元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん   作:ムメイ

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Q:都市伝説って?
A:ああ!


Day119 都市伝説?

「ねぇダーリン今日はデートしない?」

「お、良いねぇ街に繰り出すか」

「やった♪じゃあ今日は~…黒鷲でタンデムデートしよ?」

「あれタンデムできんの?」

「かなり頑張ればイケるでしょ」

「タンデムバーがねぇよ」

「私のおっぱい掴んでたら上等でしょ」

「それはおかしい」

 

早朝から夫婦漫才を行いながら起き抜けにデートに誘う。ダーリンも乗り気だ。

じゃあどうするかと言った所でお互いに物言わぬ相棒が居るんだから乗らないのは無い。

黒鷲の性能調査って言うのもしておかないと行けないしね。

トライクモデルのバイクというのは得てして操作がとてもむずかしい。

バランスを取る必要がないから簡単?いやぁそんな事はないんだ。

むしろコーナーを曲がる際にすごく身体が振られる。特に高速コーナー。

バイクというものは外に逃げようとする遠心力に対して反対に車体を傾けてバランスを取る。

よく車体をコーナー内側に傾けて走っているのはソレ。

じゃあ車体を傾けられない3輪のトライクモデルというのはどうなるか?

発生する横Gに対して車体は傾けられないからどんどん重い車体は外へと投げ出されていく。

ライダーが身体を傾けることで多少の足掻きは出来るけど…まぁ限度はある。

限界をこえた車体はどうなるか?簡単だよ、横転する。

イメージと違ってトライクモデルの運転はかなり気を使うんだよ。

まぁアーキテクト製のこのリバーストライクは前輪2個がリーン…つまり傾く。

その分だけまだましなのかもしれない。機構コレどうなってるんだろ?

逆説的に車体も傾けようと思ったら傾けれる。ちょっと感覚は違うけど普通のバイクと変わらないってわけだ。

ただし悲しいことにシングルシートだから一人乗り限定…夢のタンデムデートは無理でした。

なんでこんなにリアタイヤがでっかいんだよぉ…もうちょっとちっちゃくてもいいからタンデムシート追加してよぉ…

シングルシートが馬鹿みたいにデカイから詰めれば大人二人でも…いやキツイ。

タンデムバーは無いしリアフェンダーを背もたれ代わり?髪が焦げるぞ?

 

「まぁ普通にペアツーで良いだろ?」

「ん、まぁ…そだね…揉んでほしかったのになぁ」

「それはまぁ…人目のつかない所でな?」

「言質取った、よっしゃ」

 

よーしこれで人目につかなそうな所に行けば遠慮なく…むっふっふー♪

 

「ム?主人と417か…二人で出かけるのか?」

「あー…」

「…なぁ417、ダブルデートの許可は?」

「ん、まぁ…良いか…」

「何、私も一緒に行って良いのか?ならば同行しよう」

 

二人でダーリン挟めば良い事だしね。二人っきりが一番だけど邪険にする事もないし。

じゃ、準備だけ整えてから街に繰り出すとしましょうか。

私はどの服で行こうかな…童貞を殺すセーターで良いか。

ヴィオラは何にするんだろ?オフショルダーのセーターにミニスカート?それもまた童貞を殺すな。

 

 

――――――――――――

 

 

「そういえばダーリン、都市伝説って聞いたことある?」

「一つだけあるな、ふらっと裏路地に立ち寄ると別の世界線に行けるみたいなのだな」

「なんだソレは…都市伝説と言ったら学校の七不思議レベルに眉唾物だろう?」

 

人というのはいつでも摩訶不思議なお話が大好きだ。UFO伝説とか今でも話しの種になる。

エイリアンがどうのとか…まぁそれは強ち否定できないんだけどね。

崩落液なんてオーパーツが現時点で猛威を振るう世界ですし。

で、まぁこのD08地区でまことしやかに流布している都市伝説というのが一つはダーリンが言った物。

ふらりと路地裏に入り込んで迷って抜け出せたと思ったら実はソコは別世界だったなんて話し。

私が聞いたことある眉唾なんだけど未だに根強く流布している…その名も…

 

「喫茶鉄血」

「はぁ?鉄血ってあの鉄血だよな」

「多分ねーそれこそアレじゃない、ヴィオラみたいなのが居るんじゃないの?」

「ム…そうか、そういえばドルフロ世界には無いイレギュラーが多いし…」

「ヴィオラー?」

「ん、あぁ何でもない…それより主人よ腹が減っていないか?」

 

何かヴィオラがブツブツと話していたがまぁそれは良いや…

時間はちょうどお昼時、それこそ喫茶店で軽食を食べたい頃合いだ。

それかテイクアウトで適当な公園で食べさせ合いっこするかだけど…

 

「良い匂いがするな…こっちか?」

「あ、待ってダーリン!」

「主人、こういう時は並んで歩くものだぞ」

 

という訳で良い匂いがする方向へと進んでいく。かなり良い匂いだ。

くぅくぅお腹が減ってくるな…何の匂いだろう?芳しい香りは間違いなくコーヒーだ。

でもこんなに良い匂いのするコーヒーって中々無いな…まさか天然物だろうか?

ダーリンの両腕を私とヴィオラで挟んで抱きしめてから並んで歩く。

幸いにも人通りはそうでも無い、バカップルしても迷惑にはならないだろう。

匂いを頼りに歩いていくと…あらまぁ不思議と路地の奥へ奥へと入り込んでいく。

この先に飲食店なんてあったっけか?いや、無いはずだけど…

モグリでやってたりする飲食店かもしれないな…うーん…統治上摘発待ったなしなんだよねぇ。

 

「案外その喫茶鉄血の匂いかもしれねぇな」

「それはそれで良さそう」

「敵意ある鉄血ならば私がなんとか食い止める、最悪主人の身は守ってみせよう」

 

 

――――――――――――

 

 

「ここっぽいな…ってかこんなに活気あふれていたか?」

「んー…いや、ウチはかなり活気ある方だったけど…こんなには無かったはずだよ」

「……」

 

匂いを頼りに路地を抜けるとそこは…なんてことない街の大通りだ。

しかしながら何か…何かがおかしい。通りを往来する人々の顔は全くおかしくない。

活気に溢れているんだ。明日への活力というか…なんというか…

明日死ぬかもしれないなんて事に怯えているようなことが見当たらないんだ。

それに企業務めと思われる人間が多い。こんなに往来していたものか?

いや、そんなに受けいられるような企業の総数がない。ありえないことだ。

ヴィオラもこれには絶句…いや、何か考えているような表情で往来を見ている。

 

「ふむ、この活気は懐かしい…平成時代に似ている」

「えぇ?ヘイセイってヤーパンのえーっと…1988年から2019年までの期間の事だよね」

「なんでソレを懐かしいなんて言うんだよ…まぁ確かにそんな感じの活気だよな」

「うん…何というか戦争とかが全く無かったかのような…まるで理想の世界のような…」

 

何というかナンセンスな話しだけど本当にあり得るかもしれない別な世界に来ちゃってるのかもしれない。

私が知りうる限りではこれだけの活気があるのは第三次世界大戦前までだ。

そう、私達が産まれた後、物心ついて…ちょっとした頃合いだ。

大体二年位しかその記憶は無い。第2世代人形は当然ながら産まれちゃいない。

その時代を知っているのは当然ながらにしておかしいわけだ。1988年?頭がイかれてるとしか思えんな。

まぁとにかく薄っすらとしか覚えていない両親の記憶と街の記憶を辿ってもこれだけの活気に歴然とした差があるのは分かる。

道行く子供の傍らには付かず離れず親と思わしき人間が居る。これもおかしい。

いや、おかしくないんだ。それが本当は普通なんだ。両親が死んでいるとか片親なのがおかしい。

本当はこうあるべきって姿なんだ…世界が荒廃する前?

 

「頭が痛くなってくる…」

「あー…こりゃ確かに…都市伝説って言いたくなるわな…」

「そもそもだが…417のドレスを制作していたエルフェルトだが…出自を知ってるか?」

「え、いや知らない」

「そういえば…あの人形見たことも聞いたことも無かったな…」

「別次元の人形だぞ」

「「え?」」

 

慌ててI.O.Pのカタログデータを引っ張り出してみる。該当する人形は…

あ、本当だ全然見当たらねぇ…エルフェルトのエの字も無い。

えぇ…現代科学の敗北かぁ?いや、でもダミーとかあったよね?

 

「まぁいい、それより飯を食ってからだ。行くぞ主人」

「お、おう…」

 

 

――――――――――――

 

 

「ふむ、名前が喫茶鉄血…417、コレのことか?」

「うわ、マジで存在したんだ…」

 

中に入れば広がるのは小洒落た喫茶店と言った様子。なぜかあるカラオケ機械が目立つな。

さてマスターはだーれか…な…

 

「げぇ…」

「ム…」

「マジかよ」

 

無表情でコップを拭いていたのはなんと鉄血ハイエンドモデルでも最上位に近いやつぅ…!

こっちに気付いた様子だけど構える様子は無い。取るに足らないと見られたか?

いや、暴走した後の鉄血人形は一部の例外を除いてから殺害するように設定されている筈。

ハイエンドモデルなら尚更…ヴィオラみたいな例外があるけどさ。

 

「いらっしゃいませ。ようこそ、『喫茶 鉄血』へ。空いている席へ、ご自由にどうぞ」

 

無表情ながら確かに歓迎されている様子だ。ふむ…じゃあ問題はなさそうだ。

 

「メニューを見せてくれます?」

「こちらです、お決まりになったらどうぞ」

「……え、天然物?」

 

並んでいるメニューの備考欄で普通に生産地が表記されている…?

いや、待てアメリカ産?アメリカって真っ先に滅んだ筈だよね。

それに化合品無し?え?100%天然物?どれだけ貴重だと思ってんだ?

 

「毎朝新鮮な物を届けてもらっていますよ」

「えぇ…毎朝?どれだけの出資が…」

「……通貨単位が違くないか?」

「…げ、マジだ…コインじゃないの?」

 

これ共通通貨のコインじゃない。見た感じだけど…大戦前の通貨単位じゃないか?

あーこれは…金品になりそうなのって言ったら何かあるかな…

 

「ちょっと良いかな、肉体労働で払うっていうのはどうかな?」

「ム、そうか…それでいいか?」

 

まぁ古典的な対価交換だけど肉体労働で今回のを払おうって事にする。

マスターの判断はどうなるだろうか…

 

 

 

 

で、どうだったって?都市伝説は都市伝説だよ。

データとしては脳に叩き込んでいるけどあまりにも馬鹿げているから一笑に付されるだけ。

あ?だってさ地図データがいきなりD08からS09にすっ飛んでるんだぞ?




という訳でここで出したのが圧倒的平和時空の喫茶鉄血さんですよ。
通貨の違いがあるっぽいのでね…




覚えがある方は「あぁ……」と思って下さい。
あとがきでキレるのは作者としてあるまじき行為です。
恥部ですよ恥部。

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