ガールズアンドパンツァー×仮面ライダーエグゼイド 作:ジョルノ利家
内容についての変更はありません。
説明会が終わって教室へ戻る途中、沙織さんが戦車道をやると言い出しました。
私が理由をたずねると、
「いやー、なんか戦車道やったら良い女になれるとか色々言ってたじゃない?それってつまりさ、戦車道やったら男子にモテるようになるってことでしょ?」と。
たしかに戦車道は日々の訓練や試合を通じて礼儀作法を学び、立派な婦女子を育成する武道だし、それが男の人にモテることに繋がると言うのもあながち間違ってはいないのかなぁ?
「ねぇ、みほがやってた時はどうだった?男子にモテた?」
「私がやってた時はそんなこと一度も無かったけど」
「えー?じゃあ他の人は?一緒にやってたっていうみほのお姉さんとか」
「お姉ちゃんも戦車道一筋だったから。でも、隊員のみんなからは凄く慕われてたよ」
「隊員のみんなってそれ全員女の子じゃん!そうじゃなくってさぁ…。そりゃあまぁ、あの映像に出てた人たちとかは私から見ても格好良かったし、同性から好かれるのもなんとなくわかるけどさ」
「確かにわたくしもあの方たちは礼儀や作法がしっかりしていて、どなたも素晴らしい女性なのだろうと思います。まぁ戦車道を始めたからといって男性にモテるようになるかは別としても、沙織さんにはもう一つ戦車道を始めたい理由があるでしょう?」
「えっ、ウソ、もしかして華見てたの?」
「偶然にも、ですが」
「え?なにを?」
「説明会の最後に壇上に戦車道のスタッフの方がいらしていたでしょう?沙織さんはその方目当てで戦車道を始めようとなさっているんですよ」
「ええっ?そんな動機で戦車道を?」
「だって、学園艦で生活してると出逢いのチャンスって限られてくるじゃない?周りには男子なんて一人もいないし。いや、女子校だからそれは当たり前なんだけど」
「あら?沙織さん大洗に戻ったらいろんな方に声を掛けられているじゃありませんか。それが出逢いのチャンスなのでは?」
「あれは商店街のオジサン達だから!チャンスじゃないから!…とにかく、あの人と一緒だったらキツイ練習とかでも楽しく出来ると思うんだよねー」
「…実はわたくしも戦車の砲撃の力強さと学食無料には多少心動かされましたけれど。ですが沙織さん、何か肝心なことをお忘れでは?」
「へ?」
「みほさんのお気持ちです。元々はみほさんが選択授業で戦車道をやるかどうかだったでしょう」
「そうでした。ごめん、みほ!私一人で舞い上がっちゃってたみたい」
「ううん、私は大丈夫だから」
「それで、みほさんの今のお気持ちはいかがですか?」
「……二人には悪いけど、やっぱりやりたくない……かな……」
「そっかぁ…」
「……」
私の発言で沙織さんも華さんも黙ってしまう。
「あ、でも二人が戦車道やりたいんだったら、私は全然構わないから……」
だから二人には、本当にしたいことを選んでほしい。そう言ってくれた二人の気持ちが、私には本当に嬉しかったから。
「…わかった。私、戦車道やらない!」
「わたくしも戦車道はやりません」
「ええっ、なんで!?だって二人とも戦車道やりたいんじゃ…」
「でも私たちが戦車道やってたら、多分みほは嫌な思いしちゃうじゃん。友達に嫌な思いさせるとか私そんなのヤダもん」
「わたくしも沙織さんと同じ気持ちです」
「沙織さん…、華さん…」
「…おそらく生徒会は無理矢理にでもみほさんに戦車道をやらせようとしてくるでしょうけれど、その時はわたくしたちも一緒に戦いますから」
「だからみほは心配しないで。きっとなんとかなるから!」
「…二人とも、ありがとう」
「いいっていいって。それよりさ、選択授業どうする?みほは何かやりたいのあった?」
「あ、じゃあ、そうだなぁ……」
さっき知り合ったばかりの私を友達と言ってくれる。それだけでなく、私の気持ちを第一に考えてくれている。そのことがとても嬉しかった。
特に何か根拠があるわけじゃない。けれど二人が私の味方ていてくれるなら、これからの学園生活はきっと上手くいく、そう思えた。
翌日、私は生徒会に呼び出され運動場の端にある大きな倉庫まで来ていた。沙織さんと華さんも一緒についてきてくれている。
そこで私を待っていたのは広報の人と生徒会長さんの二人。
「我々が用があるのは西住だけだ。お前達は呼んでいないぞ」
「みほが心配だからついてきたんです」
「お話も全てみほさんから伺っています」
「しかし、お前達は部外者だ。関係無いやつが口を挟むんじゃない」
「関係無いってなに!?友達が言うこときかなきゃ退学させられるかもしれないんだよ!?そんなの放って置けるわけない!」
「そちらから一方的に言われるばかりでは不公平です。少なくとも、みほさんとはちゃんと話し合われるのが当然だと思いますが」
「……そうだな。五十鈴ちゃんの言うとおりだ」
「会長!?」
つかつかと倉庫の中へ入っていく会長さん。少し歩いてから立ち止まり、こちらへ振り返って私に問いかける。
「ねえ、西住ちゃん。これが何か分かる?」
会長さんの隣にあったのは一輌の戦車。錆がひどく履帯も外れていてパッと見ただけでは使い物にならないように思えるけれど、転輪や装甲には目立った問題はなさそうだから少し手を加えてあげれば大丈夫そう、そこまで考えて私は我に帰る。
「Ⅳ号戦車…ですよね…」
「へぇ、種類まで分かるなんて流石だね」
「あっ、うぅ…」
「…昨日の説明会でも言ってた、うちで新しく戦車道を始めるって話。あれって実は正確な表現じゃないんだよね。正しく言うなら復活って感じかな」
「復活、ですか…?」
「ああ。…実を言うとうちの財政状況って結構ヤバくてね。なんとかしなくちゃいけないんだけど、他所の学園艦みたいに観光資源になりそうなものがあるわけじゃない。どうしようか悩んでいた時に、文科省からうちにも戦車道を始めるよう通達がきたんだ。正直、そんなことしている余裕はあまり無いんだけど新たに始める学校にはいくらか資金援助するってあったからそれならば、ってね」
「大洗女子では25年ほど前まで戦車道が行われていた記録が残っている。他にも、まだいくつか戦車があることも判明している。もしそれらがそのまま使えるなら、支援金を他にまわすことも出来るだろう?」
「…みほに戦車の鑑定でもさせようって言うんですか?」
「それもだけど、西住ちゃんに戦車道をしてもらいたい一番の理由は西住ちゃんなら結果を出せると考えたからだ。なんたって全国大会優勝常連校で副隊長を任せられていた実力者だからね」
「私はそんな……」
「もし結果を出せれば、大洗女子戦車道復活に湧く地元の人たちから資金援助を受けられる可能性が出てくるかもしれない。それに活躍が話題になれば外から人が来てくれるようになるかもしれない。とにかく、結果を出して大洗女子を盛り上げたいんだよ、私は」
「会長の仰りたいことはよく分かりました。ですがそれならなぜあんな物言いをしたのですか?正直に頼めばこんなことにはならなかったはずです」
「一般生徒にお金がピンチだから手伝って~、なんて普通情けなくて言えないよ。それで、今の話を聞いて西住ちゃんはどう思った?」
会長さんは本当のことを話してまで私の力を必要としてくれている。このまま私が手を差し伸べなかったらきっと大洗女子は……。
「私は…」
その時、頭の中で黒森峰にいた時の記憶がフラッシュバックする。全国大会優勝に向けての日々は、周囲の期待に応えるためにすごく大変でとても辛いものだった。その上結果は出して当たり前で誉められることも無い。練習試合であっても一度の敗北も許されず、勝っても反省ばかりしていた。
「私、は……」
今の話を聞いて記憶の中の風景が黒森峰から大洗女子に変わっていく。きっとここでもそうなんだ。結果だけを求められて、私がしたかった戦車道がなんだったのかさえ見失っていく。用済みと判断されれば簡単に切り捨てられて居場所を奪われてしまうんだ。
そんな悪い妄想ばかりが頭の中で膨らんでしまう。
その時、痛みが全身に走り思わずその場にうずくまってしまう。
「っ!西住ちゃん!?」
「みほ!どうしたの!?」
「みほさん!」
「う、うぅ…」
頭が痛い。
力が入らない。胸が苦しい。
指を少し動かすだけで全身が痛む。
薄れていく意識の中で見えた私の指先は、徐々に消えていくように見えた。