エイギル艦隊 彼の海にて、斯く戦えり   作:凡人作者

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対水上戦闘 中編

船体中央部に設置してある筒型ランチャーからエグゾセMM40が炎を背負って放たれた。

ブリッジウイングの見張員と機銃射手はその鮮やかな軌道を必死になって見守った。

一見鮮やかに見えるオレンジの糸だか、その先端を進むのは165kgの高性能爆薬を備え付けてある凶悪な死の弓である。

頼む当たってくれ、彼奴を海の底へと送ってくれと言う祈りに近い期待がその弓には

エグゾセはハーン最強の武器であり、それ故に乗組員は撃沈とは言わなくても戦闘不能程度のダメージを与えてほしいと言う期待が掛けられていた。

 

 

ミサイル員《着弾まで10秒、8、7、6、…………。》

 

 

敵重巡洋艦との着弾が秒読みに入り、CICに緊張が張り積める。

この世界での初めての対艦戦闘であり、ハーンのミサイルは有効なダメージを与えうるか注目された。

勿論、この艦その物とも言えるハーンも、自分の武器が効くのかどうかを見届けようとしていた。

祖国が拵えてくれた自慢の武器であり、この矢で数々の戦果を上げたのだ。これで相手がピンピンしていたら心が折れてしまうだろう。

何処かでディスクに水滴が落ちる音が聞こえた、音源はダスティンである。

彼は普段とても落ち着き払って行動するタイプの人間であるが、実は緊張に弱い達の人物であるのだ。

 

 

ミサイル員《……………5、4、3、インパクト!!》

 

 

ミサイルを示すマーカーが、重巡洋艦と重なった。

しかし敵のマーカーにLOSTの四文字が付く事は無かった。

戦闘不能となった可能性は一応有る、何しろ165kgの弾頭がマッハ0.9で突入すれば相当な破壊力となる筈だ。

エルジアのトゥールーズに本社を置く、エグゾセの産みの親である兵器製造会社だって、その威力を謳い文句に他国へ輸出していたのだ。

もしこれで戦闘不能になっていなかったら、真っ先に会社へ抗議の電話を入れてやろうとハーンは決意した。まぁ物理的に電話入れられないのではあるが。

 

 

ミサイル員《続いてトラックナンバー2214、撃ち方始め!》

 

 

無駄な決意をしているハーンやその心境を無視して、戦闘は継続される。

目標がどうなっていようと、出せるカードは限られているのだ。次に目標となったのは被害にあった重巡の隣を航行してある、同型艦と思われる艦艇である。

大型艦である為に危険度が高く設定されている為に、直ぐ獲物にされるのは不幸でしかないだろう。

 

 

ジョルジュ《恨むなら、他の艦より大きいその図体にしてくれよ。》

 

ハーン《もし此処にタナガーかジオフォンが居ればボコボコにされてたわねアンタ。》

 

 

思わずかつて共に戦った仲間の事を思いだし、彼女の例を用いてジョルジュをハーンは軽く非難する。

少しでも練度を維持しようとなけなしの燃料を使って、タナガー達は演習へ向かったが湾外へ抜けた時にISAF空軍の毒牙に掛かり、タナガーは大型戦艦であった為最大脅威目標と認定されたが為に真っ先に群がられて沈められたのだ。

ハーンはジョルジュの呟きを聞き、自身が沈む少し前に無線でタナガーの無線士が、最後の力を振り絞って救援を求める声を思い出した。

 

 

ジョルジュ《(今は死んだ彼等の事を思い出す暇は無いと言うのは酷か……………。)すまんな、気を悪くしてさせてしまって。》

 

リュミドラ《まぁまぁ、ハーンちゃんもそこまでカッカしないの。艦長は多分悪気が有って言った訳じゃないし。》

 

マルセル《リラックス、リラックス。少し緊張し過ぎだぞハーン。》

 

 

リュミドラとマルセルがジョルジュのフォローに回り、ハーンの軽い苛立ちを収めようとする。

リュミドラにちゃん付けされた事に少し違和感があるハーンで有ったが、彼女に指摘されたように確かに気が立っている事を自覚し、ふんっと鼻を鳴らして不機嫌そうにスクリーンへ目を移す。

相変わらず前方二隻の重巡にLOSTの文字は付かなかった。

 

 

──────────

 

 

ネ級A《前方ニ艦影視認、情報ドウリダ、敵艦!!》

 

ヘ級flagship《戦果ヲ上ゲルマタトナイチャンスダ、行クゾ!!》

 

 

ハーン達を追いかけて出撃した深海艦隊は、ソロモン海より遠方であるニューカレドニアより遥々出撃してきた部隊であった。

元々ニューカレドニア等によって構成されてあるロイヤルティ諸島はフランスの海外領土であり、フランス風なエイギル共和国とは何処か因縁めいた物を感じる巡り合わせである。

この諸島は深海側のオーストラリア攻略作戦の拠点の一つであり、アメリカからの救援艦隊が何度も奪還しようと攻勢を掛けていたのが、その都度弾き返されてしまい手をこまねいてる状況にあった。

 

 

ツ級《敵艦ハタッタ一隻ダ。》

 

ネ級《拍子抜ケダ、損害ヲ出スナヨ。》

 

 

深海凄艦達はとてもつまらない事で出撃させられたと思った。

へまをした魚雷艇部隊の尻拭いの為に出撃させられ、上げられる戦果は死にかけの巡洋艦と、一隻だけしか居ない頭でっかちなだけの駆逐艦である、恐らく昇級とかは望めないであろう。

 

 

ヘ級《(クソッタレガ、何デ私ガ馬鹿供ノ尻拭イヲサセラレル?!数々ノ戦イデ活躍シタコノ私ヲ。私ハ便利屋デバナイゾ。)》

 

同僚よりも一際戦果を上げ、最も位の高いflagshipへと昇格したヘ級は表には出さないが心の中では不満だらけであった。

他にも自分が出来る事はあるだろうに、このような雑魚狩りで無くとも、大型艦艇を撃沈するだの主力空母部隊に随伴するだの。

他にも貧乏くじを引かされた者と言えば、この海域に急行しつつある味方艦隊が居たなと思い出す。

付近を航行していたが為に、疲労が溜まってる中急行要請が下され、おまけに我々と合流して敵本拠地のショートランドへ向け艦砲射撃を行えと命令されたのだから、今頃残業が増えたと嘆いている所だろう。

 

 

ヘ級見張り員1《敵艦船体中央部ヨリ爆発炎!!、何事ダ?》

 

ヘ級見張り員2《事故デ燃料ニデモ延焼シタカ?》

 

 

部下である妖精達が、敵艦の異常事態についてひそひそと話合っている。

目の前で可笑しな行動をされたら、流石に自分でも驚くだろうが報告位はするべきだろうと思い、ヘ級は二人に対して小話を諌める事とした。

 

 

ヘ級《報告内容ハ明確ニ通達セヨ。》

 

へ級見張り員《モ、申シ訳アリマセン……………。》

 

 

目をつけられた見張り員は恐縮し、気を取り直して敵艦について報告を行った。

彼等の報告を受け取り、へ級はどう立ち回るかを熟考し始めた時、何処からかキーンと言う耳を突くような音が近付いてきたのだ。

何事だと問い質そうと見張り員を見やった時、窓の外で左舷前方を進んでいたネ級に何か黒い物が飛んでくるのが見え、そしてネ級から火の手が上がった。

 

 

ヘ級見張り員2《ナ、ナンダ?!何ガ起コッタンダ?!》

 

へ級見張り員1《ホ、砲弾?!砲撃ヲ受ケタノカ?!》

 

へ級見張り員《ネ級ガ爆発シタ!!艦首……、イヤ艦橋………燃エテルゾ!!》

 

 

唐突な攻撃により、へ級の乗組員は浮き足立ちパニックが引き起こった。

唯一へ級は冷静に頭を巡らしていた、一体いつ頃に敵は攻撃を開始したのだ?砲撃音等は聞こえなかった。まさか先程の中央部からの爆炎がそうなのか?

しかしまだ敵とは17km近く距離がある。重巡なら未だしも中型艦艇では此処で有効射を当てるのは難しい筈だ、しかも初弾命中とはあり得ない。

そんなのはマジックでしかない、砲撃と言うのは何発も撃って行って命中させる筈だ。

奴等の練度はここまで上がったと言う事なのか?それともまぐれか……………。

 

 

へ級見張り員1《敵艦から更に爆発炎!!》

 

へ級《っ?!、全艦右40°転進面舵一杯、敵に砲撃データを取らせるな!!》

 

 

更なる攻撃の報告を受け、へ級は直ぐ様回避運動へと移った。

歴戦の勘から反射的に動ける等、その練度の高さが伺えれるが、その砲弾らしき物は幾ら避けようと特殊な装備を施してなければ避ける事も叶わない。

 

 

へ級見張り員1《何ダ?!何カガ右舷前方ノネ級へ近付イテ来ルゾ?!》

 

へ級見張り員2《当タルナ!躱ワセエェェェ!!》

 

 

しかしネ級乗組員の祈りは叶わず、ネ級の船体中央部から火災が発生した。

またもや一撃で直撃!!先程の攻撃は決してまぐれでは無かったのである。

 

 

ネ級2応急班1《煙突基部ニ被弾!!火災発生!!》

 

ネ級2応急班2《何ダ?!何カガ飛ンデ来タゾ!!砲弾ジャネェ、モット大キイ奴ダ!!》

 

ネ級2応急班長《落チ着ケ、被害ハ火災ダケニ留マッテイル。早急ニ鎮火スルンダ!!》

 

 

ネ級2からは敵の攻撃を受けた事により、皮肉ではあるが。よく確認できた。

砲弾よりかは遥かに低速の為によく視認できたのだ。

飛行機程では無いが、砲弾よりかは明らかに大型であり。

数まではよく解らなかったが、翼が中央部に幾つか付いているのも見えた。

ネ級eliteの乗組員だけあって、此処まで認識出来るのは流石ではある。

そしてネ級eliteはある決断に辿り着いた。

 

 

ネ級2《マサカ、アレハ過去ノ資料デ軽ク出テイタ『ミサイル』ッテヤツジャナイノカ……………?》

 

 

ネ級は過去の資料を読んだりするのが趣味であり、そこでは過去深海棲艦達が人類側の航空機や艦船が誘導式の兵器にて攻撃してきたのが確認された。

但し深海側にはミサイルは通用しなかった、と言うよりも人類側の兵器全てが無効化されて傷一つ付かなかったのだ。

 

 

ネ級2《ダ、ダガ『ミサイル』ハ我々ニハ通用シナカッタハズ………………。》

 

 

そしてネ級は艦橋から自分の身体でもある煙突基部を見下ろした。濃い煙によって全容はよく解らないが、比較的大きな被弾痕が確認することができた。

幸いにして甲板装甲は破られては居ないが、煙突基部が破壊されたが為に排煙効果は低下するだろう。

被害はどちらかと言えば想定の範囲内だ、もしかすると艦娘側はロケット弾による攻撃を行い、それが偶々一発当たっただけなのでは無いかとネ級は考えた。

(深海側もタイニー・ティム等を所持している。まったく使用されないし、生産もしてないが。)

 

 

ネ級2機関長《コチラ機関室、1番ボイラー室ヨリ通信、オーバーヒートノ危険アリ、出力ヲ落トシテ欲シイト。》

 

ネ級2《無線士、旗艦ヘ通信ヲ繋ゲ。ワレ機関ニ被害アリ、戦闘航行ニ支障アリトナ。》

 

ネ級2無線士《ハッ!!》

 

 

ネ級は取り敢えず今の状況位は伝えておこうと思い、ヘ級へと通信を繋いだ。

但しロケット弾については通信を控えた、生半可な知識が彼女に誤った判断をさせたのだ。

被弾による穴は結構大きく、修理に一時間は掛かるであろうが、そこまで甚大な被害ではない。

修理が終わり次第直ぐ様戦列に復帰できるであろう。

 

 

ヘ級《ネ級ヘ返信、一時戦列ヲ離レヨ。修理終ワリ次第直グ様スルヨウニ。》

 

ヘ級無線士《了解、直グ様返信シマス。》

 

 

ネ級の一時離脱はまぁ仕方ないであろう、ロケット弾(仮)の攻撃に対してそれだけの被害に留める事ができている。初戦にしては上々であろう。

もう一隻のネ級は2番主砲塔バーベットに直撃したらしく、砲塔旋回不能となり、何より艦橋側面が大破してしまい醜い様相となっている。

左舷一番5inch高角砲は後部が酷く抉れてしまい、恐らく中にいた砲術士達の生存は望めないだろう。

耐久性のある重巡洋艦だからこそ、この程度の被害で済んでいるのだが、駆逐艦等の小型艦艇ならば重大な損害を被っている事は容易に想像できた。

 

 

ヘ級《ダガ此処マデダ、先程ハ随分驚カセテクレタガ今度ハ上手ク行カセンゾ。》

 

 

だがヘ級はまだ負けた訳ではないと笑みを浮かべる。もう既に敵艦はネ級の有効射程に入っているのだ。

このまま砲力の差を活かして圧殺して、海底に引き摺り込んでやればいい。

そしてさっさと任務を終わらせてしまおう、そう考えていた時、敵艦が転進したとの報告が入った。

反転して反航戦に持ち込み、離脱するつもりか?

いや、離脱すると今度は撤退しつつある手負いの味方を見捨てる事となる。

魚雷戦を仕掛けるにしても反航戦では命中させるのは至難の技である。一体何がしたいんだ。

 

 

ヘ級見張り員2《ネ級、砲撃ヲ開始シマシタ。着弾マデ………………。》

 

 

見張り員より重巡が射撃を開始したとの報告が入った。

これであの忌々しい艦とはおさらばだ、さっさと味方と合流して………………。

 

 

ヘ級見張り員3《テ、敵艦ヨリ爆発炎視認!!ネ級ノ砲撃デハアリマセン!!》

 

 

その時見張り員から絶叫に近い叫び声が上がった。

またあのロケット弾だ、今度は誰が目標なのだ。

あの耳を突く甲高い音が近付いてくる、その音がどんどん近付いてくる。艦橋には敵弾に対する恐怖が蔓延した。

 

そしてへ級から爆発音が鳴り響き、艦橋の窓ガラスは衝撃波により粉々に粉砕され、艦橋要員がバランスを崩して倒れるのであった。

 

 

───────────

 

 

ネ級二隻からの爆発はハーンからもよく視認できた。

艦橋ウイングに据え付けてある双眼鏡からは、敵艦の応急班が大慌てでダメージコントロールに移っているのがよく見える。

敵艦の船体と同じく何故か全身真っ黒であるが、炎の明かりと月の光に照らされて要るためによく確認できる。

何故ゆえに全身真っ黒なのであろうか、夜戦ならともかく昼戦なら目立って仕方ないように思えるのだが。

 

 

レスター《180°反転、面舵一杯。左舷スクリューピッチ反転。》

 

操舵手《180°反転、面舵一杯!!》

 

 

航海長と操舵手の威勢の良い声が後ろから響く、このまま反転して再度エグゾセによる攻撃をかけるのだろう。

避ける手段も無く、なすすべも無い敵艦隊に対して一瞬同情したが、同情した所で見逃してくれたり逃げてくれる訳でもないので、つまらない事だと見張り員は頭の中から馬鹿げた考えを捨てた。

改めて双眼鏡を覗いた時、二隻の敵重巡洋艦から爆発炎を視認できた。

ミサイルの誘爆とかではない、あの爆炎の出方は………。

 

 

見張り員《て、敵艦発砲!!敵重巡が発砲!!》

 

 

考えるよりも早く、見張り員は敵の攻撃を告げた。

それを確認したレスターは、即座に回避命令を下し、操舵手は勢いよく舵輪を回した。グルグルと回転する音が波を切る音に紛れて聞こえる。

そして、ハーンの周りから激しい水柱と飛沫音が木霊した。

 




意見、御感想をお待ちしております。
小さな意見や質問、誤字修正等も大歓迎です。

エグゾセ対艦ミサイルとは。
フランスのアエロスパシアル社(現MBDA社)によって開発された対艦ミサイル。
中距離までは母艦(もしくは航空機)によって誘導され、終末行程ではミサイル本体のレーダーによって誘導される。
英仏独のみならず、中東、南米、アジア方面などの多数の国に渡って使用された。
性能は本小説に使用されたMM40であると。
直径34.8cm
全長580cm
全幅113.5cm
本体重量855kg
弾頭重量 高性能炸薬165kg
速度マッハ0.9(315m/s)
射程70km
エースコンバットの世界(ストレンジリアル)では、エルジア共和国で開発されたミサイルで、ユージア同盟加盟国にも輸出され、ベルカやオーシア、ユークトバニアにも数千発位輸出された。
直径こそ34.8cmも有るが、イギリス海軍がww1で使用した34.3cm砲弾は635kg(炸薬15kg)で、初速マッハ2.5(862m/s)であり。
敵側が使用したMK.12 55口径20.3cm砲となると152kg(炸薬2.3kg)、初速マッハ2.3(760m/s)であり、ハーン側は苦戦を強いられるであろう。
なお大和型戦艦の91式46cm砲弾は1460kg(炸薬33.85kg)、初速マッハ2.3(780m/s)もある。
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