ガールズアンドパンツァー×仮面ライダーエグゼイド 作:ジョルノ利家
今日の私は、もしかしたら今までの人生の中でも一番不幸なのかもしれない。
私のこれまでの人生とは即ち、日中幾度も襲い来る睡魔との戦いの日々であり、その戦いは安眠を得ることでしか決着をつけることが出来ない。
しかしながらその安眠を得るという行為が、私が学生生活を送る上では大きな問題になる。
例えば教室内で眠るとして、それが授業中の場合、教師の話し声程度ならば授業内容も相まって私にとっては子守唄同然で良い睡眠導入剤になってくれるのだが、いざ寝ようとすると高い確率で教師に見つかり声をかけられて結局起こされてしまうし、休み時間になればそれはそれで教室内に響く女子特有の賑やかな話し声が煩わしいので眠るのは難しい。
なら保健室を利用すれば良いのでは?と考えるのは当然なのだが、それはすでに実行済み。
中等部のある日のこと。幸か不幸かそれまで私は保健室を利用するようなケガや病気などしたことが無かったのだが、その日はあまりの眠気に耐えかね仮病を使い、初めて保健室のベッドを利用させてもらった。当然のように私は一瞬で眠りに落ちた。
それからも養護教諭に怪しまれない程度に間隔を空けながら何度も保健室を利用し続けた。静かで余計な邪魔が入ることも無く、まさに理想的な環境だったのだが、流石にやり過ぎたせいか次第に怪しまれるようになり、だんだん利用しづらくなってしまった。
そんな状況で今の私がこの大洗女子内で安眠を得ようとするなら、保健室以外で他に一切の邪魔が入らないような静かな場所が必要であり、私はそんな場所を見つけるべく、眠気と戦いながら頑張って頑張って頑張りながら、校内を探し回ることにした。
しかし、その道のりはあまりにも過酷だった。大洗女子は他の学園艦の学校と比べて、規模が小さい部類に入るが、それでも学園中を歩いて回るにはかなりの時間がかかる。その過酷さに途中で何度も心が折れながら、それでもなんとか探し続けた。そして探し始めてから約一年が過ぎたある日、ついに私は理想郷を見つけ出した。
そこは周囲を木々に囲まれた小さな草原。時おり吹き抜ける風が非常に心地よく、木陰もあるので日射しだってなんのその。
近くには何やら車の通路らしき空間もあるようだが、こんな場所を走る車など今まで私は見たことが無いし、心当たりも無い。つまり、そんなものはこの学園内には存在していないのと同じであり、であるならば私が気にする必要だってないはずだ。
そうと決まれば、草原に寝転んでさっさと眠る準備に入る。そのまま眠っても良かったが日射しが少し眩しかったので、本を顔の上に乗せてガードしておく。
草原のベッド、鳥達の囀ずり、吹き抜けていく風。何とも言えない気持ちよさに包まれながら、心穏やかに、ただ静かに瞼を閉じて、夢の世界へと旅立って行く。
……はずだったのに、どうしてこうなった!?
さっきまで目の前に広がっていた木々や草原のベッドは見馴れない通信機器と鉄臭い椅子になり、あの鳥の囀ずりも今や絶え間なく響き続ける爆発音へと変わってしまった。
……はぁ…なんなんだ、一体…。
こちらに近づいてくる大きな音と「危ない!」という声を聞いてそちらを見てみれば、私の目に飛び込んで来たのは戦車とそれに乗る女子二人。よくよく見ればその二人は私の幼なじみの沙織と今朝色々と迷惑をかけてしまった西住さんであり、二人の言うままにこの鉄の塊に乗り込んでしまったのがいけなかったのか?
まったく、こんなんじゃ眠るどころか逆に目が冴えてしまうじゃないか。…ん?それはそれで良いのか?
ふと今座っている座席の周りを見回すと、「初心者向け戦車操縦マニュアル」なる物があった。
ちょうど良い。特にやることも無いし、この騒ぎが収まるまでの暇潰しがてら、読んでみるとするか。
そのマニュアルには操縦席にはどんな物があるかやエンジンの掛け方の手順などといった基本的な事柄から砲撃する前にはしっかり停止するといった技術的なアドバイスについて、更には信地旋回なる物の上手なやり方などが書かれていた。
…なんか、戦車の操縦って面倒そうだな。私だったらやりたくないなぁ。
そんなことを思いながらマニュアルを読み終えたその時、事件は起きた。何とこの戦車の操縦者が気絶したらしい。
幸いケガは無いようだが、それでも車内はパニックだ。沙織ともう一人の天然パーマの子は気絶した子の心配をしており、残る西住さんもなにやら思い詰めたような顔をしている。
「ねえ、みほ、こういう時ってどうするの?」
「誰かが華さんの代わりに操縦しないと…」
「操縦って言ったって、私何にも分かんないよ?」
「私も恥ずかしながら…」
天然パーマの子については知らないが、沙織は戦車の操縦とか絶対無理だろうな。乗れば男にモテるぞ、とでも言えば嬉々として乗り回しそうだが。
「操縦は苦手だけど、私がやるしか…」
「でもみほが運転したら砲弾積むの誰がやるの?」
「それは武部殿が…」
「うぇっ、私!?いや、ムリムリ、そんなの絶対ムリだって!」
三人寄れば文殊の知恵、とは言うが、流石に戦車までは動かせんか。そもそもさっきまで四人で動かしていた物をいきなり三人でどうにかしようというのが無理じゃないのか?
「…なら私が操縦しようか?」
「ふぇっ?」
ん?今誰が何と言った?私が戦車を操縦する?と言うか、なんでそんなこと言ったんだ私!?もしかして、思い詰めた表情の西住さんを見かねてつい口走ってしまったのか?
「えっ!麻子、戦車動かせるの?」
「それはやってみないことには分からん。が、このマニュアルに書いてある通りにやれば良いんだろう?なら、大丈夫なはずだ」
「そう?だったら運転は麻子に任せる!みほもゆかりんも、それで良いよね?」
「私は異論ありませんが…」
「私も大丈夫。けど冷泉さん、もしダメそうならちゃんと言ってくださいね」
「ああ」
…なんだかあまり私らしくない気もするが、まぁ言ってしまったものは仕方ない。どのみち西住さんには恩返ししなければいけなかった訳だし、少しぐらいは頑張ってみるか。