エイギル艦隊 彼の海にて、斯く戦えり   作:凡人作者

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長続きしまくりなので、差し支え無い程度に早く戦闘を終わらせなければと思いました。

これは見にくいだとか、エルジア海軍強いだろwみたいな感想でも構いません。感想大歓迎っすよ。


対水上戦闘 後編

ハーンが深海凄艦と交戦する一時間前

 

 

チチチと特徴的な起動音が鳴り、そしてモニターが切り替わる音がブリーフィングルームに響く。

スクリーンにはエルジア共和国の国章である、橙色で彩られたバックに、白色で七つの星を中心に置いた十角形が写し出された。

 

 

空母航空団司令官「集まったかね?」

 

 

がたいが良い中年の航空団司令である、フレデリック・ベトフォート大佐がその聞きやすく大きな声で集まったパイロット達に呼び掛ける。

単に呼び掛けるだけの意味ではなく、集まって早々に隣の者と会話を初め出した彼等を黙らせる意味も持っている。

 

 

フレデリック「落ち着いてくれ。」

 

 

但しパイロット達は彼の意を汲み取る事ができず、そのまま会話を続けた。

恐らくこの騒乱で彼の大きな声が後列まで伝わらず、そして後列が益々煩くなり比例して前列も騒がしくなっているのだ。

 

 

フレデリック「静かにしてくれ!!」

 

 

埒が明かなくなった為、とうとう彼は拡声器を使用して静かにさせると言う強行手段に打って出た。

やっと気付いたパイロット達は急いで会話を止め、スクリーンへ注視すた。

 

 

フレデリック「諸君らは栄えあるエルジア海軍エイギル艦隊の一員として、四日前まで祖国の安泰の為に戦ってくれた。」

 

イエロー飛行隊隊長「四日前、ね。」

 

 

四日前と言う言葉を反芻するかのように呟いたのは、イエロー飛行隊隊長ダニエル・クローデル中佐である。

第一空母航空団、第118戦闘攻撃飛行隊、又の名をグルース(鶴)中隊と呼ばれる。

空母航空団内の飛行隊を白黄緑赤青黒と色付けする習慣を適用すれば黄色中隊となってしまうのだ。

 

そう、なってしまうのだ。よりによってあの黄色中隊との名を専売特許にしているエース飛行隊として名高い、アクィラ(鷲)中隊と被ってしまうのである。

一応擁護するが、彼等の技量は誇ってもよい。

無敵艦隊のエイギル艦隊に配属されるだけあって、選りすぐりのパイロットが集められているのだ。

エルジア海軍内で黄色中隊と言えばグルース中隊と言われる位にはエースである。

 

 

フレデリック「今は感傷に浸っている間ではない、状況は緊迫している。」

 

ダニエル「(じゃあ何でわざわざ言ったんだよ。)」

 

 

ダニエルの心中の文句を無視し、スクリーンは新しい画面に切り替わる。

そこにはここ数日での調査で、ある程度把握できた海域の地形と、数こそ少ないが一応艦隊の体を成しているエイギル艦隊のアイコン、その250km先に友軍を示すアイコンとアンノウンを示すアイコンが表示されてあった。

 

 

フレデリック「早朝から警戒飛行をさせていたVAW-125(第125早期警戒飛行隊)より通信があった。我が艦隊500km先に友軍艦艇のIFF反応が確認されたらしい。」

 

パイロット達「おぉ!!」

 

 

パイロット達からどわっと歓声が上がった、なにしろ四日間探索して漸く見付かった海の上の家族である。

このまま誰とも会わずに、孤独な航海を味わうのではないかと重い雰囲気が流れていたのだ。

朗報によりまたブリーフィングルームが騒がしくなりかけた所を、フレデリックは先を読んで黙らせる。

 

 

フレデリック「静かにしたまえ、さっきも言ったが状況は緊迫している。先程友軍艦艇よりSOSが発信された、恐らくこのアンノウンより攻撃を受けているのであろう。」

 

 

そしてアンノウンを示すアイコンが赤色に変化し、エネミーと文字が切り替わった。

戦力差は1対6、ここまで接近しているのを見て、友軍艦は機関に損傷が有ると見受けられた。

実際は先程まで損傷艦と一緒に行動しており、友軍艦はその艦の囮となるために突入していたからなのであるが、エイギル艦隊には解りようも無い。

 

 

 

実の所この友軍艦艇はハーンである。

エイギル艦隊は艦上早期警戒機E-2によって比較的早くハーンを確認する事ができた。

しかしIFF反応こそ確認する事は出来たが、ハーンだと断定する事が不可能となっていたのだ。

この異世界に当然エルジア共和国の通信衛星が有る訳でもなく、今必死に通信衛星のプロトコルを解析している最中であった。

 

 

フレデリック「我々の任務はただ一つ、今危機に立たされている同胞を助ける事に他ならない。

彼等は今助けを求めている、届くかも解らないSOSを発信して心細い戦いを強いられているのだ。

これを助けずして誰がやる?各員今こそファイターパイロットの意地を見せろ!!解散!!」

 

 

フレデリックの号令一つで各パイロット達が一斉に立ち上がり、持ち場へと向かう。

無敵艦隊の空の勇者達に相応しい規律の高さである、凛と顔を整え自分達が居るべき所へと駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

キャノピー越しにエレベーターの駆動音が浸透し、そして少しずつ視界に作業車のヘッドライトの光が差し込んでくる。

別の飛行隊は既に発艦体制を整え、白い煙を吹きながら射出されるのが視界の端で写った。自分もこれから同じ体験をするのだろうと思い、少し早めに体を強張らせる。

 

 

航空管制官《こちら空母ジオフォン航空管制センター、第118戦闘飛行隊聞こえるか?》

 

イエロー11《こちらイエロー11感度良好、問題ない。》

 

 

先に発艦準備を進めていたイエロー11が通信に答えた。艦首側を見れば、飛行甲板の両脇に備え付けられたライトがイエロー11のF/A-18Cを照らし、足元のカタパルトが燻るように白い煙を吐いているのが見える。

 

余談だが、第118戦闘攻撃飛行隊はノーズコーンが黄色く彩られ、垂直尾翼全部がまっ黄色と言うハデハデな塗装が施されている。

アクィラ中隊のSu-37は翼端と、垂直尾翼の上端にだけ黄色に塗装されているのと対照的である。

 

 

航空管制官《コールサイン「イエロー1」、イエロー11に続いて発艦せよ。発艦後はAEW(早期警戒機)「ファルコン・アイ」の指示に従え。》

 

ダニエル《イエロー1、了解。》

 

 

カタパルトへ向かう途中、管制から発艦後の行動について軽く指示を受ける。

目の前の計器を弄りながら、軽く受け答えをして何時でも発艦できる体勢を整えてゆく。

 

 

航空管制官《風向180度、風速18ノット、発艦に支障なし。管制よりイエロー11へ、発艦を許可する。》

 

 

発艦を許可されたイエロー11は、爆音と共にアフターバーナーを全開まで吹かせて発艦していった。コンダイノズルから紫色のジェット噴流がよく見える。

 

 

航空管制官《管制よりイエロー1へ、発艦を許可する。》

 

 

そしてダニエルの体と機体に加速Gがかかり、飛行甲板の先端に差し掛かった時、ふわりと機体が浮き上がるのを感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルセル《CICより艦橋へ、CICより艦橋へ!!応答せよ、応答せよ!!》

 

レスター《こ、こちら艦橋。CICへ、艦橋に異常なし。軽傷者数名。》

 

 

レスターは何処かに頭を打ったのか、少しぼんやりとする頭を振って意識をはっきりさせた。

そしてCICからのコールが響く艦内電話へ応答し、現状を把握するのに努めた。

 

 

見張り員1《何だ?!何が起こった!!艦首が煙で包まれているぞ?!》

 

見張り員2《何と言う事だ、艦首に被弾したんだ。今すぐにでももげるんじゃないか?》

 

レスター《落ち着け、そんな心配はダメコン班に任せてろ、さっさと見張りに集中しろ!!》

 

 

混乱する乗組員に激を入れつつ、レスターは冷静になろうとした。たった一発の20cm砲弾でこれ程の被害が出るとは、想定の範囲外だった。如何に現代艦艇が被弾に弱いかがよく分かる。そんなことを艦橋前面の窓の外を覆い尽くす黒煙を見ながらレスターは自虐的に思ったのだった。

 

 

ジョルジュ《うわっ?!ハーンの服がいきなりボロボロになったぞ?!一体どうなってやがるんだ?!》

 

ハーン《み、見るなぁ、見るなぁぁぁ!!》

 

リュミドラ《は、早くこれ着なさい!恥ずかしいでしょう?!》

 

 

CICはCICで新たな問題が出たんだなと、艦内電話から漏れる喧騒に呑気に考えてしまうレスターだった。

実はCICではハーンが中破の判定になったのか、唐突に来ている服が焼け焦げたり破れたりしてあられもない姿になってしまっていたのだ。

戦闘に集中していたと言うのに、こんな漫画みたいな出来事が起こった為か戦闘そっちのけで大騒ぎとなった。

あるCIC要員は大慌てでジャン中尉を呼び出し、ハーンの姿を見たジャンはただ困惑するのだった。

 

ガン!ガン!ガン!ガン!

 

有効射程では無かった為にじっとしていた130mm砲が射撃を開始した。リズムよく放たれる130mm砲弾は確実にネ級の艦橋を捉えており、構造物や測距儀、機銃に至る全ての装備を破壊せんとしていた。

艦橋要員に被害が出るような攻撃だ、深海艦隊には今頃混乱が広がっているだろう。

 

 

見張り員《見張りより艦橋へ、レーダーに捉えているか?!駆逐艦が砲撃戦の隙間を掻い潜って突撃してくるぞ!!》

 

レーダー員《CICより艦橋へ、確実に捉えている。砲術長が目標を変えた。》

 

 

130mm砲は新たな獲物を屠らんと砲口を駆逐艦へ向けて、さらに砲弾を吐き出す。

重巡と軽巡には殆ど効かないが、駆逐艦には130mm砲は充分に効果がある。先手必勝を地で行く現代艦艇には大戦期駆逐艦は接近されなければ驚異ではない。

一方的に撃ち据えられた二隻の駆逐艦は直ぐに速力が落ちてゆき、そして沈黙した。

 

しかし駆逐艦から溢れ出た爆炎から、突如軽巡が姿を現した。これにはハーン側は面食らい、そして隙を作った。へ級が先に放った15.2cm砲は近距離ゆえか、確実にハーンを捕捉しており、艦尾側へ直撃して火災が発生した。

 

 

ダメコン班員1《消化だ、急いで消化しろ!!航空機燃料にまで延焼したら大惨事だぞ!!》

 

ダメコン班員2《ホースの水圧を上げろ、今すぐにだ。急げぇ!!》

 

ダメコン班員3《こちらダメコン班、浸水も発生している。至急角材と人員を寄越してくれ!!》

 

 

現場では火災と浸水のダブルパンチにより混乱が発生していた。負傷者とダメコン班員がごった返し、狭い通路はたちまち人でバリケードを作っているようである。

 

 

航海科《航海長、大変です!!》

 

レスター《なんだ、何があったんだ?落ち着いて報告しろ。》

 

航海長《浸水によって艦尾が沈降し、速力が下がっています。現在発揮可能速力25ノット!!》

 

レスター《チッ…………、艦橋よりCICへ、艦尾浸水により速力が25ノットに低下。》

 

 

CICでは艦内の至るところからの救援要請や、敵艦隊の動向、ハーンの服が中破する事態が続出し情報が飽和状態となっていた。一つ一つ情報を精査する暇がないと言うのにも関わらず、落ち着き払って調べあげるしかない。

 

 

レーダー員《艦長、レーダーに反応、12時方向。》

 

ジョルジュ《クソッ………こんな時に…………。新手か?!》

 

レーダー員《5つの機影がマッハ1.8で接近中。なんだこれは…………………。》

 

 

直感でジョルジュは判断した、これは恐らくジェット機だ。深海棲艦は1940年代の技術力では無かったのか?!奴等も現代兵器を持ってるとしたら、今の戦況で同時に戦うのは不味い……………。

 

 

ジョルジュ《対空戦闘、スタンダード攻撃用意!!》

 

レーダー員《待ってください、対象機からIFF受信!!この反応は……………、エルジア国籍です!!》

 

ハーン《なんですって?!》

 

 

その場に居合わせた幹部全員がモニターを食い入る様に見れば、確かにそこには三角の表示が青く光っていた。確かにこれは友軍の表示だ……………。

 

 

レーダー員《暗号プロトコル解析終了、これは……………。第一空母航空団所属の第118攻撃飛行隊です!!》

 

マルセル《な、何だとぉ?!》

 

ハーン《じゃあ、ジオフォンの子達って事?!》

 

レーダー員《ま、間もなく目視圏に入るはずです!!》

 

ジョルジュ《CICより艦橋へ、見張り員に12時の方向を確認させろ、今すぐにだ!!》

 

 

ジョルジュの怒号が艦内電話に轟いた、突然大声を出された為かレスターは鼓膜が破けたかと思った程に。

レスターの指示により12時の方向へ双眼鏡を向けた見張り員は、水平線から五つの黒点が出現したのを確認した。

それは段々大きくなり、そして彼等が大陸戦争で何度も目撃した懐かしき姿へと変えた。

 

 

見張り員1《ほ、ホーネット。ホーネットじゃねえか!!》

 

見張り員2《あの機体のノーズコーンと垂直尾翼が黄色だぞ!グルース隊、黄色中隊だ!!》

 

 

見張り員の叫び声によって、艦橋要員の殆どが持ち場を離れて艦橋ウィングへと押し掛けた。俺にも見せろ、押すな押すな押すなと騒がしくなる。

で、レスターがそれを注意するまでが一つのセットと言うわけである。

 

見張り員1《あ、黄色中隊がミサイルを発射したぞ、対艦ミサイルだ。》

 

見張り員2《よーしいけいけぇ!奴等を海の藻屑にしちまえぇ!!》

 

 

グルース隊の放ったミサイルは、エグゾゼより強力なAGM-84。みんな知ってるハープーン対艦ミサイルであった。

一機につき4発、計20発のハープーンが2隻のヘ級へと襲い掛かった。

ハープーンの威力は20cm砲弾と同等か少し劣る程度と言われている、それでも1隻につき10発も食らえば一溜まりもない。

 

ヘ級は即刻上部構造物を廃墟に替えた、まだ浮かんで居られるのは船体構造が現代艦艇より頑丈に作られているからであろう。

しかし、第二派は381mmの金属をも貫通する事のできるMark.84爆弾を抱えており。

5機編隊で襲撃した第二派は何の抵抗もなく爆弾を投下、とうとうヘ級は引導を渡される事になった。

予め損傷を受けていた2隻の重巡ネ級もまた、黄色中隊に逃れること叶わずヘ級の後を追った。

 

 

 

 

 

エイギル艦隊がこの世界に転生して初めての海戦は、後にショートランド沖海戦とエイギル艦隊内だけで呼称される事になるのであった……………………。

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