ガールズアンドパンツァー×仮面ライダーエグゼイド   作:ジョルノ利家

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第2話 戦車乗ります!/悲しみの先にあるROAD!
2-1


2018年4月 聖都大学附属病院 電脳救命センター(CR)

 

小児科医が衛生省に提出した報告書を読み、俺は小さくため息を漏らす。

『仮面ライダークロニクル』発売をきっかけに始まったゲーム病の被害も一段落したとはいえ、今も病に苦しむ患者がいることは分かっているし、それに対処する為に衛生省がワクチン開発に力を注いでいることも知っている。しかし…。

「新型、か…」

ここに来てゲムデウスウイルスに適応した新たなバグスターの出現。

小児科医はバグスターウイルスの進化に因るものではなく、人為的に造られた物であると考察しているが、その場合、俺にはそんな事をする人間の心当たりは一人しかいない。

「檀黎斗」

「私の名前は檀黎斗“神”だ!」

「お前の呼び名などどうでもいい」

部屋に備え付けられている一台のゲーム機、ドレミファビートの筐体のモニターの中で何らかの書類を作成している檀黎斗に話しかける。

「…それで、何か用かな、鏡先生。世間話に付き合う暇は無いが」

「…何をしている」

「なに、戦車道連盟にゲーム開発を提案しようと思ってね」

「…そうか。そんなことよりお前に聞きたいことがある」

「…何かな?」

「小児科医がゲムデウスウイルスに感染したバグスターと戦ったのは知っているか?」

「あぁ、その報告書の内容なら私も衛生省に呼び出されて取り調べを受けたからよく知っているとも」

「では、お前が仕組んだ事ではないと?」

「勿論」

「…ならこの件についてのお前の考えを聞かせろ」

「そもそもゲムデウスは『仮面ライダークロニクル』のラスボスだ。自然に発生するような存在ではない。にも関わらずその患者はゲムデウスに感染したバグスターに感染している。おそらく、人の手が加えられているというのは間違いないだろう。が、問題はその犯人が誰かと言うこと。これまでにゲムデウスウイルスと何らかの関わりがある人物が容疑者となるが、ゲムデウスウイルスをドクターマイティXX開発時にワクチンプログラムによって消滅させており、衛生省に行動を監視されていて、ほとんど動けない状態にある私はまず除外される」

「だが、パンデミックを引き起こした二体のゲムデウス、檀正宗とジョニー・マキシマも、両方共切除され消滅している。他に容疑者となる人物がいるのか?」

「いいや」

「なら、新たなゲムデウスが誕生したとでも言うつもりか」

「いや。その可能性も考えたが、いかにゲムデウスウイルスと言えど他者に感染するには、バグヴァイザーを使わないと不可能。しかし、既存のバグヴァイザーは全て衛生省に管理され、新たに製造するにしても、幻夢コーポレーションの施設でなければ製造出来ない。よって今回の件での第三のゲムデウスの存在はあり得ないと考えている」

「なら一体誰が…」

「簡単に考えてみればいい。ゲムデウスウイルスを保持し、バグヴァイザーを所有する、いや、所有し得る人物と言えば?」

「…っ! まさか…」

「分かったかな?…私の考えでは今回の黒幕は檀正宗だ」

「…だが、そんなことがあり得るのか?」

「君もヤツの周到さとしつこさはよく知っているだろう。ならば、ヤツがバックアップの一つも取っていないとは考えにくい」

「そのバックアップが存在しているとして、なぜ関係無い人間にそんなことを?」

「ヤツはハイパームテキの攻略に力を注いでいた。なら、その患者を餌に永夢を誘き寄せ、罠に掛けようとしたか…」

「それならヤツの方から通報してくるはずだ。それに、患者が感染したのは約半年前。…もしかして、そこに何か理由があるのか?」

「……培養だ…」

「何?」

「私や永夢がポッピーやパラドを体内で培養した様に、ヤツが力を蓄える為にその患者を利用したとすれば…!」

「遠く離れた場所の人間を狙ったのは自分の存在を隠すため、患者が女子高生なのは思春期の精神的な不安定さによるストレスの増大を利用してウイルスを増殖させて自分の力にするため、か」

「どうかな?私の推理は」

「…確かに筋は通っているか」

「だろう!これを機に、君も私を崇めると良い!」

「あくまでお前の推理を真に受けた場合だがな。答えは衛生省が調査を進めていけば分かることだ」

「なっ!君から聞いてきたんだろう!」

俺は檀黎斗の文句を無視し、再び報告書に目を落とす。

檀黎斗が今言った事は全て想像だ。だが、ヤツは檀正宗の息子、親の考えを読めても不思議ではないか…。鵜呑みにする訳にはいかないが、それが事実である可能性も捨てきれない以上、対策は立てておくべきだろう。

俺は衛生省に向かう為、CRを後にする。俺が部屋を出て行くまで檀黎斗は画面の中で喚き続けていた。

 


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