夕張「はい!!ここがこのショートランド泊地の装備生産を担っている、我が鎮守府の工廠です!!」
夕張に連れられて工廠へと赴いたエイギル艦隊の各艦長は、工廠内の近未来的な計器や構造の数々に圧倒された。
外側から見れば下町の工場か何かの様な、あまり目立たない姿をしている為にギャップが強すぎたのだ。
中はまるで宇宙戦艦か何かの様な雰囲気がする、何処まで未知の存在なのだろうか艦娘達は、と感想を抱いたのだった。
夕張「ここでは艦娘達の装備の生産や改良、新兵器開発も担っているんですよ。」
エドワード「成る程、つまりショートランドの心臓部って所だな。」
夕張「今回はエイギル艦隊の皆さんに装備開発を体験していただこうと思います。」
それを聞いて、ジョルジュは訝かしんだ。さっきエドワード准将は、我々がショートランドの資源を食いまくったと言っていたではないか。
ジョルジュ「物資が足りないんじゃ無かったのか?」
夕張「二日後にラバウルから輸送船が来てくれるらしいですよ。南東方面艦隊司令部からの計らいらしいです。」
夕張の返答を聞いてジョルジュは、ある程度の想定済みかと。何か仕組まれている様な感じがして、気分が少し悪くなった。ただの思い込みだとはわかっているのだが、感情的には何とも言えない気持ちになる。
夕張「さあさあ!!こんな話は置いといて、さっさと開発をやっちゃいましょう!!」
「(せっかちだな。)」
ジョルジュ達は客人の様なおもてなしをされているのにも関わらず、夕張に対してせっかちだと受け取るのだった。
とても失礼である、口に出さないだけマシではあるが、流石にそれはないだろう。
夕張「(一体どんなのが出来上がるんだろう…………。F-15かな?それともトマホークかな?!)」
なお夕張はジョルジュ達がどんなものを作り上げるのか、期待に胸を膨らませており。
いわばジョルジュ達を、半分モルモットか何かと考えていた。サイコパスかな?
夕張「じゃあまずは此処に資源を入れてくださいね。」
巨大なゲートの隣にある、焼却炉程度の大きさの蓋に物資を入れるよう夕張は促した。
なお提督達からは実際に焼却炉だの、バーナーだのと言われているらしい。理由は狙った艦や兵装が出てこず、資源だけがゴミのように消えていくからだそうだ。
エドワード「まずは私からだな。」
タム「准将、頑張ってくださいよ!!」
部下達からの声援を受け、エドワードは蓋の中に資源をぶち込んだ。暫くしてガッコンガッコンと重い音が工廠内を響かせ、機械の作動音が止まったのと同時にゲートが開いた。
夕張「えっと、これは……………。」
エドワード「これは、『三連装短魚雷発射管』、か?」
恐る恐るエドワードは目の前の兵器の名前を言った。
確かにエドワードが作り出したのは、オーシアが開発した(この世界ではアメリカ)発射管である『MK.32短魚雷発射管』である。
エメリア共和国では『B.515』と呼ばれ、エルジアでは確か『STWS』と呼ばれて試験的に購入していた筈である。
対潜水艦攻撃の為に、『KD-59E 533mm魚雷発射管』に変えて装備するつもりだったが、大陸戦争勃発によって『アングルボザ級駆逐艦』のフライトIIIにしか装備されなかった兵器である。
この当たりか外れか解らない様な兵器を製造して、エドワードは何とも言えない気持ちになった。彼は取り敢えず、アルヴァルディに付けてやろうかと考えるのだった。
ジョルジュ「次は自分ですね。」
次はジョルジュが開発を行う番となった。結果は『JM-61-M』と言う機銃が複数個であった。
『JM-61-M』とは『M61 20mmバルカン砲』の流れを組む機銃で、発射速度を450~500発に落とし、人力で旋回出来るように改造された、あまりスペースを取らない機銃である。
その他の艦長も大体そんな感じであり、特に言う事はない。しかしジオフォン艦長であるドミトリーが、恐ろしい物を引き当てたのだった。
ショートランドと言う土地は星が綺麗だ、南半球の人が殆ど居ない土地だから人工の光が少ない。
よって夜には満開の星空が眺めれる、蚊や高湿度が無ければリゾート地にも出きるかも知れないだろう。
そのショートランドの鎮守府にある一つの居酒屋に、この基地では見られない艦娘が三人。
この鎮守府の艦娘に誘われて、夜の晩酌を開催したのだった。
足柄「貴女、良く飲むわねぇぇ。」
コルガ「もう酔いが回ったのか?なんて酒に弱いんだ………。」
直ぐに酔いが回ってしまった足柄を、呆れつつも気遣うのは巡洋艦のコルガである。5900tと足柄の半分程度の巡洋艦ではあるが、歳は近いようにも見える。
大井「もう、足柄はこう言う所がだらしないんだから…………。」
ラズーリ「彼女は何時もこんななのかい?」
大井の呟きを耳ざとく聞き付け、興味深そう聞いたのは、同じく巡洋艦のラズーリだった。
瞳の色は名前通り綺麗な藍青色であり、金色の髪型と相まって非常に目立つ出で立ちである。
長良「まぁまぁ、何時も事だから気にしたら負けだよ。」
大井「同僚として気にするべきだと思うんだけど………。」
諦めぎみで諭す長良に対して、責任感が強い大井は納得出来ないと言うように反論した。
ムスペル「わ、私も気にしたら負けかなーって思うんだけど……………。」
少し臆病そうに大井に意見を言ったのは、巡洋艦ムスペルだ。少し高い鼻と、濃い茶髪はドイツ人らしさを出している。彼女の性格らしくない見た目だと言えるだろう。
大井「はぁ………、私の周りには他人に甘い人ばかりだわ………。」
長良「大井もそんな所あるけどね。」
大井「なんですってぇ?!」
まるで自分だけが他人にも厳しいと言うかのような大井に対して、長良は率直な意見を述べた。
心外だと言うような感じで怒る大井に、皆は微笑ましく大井を見つめるのだった。
そんな視線を感じた大井は、さらに顔を真っ赤にして怒り、更に視線が温かくなって行く。
ムスペル「素直じゃないんですね。」
大井「なにを?!」
ムスペル「ヒィ!!」
大井は怒りの矛先を、余計な事を口走ったムスペルへと向けた。これ以上怒らせるのもアレなので、すかさず長良が抑えに掛かる。
鎮守府の夜は賑やかに更けて行くのだった。
議員1「海軍大臣!!この記事は何なんですか?!この空母は何者なんですか?!」
議長「赤垣海軍大臣」
赤垣「えー、当該記事に関しては、目下調査中で御座います。もうしばらくお待ちください。」
日本の議会は何時も通り大声での怒鳴り合いとなっていた。
議員から捲し立てる様な質問に対して、赤垣は調査中と言葉を濁した。まぁ実際に調査中ではあるのだから、嘘ではない。グレーゾーンではあるが。
議員1「赤垣大臣!!海軍は深海棲艦に対して既存兵器を出し惜しみしたんじゃ無いですか?!この南洋の孤島に隠してたんじゃ無いのですかね?!」
外野議員達『そうだー、海軍はまともに仕事してない疑惑があるぞー!!』
赤垣「その様な事は一切有りませんので。海軍は国民の皆様の為に身を粉にして戦っておりますので。」
議員達の思い込みのようなヤジには、キッパリと否定の言葉をかける。
議員1「大体自分の組織については全く解っていないって、組織の長としてどうなんですか?!即刻辞職するべき案件なんじゃないですかね!!」
外野議員達『そうだー海軍大臣ヤーメーロー!!』
議長「静粛に、静粛に!!」
見るに見かねた議長が議員達を抑えるが、外野達は聞く耳も持たない。結局会議は罵声を浴びせるだけで終わってしまった、まぁ何時も通りである。
赤垣「はぁ…………………。」
赤垣は廊下で缶コーヒーを飲みつつ、溜め息を吐いた。議員達の揚げ足を取る様なヤジは何時もの事なのだが、流石に訳のわからぬまま混乱状態にある正体不明艦隊に対しての調査中の時は、黙って欲しかった。
まぁ実態が解らずじまいな所が、批判される隙を生んでいるのは確かなのだが………………。
???「結構苦労しているようだな。」
突然横から声を掛けられた為、驚いて顔を向ければ其処には白髪で短髪の男が、自分と同じ様に缶コーヒーを啜っていた。
赤垣「苦労どころの話じゃないぞ、財前。超常現象ばかりで、全く何も掴めちゃいないんだからな。」
赤垣の隣に居る男の名前は、財前陸軍大臣であった。階級は大将で、陸軍のトップを務める制服組のエリートである。
財前「まぁそうだろうな、バケモノ共に対抗可能な新兵器が出たかもって。陸軍内でも持ちきりだぞ。」
赤垣「他人事のように……………。」
実際他人事だからなと、財前は笑いながら呟いた。それを聞いて赤垣は、あからさまに不機嫌そうな顔を浮かべた。
こっちの身にもなってくれっと心の中で訴える。
財前「まま、とにかく頑張れや。俺は応援してるぞ。」
そう言って財前はよっこらしょと腰を上げ、廊下を歩いて行った。
最後まで他人事で済ませやがった、赤垣は口には出さないが財前に対して恨み節を思い浮かべたのだった。
赤垣「……………さて、一体どう対処するべきかな?エイギル艦隊………………。」
冷えてしまった缶コーヒーを飲みつつ、赤垣は思案した。
並大抵な事では解決しなさそうだと、赤垣は腹を括ったのだった。今は議会に対して軽く受け流しているが、世界各国はこれをどう見るか。絶対に何かしらのアクションは来るだろうと予想するのだった。