エイギル艦隊 彼の海にて、斯く戦えり   作:凡人作者

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まだ戦闘描写等はありません。
ハーンの実力は深海棲艦に通用するのだろうか。




出港

洋上待機してある駆逐艦ハーンにて、一隻の9m内火艇が接近しつつあった。

この内火艇は昨日の海戦にて唯一生き残っていた大井の搭載艇であり、それ意外の搭載艇はカッターを含めて全損と言う凄まじい有り様であった。

 

砲術士官「あれ、やっぱりカサール級駆逐艦ですよね……………。」

 

砲術長「あぁ、データベースに出た艦とほぼ同じだな………。」

 

大井から臨検部隊として派遣された砲術長以下十名は目の前艦が不思議でたまらなかった。

何故ならフランス海軍所属の駆逐艦がここに居ることが自体おかしいし、何より艦娘が乗って居なかったミサイルを主体とした艦艇は既に全滅していたからであった。

 

ハーンに近付くにつれて甲板の作業員の姿が明らかになって行く、そして砲術長達は作業員の姿を見て驚愕した。

 

砲術長「な、なに?!妖精だと?!」

 

作業員は自分達と同じ、二頭身の体を持つ妖精だったのだ。

妖精は艦娘が居る艦にしか出現しない、と言う事は目の前のカサール級には艦娘が居ると言う事である。

 

砲術長(馬鹿な…………、戦後の艦娘はまだ出現していない筈だ………………。フランスの艦娘自体、水上機母艦と戦艦各一隻ずつの筈だぞ………………。)

 

砲術長はハーンに対して一種の恐れを抱いていた。未知への恐怖は何よりも恐ろしい。

自然と顔に出てしまったため、上司の表情に部下は不安を募らせていった。

 

降ろされたタラップを上り、近くで見た乗組員はフランス海軍の制服の上に防弾チョッキを着用してあった。

ますます訳の分からなくなる臨検隊を、船務科の士官がブリーフィングルームへ案内する。

 

砲術長「日本海軍所属、練習巡洋艦大井砲術長です。会談に応じて頂き有り難うございます。」

 

ジョルジュ「エルジア共和国海軍所属、駆逐艦ハーンの艦長。ジョルジュ・ヴィエンヌ中佐です。ハーンにようこそ、砲術長。」

 

会談は英語(ハーン乗組員からすればオーシア語)にて行われた。大井側は彼等の英語に独特なフランス訛りが感じられた。

 

ジョルジュ「では先ずは貴官が質問すると宜しかろう、答えられる範囲でなら応答するが。」

 

砲術長「有り難うございます。先ず始めに、エルジア共和国とは何でしょうか?自分達はその様な国を調べてみましたが、エルジア共和国と言う国は何処にも存在しませんでした。」

 

砲術長妖精の発言により、ハーン側からはざわめきが起こる。

一体どう言う事なのだろうか?エルジア共和国が存在しないとは。

 

ジョルジュ「質問を質問で返すようで申し訳ないが、自分達も日本と言う国を全く認知していない。取り敢えず双方の国の地理やら国家構成やら歴史やらを紹介しあって、相互の認識を改める必要が有ると私は思うんだが。」

 

砲術長「分かりました。簡単にですが、先ず自分達の国の歴史についてから……………。」

 

砲術長は簡単に日本の歴史について語り始めた。

日本の誕生、邪馬台国、大和政権、源平合戦や戦国時代。

江戸幕府や明治維新に二つの戦争の勝利、二つの世界大戦や冷戦時代。

そして深海棲艦の出現と初戦の大敗北。2013年の艦娘の登場と、それを軸にしての反抗作戦。

 

砲術長から聞いた歴史に、ジョルジュ達は衝撃を受けた。未だに信じられないとの顔をする士官までいる。

未だ納得できない感情を沸かせつつ、ジョルジュ達が自分達の歴史について語った。

 

ユージア大陸での数多の戦い。オーシアとユークトバニアの冷戦。資源の取り合いから始まったベルカ戦争と戦争終結後に起こったユージア内戦。

小惑星ユリシーズ衝突により世界各国に被害が発生し、被害が大きかったユージア大陸での難民の押し付け合い。それを決起に勃発した大陸戦争と我らエルジア共和国軍の栄光と没落の始まり。

 

双方の歴史には所々類似する所こそあれ、大きく違う所が多数あり、結局双方共に相互の認識の違いが大きく深まった感じとなった。

 

砲術長「はっきり言って信じられません……………、事実を証明する証拠もございませんし……………。」

 

ジョルジュ「それは私達にも言える事だ。双方に証拠が提示出来ない状況にあるのだからな。」

 

砲術長「…………これからの方針はどうするおつもりで?」

 

ジョルジュ「幽霊船の様に海でさ迷う訳にもいくまい。詳しい事は幹部を集めて相談するが、取り敢えずは貴艦の本拠地にて、補給などを頂ければ嬉しいのだがね。」

 

砲術長「分かりました。では自艦にて本格的な会談を行えるよう要請しておきます。」

 

砲術長以下臨検隊が帰えって行った後、入れ違いでマルセル少佐が帰還した。こちらも似たような事になっており、ハーン側の判断も伺いたいとの要請が有った事を報告した。

 

───────────────

後日

 

ジョルジュ艦長と大井の艦長妖精はツラギ港にて本格的な会談を行った。

駆逐艦ハーンは取り敢えず大井の本拠地であるショートランド泊地にて補給を行いたいとの旨を告げ、大井と行動を共にする事となった。

 

 

出港の準備を整える為に双方の乗組員は大急ぎで通路を行き来する。大井は港に残っていた鋼材や食料、僅な燃料を積み込んで出港する事となり、大井が出港するまでハーンが警戒を行った。

 

結局大井が出港するには明朝まで時間が掛かった。これでもまだ早い方である。その間深海棲艦からの襲撃とかは無く、不気味な静けさがガダルカナル島を覆った。

 

深海棲艦の小艦隊が襲撃して来てもおかしくは無い。大井の艦長妖精は何処か不安な雰囲気に胃が締め付けられる様な感覚がした。何故、何故なのかと言う疑問を抱きつつ、出港の合図を出す。

 

大井「来るわね…………………。」

 

艦長妖精「あぁ、恐らく来るだろうな………………。対水上見張り、警戒を厳となせ。」

 

ハーンはまだその実力を発揮していない。ショートランドに着くまでその機会は無い事を祈りつつ、大井とハーンは出港した。




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