迷宮の都市のアリス   作:RyujiOturu

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ドーモ、この頃リアルで忙しいニャフです。
最近出たマァトさんが好きすぎてアリスやかぐやを触れてない気がする......それにゲーセンも行く余裕がない......
14話目にしてようやくアシストカードが出てくるなんて自分でも想像してませんでした。もっと早く出す予定だったんだけどなぁ......
ようやくアシストカードを出せばしたもののびっくりもかくれんぼもまだなんだよなぁ......(白目)

とまあどうでもいい話はここまでで
本編をどうぞ!


予想外の形で中層攻略を始める御話

 

 カミリアさん達と迷宮に潜ってから数日、白紙の本を使ってアシストカード等の切り札となるであろうカードの製作に成功し、さらに既存の武器をカードにすることもできたため複数の武器を嵩張ることなく持っていけることにリリさんが曖昧な表情を浮かべていたのが印象に残っている。

 と言っても、私は異界の少女の魔杖(いつもの杖)とヴェルフさん作の槍ぐらいしか武器はないので、杖だけいつも持ち歩き、槍はカードにして服のポケットに入れてる。

 他にも、この世界にあったものからWLWの世界のアシストカードを作り出すことにも成功した。

 と言っても実用できるような性能ではなくほんのりステイタスに補正がかかる程度だが、唯一、前の〈怪物(フィリア)祭〉で手に入れたリボンを元に作った〈不思議な少女のリボン〉はかなりいい性能になっていて、武具について聞こうと尋ねたヘファイトス様によると第二級等(レベル3相当)だと言う。

 あー、WLWでもレベル3からだったなーとか思いながらヘファイトス様の説明を聞いていたが、聞き逃せない言葉があった。

 

「いくら凄い武器や防具でも、付けたらステイタスの表記が変わるなんてことはあり得ないのだけどもね」

 

 本来の魔道具や武具はステイタスに作用したりするものではなく、シンプルな硬さやどれだけ切れるか、使った素材だったりに応じて第何級等と決められるらしい。

 

「あ、ちなみになんですけどステイタスが上昇するような武具はないんですか?」

 

 ふと思ったことを聞いてみたがその返答を聞いて正直聞かなければ良かったと思った。

 

「ステイタスが上昇する武具なんて何級等でもないわよ、そんなもの作ったら一生遊んで暮らせるわ」

 

 こうやって聞いている事からわかる通り、私の作ったリボンを付けるとステイタスが十数だが上昇していた。

 内心では今までにないぐらい焦っていても表面上を取り繕うのは慣れたもので、平然をよそおいながらヘファイトス様との話を終えて私は急いで拠点(ホーム)に走った。

 

 

「さて、それじゃあ今日も行ってらっしゃい。無事に帰ってくるんだよ?」

 

 いつものように迷宮(ダンジョン)に向かうベル君達を見送ったボクは、自分の眷属達を見送る知神のタケを見つけた。

 

「やあ、タケ」

 

「ん? おお、ヘスティアか」

 

 タケはボクの所と同じような小さなファミリアで、主神のタケが極東の島国で共に過ごしていたらしい数人の子ども達を連れてオラリアに来たあとは、探索系のファリミアとしての収入の大半を子ども達の故郷に送っているらしく生活は厳しいらしい。

 

「ヘスティアも見送りか?」

 

「うん、後は無事に帰って来てくれることを祈るだけだけどね」

 

 ボクたち神は迷宮(ダンジョン)に入ることは出来ない。足手まといになるしそれに......

 

「あ、ヘスティア様! それにタケミカヅチ様も」

 

「あ、アリス君」

 

 考え事をしていると、近くに用事があったのかアリス君がこちらを見つけ近寄ってくる。

 

「よう、久しぶりだな」

 

「お久しぶりですタケミカヅチ様。あ、ベルさんはもう行きましたか?」

 

「......? もう行ったけどどうしたんだい?」

 

「急いで作っていた御守りができたので渡そうかと思っていたんですが......間に合いませんでしたか」

 

 そういう彼女の手には何やら緑色のカードのような物が握られていた。おそらくはそれを渡そうと思っていたのだろう。

 

「まあ、ヴェルフ君にリリ君もいるんだ。大丈夫だろう」

 

「そうですね、心配のしすぎですね......」

 

 そう言ったアリス君の瞳には何かを憂いているような色が宿っていた。

 でもすぐにその色は消えていつも通りの十にも満たないようなあどけない少女の表情に戻っていた。

 ボクはこの瞳をする彼女が理解できていない。いつもは幼い可愛らしい少女なのに、不意にボクらと同じような長い間生きてきたような全てを達観したような表情と目をする。

 とても年端もいかない少女がするものではない、そんな目をしている。

 それにタケやエイルも気がついていると思うが彼女の嘘をボクたちは見抜けない(・・・・・)。ボクたち神が嘘を見抜けないのは同じ神や迷宮(ダンジョン)から湧き出る怪物(モンスター)だけのはず。なのに彼女の言葉の真意はどうしてもわからないのだ。

 だからこそボクは彼女を警戒し、彼女の言葉の真意は今までは共にいた子ども達を観察して判断してきた。だけど今回の彼女の言葉はベル君を心配してのことだとしか思えない。

 

ボクの方も心配しすぎだね......

 

「?」

 

 今まで警戒していたけど、もう必要なさそうだ。

 

「さて、ボクたちは帰ろうか」

 

「はい、帰りましょうか」

 

 それでも、そう呟く彼女の瞳に映る理解のできない色にボクは不安を拭えなかった。

 

 

「それじゃあボクは『神会(デナトゥス)』に行ってくるよ」

 

 いつもの服装ながらも私のセンスで選んだバレッタを付けて教会跡の地下室から出ていったヘスティア様を見送る。

 数日前に来た、延期されていた『神会(デナトゥス)』の開催の知らせにヘスティア様はげんなりとしていたものの、私たちに変な二つ名はつけさせない! とかなり張り切っていた。

 

「さて、私も出掛けますか......」

 

 今日はバレッタに変形させて右側の一房だけ金色の髪を留め、アシストカードを作るために必要な白紙の本、それと魔力をひたすらに流してフラグメントの代わりになったポーションもどきを、ビンが割れないように布で包みリュックに詰め込んで私は地下室を出た。

 向かう先はヘルメス・ファミリアの拠点(ホーム)。魔道具を創るのなら先達がいるのだからその技術を得るためにもアスフィさんに私の作ったカード状の魔剣(マスタースキル)を数枚譲渡することを条件に師事をしてもらっている。

 

「来ましたか......と言っても私が教えられることはもうほぼないんですがね......」

 

 工房を借りる形で来させてもらっている私としては、教えてもらうことがなくとも知られる可能性が少ないここを使わせてもらえてるだけで十分なのだ。

 

「それにしてもやはり貴女の魔剣......いえ、マスタースキルと言うのでしたっけ?」

 

 そういってアスフィさんがポケットから取り出したのは、黄色に虹色のラメが施され、中央に風神のような影絵の描かれたカードだった。

 

「しっかりと効果があったなら良かったです」

 

 半場事務的な返事ながらも効果が出たことは純粋に嬉しい。これならば大英雄だったりも効果が出るはず......

 

「次は一体何を? 赤色ですが」

 

「次は威力こそ低いものの使い方によっては凶悪な武器になる......はずのものですね」

 

 現状では対人用で接近拒否に使えるはずのエルガーグランツと高範囲の雑魚処理用に使えるはずのインプルスゼーレの合計二種を作ろうと考えている。

 エルガーグランツは既に構築が出来ているので後はカードにそれを押し込むだけだが......問題はゼーレの方だ。

 

「とりあえず一枚出来ましたが......ここで使うのはかなり危ないのと、対人用なので気をつけて使ってくださいね?」

 

「対人用......貴女は何を目指してるんです......?」

 

「そろそろ私やベルさんにつっかかってくる人や、ベルさんの魔法では対応しきれなくなってくる状況が出てくるのを見越しての自衛用です」

 

 かなり真剣に私はそう考えている。私もだがベルさんの魔法はかなり対人向きだとは思うが、それでも囲まれたりするとやはり弱い。その時のためのエルガーグランツなのだ、本家を再現できているといいけど......。

 

「後もうひとつは今日中に完成させるのは難しいかもしれません、とりあえずグランツだけ渡しておきます」

 

「グランツ......?」

 

 さも当然のようにグランツと略したがまずもってWLWを知らないのだからこの〈MS(マスタースキル)〉の名称も知らないし、それにこの略しかたで全員がわかるわけではない。

 

「その〈MS〉の名前がエルガーグランツ。私はグランツと略して読んでいます」

 

「はぁ......とりあえずこのカードを頂いていきますね」

 

 そうとだけ言ってポケットにカードをしまったアスフィさんは工房を出ていった、私はその背中を目で追いながらも手を止めることはしない。

 真っ白な頁の上で錬金水薬(フラグメントポーション)(アスフィさん命名)を砕き、あふれでた私の魔力の込められた水薬が開かれた頁の上で黒い文字となって紋様を描く。

 

「ここをこうして......うーん、やっぱりサモン状態を維持させる部分がうまく作れないな......」

 

 ゼーレの周囲にダメージを与えるフィールドを生成する部分はできたのだが、サモン状態、そのフィールドを継続させる部分の構築がどうしても上手くいかない。

 サモンはカードの魔力を消費してその能力を継続させるのが主体であり、効果よりも能力を継続させる事が重要なのだが......

 

「これ以上考えすぎてもできそうにないなぁ......今日は一旦帰りますか......」

 

 そう思ってからの行動は早かった。五枚ほどグランツを作り終えると作成に使った道具を即座に片付け、荷物をまとめて『神会』が終わって暇をしていたヘルメス様に挨拶だけしてヘルメス・ファミリアの拠点を出て、大通りから一つ外れた裏道を通る。

 この頃は余裕のなかった中学生頃の時と同じような生活をしている。ヘスティア様だったりとは朝に挨拶するものの他人と関わることをほとんどせず何かに没頭するだけで一日を終える。

 

「はぁ......ダメだ、せっかくヘスティア様達に救ってもらったんだ、しっかりと恩が返せるようにならないと......」

 

 前のようにヘスティア様達の為にご飯も作ってないしバイトもしていない。迷宮にも潜っていないからほとんど収入がないのだ。

 

「よし! 明日からは籠るのをやめて少しでも負担を減らせるようにしないと!」

 

 まだ2億ヴァリスの借金が私達のファミリアにはある。せめて日々の生活がもっとマシになるようにしないと......毎日パンやお米が食べれる生活は最低限なんだから......

 

「最悪、MSの技術を売り付けると言ったところですかね......」

 

 こればっかりは冒険者の成長の妨げやファミリア間抗争を広げてしまう可能性が高いため私の手の内に納めておきたい。

 

「〈快癒の和塊〉を作れるようになればいいんだけど......」

 

 力を貯める、その能力が発動する状態を維持する、だけど使用可能時間は徐々に減っていく。

 永久的に使用可能にしようとすると内部に貯めておける魔力量を越えて使用したときにどうなるのかわからない。

 本来のWLWでのサモン系MSは使用可能にする構造部分が魔力を常に流し続ける圧に耐えきれずに劣化し、最終的に使えなくなるのか......? それなら貯蓄された魔力を越えることもなくなるし構造も簡単にできる。

 

「これは行けるかもしれない......!」

 

 もし和塊が作れればベルさん達が生存できる可能性も高くなるし、和塊のサモンと同じ構造で他のゼーレやスフィアも作れるように!

 

「いいかもしれない......! しかしグランツの試運転もしないと......」

 

 そこまで呟いてふと顔を大通りの方に向けた瞬間に上と後ろ、それに横の脇道からそこそこ早い黒い何かが突撃してくる。

 

「油断したと思いました?」

 

 しかし、既に感知していた上に恐らくはレベル1であろう冒険者を差し向けられたところで被害を受けるわけもなく、手に握っていたグランツを試運転がてら発動させる。

 カードに魔力を少し流しただけでMSは発動し、私を中心にかなり広い範囲(半径20Mほど)に軽い衝撃波が放たれる。

 建物やゴミを吹き飛ばすほどの威力ではないと思ったのか強襲者達はそのまま突っ込んで来て、反対方向に30M以上吹き飛ばされた。

 

「......これは威力が出過ぎでは? あ、でも死んではないみたい。思った以上に傷も浅い、気絶してるのはグランツの効果になるのかな?」

 

 手の中で握っていたカードが塵になっていくのがわかった。グランツも韋駄天も基本は一回の使いきりだ。

 そんなことを思っていると、ついさっき吹き飛ばした襲撃者のことを思いだし情報で一人の体力を見てみたが大きく吹っ飛ばされたわりにはそこまで減ってはないものの、気絶しているらしく、WLWのグランツとは多少使い勝手が変わっているようだった。

 

「まあ、実験ができたと言うことでよしとしましょう、この人たちはつき出さないでおきますか」

 

 思わぬ成果に内心驚きつつも何者かが監視している感覚を覚えた私はさも併存のようにその場を立ち去り、教会跡の地下室に帰った。

 

 教会跡の地下室では今日の『神会』で私とベルさん二つ名が決まり、私は何の捻りもない〈不思議少女(ワンダーガール)〉となり、ベルさんが〈リトル・ルーキー〉となった。

 私の場合は成長促進効果のあるスキルを持っていることが公開されていることからか、このような名前になったとのこと。

 ベルさんはそのようなスキルがないにも関わらず私を除いて最速でランクアップを果たしたということから、超大型新人(リトル・ルーキー)となったそうな。

 

 

 ベルさん達を見送って二日が経とうとしていた夕方だった、私が〈快癒の和塊〉の作成に成功し、三枚目を作っていたときだった。

 

「アリス君っ! 君沢山〈水薬(ポーション)〉持ってたよねっ!?」

 

「! 〈水薬〉ですね! 持っていきますっ!」

 

 ヘスティア様の並々ならぬ様子に知神の眷属が大ケガを負って帰ってきたのだろうと察した私はありったけの治療用水薬とできたばっかりの和塊を一枚握ってヘスティア様を追う。

 

「アリス君! 彼女だ!」

 

 摩天楼施設(バベル)の前の広間で肩から石斧を生やして倒れる少女とその回りで必死に止血を試みている黒髪の大男と美少女......

 

「タケミカヅチ様の眷属の方ですかっ!」

 

 私は最速で駆けつけ、石斧を肩から生やす少女の容態を見る。

 

「アリス殿っ!?」

 

「驚いている暇はありません! 水薬を二十個近く持ってきたので石斧を引き抜く前に数本振りかけてください!」

 

 唐突に現れた私に命さんが驚き、その声に桜花さんも驚いたような反応を見せるが、私の言葉にハッとして水薬の詰まった袋を手繰り寄せていた。

 水薬で傷は治るが、石斧を引き抜けば出血が酷くなる。

 しかし引き抜かないと完治することはないため、どうするか迷っていたようだが、和塊を使えば少し傷は残るかも知れないが、治すことはできる。

 和塊に魔力を流し始める。

 その間にも私の指示に従って水薬を盛大に使う命さん達。

 

「斧を引き抜いてください!」

 

 とっさの言葉にも即座に反応した桜花さんが石斧を引き抜いたのと同時に最大までチャージされた和塊が効果を発揮する。

 石斧が刺さっていた部分だけぱっくりと開いていた肩口が傷ひとつなく治り、かすり傷や切り傷、打撲痕などの残っていた桜花さん達の傷まで綺麗サッパリ無くなるが、手元で爛々と輝いていた和塊はその輝きがくすみはじめていた。

 ここでこの騒動は収まり、その後近くの店で私とヘスティア様はまたタケミカヅチ様と命さん達助けて貰った礼と言って土下座され、なぜあのような状況になったかを聞いたのだが......

 

「白髪の少年達に怪物贈呈(パスパレード)をしたって!?」

 

「うちの眷属がすまん!!!」

 

 |白髪の少年、おそらくベルさんやヴェルフさん達に贈呈された怪物は50近くいたらしく、上層で、白髪の少年(ベルさん)の目撃情報もない。ということは......

 

「っ! 私が探してきますっ!」

 

「待つんだ!!!」

 

 今すぐ道具をまとめて迷宮に行かんとする私をヘスティア様は制止する。

 制止する声にはヘスティア様の神意が込められており、身体が本能的に動きを止める。

 

「ボクも行く」

 

「でもっ! 神様がいても「足手まといになるって?」」

 

 突然危険なことを言い出すヘスティア様に反論しようと口を開いたとき、私の声に被せて青年のような声が響いた。

 

「なら大丈夫さ、俺がウチのアスフィと心強い味方を連れてこよう」

 

 そう言って私達が囲んでいたテーブルに近付いて来たのはヘルメス様だった。

 

 

 命さん達が帰ってきて一日が経ち、タケミカヅチ・ファミリアとヘルメス・ファミリア、そしてリューさんの協力を受けてベルさん達の救出に向かうことになった。

 

「で、ヘスティア様とヘルメス様も同行するんですね」

 

 迷宮に入る直前に武器の確認と〈魔符〉を確認し、カードになった槍をいつもの服(夢見る迷子の魔法服)のポケットに入れ、左手でしっかりと杖を握る。

 

「さて、それじゃあいくよっ!」

 

 フードを目深に被ったヘスティア様の言葉に全員が頷き、私達は迷宮に足を踏み入れた。

 

 

 

 第一級冒険者(レベル4)二人と第三級冒険者(レベル2)三人で現れる怪物(モンスター)を瞬殺しながら走り続け、一日と少しして私達は中層に到達した。

 上層よりもいっそう暗く、より広くなった通路を走り抜ける。ヘスティア様とヘルメス様に合わせているとは言えかなりの距離を飛ばし続けていることもあり、一旦13層と14層の間で休憩を取ることになった。

 

「それにしても......ベル君はどこにいるんだろうか......」

 

 ヘスティア様の呟きに私や命さん、桜花さんはハッとする。

 命さん達が言うには14層で怪物贈呈(パスパレード)を行ったらしく、13層付近で目撃情報がなかった事からいるとするとこの層だと思っていたのだが、13層と同じく目撃情報がない。

 

「ならばクラネルさん達は18層に向かったのでしょう」

 

 そこにリューさんがそんなことを言う。

 私は反射的になぜ下の層に! と言いかけたところで18層の事を思い出した。

 安全階層(セーフティポイント)と呼ばれる地下の楽園がまさしく18層だった事を。

 

「一度冒険を経験したクラネルさんなら間違いなく18層に向かうでしょう」

 

 リューさんの言葉の意味をうまく飲み込めていない様子だったが、休憩時間が終わってしまいこの後どうするかという話になった。

 結果としては私やリューさん、アスフィさん達の言葉に負けて18層を目指すことになったが、17層と18層を繋ぐ通路の前に大きな障害があった。

 

〈階層主ゴライアス〉

 

 リューさん達は討伐したことがあると言っていたが、今の状況では無理に近い。

 ゴライアスは17層の最後の広間(ルーム)にある巨大な壁、別名〈嘆きの大壁〉と呼ばれる場所でのみ産み出される他の中層で出現する怪物から大きくかけ離れたステイタスを持つ怪物のことを言う。

 想定レベルは4ど私達のような第三級冒険者(レベル2)ではまともにやりあう前に吹き飛ばされて迷宮のシミとなってしまうだろう。

 おそらくベルさん達もここを通過したのだろう。既にゴライアスが出現していたのだ。

 

「なので今回は私とアスフィで注意を惹き付けその間に駆け抜けてもらいます」

 

 14層から最短距離で駆け抜けてきた私達は〈嘆きの大壁〉の前の通路で最終確認をしていた。

 予想していたとはいえ既に出現しているとなるとそのまま走り抜けることは不可能。

 そこでゴライアスにレベルの匹敵しているリューさんとアスフィさんが囮となり、その間に足の速い私と命さんが神様をそれぞれ背負い駆け抜けることになった。

 

「それでは手筈通りに......行きますよ!」

 

 リューさんの言葉に私達は一斉に駆け出す。囮となった二人以外には『おとぎ話の韋駄天』を使ってもらい強引に速度を上げて走り抜けようとする。

 広間(ルーム)に入ってきた私達を視認したゴライアスは異様なまでに広い広間全体を震わせるほどの咆哮を上げこちらに走ってくる。

 いくら速度を底上げしたとしてもステイタスの格も体格も圧倒的なまでにゴライアスが上回っている。

 しかしリューさんの握る木刀が強かにゴライアスの巨躯を支える膝を打ち据え、アスフィさんが放ったフラスコが爆発し追撃をかける。

 体を支える足を狙われ転倒するゴライアスを尻目に私達は走る。あと数十Mほど先に18層に続く下り坂が見えた。

 

「ォォォオオッ!!」

 

 だが、転倒したゴライアスが立ち上がり、こちらに向けてその豪腕を高々と持ち上げ、勢いのまま振り下ろす。

 これには合流しかけていたリューさん達も対応できず、豪腕によって産み出された衝撃が地面を砕きながら迫ってくる。

 後ほんの少しと言ったところで私達はその衝撃波に巻き込まれ、大きく吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされた私達は18層に続く通路の壁や低くなっている天井にぶつかりながら下り......

 

「ようやくたどり着きましたね」

 

 ベルさんがいると思われる、18層。〈アンダーリゾート〉にたどり着いた。

 

 

 




まだベル君とは合わさせねぇぜ!

はい、18層まで攻略できましたね()
今回MSをどうするかでかなり迷いました。
使いきりか永久に使用できるものにするかで一週間ぐらい考えていたんですが、WLW中に「無限にMS使えたらかー、ブリングとかはクールタイム長いけど短いのとかならめんどそうだなー」と思い使いきりになりました。
18層まで行ったしようやくベル君達と合流させれる! それにお風呂だって描写できる......!(本能を隠さないゴミ)

お気に入りや感想、評価等いただけると励みになるのでください!(堂々と要求するゴミ)

それでは次の御話で!

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