エイギル艦隊 彼の海にて、斯く戦えり   作:凡人作者

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航空団の編成やら、過去の海戦の戦闘詳報やら、通商護衛や兵站、旧軍の情報戦やらの調べ物をやってたり、他の人の小説を読んでみて文章力上げようとしてたんですが、
なかなか上手く書けなくて辛い。


混迷の海

ジョルジュ「大井の状況はどうなっている?!」

 

 

PT小鬼群の強襲をなんとか潜り抜けたハーン達だが、無傷で突破する事は出来なかった。

ハーンはPTボートからの銃撃により少なからず損傷を受け、大井は艦首被雷により速力が9ノットまで低下した。

速力の低下によりこれから連続して行われるであろう戦闘を切り抜けるのは困難な状況である。

 

 

ジョルジュ「クソッ!不味いぞ………………。」

 

 

本来艦長は部下の前にて動揺したり、顔色を悪くするのは大変好ましくなく慎むべきなのであるが、空襲や追撃の危険性、連続して行われた対魚雷艇による被害が矢継ぎ早に行われた事により気にする暇すらなかった。

 

 

応急長「艦長、本艦の被害を集計した所、機銃により艦橋及び船体中央に被害あり、されど戦闘行動に異常ありません。」

 

ジョルジュ「わかった、引き続き被害箇所の調査、並びに次の戦闘に備えて待機せよ。」

 

 

ジョルジュは応急長の報告を受け取り、そして次の戦いへの考えを巡らしていた。

最大の問題は大井である、この手負いの大艦(ハーンから見て)をどう守り切るのかが焦点となっている。

敵の主力艦隊が出てきたら、また先程の様な波状攻撃を仕掛けられたらどうなるか、考えれば考える程悪い予測が頭を駆ける。

 

 

ダスティン「艦長、これ以上手負いの大井を守り切るのは実質的に不可能です。」

 

ジョルジュ「砲雷長、お前もそう思うか?」

 

コンスタンティン「はい、敵は先程の戦闘で我が艦隊の正確な位置を特定したはずです。我々が如何に策を練ったとしても、鈍足の手負いを駆逐艦一隻で守るのは不可能と愚考します。」

 

ダスティン「加えて、先程の戦闘において我が艦は敵の飽和攻撃を捌き切れませんでした。例え追撃艦隊が一個艦隊で守りきったとしても、敵は一波、二波と連続して艦隊を送り込むだけです。」

 

ジョルジュ「最悪の決断を下さねばならない可能性もあるな………………。」

 

ジョルジュ、マルセル、ダスティンの三人は現状を把握し、大井を連れて逃げるのは困難と察していた。それ程までに大井はボロボロだったのである。

 

通信士「艦橋より報告、もうすぐコロンバンガラ島を通過します。」

 

ジョルジュ「うむ…………、通信士、航海長にショートランドまで後どれぐらいかを聞き出してくれ。」

 

通信士「ハッ!!」

 

 

ジョルジュからの要請により、レスターは艦橋にて海図を睨んでいた。

大井から提供された海図の写しを頼りに、測距器や天体測量、電子海図等に反映させての測距により距離を割り出す。

ペンで海図に線を引き、手際よくコンパスを回転させて角度を計りおおよその距離を図る。

それを計算機に入力して、現在の速度を加味して後何時間で目的地に付くかを割り出しに掛かる。

 

 

レスター「おいおいおい、こいつはぁ中々面倒な事になって。」

 

 

十数分経って叩き出した数値によると、現在位置からショートランドランドまで約160km(約86海里)。

このまま9ノット(時速約16.67km/h)で航行したとして、約9時間は地獄の航海を楽しまざるを得ない。

如何にハーンが、この世界で言えば未来の兵器で有るとは言え、絶対に辿り着ける保証は無い。

結果が見えて、測距作業に携わった士官の間に重苦しい空気が漂った。

 

 

航海士「航海長流石にこれ、大井と一緒にトロトロ動いてたんじゃ確実に敵艦隊に捕捉されますよね。」

 

レスター「そんな事わかってらい、俺だったら大井を切り離してる。だが俺達が出来るのは距離計って艦長を導く事と意見具申だけだ。後の事は艦長が決める、今は結果を報告する事だけだ。」

 

 

艦内電話を通じてジョルジュに結果が届く。

内容を確信し、深くため息を付くしかなかった。

何故悪い予感はこうも的中する物かと心の中で嘆きつつも包み隠さず各幹部に伝達し、また協議に入る。

 

 

ジョルジュ「皆、結果は一寸も狂わず想定と一致していた。もはや我々は手段を選らばざるを得ない様だ。」

 

リュミドラ「そんな!?大井を見捨てろと言う訳ですか?!」

 

ジョージ「仕方無いだろ、いつ敵に襲われるかもわからないんだ。リスクはなるべく避けるしか無い。」

 

リュミドラ「でも、せっかく私達に海図を提供してくれたり、色々してくれたのに…………、見捨るなんて………。」

 

ジョージ「じゃあなにか?大井と心中しろってか?このハーン乗組員250名の命を巻き添えにして?冗談は勘弁してくれよ。」

 

ダスティン「止めないか、二人とも。ここで言い争っても事態は好転しないぞ。」

 

 

砲術長のリュミドラ・バザロヴァ大尉と、水雷長のジョージ・シアーズ大尉の双方の意見もまだ理解出来ない訳でもない。

良心や義理人情ではリュミドラの言う事も分からなくもないが、この緊急事態に置いてはジョージの意見は幾分か合理的である。

 

 

ダスティン「大井を総員退艦させると言うのも、一つの策では有りますが……………。」

 

ジョルジュ「まぁ、それが一番妥当だろうなぁ。」

 

ハーン「無理よ。」

 

ジョルジュ「えっ?」

 

 

ジョルジュとダスティンの会話を耳にし、先程から沈黙を保っていたハーンがいきなり言葉を発した。それも深刻で悲しそうなな顔つきで。

雰囲気からジョルジュは察した。あっ、これイカン奴だ、絶対録な事無い奴だ。

 

 

ハーン「私達艦娘と妖精って言うのは、艦と殆ど一心同体。艦から離れて生活したりする事は可能だけど、もし艦が沈んだりしたら、この世から双方仲良く消え去る事になるわ。逆に艦娘が死んだりしたら艦の方が沈む事になるけど。」

 

 

ハーンから告げられた内容はとても衝撃的なものであった。この非常事態にショッキングな事を知らされたく無かった、聞きたくも無かった。

またもや自分の直感が直撃した事により、ジョルジュは又ため息を付く事となる。最早厄日である、神よ私は貴方に何かしましたか?それとも試練だと言いなさるおつもりか?

 

 

マルセル「…………私が会談に行った時そんな事言われませんでしたけど、艦長相手側から聞きました?」

 

ジョルジュ「いや、言われなかった。」

 

ハーン「さしずめ常識だから説明されなかったんでしょ?まぁ相手側も切羽詰まってたし、忘れてただけかも知れないけど。」

 

 

説明不足ここにあり、余りの杜撰さにジョルジュは思わずこめかみを揉んだ。

重要事項なんだから言えよと、こっちが異世界?から来たんだか知る訳無いだろうと今からでも訴えたい気分である。

思い込みや先入観で勝手に決められては、此方としては聞き逃しが有ったりしそうで恐ろしい物である。

 

 

リュミドラ「てかなんでハーンはその事知ってるのよ?貴女も一応異世界から来て、艦娘になったばかりだし。」

 

 

リュミドラは不思議がってハーンに訪ねた。

いくら艦娘にとっての常識とは言え、ハーンはこの世界の住人でもないし、元から艦娘だった訳でもないのだ。

彼女が常識として知っていると言う点は、何処か無理があるとしか言い様のない。

常識ですかハイそうですかで納得するほど、人は理解力が有るわけではないのである。

 

 

ハーン「さぁ?突然頭に湧いて出てきただけよ。体で知ってるって感じかしらね?」

 

リュミドラ「……………はぁ、そう………。」

 

ハーン「何よ、その煮え切らない様な返事は。仕方ないでしょ?私だって自分の事がよく解らないんだし。」

 

 

ハーンの抽象的な説明に、リュミドラは余り納得できなかった。

何とも言えないような、どこか引っ掛かるような答えに不信感が募る。

自分の事なのに自分の事はよく解らないとは、一体どう言う事だよと。ハーンがとても奇妙な存在に思えて仕方がなかった。

いきなり自分が人間になって、何か疑問に思ったりとかしないのだろうか?

自分は目覚めたら二頭身になっていて、余り納得出来ない所がある。

そりゃハーンみたいに、いきなり頭の中に知識がインプットされたが、だからと言って妖精だから二頭身ねは流石に無いだろうと。

 

 

ジョージ「思ったんだがよ、お前って一体何ができるんだ?さっき砲術長を遮って主砲射撃してるように見えたがよ。」

 

ハーン「自分の艦に………、てか女性にお前とか子供相手にしてはまあまあ高圧的な喋り方ね、嫌われるわよ。」

 

ジョージ「うるせえ。」

 

 

ハーンはジョージの喋り方が気に入らず、小言を言うがジョージにして見れば良いお世話である。

ジョージの野蛮っぽさに呆れて溜め息をつきつつ、しょうがないと言わんばかりの話し方で説明した。

なおその態度でジョージのこめかみに怒りで血管が浮き出ていたが、子供相手にキレるのもアレなので大人しく聞くことにした。

 

 

ハーン「そうねぇ………、思い付く限りでは、主砲撃ったりミサイル撃ったり、レーダーで索敵したり、艦を動かしたりする事かしらね?」

 

ジョージ「……………それって、俺達要らなくないか?俺らの存在意義が無くなっちまうよ。」

 

ハーン「ま、流石に一人でダメコンなんて出来ないし、全部の操作を自分だけでやれって言われても頭の処理能力越えちゃって無理だと思うわ。」

 

リュミドラ「私達が居たら貴女口煩いだけの、ただのマスコットに成り下がりそうな気がするんだけど…………。」

 

ハーン「うるせえ。」

 

 

ハーンはリュミドラの呟きで、思わずジョージと同じ反応をしてしまう。

その後ネチネチとリュミドラに文句を言う辺り、自分の方が大人だったなとジョージは思うのであった。

犬猿の仲であるリュミドラが困惑するとこを見て、心の中で「ザマァ」と思う辺り全然大人げが無いのであるが。

このような茶番じみた事が出来るぐらい、余裕が有るように見えるが、実際はただの現実逃避でしかない。

ジョルジュ、ダスティン、マルセルら主要幹部はこの三人と暖かい目で見つめるCIC要員に大層呆れた。

今はこの様な事をしている暇は無い、刻一刻と事態は悪化していくのである。

大体リュミドラとジョージは砲術、水雷を扱う艦幹部の端くれである。もう少ししっかりしなければ下に示しがつかないのだ。

 

 

ダスティン「二人とも質問時間はそこまでだ、今はこの事態をどう切り抜けるか議論しなくてはな…………。」

 

電測士「対水上レーダーに感!!」

 

ダスティン「なんだとっ?!」

 

 

直属の上司であるダスティンがこの場を収めようと動いたその時、電測士がレーダースクリーンに像が現れた事を報告した。

スクリーンには艦艇が6隻にして複縦陣、それも東側から接近してくる。

その内の二つはとても像が大きく、大井よりも大型の艦で有る事は容易に想像できた。

恐らく先程の水雷艇が呼び込んだ敵の主力艦隊であろう。

ゆっくりと近付いてくる様は、まるで大鎌を構える死神の様に思えた。

大井より事前に提示されたIFFの周波数帯である、周波数176Mhz(これは米英軍が共通して長年使っていたIFFと、同じ周波数である。)で確認を取ってみたが、相変わらず反応はUnkonwn止まりである。

一縷の希望、此方の周波数帯が噛み合ってないだけの可能性があるため、何度も周波数を切り替えて呼び掛けたが、依然不明のままである。

 

 

ジョルジュ「大井へ電信、最悪の状況になったとな。」

 

 

ジョルジュの一言によりCICに緊張が走る、硬直する者、冷や汗を流す者、異が締め付けられる感覚がする者と反応は様々である。

二対六と言う数の不利に加え、一隻は大破した死に損ないの巡洋艦、もう一隻は瀕死の味方を守る為に全力の出せない駆逐艦。ただでは済まされないだろう。

皆自分達の死を確信した、数に物を言わされて一方的に嬲られる未来を想像した。

対艦ミサイルで何隻かは撃沈出来るかも知れない、だがミサイルの数は8発と少ない上に、100mm砲は効果が有るかも解らない。

二隻居る大型艦は大井よりも大きいであろう、100mm砲弾は豆鉄砲程度の効果しか無いだろうと想定された。

 

 

ジョルジュ「何をしている!!速く電信を送れ!総員第一種戦闘配備に付け!」

 

 

ジョルジュの一喝に弾かれた様に各員が慌ただしく配置に付く。

緊張や絶望している暇は無いのだ、如何に戦力差が開いていようと、諦めて良い道理は何処にも無い。

軍人として職務を全うし、全力を出し切るまでは諦めてはならない。

士官学校で学び、地獄の様な訓練で学び、数々の戦いを潜り抜けて学んだ事を思い出し、艦の一部歯車の一部の様にきびきびと戦闘への準備を始める。

 

 

通信士「大井よりSOS(国際救難信号)が発信されました!!」

 

ジョルジュ「こちらからも発信しろ!少しでも誰かが拾ってくれるようにするんだ!!」

 

 

もう既に艦隊を秘匿する意味など無い、近場のショートランドだろうが何処だろうが形振り構わず助けを求めるしかない。

レーダー上の所属不明艦が近付いてくる、遅く後数分で目視出来る範囲に接近してくる。

どうか味方で有ってくれ、この状況で敵であれば死ぬしか無くなってしまう。

 

そして見張員が水平線の向こうから煤煙が見えたとの報告が入り、数分にしてスコープに艦影が確認できる様になった。

国旗の類いや通信旗の類いも無く、何より禍々しく黒い船体が確認出来る。

同じく敵艦隊を視認した大井より、敵の編成が報告され。

敵戦力は重巡洋艦2、軽巡洋艦2、駆逐艦2……………、たった二隻でどうこう出来る戦力で無い事は確かである。

大井とハーン、絶望的な艦隊戦が幕を開ける事となった。

 

 

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