雁夜おじさんのバオー来訪者ネタ Staynight編 作:蜜柑ブタ
書ける内に書く!
序盤、ライダー→ツツジ表現有り。注意。
柳洞寺。
そこは、かつて、キャスターと共にあった葛木が居候していた場所でもあった。
行き場のない流れ者である葛木を受け入れ、葛木は、その居場所で教員という資格を使い、つかの間の平穏を生きていたのだ。
しかし、今や、その柳洞寺も見る影も無く、無残な境内と、人っ子一人いない不気味な山の形だけを残していた。
「桜…。貴女は、無理にこの戦いに参加しなくてもよいのですよ?」
「ううん。私も見届けたい。この戦いを…。それに、貴女のマスターなんだからね、ライダー。」
「…はい。」
桜の言葉に、ライダーは、微笑んだ。
「うわ…。この匂いは…。」
雁夜が顔を歪めた。
まるで、山全体が生き物のように感じれた。
おそらく、五つの英霊の魂を受け止めた聖杯が胎動しているのだろう。
「セイバー。もう一度確認しておきます。」
「分かっています。」
「念のためです。…もしギルガメッシュと言峰綺礼を討ったならば、私が自害しましょう。そして、降臨した聖杯を、貴女が…。」
それは、事前の打ち合わせ。
ギルガメッシュと綺礼。二人を倒し終えたら、聖杯を破壊するために、ライダーが自分で死ぬのだ。
「貴女の宝具ならば、確実です。そのことをお忘れなく。」
「分かっています。…すみません。ライダー。あなたにそのような酷なことをさせてしまうなんて…。」
「いいのですよ。私はもとより、英霊に倒されるべき魂なのです。英霊として喚ばれたのが不思議なくらいですから。」
謝るセイバーに、ライダーはそう言って手を振った。
「でも、そうですね…。心残りがあるとしたら……、ツツジと一晩熱い夜を…。」
「ぶれないわね、ライダー。」
「ツツジ殿は、そのことを?」
「ええ。知ってますよ。ですが、断られてしまって…。」
「それは、残念ですね…。」
「ところで、そちらは、士郎とは?」
「それは…。」
聞かれてセイバーは、ポッと頬を染めた。
士郎はそっぷを向いて、ゲホンゴホンっと咳払いしていた。その耳は真っ赤だった。
「おーい。そろそろ、空気がマジでヤバいから、早く行こう。」
こんな状況だというのに暢気なメンツに若干呆れながらも、雁夜はそう言った。
そして一行は、長い石階段を登っていった。
***
境内の敷地の真ん中に、ギルガメッシュが立っていた。
境内の空間が、奇妙に歪んで見える。
「見ろ。セイバー。」
ギルガメッシュが空を見上げた。
「聖杯も重い腰を上げ、孔を開いたところだ。分かるか? 孔からあふれ出る黒い闇が…。」
「っ…。」
雁夜はイヤでも匂いで感じ取った。この匂いは間違いなく、あの時冬木の大災害を招いた黒い泥だと。
「この呪いこそが、聖杯の中身。」
ギルガメッシュがセイバーを見る。
「救いと引き換えに、呪い、最悪の形で願いを成就させる聖杯の本質よ。」
「…ギルガメッシュ。その聖杯の呪いを使って、貴様は何を望む?」
セイバーが聞いた。
「望み? そうさな…。我が望むことなど何もない。だが…、今の我の関心はお前だけだ。」
ギルガメッシュの背後から無数の武器が現れた。
「ああ…、ようやくこのときが来た。今までずっと考えていたぞ、セイバー。嫌がるお前をどう組み伏せ、アレを飲ませるか。泣き噎(むせ)ぶ顔を踏みつけ、その腹が身籠もるほどの泥を飲ませ、狂い死ぬに耐えきれず、我の足下にすがりつく、その穢れきった姿をな!」
「…悪趣味な奴だな。」
「どうとでも言え、ゲテモノ。貴様には用はない。行くならばさっさと失せろ。言峰は、この先の祭壇にいる。」
「…いいのか?」
「貴様もだ、小娘。雑魚のライダー共々行け。」
「いいえ。行かないわ。」
「はい。桜。」
「ふん! セイバーに貴様ごときが加勢したところで結果は同じよ。」
桜が後ろに控え、ライダーは二つの短剣を構えた。
セイバーも剣を構える。
「桜ちゃん!」
「行ってください、雁夜さん!」
「セイバー、行ってくる。」
「はい、シロウ。」
雁夜と士郎が、言峰の元へ走った。
二人がいなくなった後、少しの静寂……。
「先にそこなライダーと小娘を潰せば、我と二人きりだな。」
「そうはさせません。」
「簡単に殺せると思わないでください。」
ライダーは、魔眼の封じを外した。
「ふん、魔眼か。三流の手だな。」
「ですが、効果が無いわけではないでしょう? 揺らいでいますよ、貴方の背後の武器が。」
「…ふん。」
実際、ギルガメッシュの背後に浮いていた武器のが僅かに揺れていた。まるで支えを失いかけているように。
ギルガメッシュは、余裕の笑みを崩していないが、まったく効果が無いわけではないようだ。
次の瞬間、シュンッと闇から帯状の影が現れ、ギルガメッシュの背後にあった武器を絡め取りひと束にした。
「むっ…。」
「私の存在も忘れないように。」
桜が両手を構えていた。
奪い取った武器が桜の傍にガランガランと落ちた。
「小娘…、その汚い影で我の宝を…。」
次の瞬間、一本の武器が凄まじいスピードで射出され、桜に向かって飛んでいった。
それをライダーが短剣で弾いた。
「気が変わった。小娘、貴様の腸を切り裂き、ぶちまけ、そこの門にでも飾ってやろう。そうすれば、さぞやあのゲテモノも怒り狂うだろうて。まあ…、生きていれば話だがな。」
「雁夜さんは、負けない!」
「それはどうかな?」
「?」
「いかに最強などと謳う生物といえど、しょせんは生物。この世全ての悪(アンリマユ)に、耐えられるか?」
「えっ?」
「桜!」
次々に投擲されてくる武器を、ライダーが次々に防ぐ。
「桜、気をしっかり!」
「あ、ああ…。雁夜さん…、雁夜さん……!」
桜の直感が警報を発していた。
ライダーは、ギルガメッシュと、桜を交互に見て…。
「桜…。行ってください。」
「えっ…?」
「心配なのでしょう? 雁夜を助けられるのは、きっと、あなただけですから。行ってください。」
「で、でも…。」
「私はだいじょうぶです。さあ、早く!」
「行かせると思っているのか?」
「させん!」
「チッ!」
セイバーの攻め込みに、ギルガメッシュは、背後に出現させた剣を掴んで迎え撃った。
その隙に桜が走って行った。
桜の嫌な予感は、次回。
もう超特急で終わらせていきますよ。