雁夜おじさんのバオー来訪者ネタ Staynight編   作:蜜柑ブタ

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前半は、アンリマユに捕まって、zero原作での悲惨な末路を体験する雁夜。
それを救うのは……。


ごり押しですが、申し訳ない……。


SS24 未来

 

 

「………………………ここ、は…。うぐっ!」

 

 目を覚ました雁夜は、左半身を蝕む激痛に呻き、そのまま倒れた。

「あ…。」

「目を覚ましたか?」

「ぞ…。」

 声がした方を見ると、そこにいたのは、臓現だった。

 二度と見ることも聞くことも無かった忌まわしい存在が、目の前にいる。

 そのことに雁夜は驚愕した。

「ほれ、さっさと聖杯を取ってこんか。でなければ、桜を解放しはせんぞ?」

 しわくちゃの顔を歪めて笑う。その顔と声が、本物であることを雁夜は認識した。

 

 なぜ?

 

 っと思いつつ、左足を引きずりながら、立ち上がり、外へ出る…。

「なっ!」

 そして鏡を見て驚いた。

 その顔は、左半分がただれ、左目は白く濁り、髪の毛は真っ白になっていた。

 その姿は、蟲蔵に身を落としたあとの有様だった。

「どうして…?」

 自分はたしか、そうだ…、バーサーカーは?

 バーサーカーの姿を確認しようとすると。

「ゲホッ!」

 腸からせり上がる激痛と喉から吐き出された血に、雁夜は、膝をついた。

「い…、行かなきゃ…。桜ちゃんを…。桜ちゃん?」

 確か自分は桜を救ったはずだ。

 なのになぜ……、桜が死んだような目でこちらを見ているのだ。しかも、幼い頃の桜が。

 

 すると場面が急に変わった。

 まるでジェットコースターにでも乗ったような浮遊感と共に落下する感覚を感じて、顔を上げた。

 

「君が家督を拒んだことで、間桐の魔術は桜の手に渡った。」

 

「ときお…。」

「…………それでも、私は君という男が許せない。血の責任から逃げた軟弱さ、そのことに何の負い目を懐かぬ卑劣さ。間桐雁夜は、魔道の恥だ。」

「なっ…。」

 次の瞬間、自分を見下す時臣が放った炎が全身を包んだ。

 

 どうして? どうして? どうして!?

 自分は桜を救ったはずだ。臓現を殺したはずだ。時臣にも報復したはずだ。

 なのになぜ、こんなことになっている?

 

 そして、場面がまた変わった。

 炎に焼かれる痛みが消えた。

 

「貴方なんて、誰かを好きなったことなんてないくせに!」

「あ…。」

 気がつくと雁夜は、葵の首を絞めていた。

「あ、ああ…、あああああああああああああ!!」

 どうして俺は、後悔している?

 葵にはもう未練は無いはずだ。

 なのに、この胸を抉る、虚無感と痛みはなんだ?

 

『これは、お前が辿るはずだった道だ。』

 

 どこからか、声が聞こえた。

 

 

「馬鹿な人…。」

 

 桜ちゃん?

 

「お爺さまに逆らうから…。」

 

 待ってくれ…、行っちゃいけない!

 

「分かりました。お爺さま…。」

 

 行っちゃダメだぁぁぁぁぁ!!

 

 なのに雁夜の手は桜には届かず、蟲の海に飲み込まれた。

 

 

『これは、おまえが辿るはずだった末路。』

 

『これは、お前が、あの寄生虫の女王たる娘に出会わなかった本来の道筋だ。』

 

『お前は何も救えなかった。何も得られなかった。奪っただけだ。』

 

 

 嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!

 俺は、確かにツツジと出会って、救ったんだ!

 それが偽りだったっていうのか!?

 じゃあ、俺は……俺は…。

 

 

 

「雁夜さん!」

 

 うぅう…。ああ、甘い夢を見せるな…。

 こんなことなら、最後まで悪夢で終わらせろよ。

 

「雁夜さん…。」

 

 俺は何も救えなかった。

 ツツジと出会ったからこそだったんだ…。

 バオーさえなくてもなんて、少しでも考えたことはあった…。

 でもすべて間違いだった…。

 俺一人じゃなにも……。

 

「雁夜さん…。見て。」

 

 聞きたくない…。成長した桜ちゃんの声なんて聞きたくない。

 

「私を見て。現実を見て!」

 

 ………………………桜ちゃん?

 

「そうだよ。私だよ。桜だよ。」

 

 桜ちゃん? 本当に桜ちゃんなのか?

 ああ、きっとまた甘い夢だ……。

 

「雁夜さん…。確かに貴方は、何も出来なかったかもしれない。でも、それは、別のお話。目の前の現実を見て。私は、ここにいるよ? 貴方が助けてくれた、私(桜)は、ここにいる!!」

 

 あぁ………………………、温かい…。

 

「私を……………………、見て!!」

 

 ああ、桜ちゃん!!

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「投影魔術…。貴様…いったい…?」

 雁夜は、その声でハッと目を覚ました。

 そしてすべてを思いだす。

 自分と士郎は、言峰のもとへたどり着いた。

 そこでは、イリヤが空いた孔に磔にされており、解放しようとしたら、綺礼が現れた。

 背後に、聖なる池を邪悪な泥に染めたモノがあり、そこから、おびただしい数の触手のような泥が蠢き、自分達を捕えんと動き出した。

 自分はすぐにバオー・武装現象を発動させ、回避していった。

 だが……。

 

 『おっと、言い忘れていた。コレは、とりわけ生き物に敏感でね。』

 

 っと綺礼が言った時、地面に染みこんだ泥に足をとらわれ、捕まった。

 そして、泥を…、いや、聖杯そのモノを汚染する、元凶たる、『この世全ての悪(アンリマユ)』により、あり得たかもしれない世界に引きずり込まれたのだ。

 自分を抱きしめてくれているぬくもりは桜だった。

 そして、周囲の泥を消し去る聖なる輝きの元は…、士郎が手にしているエクスカリバーの鞘。それは、“全て遠き理想郷(アヴァロン)”。この世界における最強の守りだった。

 それは、あらゆる事柄を遮断する。例え…、それが、空間を切り裂くような一撃であろうとも、全ての悪意そのものであろうとも。

『バオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 自分達を包囲していた闇が飛散したと同時に、雁夜が咆吼し、腕の刃をふるって、その瞬間、腕の刃を切り離して投げた。

 綺礼は、それを腕でガードしようとして腕ごと切られ、そのまま胸に刃が刺さった。

「……………………ふっ。」

 しかし、綺礼は倒れず、それどころか、口元を歪めて笑った。

「残念だったな。この身体は…、もはや、この程度では死んでくれんのだ!」

「ああああああああああああああ!!」

「!!」

 駆け込んできた士郎が拳を振りかぶる。

 綺礼が、残る腕でそれを迎え撃とうとした直後、その腕に無数の針が刺さり、着火した。

「ぐぅ!?」

 バオーの髪の毛針の自然発火により腕が燃える。

 その瞬間、士郎が振りかぶった拳にありったけの魔力を込めて、綺礼の胸に刺さっている雁夜の腕から切り離された刃の折れた断面に拳を叩き込んだ。

 バチンッと魔力のほとばしりが、綺礼の身体に走った。

「……私も、衰えたものだな…。」

 そう言い残し、どこか満足げな顔で、綺礼は、ゆっくりと仰向けに倒れていった。

 そして、綺礼が倒れたと同時に、孔に磔にされていたイリヤがゆっくりと降りてきたので、士郎がその身体を受け止めた。

 上を見ると、小さくもないが大きくもない黒い泥が渦巻く孔が残っていた。

 これこそが聖杯。この世全ての悪に侵された汚染された聖杯。

 

 すると、そこへ。

 

「シロウ!」

 セイバーが駆けつけてきた。

 ライダーは…いなかった。

「セイバー…。ライダーは?」

「先輩。」

 すると桜が、右手の甲を見せた。そこには令呪が無かった。

 それが示すことはただ一つだ。

「そうか…。」

「シロウ。最後の令呪を。」

「セイバー…。」

「アレ(聖杯)は、マスターの命がなければ破壊できません。令呪を使ってください。」

「………分かった。」

 セイバーが剣を構える。

 その間に、桜と雁夜は、二人の後ろに移動した。

 そして…。

「セイバー…、聖杯を破壊してくれ。」

「…はい!」

 令呪が輝き、セイバーが剣を振るった。

 孔が両断され、一瞬、悲鳴のような声が聞こえたような気がしたが、孔は切り裂かれたことで形を保てなくなり、やがて…飛散し、消えた。

 不気味に赤く染まっていた空が、元の夜の闇と取り戻し、そして…朝が明けた。

「っ…。」

 士郎は、自分の手の令呪が完全に消えたのを確認した。

「これで……。」

「ああ、すべて終わったんだ…。」

「では、私達の契約はここで終わりです。」

 セイバーが士郎の方に振り向いた。

「貴方の剣となり、敵を討ち、御身を守る…。その約束が果たせてよかった…。」

「セイバー…、本当に、よくやってくれたよ。」

「…最後にひとつだけ、伝えさせてください。」

「俺からもだ。」

「シロウ…、私は貴方を…。」

「俺は、セイバーを…。」

 

 

 愛している

 

 

 二人の声が重なり、そして、セイバーは、笑顔と共に、夜明けの光に溶けるように消えた。

 

 

 

「先輩…。」

「だいじょうぶだ。桜ちゃん。」

 元の姿に戻った雁夜が桜の頭を撫でながら言った。

「でも…。」

「衛宮くんは、そんな弱くはないさ。」

 そう言って、雁夜は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 こうして、第五次聖杯戦争は、終結した。

 

 

 




次回で、最終回かな。

凛が雁夜とツツジを殺そうとしていた件は、次回でまとめて解決させるかも。
元々、なし崩れで、雁夜との仲を認めざる終えなかったという展開にする予定だったので、ご指摘があるまで、全然考えてませんでした。
申し訳ない……。
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