迷宮の都市のアリス   作:RyujiOturu

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どうも響野です。
1ヶ月近く更新に時間がかかってしまいすいませんでした。
原作は既に十四巻までは出ているにもかかわらずいまだに二巻分しかすすんでいないと考えると長いなーと遠い目をしています。
5000UAを突破いたしました。このような作品でもそれだけ読んでいただいていけて恐縮です。今後も頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。

それでは本編の始まりです。



ダンジョンにアタックする御話

 数日間休むように言われた私はその間にロキ・ファミリアの拠点(ホーム)だったりに遊びに行ったり、孤児院に日曜教師として行ったりと満喫した私。

 そして私はようやく中層に探索(アタック)をしに行けると言うことでポーションを買いにミアハ・ファミリアの拠点(ホーム)『青の薬舖』にいた。

 

「じゃあ、このポーションを五個もらっていいですか?」

 

「ん、五個なら二千ヴァリスね」

 

 ミアハ・ファミリアの団長にして店番のナァーザさんが私に値段を伝える。私はその額をポーチから取り出し渡す。

 

「ん、まいどあり」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

 少しずつ(リトルアリス)(シャドウアリス)との共存が上手くできるようになってきたのだが、その結果思考(プレイヤー)の素が出てくるようになって来た。

 

「ああ、そうだ。ナァーザさん。ベルさんにはこんな風に売らないでくださいね?」

 

 ナァーザさんがぶるりと震える。

 

「なにを言っているの? こんな風って......」

 

「ああ、ちゃんとした値段ではない値段で売ることですよ」

 

 ナァーザさんが顔を反らし店の奥に行こうとする。私はその背中に向かって、

 

「一応私もLv2なのでナァーザさんぐらいでしたら殺せますよ?」

 

 びくりとナァーザさんが震え、こちらをゆっくりと向く。私はにっこりと(リトルアリス)としての笑みではなく、意識()として笑みを浮かべる。

 そしてその笑みを見たナァーザさんは顔に怖いと浮かぶ。

 

「私にこういう商売をするのは見逃してもいいですけど、ベルさんにこういう商売をするのでしたら遠慮はしませんよ?」

 

 ふふふ、と笑い『青の薬簿』の扉に手をかける。

 

「ポーションありがとうございました。それでは」

 

 ギィ、と音を立てて扉は開き、私は『青の薬舖』を出る。背後の恐ろしいものを見るようなナァーザさんに(リトルアリス)での笑みを向けて。

 

 

 

 

 次に私が行ったのは摩天楼施設(バベル)の7階。

 ヘファイトス・ファミリアが作った武具の販売店がある四階から七階で下の階は今のままでは手が届かない値段だったりが多いが上の階は下位構成員の作った武具が販売されている。とミイシャさんに教えてもらったので新しい武装を探しに来たのだ。

 

 

 へぇ、でも魔法もスキルもあるんだし、もう要らないんじゃない?

 

 あ、シャリスちゃん。

 

 うん、そうだよー。

 

 あ、アリスちゃんまで。えっとね、魔法が効きにくい怪物(モンスター)がいるらしくて。それ対策に新しい武器を探そうかなーって。

 

 ふーん、意味があったのね。

 

 意味があるならいいやー。

 

 あれ? そういや君たちそんなこと考えるタイプだったっけ? ......まあ、いいや。

 

 

 そういった脳内で会話をしていると目的地、摩天楼施設(バベル)の七階についた。

 私はヘファイトス・ファミリアがまとめている店に入り、武具を見る。

 大剣や短剣。槍に鎚等、さまざまな武具がある中、私の目に止まったのはWLW(ワンダーランドウォーズ)で見たことのある。とある武装を見つけた。

 それは雑に置かれており、手入れはされているようだが薄汚れていて、あまりいい扱いはされてないらしい。

 

 

 これってジグルドさんの槍に似てるね。

 

 そうね、でもなんだか小さいような。

 

 うーん、でも、もの凄く引かれるものがある。

 

 私もー!

 

 私も同じ意見ね。

 

 

 脳内での意見はほぼ同じ、この槍、騎槍を買う。

 値段は九千ヴァリス、武器名は〈乙女槍(ヴぁるさー)〉うむ、何となくしっくり来る名前だ。

 私はその槍を持つとカウンターに向かう。

 

「あのー、すいませーん」

 

「はい、なんですか?」

 

「えっと、この槍を買いたいんですけど」

 

「はい、この槍ですね」

 

 私は店員に槍を渡すと、店員は少し顔をしかめ、私の方を向く。

 

「えっと、この武器は〈乙女槍(ヴぁるさー)〉って言うんだけど、いいのかい?」

 

「はい? 特に困ることはないですけど?」

 

「わ、わかりました、値段は九千ヴァリスになります」

 

「わかりました、九千ヴァリスですね」

 

 私は財布を取り出して中から九千ヴァリスを取り出し、店員に渡す。それを受け取った定員は槍を少し磨くと、私に手渡してくれた。

 

「ありがとうございます」

 

「いえいえ、お買い上げありがとうございました」

 

 にこりと笑い、手を振る定員に見送られ私は店を出る。

 

 これでようやくダンジョンに潜れる。そう浮かれながら私は足早に摩天楼施設(バベル)を降りて行った。

 

 

 

 

「ふう、やっぱり杖とは違うな。まあ、重心の位置が違うし当たり前か」

 

 私はダンジョンの九層に来ていた。ここは硬い-かったと言った表現が今の私には適切なのだが-(キラーアント)だったり、速い-勿論これも過去形だ-(ウォーシャドウ)がなかなかのテンポで発生するため、新しい武器、〈乙女槍(ヴぁるさー)〉の試運転にはもってこいな階層だ。

 なんていいながらうまく扱いきれずにピンチに二回ほど陥ったのはいい経験だ。うん、ポジティブに行こう。

 

「まあ、結果的には下の階層に進むことになるよねー」

 

 そうして現れる怪物(モンスター)を討伐していくと十層に降りるところまで来てしまった。

 十層からは霧が発生したりするぶん危険なのだ、まあ、その分経験もつめるしいいけど。

 そんな考えで十層に降りた私は予想以上に苦戦し、もう甘い考えで動くのはやめようと心に誓った。

 そうして数時間をかけて十層から十一層に降り、また数時間かけて十二層に降りた。このまま中層、十三層に降りるつもりだったため下に続く部屋(ルーム)を探していると、十数メートル前の通路横から火球(・・)が飛び出して壁に着弾し軽い爆発を起こした。そしてそれと同時に戦闘音が激しく起きる。

 私は嫌な予感を覚えながらも火球が飛んで来た通路に入り、奥の部屋(ルーム)に入ると、そこには複数の倒れ伏した他のファミリアの冒険者と武器を持ち中央に陣取る怪物と戦う冒険者達、そして中央に陣取る怪物は赤い鱗を身に持ち、鋭い牙と爪、そして巨大な体躯を持つ小さくとも、強大な力を持つ〈小竜(インファント・ドラゴン)〉だった。

 私が部屋(ルーム)に入ると入って来た入り口が唐突に崩壊し、私と他のファミリアの冒険者達が閉じ込められる。

 

「貴方っ!? 速く逃げてっ!」

 

「もう逃げられませんよっ!」

 

 黒髪の刀を携えた少女が私に叫ぶが素早く返す。私は〈乙女槍(ヴぁるさー)〉を構えて小竜を見据える。

 小竜は威嚇するように小さく唸り声を立て、牙の間から火の粉を枚散らせながら鎌首をもたげ、何かを吐き出す前のような動きを見せる、その事前行動(モーション)から少し前に壁を破壊する程の破壊力を私にまざまざと見せ付けた火球を放つのだとわかった。 

 素早く横に跳び跳ねるようにして火球の通るであろう小竜の前から離脱しつつ槍を振り、〈SS(ストレートショット)〉を射つ、これは着地したときに大きく隙を見せることになるのだが仕方ない。何故って?黒髪の少女の反応が恐ろしく遅かったからだ。仕方ない、見捨てるのはなんだか嫌だしね。

 〈SS〉は火球とぶつかり爆発、火球も同じく爆散し辺りに炎を撒き散らす。

 

「私が前に出ます! 貴女は倒れてる人達を助けてください!」

 

 そう言うだけ言って走り出す。槍買っといてよかった。近接戦闘が杖よりかはしやすいはず。

 小竜は爪を振るって接近を許さないが、強引に槍を盾にして接近し槍を突きだす。鋭く尖った穂先はなかなかの速度で繰り出され、容易く赤い鱗を貫きながら肉をえぐり鮮血を撒き散らさせる。

 苦悶のうめき声を漏らしながらも牙で噛み殺さんと迫る小竜の口に焦ることなく後ろに飛び退き〈SS〉を射つ。

 しかし素早く避けながら距離を詰めて来る。着地し、槍を構えるが上から振り下ろすように追撃を繰り出してきた小竜の爪が私の体を掠り、血と肉が飛ぶ。

 全身を激痛が走り抜け動きが止まりそうになるが尻尾を振り始めているのが視界に入っていたためすぐに飛び退きつつ牽制の為〈DS(ドローショット)〉を射って置く。

 

「うおぉぉおおぉぉぉ!!」

 

 私にしつこく追撃を決めようとする小竜との間に一人の黒髪の巨漢が盾を持って入り込む。

 

「っ、すいませんっ!」

 

 黒髪の巨漢に謝り、素早く後ろに下がり朝買ったポーションを素早く腕に振りかけ追加で飲む。

 

「大丈夫ですかっ!?」

 

「大丈夫ですっ!」

 

 ポーションを再度腕に振りかけ、立ち上がる。

 

「あの人の名前はっ!?」

 

「えっ?」

 

「速くっ!」

 

「え、えっと、桜花です」

 

 桜花、桜花、何度か心の中で復唱し、彼を仲間だと認識(・・)する。

 

「ありがとうございます! 貴女は?」

 

「えっ? 私は命ですけど......」

 

「わかりました、引き続き負傷者を助けてください」

 

 そう伝えると傷から血が溢れだし、燃えているかのような痛みと熱が全身を駆け巡っているなか、槍を抱えて走り出す。

 一人で戦っている桜花さんの負担を減らすため、私は魔法を放つ。

 

「!? 貴女! 桜花を殺す気っ!?」

 

「そんなつもりは有りませんっ!」

 

 大きな声で命さんに反論し、槍を突きだした状態で小竜に向けて走り出す。

 桜花さんが小竜を惹き付けている間にポーションを使って少しだが回復を計り、少し傷が塞がったのを確認した上での突進だったのだが、肩口の傷が開き血が溢れる。

 激痛が肩から走るがそれを根性で耐え、槍が接触できる距離まで接近し、走ったままの勢いで小竜の脚を狙って槍を突き出す。勢いの乗った槍は小竜の脚を覆う鱗を易々と貫き大きく体勢を崩させる。

 桜花さんが体勢の崩れた小竜の頭部に片手で持っていた斧を振り下ろす。それは鱗を軽々とは行かないものの片眼を完全に潰し、鱗を撒き散らしながら斜めに振り抜かれる。

 

アァァァアアァァァァ!!!

 

 大きな叫び声を上げ体を激しく動かし、尻尾や爪を振り回しそれが私達に迫る。接近しようとしていた私と追撃を決めようとした桜花さんは武装をあえなく盾にして攻撃を防ぐが大きく弾き飛ばされる。特に私は体が軽いから桜花さんよりもより遠くへと飛ばされる。

 空中で体勢を立て直し着地と同時に走り出すが私の目に飛び込んで来たのは無策にも突撃を行う命さんの姿と、命さんに対して前脚を振り上げ爪で切り裂こうとする。

 

 私はあって間もない人の死する未来が見えた気がした。

 素早く顔を上げると走り出している命さん。そしてそれに気付いて前脚を振り上げる小竜。

 決して死なせない! (リトルアリス)(シャドウアリス)が声を揃えて叫ぶ。それに対して思考()は危険だ、ダメだ、見捨てようと冷酷に言うが。心が()が誰よりも大きく叫ぶ。

 

 助けなきゃ! 助けられるかもしれないのだから!

 

 私の本当の意志はわからない。でも、助けなくちゃ、って思いが私を体を動かさせる。

 

「命さぁぁぁん!!!」

 

 今まで上げたことの無いような声を上げながら走り出す。

 背中の神聖文字が燃え盛っているかのように白熱し熱を感じる。しかし、その熱が高くなって行くほどに意識は鮮明に体は軽く、より力強くなって行く。

 命さんが繰り出した太刀が小竜の鱗に阻まれ大きな隙を晒した体、そこに小竜の振り下ろす、軽々と命さんの命を奪い取れる爪が命さんに迫るが、そこに私は飛び込み命さんを突き飛ばす。

 迫ってくる爪を見ながら槍を間に挟み込むも、大きく弾かれて体勢を崩す。小竜が繰り出す追撃の爪を回避しようとした私だったが、体勢が崩れている上に小竜の攻撃を防いだときに足首をひねり、それが大きく動きを鈍らせる。

その結果、小竜の爪が私の、(リトルアリス)を左目を掠めていく。

 しかし掠めると言っても水晶体を貫き、虹彩を引き裂いて行く。私は激痛が来る前に体の感覚をすべて(リトルアリス)から思考()に切り替える。そして爪が振り抜かれた。

 左目の視力が失われ、それと同時に今まで味わったことのない、激痛が左目を中心に全身を駆け巡る。

 

「アァアアァァァァッ!?」

 

 爪との間に槍を挟み込んだことで弾き飛ばされた私はボールのように跳ね飛ばされ、ゴロゴロと転がって行く。

 体の各所をぶつけ痛みが走るが左目から発信される圧倒的な痛みが私の口から絶叫を上げさせる。

 立ち上がる事が出来ずに転がったまま動けない。小竜は桜花さんが押さえてくれているようだが止めどなく溢れてくる血液が薄い碧色の髪を真っ赤に染め、服や顔までも血で染め上げていく。

 激痛と出血によって意識が朦朧としはじめて来たが、誰かが近付いて来るのが何となくわかった。

 

「しっかりするんだっ! ここで倒れたら行けない!」

 

 そう中性的な声が耳に入る声のする右に顔を向けると中性的な顔立ちで、茶色のミディアムにしてある髪の少年が居た。

 その少年は腰から私の使っているポーションよりも濃い色のポーションを二つ取り出し、私の左目に振り掛ける。

 少しだが痛みが和らぎ出血もある程度治まった。只のポーションではないだろう、ハイポーションかそれらに近い物。そう思考しながらゆっくりと立ち上がる。

 

「なっ!? まだ動いてはだめだっ! 傷が開くぞっ!?」

 

 茶髪の少年? そう焦ったようにして私を止めようとするが私は小竜に向かって歩き出す。

 

「桜花さん一人だけにまかせられません、速く私が行かないと」

 

 それだけをうわ言のように呟いた私は思った以上に思考ができていないらしい。でももういい、私がするべき事はただひとつ、ここで小竜を殺して生きて帰るだけ。

いまだに背中の神聖文字は白熱したままで体は命さんを助けた時よりも軽く力はあふれでてくる。

 槍を手に持つと全力で駆ける。

 さっきよりも速く、力強く踏み込んだ私は小竜が反応するよりも速く接近し、槍を少し引き、突き出す。

 繰り出された槍は鱗なんて無いかのように抵抗なく肉まで到達しえぐるようにして深くまで傷を広げる。

 血とうめき声を撒き散らしながら小竜は暴れるが、素早く退避しつつ〈SS(ストレートショット)〉を射ち、爆発によって鱗を剥がしながら動きを止めさせる。

 そこに桜花さんが飛び込み、斧でさらに傷を広げさせる。

 私は槍で心臓のある部位。魔石を狙って槍を突き出すが肉が厚く魔石まで届かない。ならばと素早く思考を回し、脳を破壊して殺すことに意識を切り替える。

 槍を細かく振るって牽制しつつ〈SS(ストレートショット)〉を射ってダメージを蓄積させ鱗を剥がしていく。そして数分もかからず頭部を守る鱗はほぼなくなる。

 桜花さんがヘイトを集めようとするが私を危険と判断したのだろう。近付こうとするたびに桜花さんではなく私に向かって爪や尻尾を繰り出して来るため接近出来ない。

 ゆっくりと左目からは血が流れ、体はすでに悲鳴をあげているがそれらを意志と根性で耐え抜きまた走り出す。

 小竜は私を捕捉するとうなり声を上げ、爪を振るって近付けまいとするが爪を槍で反らし槍が当たる距離に入りこむ。私は槍を引いて溜めを作り、脳を一撃で破壊するために極限まで集中する。

 小竜は牙を使い私を先に殺そうとするがそれよりも先に槍の穂先が脳まで届く。しかし壊すまでには行かない。

 小竜の牙が私の体に届く寸前、

 

「〈DS(ドローショット)〉」

 

 短く呟き、脳の中に星形の光弾が発生する。

 内部に発生した星形の光弾は脳を蹂躙し、頭部が中から破裂し、生命活動を強引に停止させる。

 小竜のいた部屋(ルーム)の生存者達の歓声が上がる。私は槍を突き立てて立っておこうとするが意識が混濁し思考が上手く出来なくなる。

 ゆっくりと槍にすがるようにして座り込み、そのまま意識は暗黒に落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

「うぅ? ここは?」

 

 ゆっくりと瞼を上げると眩い、ダンジョンでは決して見れないような眩しい光が右目に入り込んで来た。

 体を起こそうとして全身に痛みが走る。思わずうっ、と声が漏れ、また倒れこむ。柔らかいベッドに寝かされているようで私が首を曲げて辺りを見ると白い壁に白い天井、点滴があることから病院だと判断する。

 なぜ病院に居るのかは大体想像がつくがどうすべきかと考えているとガラガラガラッ! と病室の扉が開き艶のある黒い髪のツインテールの少女と白髪で深紅の瞳を持つ少年。茶髪で小さな少女、そして見たことのない黒に薄く紫がかった髪の白衣を来た女性。四人が病室に入って来た。

 

「あ、ヘスティアさ「何をしてるんだいっ!?」っ......」

 

 ヘスティア様に私は怒鳴られた、私は思わず押し黙るとそのままヘスティア様は私に抱きついた。

 

「本当に心配したんだよ? 帰って来ないんじゃないかって」

 

「......すいません」

 

 私はどう答えるべきかわからず謝るしかできなかった。

 

「もう心配させないでくれよ?」

 

「......はい、すいません」

 

 謝るだけの私に笑いかけながらゆっくりと離れて行くヘスティア様、そして次に口を開いたのは白衣の女性だった。

 

「始めましてアリスちゃん、私はエイル。ヘスティア達と同じ神だよ、よろしくね」

 

 手を差し出して来るエイル様の手を私は握り、

 

「エイル様ですか......よろしくお願いします」

 

 にっこりと笑みを浮かべて返す。

 エイル様はその私を見て少し驚いたような表情を見せるが、すぐにその表情は引っ込む。

 

「えっとだね、それで君に言いたいことがあって来たんだが、いいかい?」

 

 先ほどとはうってかわって緊張感の増す病室、その中で私は迷わず頷く、エイル様が言うであろう事は既に予想はしている。

 

「それじゃあ、アリスちゃん。君は冒険者としてもうダンジョンに潜れないだろう」

 

「そう、ですか」

 

 予想していただけに直接そう言われるとやはり心に来る何かはある。しかし私は諦められない。まだまだベルさんやヘスティア様に恩を返しきれていないのだ、まだ引退は速い。

 

「うん、まだ傷も残っているから少しの間は通院してもらうけど......」

 

「すいません。それは出来ないです」

 

 私の放った言葉に病室がシンと静まる。

 

「何故か聞こうか?」

 

 私の言葉の真意を探ろうとか、エイル様が私に聞いてくる。

 

「私はヘスティア様に拾ってもらった恩が有ります、ベルさんには最初の頃に養ってもらった恩が、まだまだ私はそれらの恩を返しきれていません。私は助けられてばかりです、少しでも私はヘスティア様達に恩を返さなければ行けない、こんなところで私は止まっていられないんです」

 

 淀みなく私の口から出される言葉を聞いていたエイル様は思わずと言った様子で笑みをこぼす。

 

「ああ、ごめん。いや、とてもヘスティアはいい眷属(子供)達に恵まれていると思うとね」

 

 そう言ったエイル様は私の手を握ると、

 

「ごめん、さっきは嘘を言ったよ。君の左目は治せる宛がある、まあ、通院は結局してもらうけども。それでも君は冒険者に戻れるよ」

 

 エイル様はさっきの言葉を取り消した、その表情は悪戯の成功した子供と同じそれで私は思わずため息を吐く。

 

「ごめんごめんアリスちゃん、気を悪くしないでね?さてそれでなんだけど、私のファミリアの団長が特殊な魔法の使い手でね、その魔法で君の左目が治る可能性があるんだ。お金はもらうけどね?」

 

 ウィンクをしたエイル様の話を詳しく聞き、ヘスティア様達の了解を得てその治療を受けることが決まったわけだが、治るまで着けておく眼帯をもらった。

 その眼帯は黒を貴重としつつも目に当てる部分は碧色の装飾をしてあり、私の髪にあわせて作られているらしく特注品だといっていた。

 私は一日病室に泊まることになり、その日はヘスティア様達は帰って行ったがその後に入れ替わるようにして黒髪の男性が入ってきた。その後ろには小竜を倒すために共に戦った桜花さんと命さん、そして気弱そうな少女が続く。

 黒髪の男性はゆっくりと膝を着くと手を床に叩きつけ頭を大きく下げる。

 

「今回はうちの命のせいで、すまなかった!」

 

 それは前世のテレビドラマだったりで見たことのある謝罪の仕方『土下座』だった。

 

「あ、い、いえ。気にしなくても大丈夫です。私が自分の意志で命さんを助けました。ならば感謝されど謝罪されるようなことではありません、なので頭を上げてください」

 

 頭を下げていた、恐らく神であろう男性に頭を上げてもらう。

 

「し、しかし......」

 

「それ以上謝るのは私の判断には対する侮辱と同じですよ?」

 

「む、すまない」

 

 男性は再度頭を下げながらも、命さん達を自分の左右に立たせると、

 

「俺は命達の主神、タケミカヅチだ。今回は謝りと戦利品のことだが命」

 

 タケミカヅチ様は命さんに声をかけると、袋を持って私の前に来て中身を見せる。

 そこには子供の頭と同じぐらいの大きさの魔石と大きな牙が一つづつ、そして複数の鱗が入っていた。

 

「私達にこれを受けとる資格はないと思っています」

 

 命さんがそれだけ言うと出ていく、それを気弱そうな少女がそれを追って出ていく。

 

「すまない、命は責任を感じていてな。それは小竜のドロップアイテムだ受け取ってくれ」

 

 タケミカヅチ様はそう言って再度頭を下げると病室を出ていく、桜花さんがタケミカヅチ様を追って出ていこうとしたのを呼び止め、私は小竜の鱗を渡す。

 

「桜花さんがいなければ私は死んでいたかもしれません。これはその感謝の印です。受け取っていただけますか?」

 

 桜花さんは小竜の鱗を受け取り、少し困惑しながらも私の意思を受け取ったのか、ありがとうとだけ言い病室を出ていく。

 私はその後ろ姿を見送りながら私は左目を覆う眼帯に触れる。この感触に思わず心が揺れる。

 ふぅ、と息を吐き出し、私はゆっくりと瞳を閉じる。そのまま意識は暗闇に落ちていった。

 

 

 

 

 翌日退院した私は拠点(ホーム)となっている廃教会に戻り、ヘスティア様にステイタスの更新を行ってもらっている。

 背中にゆっくりと柔らかい指で神聖文字が刻まれて行く感覚を目を閉じて味わっていく。

 

「終わったよアリスちゃん」

 

 そう言って渡された共通語に書き直されたステイタスを確認する。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

Lv.2

 

《発展》

 

情報:I→G

 

 

《基本》

 

力:H147→G264

 

耐久:H121→E472

 

器用:H102→G203

 

敏捷:G241→D578

 

魔力:G217→D549

 

 

《魔法》

 

変化無し

 

 

《スキル》

 

冒険目録(ヒエログリフ・ページズ)

・任意でステイタスに補正

・任意でステイタスの上限を解放

・一定時間で効果が消失、消失後にステイタスに下方補正

・冒険を繰り返す度に効果上昇

 

他、変化無し

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 手渡された紙には新たにスキルが増えていた。

 効果はそこまででは無さそうで恐ろしく凄まじい。勿論デメリットもだが。

 

「いまだにステイタスの上昇量は衰えて無いね」

 

「そうですね、耐久の上がりようには見たときに思わず吹き掛けました」

 

 今まで多く上がっても耐久は二百も上がらなかったことを考えると小竜から受けた攻撃がそれだけ危険だったと言うことになるだろう。

 

「あ、そうだアリスちゃん! 僕もついに魔法が発現したんだよ!」

 

 唐突にベルさんが言った事は本当に脈絡の無かったことで思わずフリーズしてしまったがすぐに言葉の意味を理解した私はベルさんに、おめでとうと言ったのだが、その後に続いた言葉の意味を理解した時卒倒しそうになってしまった。何故って? ベルさんが一人で(キラーアント)を百体以上相手にしたって聞いたからですが?

 

「ボクもその話を聞いたときは呆れたけどね」

 

 まあ、私はベルさんがリリルカさんを助けるために無茶をしたとわかったからそこまでの衝撃は無かったものの、ねぇ、まあ、ベルさんらしいと言えばそうなのだけども。

 

「これからもダンジョンには潜るのかい?」

 

 ヘスティア様が不意に放った言葉は地下室の空気に一気に緊張感を増させるもので、

 

「はい、そのつもりです。でもヘスティア様達に心配をかけるような事はしないつもりです」

 

 しっかりと答えた私を見て苦笑しながらも、わかったと言ってくれるヘスティア様は優しいのだろう。私はその笑みを無くさせないように頑張る必要があるだろう。

 私は時折感じる視線を意識しながらゆっくりと体を伸ばす。

 地下室には私の買った槍がおいてあるが、激しく扱われたせいで少し薄汚れ、欠けているようにも見えはするが強度はほとんど変化していない、何故わかるのかは《発展アビリティ》の情報を使ったからで、大体の情報がわかる為、それで確認したからだ。

 

「それでも無理は出来るだけ避けてね?」

 

「はい、これからは出来るだけベルさんらと共に潜ろうと思っています」

 

「そうかい、なら気を付けてくれよ? 後、泥棒猫からベルくんを守ってくれよ?」

 

 ヘスティア様の浮かべる笑みに思わず引きそうになるも私はこらえてベルさんを見る。ベルさんはよく意味を理解できていないらしく首をかしげている。

 私はそのいつも通りとも言えるようなヘスティア様達を見て笑う。その笑みは(リトルアリス)が浮かべるものでも()が浮かべるものでもなく、年相応の優しいものだった。

 

 

 




いかがでしたか?
一万字近く行ってしまいましたすいません。
新たに追加されて行く要素もこれからあるので、今後投稿させていただこうと思っている主人公の設定で詳しく書きますが、後書きでも少し書きたいと思います。



《発展》〈情報〉

勿論のこと希少(レア)で熟練度が高まっていくたびに一度に見れる人数や数が増える。怪物(モンスター)の体力だったりは見えないが、人の魔力だったりはWLW(ワンダーランドウォーズ)仕様で見れる。
現状では三人まで同時に見れる。

WLW仕様についてはWLWの動画などを参考にしていただけるとありがたいです。



このような仕様となっています。
それではこれぐらいで、また次の御話で会いましょう。
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