元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん   作:ムメイ

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小学校へGO


Day92 I.O.Pコミュ活動・学び舎訪問その2

今日も今日とて学び舎にお邪魔することになってます。はい。

勿論のこと制服で。他の服装は絶対に駄目とのお達しです。死ね。

別にもう着慣れたし見られるのも慣れたからどうとも思わないけどさ。

こんな痴女みたいな格好で青少年の教育に悪いとは思わんのかね?

教育者はどんな頭してるんだか…まさかと思うが子供をダシに人形を見たいなんて浅はかな考えじゃねーだろうな?

ハイエンドモデルに分類される私達I.O.Pの人形はそうそうお目にかかることはないだろうさ。

でもだからといって子供をダシに会いたがる程か?無いと信じたい。

とにかく今日は小学校に向うことになってる。幼稚園と違って何かあるんだろうなぁ…と思うけど。

まぁこういうキャンペーンを何回かしてるのかもしれないし慣れてるかもしれん。

向こうの出方を窺うしか無いな。えっとどれどれ…今日向う先はどこだろう?

お兄ちゃんから端末にマップデータが送られるんだけど…お、来た来た。

………うそだろ?

 

「私の母校じゃん…」

 

数日前にふらりと行ったばかりの我が母校のマップデータがそこには記されていた。

私の古びた記憶を掘り起こしてもそんなキャンペーンがあったか?

いや、記憶にない。んな事は一度たりとも記憶に無いぞ…職場体験とかそんなのがあったような気がするけど…

社会に対しての見聞を広げる活動はそんなに無かった…もっぱら最低限の文字の読み書きばっかり。

あとは社会のルールを教えて貰ってから…やる気のある子だけが勉強してたっけか?

あーくそ、ぜんっぜん覚えてない…馬鹿騒ぎばっかり覚えていて学校のこと全然覚えてない!

デコっハゲ先生の髪の毛を毟り取ったりとか女の先生のスカートをめくったとか…

掃除道具入れを蹴っ飛ばしてぶっ壊したとかモップをフルスイングしてガラスを割ったとか…

ゲーム以外の事っていったらそんなのばっかりじゃん…うわー…

 

「行先はわかったから…行くしかないかぁ」

 

あの受付の人に顔を覚えられてるし嘘を言える人形だってバレちゃうんじゃね?

機械である人形が嘘を吐けるっていうのは結構な異常だったりするんじゃ…?

いや、パラドックスを考えられるのが異常なんだっけか?まぁどうでもいい。

そろそろ一人用の身軽な移動手段がほしいな…マジな所バイクとか欲しいね。

今の所基地所有の古びた4輪ばっかりだし…一番身軽なのが荷台付きのバギーカーってのがなぁ…

あの基地のアーキテクトに頼めば作ってくれたりするかな?

連絡手段が限られてるけど…とりつけられたらワンチャンあるかな?

 

「あ、やべ…そろそろ出ないと」

 

うんうん考えてたら時間ばっかりが過ぎていた。やべぇ。

急いで工廠に駆け出す。バギーはそこにあるから飛び乗ってからアクセル全開でかっ飛ばす。

 

 

――――――――――――

 

 

地元民しか使わないような裏道使ってギリギリ滑り込めた。

着いた頃にはお昼のチャイムが鳴ってから校内の子供が一斉に庭に出ていっていた。

 

「こんにちは」

「あら?この前の…今日は何の御用でしょう?」

「I.O.Pの…」

「……なるほど、人形でしたか。本当に技術って進んでますね…人間と遜色ないんですから」

 

私のAIが元人間なんてのは言えないけどな。まぁ他の人形も人間と遜色ねぇよ。

その癖スペックの殆どは人間と比類するまでもなく優れてるってんだから。

人間用の通行証じゃなくて人形用のを渡された。まぁ物品扱いだしなぁ。

人間じゃないからある程度のことはしても許されるみたいな免罪符か?

くっだらねぇ…と思うけどまぁ人間ってのは汚いからね。そんな所でしょ。

なんでも全校生徒集めてグラウンドで人形のスペックのデモンストレーションをしてくれってさ。

その後は体育の授業見たく子供に混じって遊んだりってのが今日の流れらしい。

 

「不慮の事故が起こった場合は?」

「I.O.Pに賠償が発生するな。まぁ人形のお前が気にすることはないな、ガハハハ」

 

あんまり良い感じではないなぁ…案内してくれている先生は体育と道徳の教員だったっけか?

子供に道徳心を教える教員がそんなのでいいのかなぁ?まぁ親がそんなに居ないから文句も出ないか。

時代が時代ならこういうのはバシバシ叩かれてるのかも知れないけどねー

 

「お前たち人形は人間様に媚び諂えば良いんだよ、ガハハ」

 

生活基盤を支えているのは自律人形だ。ライフライン整備、維持。

家屋の修繕などのかつての肉体労働は全て人形が取って代わっている。

危険な高所作業もそうだね。ビル建設なんてのも専ら人形の専売特許になってる。

裏を言えば人間がそんな危ないことをしたがらない。する必要がないならやりたくないってのが多い。

だから人間の仕事なんてのは数少ない人間の長所である思考力に重きを置く仕事だ。

デザインだったりプランニングだ。指揮官なんてのはそうだね。

私達人形には思考の限界ってものが存在するみたいだ。意図的な物があると思うけどね。

私?まぁ私はイレギュラーだからあってないようなもんだよ。

一応自律作戦ってのも出来るけど人間が直接指揮するのに比べて効率は悪い。

どう動けと指示があるだけでも私達の動きは活発になるんだよ。

後は敵を見つけて撃ち殺せばいいだけだもん。I.O.Pのエリート人形は完全自律型もあるらしいけどね。

私と同じでバックアップが利かない…死んだらそこでお終いな人形だ。

人間と同じでね。次なんてものが存在しなくなった人形だ。

そこまで行けば人形と人間の差ってなんだよ?ってなっちゃうんだけどね。

 

「校長、例のが来ました」

「ふぅむ…これはまた上玉だな…」

 

校長室に通されれば…まぁ見覚えのある老人が出迎えた。

やったらと話が長くて私達の間では専ら不評だった先生だけどね。

私を通した先生もだけど改めてって感じで私の身体をジロジロ舐め回すように見てくる。

正直に言ってかなり気色悪い…ロボット権利団体に訴えてやろうか?

 

「えぇおっぱいじゃのぅ…」

「I.O.Pもいい趣味してますよ。どれちょっと味見を…イデデデデ!?」

「黙って聞いてりゃ…ロボット権利団体に訴えるぞ?ちょっと直れや。修正してやるからよ」

 

バカやらかした時によく殴られてたし…ちょうどいいやり返しの機会じゃん。

 

*鈍い殴打音* *デデーン* *おっぱいぷるーんぷるーん!!*

 

「「まえがみえねぇ」」

「ちょっとは反省しろよ。クソスケベ先公…先にグラウンド行ってるからな?」

 

 

――――――――――――

 

 

「はーい、皆~ちゅうもーく!!あ、はい…すいません…えーっとんんっ…I.O.Pの人形のHK417って言いまーす。今日はね皆とスキンシップを取るために特別に来ました!」

 

校庭にはまぁそこそこな人数の子供が集まっていた。肌の色は様々だし男女様々。

集まっても落ち着きはないのかくっちゃべってるし小突きあいが発生してる。

元気があるのは良いことだがちょっとはこっちに注目して欲しいなぁ…と思ったり。

まぁ良いか…大声張り上げて自己紹介したらそこそこ聞いてくれた。

反応は様々だけど知るかバカ!そんな事より遊ばせろって感じだな。

 

「オラ、ちょっと先公おせぇぞ。遊具くらいもって…来てねぇのかよ使えねぇな」

「あふん!」

 

スケバン風に振る舞ってからあの体育のクソゴリラのケツをしばくと子供からは反応が帰ってくる。

まぁ子供にしか見えない私にぺこぺこしてからケツをしばかれてる風景は滑稽よな。

特に私は知ってるんだがこの先公は子供に対しても横柄な態度してるバカだったからな。

この際その腐った根性を叩き直すために徹底的にしばき回してやろうか。

こんな事をする人形なんて私ぐらいだろうしな!!

 

「サッカーボール持って来い、30秒!はい!!」

「はひぃ!!」

「サッカーゴールは…チッ片付けてるか…まぁいっか」

 

グラウンドを見渡せば片隅に追いやられているサビサビなゴールネットがあった。

あれを持ってくるってなると子供は嫌そうな顔をする。大人がやればいいのにさせるんだよねぇ…

まぁ丁度いいデモンストレーションになるかな?私が運んでこよう。

 

「みんなー!あのゴール運ぶのは嫌だよねー!?」

「「「「いやー!」」」」「おもいもん!」

「だよねー!一人であれを抱えるなんて無理だよねー?」

「むりー!」「ふざけんなー!」

「じゃあ人形のお姉ちゃんがパワフルな所を見せちゃうよー!」

 

そう言ってから全速ダッシュでゴールポストまで駆け寄っていく。

この時点で100mを5秒フラットなタイムだからくっそ早い。

これでも人形の中では遅いっていうのが頭おかしいと思うんだ。

で、推定80kgの結構な大きさのゴールポストなんだが…普通は大人二人がかりで運ぶものなんだけど…

 

「はっはっはー!」

「すげー!」

 

ざわざわと沸き立つ子どもたち。まぁ見た目はおんなじ位のおっきさの子供が軽々と担いでたら驚くわな。

で、担いだまま重さを感じさせずまた全力疾走で配置したら…っと。

 

「じゃあー今日のこの後の授業はサッカー!おいクソゴリラおせぇんだよ!このスカタンがぁ!!」

「アッー!!!もうだめ、尻はやめンギィィ!!」

「口でクソを垂れる前にマムをつけろ!!」

 

もうキャンペーンの流れなんて知ったこっちゃねぇよ。私がやりたいようにやる!!

子どもたちだって遊び盛りな年頃の子ばっかりなんだから遊ばせようぜ?

私も混ざってのサッカーになったけど本気だすと当然ながら勝負にならん。

じゃあどうするかって言うと…手を抜くっていうか出力を落としに落としてから年頃相応にするの。

つまりは私の身体の見た目…ちょうど14歳前後の筋力に近くする。

勿論シュミレートの結果だから実際の子供と比べたら強いかも知れないけどね。

 

「やるよー!プレイボール!!」

「それは野球だよ、デカパイ!!」

 

私のあだ名はデカパイになってた…いや、デカパイって…ちょっとショック。

でっかいのは認めるけどあだ名にされるのはちょっと…あとネタにマジレスされてなぁ…

 

「へぶっ!?」

 

勝手にショック受けてたら子供がシュートしたサッカーボールが私の顔面に吸い込まれた。

じーんと来る痛みに悶てその場で蹲ったけど周りはもう気にした様子無くボールを追っかけ始めてた。

女の子も元気いっぱいでもうボール追っかけ回してたから…私のことなんざみちゃいなかった。

これコミュニケーションの必要あったかな?私はもうわかんないよ。

 

 

――――――――――――

 

 

帰るまでに私は何度もデッドボールを食らってその度にグラウンドに蹲ることになった。

腹いせにゴリラと校長のケツをしばきまわった。私は悪くない。

他の先生はなんか納得した様子で見てたから他の人形にも少なからず嫌な感情を持たれるような行動してたんだろ。

実力行使に出た人形は多分私が最初なんだろう…ゴリラには別れ際に全力で蹴っておいた。

腰からイヤーな音がしてたが私は知らん。今までのツケをケツで払わせただけだ。

 

「まぁ…子供と一緒に遊べたのはいい経験か…」

 

年を考えりゃ…もう22にもなる大人が同じ目線で遊ぶってのは中々ない。

それも後先考えずに馬鹿みたいにね…明日は中学か…

ちょうど思春期に入って男はオス猿になるし…女子は大人の階段を登っていく。

…流石にもう馬鹿みたいな事にはならないだろうし…

一緒に奉仕活動とかになるのかなぁ?まぁ行ってみたら何かしらあるんだろう。




こんな世の中だからモンペは居ないけどクソ教師も居そうだよね?

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