エイギル艦隊 彼の海にて、斯く戦えり   作:凡人作者

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キラー・ホエール

ツラギ港から出港して数時間、ハーンと大井はサンタイザベル島付近を航行していた。

大井は一応簡易的な修理や補給を済ませたが、それで充分な筈もなく。

どうしようもなくぶっ壊れたボイラー、破口が大きい燃料庫、長時間の酷使により調子の悪い機関

と言う余りにも酷い有り様で、12ノット以上の速力を出す事は不可能であった。

 

大井「見事に足手纏いになっているわね…………。」

 

艦長妖精「まぁ、仕方あるまい。彼等の奮闘に期待するしかあるまいよ。」

 

大井は初対面の艦に手助けしてもらっている自分が情けなく感じた。

誰かに負担を負わせる事を、何よりも嫌がる性分が彼女の心を締め付ける。

個性的な二人の姉、マイペースで親友の様な関係の3番艦、唯一の妹、

姉妹の面倒を確り見て、それでなお後輩の練習巡洋艦や新米の駆逐艦の世話まで行っていた自分が見ず知らずの駆逐艦に守られてるとは夢にも思わなかっただろう。

大井は申し訳無いと思いながら、必死に艦体を操るのだった。

 

レスター「艦橋からCICへ、まもなくニュージョージア島に接近します。」

 

大井を先導しているハーンでは、大井から提供された海図を元に航海を行っていた。

 

ジョルジュ「これまで何事も無く行けたが……………、まだ何が起こるか分からんな。」

 

マイセル「電測員、レーダーから光点一つ見逃すなよ。」

 

大井曰く、敵艦隊は増援をしきりにに呼んでいたらしいが、その様な反応は未だ現れなかった。

しかしここら辺りは、時々魚雷艇による襲撃が発生してあり、少しも油断できなかった。

 

ダスティン(データベースを見せて貰ったら、魚雷艇はオーシア連邦が1940年代に使用していたPTボートと同じだった…………………。魚雷艇に対応するには130mm速射砲とF2機関砲を使用すればいいが………………。)

 

砲術長のダスティン・セルヴィッジ少佐は不安を抱いていた。

高性能なイージス艦でも、懐に小型艇が突っ込んで来るのはよく有る話だ。

最悪目視による見張りが必要となるだろう。

 

ダスティン(見張り員が魚雷艇を見付けてくれれば後はこっちの物だが………………。)

 

────────────

 

ソロモン諸島の島々に展開してあった見張りにより、深海棲艦はハーン達の居場所を大体掴んでいた。

ショートランドかブインに航路を取るのは確実、レンドバ島の秘密基地から魚雷艇群が出撃した。

PT小鬼達は手負いの艦をいたぶるのを楽しみにしていた。

しかしその手負い艦の随伴艦が、この世界では常識外の部分に入っている艦だと誰も思わないであろう。

 

────────────────

 

電測員「………………うん………………?」

 

眠気を誤魔化しながらレーダースクリーンを眺めていた電測員は、一瞬現れた光点によって眠気を覚ました。

見間違いかと思われたそれは、くっきりと表示されており、そして少しずつ増えているのが分かる。

 

電測員「レーダーに感!十一時の方向、距離30000m、本艦に近付きつつあり!!」

 

ジョルジュ「総員戦闘配置、対水上戦闘配備!!」

 

コンスタンティン「大井に通信、急げ!!」

 

敵艦発見により各艦は戦闘配置に付く。

ハーンの130mm砲が魚雷艇に主砲を指向するがまだ撃たない。

最大射程こそ29500mまで有るが、対水上目標に対しての有効射程は23000mまでだからだ。

 

大井「総員第一種戦闘配備、対水上戦闘よーい!!」

 

大井もハーンに倣って14cm砲を指向し始めた。

彼女の主砲は一番砲と後方の六番砲意外は破壊されており、位置的に一番砲しか指向できていない。

 

間もなく島影から小さな影が姿を表した。

小型の漁船並みの船体が、ぐんぐん速度を上げて此方に突っ込んでくる。

間違いない、魚雷艇だ。

 

ダスティン(PTボートが搭載してあるMk.13魚雷の射程は5761km……………、それまでに方を付ける!)

 

PT小鬼群は一群三隻編成、それが五個群あるため十八隻いることになる。

しかしPTボートの速力は41ノット、此方は12ノット以上出せない事から直ぐに接近されるのは確実である。

 

電測員「魚ら」

 

ハーン「敵が有効射程に入ったわ!!」

 

ハーンがいきなり報告したため皆が驚いた、彼女は周りの驚きを意に介さずに主砲を指向して射撃を開始した。

カーン、カーン、カーンと音を立てて130m速射砲の発砲が開始される。

MIe.68速射砲は78発/分の発射速度を誇るが、命中率を上げる為にわざと発射速度を遅くしているのだ。

 

電測員「目標群α、トラックナンバー4214、4215の反応消失!」

 

魚雷艇の一隻は艦首から艦尾まで貫かれて、自艇が走った勢いで急激に浸水が起こり自滅する。

他にも砲撃による水柱が引っ掛かって転覆する艇までいる。

しかしPT群は散開して突撃しており、死角を潜り、阻止砲火が薄くなったのを見計らって突入して来る。

 

見張り妖精「敵水雷艇、八時の方向、距離7500m!!」

 

気付いた時には急接近されてある事が多々あった。

それにハーンだって万能ではない、対処出来る数だって限られているのだ。

 

機銃妖精「う、うおぉぉぉぉ!!」

 

大井に搭載されてあった25mm三連装機銃が阻止弾幕を展開する。

機銃自体の数はそれほどないが、真っ直ぐ敵が突っ込む事もあり、命中率が向上していた。

PTボートの装甲は皆無に近く、多数の弾痕が出来上がって迷走しだす艇もいる。

 

航海科「艦橋からCIC、雷跡視認、十時の方向!!」

 

レスター「取り舵一杯、最大戦速に切り替えろ!!」

 

ハーンを狙った魚雷は艦尾をすり抜けて行き、そして磁気信管が狂ったのか、比較的近くで爆発した。

爆発により艦体が震動する。

 

マルセル「各科、持ち場の区画のチェックを行え!!」

 

幸いハーンには直撃した魚雷は無かった。

しかし

 

大井「うぁあ?!」

 

艦長妖精「クッ!!」

 

大井の艦首部分に魚雷が当たり、爆発によって大きな破口が出来上がる。

損傷に連動して大井の服が破れ、血が噴き出す。

 

航海長妖精「衛生、直ぐに艦橋に上がれ!」

 

主計長妖精「応急員は損傷区画に直行せよ!!」

 

大井の仇を打つかの様に14cm砲やハーンの13cm砲がありったけの砲弾を撃ち込む。

魚雷艇の辺り一面水柱が起こり、その激しさが実感できるであろう。

 

ハーン機銃員1「撃て!撃て!奴等を蜂の巣にしろ!!」

 

ハーン機銃員2「おい?!弾は弾は何処に有る?!早く持ってこい!!」

 

ハーンのF2、20mm機銃を操作している機銃員は、残弾お構い無しに射撃を行っていた。

主計科が弾薬庫から急いで20mm弾を取りに行く、アドレナリンが分泌されて疲れと言う物を知ら無くなっていた。

 

大井応急員1「マットレスを持ってこい!!浸水が止まらなくなるぞ!!」

 

大井応急員2「角材が!角材が切れた!!」

 

大井応急員3「おい?!しっかりしろ!!頭を打ったのか?!」

 

大井応急員はこれ以上大井に被害を蓄積させぬよう死力を尽くしていた。

二頭身程の身体が宙に浮いたり走り回ったりと、此処まで見ればシュールであるが、本人達は必死である。

魚雷艇との死闘は敵味方双方の士気と興奮が最高点にまで達し、さらに激しさが増す。

その内、日の出となり、魚雷を撃ち尽くしたPT小鬼群は撤退を開始した。

18隻中13隻を沈める事に成功したが、PT小鬼群は生き残っている上に魚雷発射を許した。

おまけに敵に位置を特定された為、断続的な襲撃や本隊の到来が予想された。

 

ハーン達の状況は絶望的と言わざるを得ないであろう。

 




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