーサーカーを…、食らってる…!? 私の魔力ごと…。そんなこと…できるはずが…!」
「我が子(バオー)よ。ソレは、お前が手に入れた特権だ。進化するための布石だ。死にたくなければ、使え! 喰らえ!! お前の魔術(吸収)で、喰らいつくし、命としろ!!」
ツツジがそう叫ぶと同時に、雁夜が咆吼した。
バーサーカーが、苦悶の絶叫をあげ、全身から放電のような魔力をほとばしらせてのけぞった。
あまりの魔力のほとばしり、士郎もセイバーも腕で光を防ぐ。ライダーも吹っ飛ばされ、地面を転がった。
「いやあぁぁぁぁ!! ばぁさぁぁぁかぁぁぁ…!!」
イリヤが膝をつき、うつ伏せで倒れ込みながら、バーサーカーに手を伸ばそうとする。
「こ、これは…?」
目を覚ました凜が、この異変を見て目を丸くする。
「……食べてるの。」
「えっ?」
ツツジの言葉に凜がキョトンとした。
「魔術書を解読して知ったんだけど…、間桐の魔術は、吸収。つまり、喰らうこと…、それをして己の力や命に代えることにかけては、他を圧倒する。」
「まさか…。」
「ヒントは…、凜ちゃんが衛宮くんを生き返らせた時の魔術を見て思い付いたの。雁夜は、すでに死んでるも同然に近かったけど、死の淵から蘇るには、相応の膨大な魔力さえあれば……、ましてや命をいくつも持つ相手から直接命を食べちゃえば………。生死の摂理ぐらい、変えるぐらい、わけもないじゃない?」
そうこうしているうちに、雁夜潰れていた半分の頭が元の形を取り戻していった。
やがて、完全に治った時、バーサーカーから手を離す。
するとバーサーカーが、両膝をついて手を地面に突いた。
「うぅ…、…そんな三つ以上も…吸うなんて…。」
『…………………………つ、ツジ?』
「生き返った気分はどう?」
「っっ…、ば、…バーサーカー!!」
「危ない!!」
ツツジの方に振り向いた雁夜に、起き上がったバーサーカーが斧剣を振るった。
イリヤは、鼻血を垂らしながら、無理矢理に体に残っている残りの魔力を絞り出し、バーサーカーに命じた。
「こ、殺しなさい…! グチャグチャの、ズタズタに…!!」
「待って! それ以上したら、あんたの体が!!」
「う…うるさい!!」
凜が止めるよう言ったが、イリヤは聞かなかった。
「イリヤ、やめろ!」
「死ね…死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」
イリヤが叫び続ける。
もはや近場にいるモノだけを破壊する権化となったバーサーカーが咆吼をあげ、近場にいた凜を狙った。
「遠坂ーーーー!!」
次の瞬間、士郎の手に、一振りの剣が握られた。
そして、凜に振り下ろされる斧剣を、防いだ。
「その剣は!」
「士郎…、あんた…。」
「くっ、ダメだ。こんな模造品じゃ…。」
フーッと士郎は息を吸って吐いた。
そして再び魔術を行使する。
それは、ただ…そのためだけに特化した、彼の…魔術。
投影魔術
それは、本来なら非効率的すぎて、誰も手を出そうとはしない分野。
魔力を使い、無から有を創り出すこと。
それは、彼が生まれ持った、一点特化型の魔術回路。
「シローーーーウ!!」
セイバーが駆け出す。
そして、限界を超えた投影魔術により、崩れ落ちそうになる士郎を支え、その手にする剣を握り、セイバーが、その一撃を放った。
勝利すべき黄金の剣(カリバーン)
それは、アーサー王たるアルトリア・ペンドラゴンが、一度は失った剣であった。
模造品とはいえ、本来の使い手を得た剣が、光り輝き、その力を放った。
それは、バーサーカーの巨体を切り裂き、森全体を揺るがすほどの強大な一撃となった。
やがて、光が治まり、消えていく。そして静寂がおとずれた。
「……それが、貴様の剣か、セイバー…。」
狂化により言語を失っていたバーサーカーが喋った。
「これは、カリバーン(勝利すべき黄金の剣)。私が、王となったときに鉄床(かなどこ)より抜き放った、選定の剣。………しかし…。」
「それは、現実ではない。その男が作り出した幻想に過ぎん。」
やがて、士郎が創り出したその剣は粉々に砕け散った。
「所詮はまがい物。二度と存在せぬ剣だ。だが……。」
バーサーカーの姿が薄らぎ始めた。
「その幻想も侮れぬ。よもや…、ただの一撃で、七度滅ぼすとは。」
模造品とはいえ、その力は絶大であり。バーサーカーの命を七回も奪うほどのモノだったようだ。
「バーサーカー…。」
イリヤが、フラリッと立ち上がり、今にも倒れそうな足取りで、バーサーカーに近寄った。
「やられ…ちゃったの?」
震える手を、バーサーカーに伸ばす。しかしバーサーカーに触れることは出来なかった。もはやバーサーカーは、実体を保てなくなっていたのだ。それは、すなわち、サーヴァントとしての死だ。
「イヤだよ…。私、また一人になっちゃうよ…。」
「………少年よ。」
バーサーカーが、士郎を見た。
「この子を………、頼む…。」
そして、バーサーカーは、光の粒となって消えた。
「バーサーカー…。」
バーサーカーが消えると同時に、イリヤの体から力が抜け、倒れた。
「いやだよぉ…。一人にしない、で…。」
「イリヤ…。」
そんなイリヤに、士郎が駆け寄り抱き起こした。
「分かったよ。バーサーカー…。イリヤは必ず俺が…。」
「うぅうぅ……。シロウ…。」
「だいじょうぶだ。俺がいるよ。イリヤ。」
涙を零すイリヤを、士郎がギュッと抱きしめた。
「…そういえば、桜ちゃんは?」
元の姿に戻った雁夜が聞いた。
「桜は…。」
ヨロリッと立ち上がったライダーが言った。
そして、一行は、廃墟の建物に戻り、ベットの上でぼう然と宙を見上げていた桜を迎えに行った。
「桜ちゃん!」
「か、り、や…さん…?」
「桜ちゃん、だいじょうぶか?」
雁夜が駆け寄り、桜を抱きしめた。
泣きはらした桜は、雁夜の存在をしっかりと認識すると、その体に抱きつき、声を上げて泣き出した。
バーサーカーとの戦いは、こうして終わったのだった。
ツツジは、自分がランサーから摂取した魔力とマザー・バオーの力を使い、雁夜の血に流れる間桐の魔術の力(吸収)を引き出させて、もう一段階、強制的に進化させました。
そのおかげで雁夜は、死にかけ状態から、バーサーカーの命のストックっを吸収して、復活。ただ、この荒技。サーヴァントくらいの命を一度にたくさん食わないと使えません。体の損傷が激しいほど、大量の魔力(命)が必要になります。っということで。
バーサーカーの最後は、投影魔術を覚醒させた士郎のエクスカリバーでという、漫画での展開と同じにしました。
2019/01/26
選定の剣を、エクスカリバーと勘違いしていました!
ご指摘ありがとうございます!!