雁夜おじさんのバオー来訪者ネタ Staynight編   作:蜜柑ブタ

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バーサーカーとの決着。


死にかけ雁夜も復活します。

序盤、ちょいグロ注意。


SS19 進化

「何をしてるの、バーサーカー! そんな死にかけの奴さっさと、振り払いなさい!」

 イリヤの言葉でハッと我に返ったのか、バーサーカーが胴体を振った。

「うっ!」

「か、雁夜殿…。」

 すると士郎達の方に雁夜の体の状態が見え、その有様に二人とも絶句した。

 雁夜の頭は、無残にも半分近く潰れており、血と、青白い髪の毛で隠れているが、おそらく脳が露出しているだろう…。

 目に光は無く、バーサーカーに振られてもその腕を放さない様は、まるでゾンビを思わせる。

 

「…思い出しなさい。間桐。」

 

 その時、再び声が聞こえた。

 そちらを見ると、木の陰から、ツツジが現れた。

 ツツジは、雁夜を睨むように見ていた。

 ツツジは、雁夜を、雁夜ではなく、間桐と呼んでいた。

「思い出しなさい。間桐。あなたの、力を。否…、歴史を。」

「あなたが、操ってるの? ハハ…、死体も同然のくせに…!」

「まさか、ツツジ殿!?」

 イリヤの言葉にセイバーが声を上げた。

 今の雁夜を動かしているのがツツジだと理解したからだ。

「聞きなさい。間桐。あなたの細胞に、血に問いかけているの。マキリというかつての名を間桐という名に変え、歴史の潰えた今となっても、その細胞が、血が覚えている。否、それはあなたの、本能そのモノであるはず。」

「バーサーカーは、何をしてるの? さっさと…。っ…、な、なに?」

 イリヤは、令呪を通じて異変に気づいた。

 やがて、バーサーカーに触れている雁夜の腕の部位から、電気のような光がバチバチと鳴りだした。

「これは…、まさか…!」

「間桐。思い出した? その調子だよ。」

「な…ぁ…、そんな…。」

 イリヤの体の令呪が浮かび上がり、バチバチと電気のようなモノが弾け始めた。

 バーサーカーは、体を振るのを止め、斧剣を杖のように突いて、膝を折りかけた。

「バーサーカーを…、食らってる…!? 私の魔力ごと…。そんなこと…できるはずが…!」

「我が子(バオー)よ。ソレは、お前が手に入れた特権だ。進化するための布石だ。死にたくなければ、使え! 喰らえ!! お前の魔術(吸収)で、喰らいつくし、命としろ!!」

 ツツジがそう叫ぶと同時に、雁夜が咆吼した。

 バーサーカーが、苦悶の絶叫をあげ、全身から放電のような魔力をほとばしらせてのけぞった。

 あまりの魔力のほとばしり、士郎もセイバーも腕で光を防ぐ。ライダーも吹っ飛ばされ、地面を転がった。

「いやあぁぁぁぁ!! ばぁさぁぁぁかぁぁぁ…!!」

 イリヤが膝をつき、うつ伏せで倒れ込みながら、バーサーカーに手を伸ばそうとする。

「こ、これは…?」

 目を覚ました凜が、この異変を見て目を丸くする。

「……食べてるの。」

「えっ?」

 ツツジの言葉に凜がキョトンとした。

「魔術書を解読して知ったんだけど…、間桐の魔術は、吸収。つまり、喰らうこと…、それをして己の力や命に代えることにかけては、他を圧倒する。」

「まさか…。」

「ヒントは…、凜ちゃんが衛宮くんを生き返らせた時の魔術を見て思い付いたの。雁夜は、すでに死んでるも同然に近かったけど、死の淵から蘇るには、相応の膨大な魔力さえあれば……、ましてや命をいくつも持つ相手から直接命を食べちゃえば………。生死の摂理ぐらい、変えるぐらい、わけもないじゃない?」

 そうこうしているうちに、雁夜潰れていた半分の頭が元の形を取り戻していった。

 やがて、完全に治った時、バーサーカーから手を離す。

 するとバーサーカーが、両膝をついて手を地面に突いた。

「うぅ…、…そんな三つ以上も…吸うなんて…。」

『…………………………つ、ツジ?』

「生き返った気分はどう?」

「っっ…、ば、…バーサーカー!!」

「危ない!!」

 ツツジの方に振り向いた雁夜に、起き上がったバーサーカーが斧剣を振るった。

 イリヤは、鼻血を垂らしながら、無理矢理に体に残っている残りの魔力を絞り出し、バーサーカーに命じた。

「こ、殺しなさい…! グチャグチャの、ズタズタに…!!」

「待って! それ以上したら、あんたの体が!!」

「う…うるさい!!」

 凜が止めるよう言ったが、イリヤは聞かなかった。

「イリヤ、やめろ!」

「死ね…死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」

 イリヤが叫び続ける。

 もはや近場にいるモノだけを破壊する権化となったバーサーカーが咆吼をあげ、近場にいた凜を狙った。

「遠坂ーーーー!!」

 次の瞬間、士郎の手に、一振りの剣が握られた。

 そして、凜に振り下ろされる斧剣を、防いだ。

「その剣は!」

「士郎…、あんた…。」

「くっ、ダメだ。こんな模造品じゃ…。」

 フーッと士郎は息を吸って吐いた。

 そして再び魔術を行使する。

 それは、ただ…そのためだけに特化した、彼の…魔術。

 

 投影魔術

 

 それは、本来なら非効率的すぎて、誰も手を出そうとはしない分野。

 魔力を使い、無から有を創り出すこと。

 それは、彼が生まれ持った、一点特化型の魔術回路。

「シローーーーウ!!」

 セイバーが駆け出す。

 そして、限界を超えた投影魔術により、崩れ落ちそうになる士郎を支え、その手にする剣を握り、セイバーが、その一撃を放った。

 

 勝利すべき黄金の剣(カリバーン)

 

 それは、アーサー王たるアルトリア・ペンドラゴンが、一度は失った剣であった。

 模造品とはいえ、本来の使い手を得た剣が、光り輝き、その力を放った。

 それは、バーサーカーの巨体を切り裂き、森全体を揺るがすほどの強大な一撃となった。

 やがて、光が治まり、消えていく。そして静寂がおとずれた。

 

「……それが、貴様の剣か、セイバー…。」

 

 狂化により言語を失っていたバーサーカーが喋った。

「これは、カリバーン(勝利すべき黄金の剣)。私が、王となったときに鉄床(かなどこ)より抜き放った、選定の剣。………しかし…。」

「それは、現実ではない。その男が作り出した幻想に過ぎん。」

 やがて、士郎が創り出したその剣は粉々に砕け散った。

「所詮はまがい物。二度と存在せぬ剣だ。だが……。」

 バーサーカーの姿が薄らぎ始めた。

「その幻想も侮れぬ。よもや…、ただの一撃で、七度滅ぼすとは。」

 模造品とはいえ、その力は絶大であり。バーサーカーの命を七回も奪うほどのモノだったようだ。

「バーサーカー…。」

 イリヤが、フラリッと立ち上がり、今にも倒れそうな足取りで、バーサーカーに近寄った。

「やられ…ちゃったの?」

 震える手を、バーサーカーに伸ばす。しかしバーサーカーに触れることは出来なかった。もはやバーサーカーは、実体を保てなくなっていたのだ。それは、すなわち、サーヴァントとしての死だ。

「イヤだよ…。私、また一人になっちゃうよ…。」

「………少年よ。」

 バーサーカーが、士郎を見た。

「この子を………、頼む…。」

 そして、バーサーカーは、光の粒となって消えた。

「バーサーカー…。」

 バーサーカーが消えると同時に、イリヤの体から力が抜け、倒れた。

「いやだよぉ…。一人にしない、で…。」

「イリヤ…。」

 そんなイリヤに、士郎が駆け寄り抱き起こした。

「分かったよ。バーサーカー…。イリヤは必ず俺が…。」

「うぅうぅ……。シロウ…。」

「だいじょうぶだ。俺がいるよ。イリヤ。」

 涙を零すイリヤを、士郎がギュッと抱きしめた。

「…そういえば、桜ちゃんは?」

 元の姿に戻った雁夜が聞いた。

「桜は…。」

 ヨロリッと立ち上がったライダーが言った。

 そして、一行は、廃墟の建物に戻り、ベットの上でぼう然と宙を見上げていた桜を迎えに行った。

「桜ちゃん!」

「か、り、や…さん…?」

「桜ちゃん、だいじょうぶか?」

 雁夜が駆け寄り、桜を抱きしめた。

 泣きはらした桜は、雁夜の存在をしっかりと認識すると、その体に抱きつき、声を上げて泣き出した。

 

 

 バーサーカーとの戦いは、こうして終わったのだった。




ツツジは、自分がランサーから摂取した魔力とマザー・バオーの力を使い、雁夜の血に流れる間桐の魔術の力(吸収)を引き出させて、もう一段階、強制的に進化させました。
そのおかげで雁夜は、死にかけ状態から、バーサーカーの命のストックっを吸収して、復活。ただ、この荒技。サーヴァントくらいの命を一度にたくさん食わないと使えません。体の損傷が激しいほど、大量の魔力(命)が必要になります。っということで。

バーサーカーの最後は、投影魔術を覚醒させた士郎のエクスカリバーでという、漫画での展開と同じにしました。


2019/01/26
 選定の剣を、エクスカリバーと勘違いしていました!
 ご指摘ありがとうございます!!
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