――――――――――――D08基地兵舎共有スペース・朝
今日は第1と第2部隊が出撃する一週間だ。私達は暇を持て余す。
ゲームに興じてもいいけどそれはなんだかもったいない気がするし…
何となく手にとったのは社内報だ。目新しい記事が無いかと目を走らせていく。
朝からコーヒー片手に読む姿はなんだろうね?ビジネスマンみたい。
見慣れた青年誌風の表紙を捲っていく。今回のトピックスはなんだろう?
「新型ショットガン人形発表…か」
SG人形と言えばウチに居るイサカがそうだ。堅牢な装甲を持っていて前線を張る人形だ。
イサカはそうではないけど…大抵のSG人形は所謂シールドを持っている。
G36Cが所持しているフォースフィールド系ではない、物理的な盾だ。
中世からずっと防御のシンボルとして用いられているシールドだ。
そのせいか動きは重く軽快さには欠けるがこと近距離戦闘では破格の火力を誇る。
それでいて生半可な銃撃ではびくともしない装甲を持っている。
更に最適化が進めばボディアーマーを装着して堅牢さはさらに増す。
難点と言えば継続火力に欠けることとその製造コストだ。
各基地が今このSG人形を欲してI.O.Pに発注をかけていることだろうが…
I.O.Pの在庫は品薄状態。SG人形であれば良いが…回されてきたのがRF人形だったなんてのもよく聞く。
膨大なコストをかけてもお目当てのSG人形が無事に納入されるかは不明。
この製造システムはどうにかならないものなのだろうか?
まぁ現状のG&Kの契約スタイルが原因だから文句は社長に行くか。
業務提携の契約で大雑把な資材納入で製造する人形を決めるという事になってるらしい。
だからMG人形が欲しい指揮官は納入されやすい分量の資材を納入する。
まぁ結果は大体SMG人形だったりするんだけどね。ウチに居る人形でMG人形が居ないのもお察しだ。
「で、新しい人形はAA-12とSPAS12、SuperShortyね」
殺意高いな。AA-12と言ったら何をトチ狂ったかフルオートでショットシェルをばら撒く殺人マシーンよ。
開発は2005年、当時の大国アメリカ合衆国にて開発された物だ。
ゲームメディアにもよく登場する散弾銃だ。同じくフルオートでばら撒くSGと言ったら…USAS12が挙げられる。
まぁその性能は大体がイマイチに設定されてるけど…現実だと鉛弾の雨が降るんだ。
おまけにこいつらは一般的なチューブマガジンじゃなくて…普通のボックスマガジンだ。
AA-12について更に言えば何をトチ狂ったか32連装のドラムマガジンまであるんだ。
人形だろうが人間だろうが至近距離でぶっ放されたらあっという間にミンチの出来上がりだ。
ただ難点があってだ…このAA-12尋常じゃなく重たい。全備重量たしか7kg超え。
AA-12が飛び抜けて殺意マシマシのラインナップになるが…SPAS12も中々だ。
ポンプアクション式の多いSG界隈だが…このSPAS12なんとポンプアクションとセミオートが選べる。
確実な動作を好む射手はポンプアクションを選べばいいし瞬間火力を求めるならセミオート。
スラムファイアが出来たかどうかは不明。まぁ人形のスペックは…どうなんだろうね?
SuperShortyはその名前が示す通りその銃本体がえらくコンパクトなんだ。
全長はなんと500mmちっちゃいボディだ。装填数もたったの2~4と来たもんだ。
まぁイサカも4発装填のSGなんだけどね。SuperShortyはちっこすぎて普通のフォアハンドじゃポンプアクション出来ない。
折りたたみ式のフォアグリップが取り付けられてようやくって所だ。
そんな特徴を抑えているのか…人形の方もえらくちっちゃいな…私と変わらないんじゃないか?
「AA-12は飴玉をよく舐めている…寝不足ひどそうな顔だなぁ。SPAS12はこれまた男性ウケ良さそう」
紹介写真が掲載されていたので見てみるとAA-12はどの写真でも飴玉を口につっこんでる。
パット見ではまぁ普通にストリートに居そうな感じの少女なんだけど…
目元にくっきり出来てる深い隈がそんなチャーミングな風体をぶっ壊してる。
いや、一周回ってチャームポイントなのかもね。糖分切れるとイライラするって書いてるし…
どうしてこういうデザインしたんだよ…もっとまともなAIにすること出来ただろ。
「んー?なんだこれ…」
そんなSGトピックスからその後をぱらぱらと捲っていっていた。
新しい地区進出のお知らせにG&Kの補給基地襲撃事件…あぁあのドンパチの事だな。
新しくT地区が制定されたってお話か…旧S02地区は度重なる襲撃に遭い救援したT地区指揮官の配下になると…
中々にやり手なんだろうな…でっと…こっちは?G&K新入社員?
へぇーどんな…は?これ細部違うけど鉄血の人形じゃない?
えーっとたしか…ハイエンドの中でもお頭的存在の代理人じゃない?
こっちはDragoonだっけか?いやいやどうなってるんですかね?
「ぜんたいぞ…ヒンッ」
冒涜的な物を見た気がする。私はしらん、人の形をしてるのに手足が蜘蛛じみてるなんて見てない。
これ本社に行ったらもれなく見ることになるの…?
虫苦手な私にはかなりキツイジョークなんですけど…?ねぇどうにかならない?
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「417じゃない、何をしてるの?」
「あーイサカ?新しいSGだってさーほい」
「……ふん、私の美しさには一歩届かないわ」
まぁイサカの自慢と言ったら主任を射止めたその美貌だからね。
比べるとしても自分と見比べてどれだけ美しいかに限られる。人形としての性能?
そんなの美しさの前には眩んでしまう…それがイサカの中にはあるっぽい。
「そういやさー、イサカって装甲板無いよね」
「えぇ、そんな無粋な物は無いわ」
「どうやって壁張ってるの?」
「ボディアーマーとガンケースね」
ほほーガンケースがそのままシールド代わり?そういや出撃中もそれ担いでたね。
そういや第2部隊の戦闘の様子ってあんまし見てないな…
失礼なことを思うとその立派な胸部装甲があるからなのかな?と思ったり。
でも今回新造されたSPAS12とかも中々立派な胸部装甲を持ってるけど装甲板を持ってる…
どんな基準でつけたりつけられなかったりするんだろうか?
やっぱりデザイナーか?デザイナーが趣味でやってるのか?
「まぁイサカの身体ってどっから見ても魅力的だし遮るものは少ないほうがいいか」
「その通り!417もよく分かってるじゃない♪」
うん、でかい。これは世の中の男は釘付けになるな…主任は独り占めしてるんだけどね。
あーあ羨ましいなぁー私もいつかお兄ちゃんを独り占め出来る時が来たらなぁ…
「もしもSG人形がここに派遣されたらどーする?」
「どうするもこうするも私は私、ダーリンの傍に居るだけよ」
「そっか、これこそ無粋な質問だったね」
「戦闘的なMVPでも負ける気はサラサラ無いけれど」
うん、自信満々なイサカは見ていて清々しいね。それに恋してる乙女って綺麗なんだよね。
そういやえらくつやつやしてる気がするけど何かあったんだろうか?
気持ち足取り軽やかだし…良いことあったのかな?
「まぁこの基地にもう人形の受け入れ余裕は無いから来ることはないけどさ」
悲しいかなこの基地は所詮は小規模基地。第4部隊分あるだけ良いほうなんだ。
それ以上の申請は通らないしお兄ちゃん的にも第1部隊抑えること出来なくなるからNGってさ。
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「417、そちらを」
「ん、りょーかい」
スイーパードッグ小隊を引き連れた私とG36によるメイド隊と…
本家清掃員の兄がせっせとお掃除中。思えばこうして鉄血製品も浸透してるし鉄血人形が本社に居てもおかしくないのか?
S09基地にはアーキテクトが居るし…案外叛逆してる人形多いのか?
まぁそうしたほうが私達は楽になっていくから良いけどねー戦いがないのが一番さ。
私達戦術人形が生まれた理由が争いにあったとしても…ね。
戦いのために生まれてきた私達が争いが無くなれば何に転用されるか…
民生人形としての余生を送るのか…それとも惨めなスクラップ行き?
拭き取っていくこの塵芥と同じ様に拭き取られておしまいなんだろうか?
私達の幸せってなんだろうか…戦って人間のために散っていくこと?
一度も戦わないまま人間の愛玩道具として綺麗に置かれていること?
「――7、お―41―」
それとも自分が信じた指揮官と結ばれる事?それとも傍に居ること?
「417、手が止まってるぞ」
「…んぁ、兄さん?」
「ぼやっとしてんじゃねーよ、仕事しろ」
「うるせぇ、そのケツのサイズを一回りおおきくしてやろうか?」
「お前のプリケツとでっぱいをでかくしたほうが良いじゃねーの?」
「あ?」
「あぁん?」
「「野郎ぶっ殺してやらぁー!!」」
「お二人とも仲がよろしいのはいいのですが…」
掃除のはずが私と兄さんの殴り合いの喧嘩でとっちらかったからG36にお説教食らった。
特に私はくどくどと…友達だから全然容赦ねぇ…だって正座させた上に膝の上におゆうぎしますちゃんを積み上げたんだもん。
一匹二匹ならそうでもないけど…積み重なると重いんだ。
人形の私が足をしびらせるなんて醜態を晒すことになった…
「あにゃぃ!?だーちゃんやめ、足はいま…んにゃぁぁぁ!!」
だーちゃんが面白がって私の足をつっつき回した…私はにゃあにゃあ鳴かされた…
みんなは目当てのSG出た?
僕は目当てのSPASだけ綺麗に出なかったよ…ふふふ…
今回作中に以下の作品についての記述があります。
戦術人形と指揮官と/作者:佐賀茂様
何故こうなった。/作者:Big Versa様
勝手に取り扱ったが私は謝らない。面白いからみんな見て?見ろ(豹変)