雁夜おじさんのバオー来訪者ネタ Staynight編   作:蜜柑ブタ

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前半は、雁夜と士郎の会話。


後半は、雁夜とツツジの対決? けど、雁夜が負けてます……。


SS5 正義

 

 

 雁夜は、困っていた。

 なんとなしに散歩をしていたら、桜の先輩である士郎と遭遇した。そこまではいい。だが問題はその後。

「あの…、すみません。」

 っと声をかけられた。

「はい?」

「…雁夜さん…ですよね?」

「ああ、そうだけど?」

「俺、衛宮士郎っていいます。間桐桜って子にいつもお世話になっています。」

「ああ。」

 そういえば桜が料理の上手い先輩がいると言っていた。恐らく彼だろうと思った。

「ちょっと…、お話があります。今お時間いいですか?」

「構わないけど?」

「じゃあ、そこの公園で…。」

 そして近くの寂れた誰もいない公園に来た。

「それで? 話って?」

「……覚えてます?」

「なにが?」

「昨日…、変身しましたよね?」

「っ…。」

 そういえば、あの場に士郎はいた。

「…それが?」

「ツツジさんからおおよそのことは聞いてます。あれって、バオーっていうんですよね?」

「…ああ。」

「バーサーカーの攻撃を片手で受け止めるし、あのデカい体を放り投げるし、手を切り落とすし、終いには電撃まで放つなんて…、尋常じゃないです。」

「ああ、そうだな…。」

「俺…、正義の味方を目指してるんです。」

「はあ…。」

 それはまた、ずいぶんと漠然とした…というか現実味のないというかそういう目標だ。

「だから、守るための力が欲しいって…、思ってます。」

「…まさか…。」

「前々からツツジさんに、人間をやめてみないかって言われてて、変な虫を見せられてました。それで…。」

「それだけは、やめるんだ。」

「俺なりに考えましたよ。」

 士郎の言葉を遮るように止める言葉を吐いた雁夜だったが、士郎は続けた。

 その顔は真剣だ。

「俺…、魔術師としては全然です。だからセイバーや遠坂の足ばっか引っ張って…、しまいにゃ間桐まで…。俺、力が欲しいんです!」

「だからって…、人間をやめていいわけがない!」

「じゃあ、あなたはどうして?」

「俺は…、望んでこうなったんじゃない!」

「えっ?」

 雁夜は、キョトンッとする士郎に、過去に何があったのか語った。

 間桐に養子入りした桜を遠坂に戻すためだけに過去の聖杯戦争に挑むため、寿命を捨てて無理矢理に即席の魔術師になったこと。

 だが結局最初の戦いで力尽きそうになり、そこに現れたツツジによって承諾もなく寄生虫バオーを与えられて、命と力を手に入れたことを。

「そうだったんですか…。」

「だから、君までこっち側に来ることはない。君には君の理想があるかもしれないが、この力はそんな生やさしいものじゃないんだ。」

 そう言って雁夜は、座っているベンチの背もたれに手を触れた。

 その瞬間、ジュッと背もたれの一部がドロドロに溶けた。

 それを見て士郎はギョッとした。

「これは、化け物の力だ……。こんなもの…、未来のある若者の君が持つべきじゃない。いいか、絶対にツツジの言葉に乗るな。」

「…ツツジさんって、何者なんですか?」

「アイツは……、人間じゃない。」

「味方じゃないんですか?」

「…いや、味方だ。戦友と言っていい。アイツに一緒に住まないかった誘ったのは、俺だからな。」

 雁夜は、秘密機関ドレスを潰した後、行くところがないと寂しそうな顔をしていたツツジの顔を思い出した。

「どうしてアイツが君をバオーにしたいのかは、俺には分からない。もう十年以上の付き合いになるが、何を考えているのか分からないところが多いからな…。だけど、アイツの言葉に乗ってバオーを受け入れるのはダメだ。化け物になったら、もう取り返しがつかない。」

 重ねてバオーになることを止める雁夜の言葉に、士郎は少し黙り、少しして、分かりました…っと答えた。

 しかし、おそらくはまだ諦めてはいないだろうと、雁夜は感じた。

 目先のことにとらわれてリスクを考えないというのは、自分の体験でよく分かっているつもりだ。まあ、もっとも…バオーについては、自分の意思ではないので、その範疇ではないが。

 士郎の周りの者が、士郎が人間をやめることを止めてくれることを切に願った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 士郎との会話を終え、別れた後、雁夜は間桐邸に帰った。

「おかえりー。」

 ツツジは、茶の間で掃除をしていた。

「ツツジ。」

「なに?」

「…衛宮くんを誘うのはやめろよ。」

「……それはできない約束だね。」

 ツツジは、そう言って笑った。

「これ以上…、あの子に手を出そうとするなら……。」

「無理だよ。」

 雁夜の言葉を遮って、ツツジが言った。

「あなたじゃ…、私(マザー・バオー)に勝てない。」

「!? …ぐっ…。」

 声を低めたツツジの言葉と同時に、雁夜の頭が割れるように痛くなった。

「その気になれば、あなたの頭の中のバオーを外に飛び出させることもできる。そんなことになったら、死ぬよ?」

「おまえ…!」

 頭を押さえながら雁夜がツツジを下から睨んだ。

「……できたら…、こんなことさせないで。」

「おまえが、あの子を誘うのをやめればいいだけ…だろ!」

「じゃあ、衛宮くんが望んだら?」

「…なっ…。」

「知ってるよ。彼と話してたでしょ? そういう兆候があるなら、私はそれに応える。」

「やめろ、つってんだろうが…!」

「正義の味方か~。まるで特撮ヒーローものみたいなことになるかもね。」

「現実が、そんな上手くいくわけないだろうが!」

「それを決めるのは、雁夜じゃないよ。」

「てめ…ぇ…!」

 

「やめて!」

 

 その時、ツツジの影から帯のような影が出現し、ツツジを絡み取った。

 茶の間のふすまが開き、桜が入って来た。

「ツツジさん…、いくらあなたでも、雁夜さんに危害を加えるなら、許さないわ。」

「……ごめんごめん。やり過ぎたよ。」

 そう言ってツツジは、雁夜に向けていた力を抑えた。

 その瞬間、雁夜の頭痛が消えた。

 雁夜は、ハアハア…っと必死に呼吸した。そんな雁夜に桜が駆け寄る。

「私は、もしかしたら、衛宮くんに、いつか殺されるかもね…。だって、人じゃないんだもの。」

「ツツジ…。」

「正義の味方なら、私は、許されない存在だから。根本的に相容れないと思う。」

 ツツジは、そう言って微笑んだ。




士郎なら、おそらくバオーを受け入れかねない。そんな兆候。
実際に手に入る力を目の当たりにすればなおのことだと思う。

ツツジが持つマザー・バオーは、バイオ4で言うところの、プラーガの支配種に似た力があります。ただツツジ的には力そのものに興味はなく、その気になればバオーの軍勢を作れるにもかかわらず興味がないのでやっていません。
別に今回のことで雁夜と敵対するわけじゃないです。10年も一緒にいるんだから、少しは仲違いが起こっても不思議じゃないし。
ツツジは、自分自身が人間に淘汰される側だというのを自覚しています。正義を掲げる者にとってはなおのこと許されない存在だと……。
ツツジが何を思い、士郎に関わろうとしているのかは、筆者もちょっと分かんなくなっています…。(書いてるくせに)
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