「今朝方ヘリアンの合コンクソ雑魚からメッセージが届いて新しく一部隊保有することを認めると通達があった」
「へぇ、じゃあ早速新しい人形を発注するの?」
「しかも今回は特急便を使用することを許可されたぜ」
「待って兵舎どうするのさ」
「暫くは野郎用の兵舎の中で」
「いや、それはイカン」
即日お届けで野郎の兵舎に叩き込むのは流石に暴挙と言うか…苦情がでるよ?
私だったらキレ散らかしているとおもう。どんな子が来るかはさておいてね…
「あとダーリン…新しい子が来た時の挨拶だけど…セクハラしたらお仕置きだからね?」
「…ちなみにどんな?」
「抜かずパイズリ連発刑」
「ヒエッ」
「気絶するまで搾り取ってやるから覚悟してよね?」
勿論私だけがやるわけじゃないからその辺も踏まえた上での罰則だからね?
私達ってお嫁さんがいっぱい居るのにそれでも手を出そうっていうんなら考えますわよ。
という訳でダーリンは早速タブレット端末で発注をかけている。
そのお隣にちょっと失礼して…別の端末をちょっと操作する…メーラーを起動してっと…
「いつもの建設業者に発注をかけるよ」
「助かる…この際だし客人用に追加で10…いや、もう二階建てにしちまおうか」
収容人数が倍増するね…もともとユニット式で建築していたし増設も簡単か。
現在の収容人数が20だからその倍の40名収容施設となるか…他も大分大型だし宿舎としては良いか。
はぐれ人形の収容も出来るか…まぁこの地域まで逃げてくるって人形が少ないけどね。
大体は最前線のS地区が多い。他に流れてくる場合って言ったらあまりに酷い扱いを受けたり…
それこそ最近横行している人形の不正な横流し業者から難を逃れたり…か。
一部の指揮官がウチのダーリンみたく人形を人間と同じ様に扱ってたりする甘ちゃんなんだけど…
他は大体は人形は人形、最優先で環境を改善する必要なんて無いし風雨を凌げる場を与えりゃそれでOKみたいなもんだろう。
それこそガレージに照明器具と布を置いてそれでおしまいな宿舎な可能性だってありえる。
それでも人形は文句を言うことはない。そりゃそうだ、その環境以外を知らない。
その扱いに不平を漏らすことは無い。何処まで行っても人形は道具でしか無いんだ。
まぁこんな事をダーリンの前で言ったらとんでもなく怒られるんだけどね。
「で、ダーリン…予算は?」
「ん?いや、向こうの提示額でやってやる」
「…また任務漬けだね…そういえばダーリン、ユノちゃん所に行ってきたら?ほら、あのコーヒーも渡さなくちゃだし」
「お、そうだな…いや、417が一人でぱーっと言ってから帰ってきてくれ黒鷲ならすぐだろ」
「はいはーい」
という訳で私はバックパック背負ってから代理人に託された純天然のコーヒーをお届けしないとね。
――――――――――――
建設業者は最近暇を持て余していたみたいで今日の昼間から早速増設に取り掛かるらしい。
この分には明日の朝には普通に居住可能な状態になるかな?
まぁ最悪は5人分のスペースが当日確保できてればOKだしね。
で、私は普通にかっ飛ばすためにおしゃれはちょっと諦める。
ジーンズに縦リブセーターを合わせてるけど…その上に更にダーリンのジャケットを羽織る。
前は頑張ればきっちり上まで締めれたけど…もう今は頑張ってもおっぱいが食い込む。
こんな所でもおっぱいの余計な成長を実感することになってるよ…とほほ…
まぁだから羽織るだけになるんだよね。で黒鷲をガレージから引っ張り出す。
トライクは一応ながらリバースギアが搭載されている。これも例に漏れず搭載されている。
搭載されていなかったら?馬鹿みたいに重いこの車体を押し引きしなくちゃいけない…
ダーリンのVMAXってバイクもこれが重たいけど…まだ頑張れば出来る。
だがトライクは少なく見積もっても400kgは越えてくる。
車体前方にはさらに物理ブレードが装備されてるから迂闊に触ったらすぱっと行くし…
「よし、じゃ…行きますか」
ジェットヘルメットを被ってから気を引き締めてエンジンを始動させる。
私のID認証がなければ動かない様になってるしほんとハイテク過ぎて笑けてくる…
悔やむとしたら悪路走破性はこのままだとイマイチってところか。
あんまり酷い凹凸路に入ると長く低く這っているこの車体では腹を打ってしまう。
オンロードでは無類の速さと安定性をもたらしてくれるんだけどね。
装備もなしに300キロ越えの世界に生身で放り出されたら目ん玉潰れかねないけどね。
黒鷲に搭乗する際は絶対にヘルメットかゴーグルが必要だね。
特徴的なハンドルを握ってからアクセルを開けていく。ゆっくりと低く唸るエンジン音を轟かせて基地を離れる。
『そういやユノちゃんに良くない事が起こったって聞いた…ついでに確認してくれないか?副官も言葉を濁しててよ』
あの副官が言葉を濁さなくちゃいかないような事が起こってる…?
いや、ユノちゃんの身に何かがあったらそもそもあの基地が相当な大騒ぎになってるはず。
それこそ社内報の一面を飾るような大騒動が勃発してもおかしくないんだ。
「でも…私もなんだか胸騒ぎがするな…」
各地区を繋ぐハイウェイに乗るとこの黒鷲が出せる最高速度まで回していく。
アクセルを思い切り開けて見ると――――――意識がズレる。
自分の体と意識がズレて置いていかれていくような錯覚を覚えるような…暴力的な加速が私を襲う。
しがみついていなければ私が振り落とされる。これは…化物だ。
人間が到底制御する事は叶わない魔性のマシンだ。私だって気を抜けば事故る…!
…実際にシートに落ち着けていたお尻は最後までズレていてストッパーが無かったらリアフェンダーまで行ってたな。
――――――――――――
途中のパーキングエリアに黒鷲を入れてから休憩に入る…いや、本当にこれはヤバイ…
スピード狂の気がある私でもコレは怖い…多分だけどまだまだ限界スペックを叩き出してはいない。
きっとウチの兄もこのマシンにはチビると思うしダーリンは途中でアクセルを戻すな。
すぐに押え込むのを諦めて自分の制御で動かせる領域で動かすに違いない。
とにかく…飛ばすだけ飛ばしてここまで来たけどどっと疲れた気がする…
「なんだあの…トライクか?」
「BRT/Rか?再現度クッソ高ぇな…」
「いや、ちょいちょい違うぞ…あんなブレードついてたか?」
ダーリンのVMAXもかなり注目を集めるマシンだけど私の物となった黒鷲は…かなり注目を集めていた。
そこら辺のレプリカモデルって言うと造形にリソースを割きすぎて性能がかなり残念だったりする。
そりゃそうだ、現在でも小型で超高出力なモーターなんて夢みたいなものは無いし内燃機関だってそれ相応に巨大化する。
どれだけ時代が進歩してもその大前提というのは変わらない物だ。
内燃機関で捻り出すエネルギーって言うものはいわゆる物理法則だし。
それをどんなに切り詰めて効率化していっても出せるパワーっていうのは限界がある。
ピーキーに切り詰めていったら少しの操作ミスで即ブローなんて言うかなりシビアなマシンになってしまう。
アーキテクトがどんな機関を搭載させてるのかは不明だけどかなり大型だ。
捻り出ているパワーから察するにこれまでの人類が発明してきた技術が集められているんだろう。
恐らくだけどね…このバイクがそのまま人類の技術の縮図というか…
「改めて仮説だけどとんでもないのを贈られたんじゃなかろうか…」
自販機で売っていたクソ不味いコーヒーでスッキリシャッキリ目を醒ましながら止めている相棒を見る。
エキゾーストノートから察するにV4だと思われる。冷却効率とエンジンの小型、ハイパワー化の概念から恐らく…だけど。
排気量は不明、カタログスペックにはそのへんの情報は一切なかった。
操作説明とかブレードの切断可能な物体等しか乗ってなかったからなぁ。
というか車載兵装が殺意の塊というか…普通に人間とか人形にぶっ放したらミンチになるよねって口径使ってるんだもん。
走行中にぶっ放したらどうなることやら…反動で減速しかねないと思うんだけど。
「あれ、キミのバイク?」
「んぇ?あぁ、あのリバーストライクですか?」
「そうそう、あれすごいね…キミもかなり…うん、スゴイけど」
「あははは…」
ジロジロと停まっている黒鷲は見られていたけど乗っていた私にも何人かが話しかけてきた。
あんな厳ついバイクに乗ってるのがこんなちんまい上に女の子って言うのがスゴイんだろうな。
で、顔から下に視線が必ず一回は行くからおっぱいの方も見られてるんだよねー…
お誘いか?と思う奴には牽制でそれとなーく左薬指のリングを見せてから追っ払う。
流石に既婚者ともなると手を出す様な奴は中々居ないみたいだ。
まぁいつ手を出してくる猿が出てくるとは限らんしリフレッシュできたらさっさとS09に行ってトンボ返りしなくちゃね。
――――――――――――
S09基地にはそうかからずに着いた。ただまぁなんというか慌ただしいというか…
かなりピリピリしている感じがするな。マジで何か一悶着あった後なんだろうか。
守衛の人形にそれとなく話を聞いてみるけど…うーん、まぁあんまりって感じか。
「417さんなら話しても良いですかね…指揮官は今負傷して絶対安静ですので…」
「ブッ…!?な、なして!?」
「詳しくは話せません…」
幸せなユノちゃんを襲ったバカが居るっていうのか…?ゆ、許せねぇ…
ならこうもピリピリしているのは納得だしあんまり今は様もなく人を入れたくないのも納得だ。
「犯人は?」
「もう処理済みです」
「そっか…あ、そうだ…これ、ユノちゃんに渡してください」
「はい…?コーヒーですか?」
「ついでにこのメモも…きっとユノちゃんなら分かるんじゃないかなって思いますから」
ただ一言、喫茶店の代理人からユノちゃんへとしか書かれてないけどね。
あの代理人はそれはそれは楽しそうにユノちゃんの話しを聞いていたからなぁ。
結婚した事も知ってたみたいだし…案外ユノちゃんも何処かで行ってるのかな?
私達もあの一回の偶然以降はいけちゃいないしね…
都市伝説はやっぱり都市伝説って奴だよ、気まぐれでふらっとしか行けやしない。
「じゃ、私はこれからトンボ返りします。何かあったらD08の417がかっ飛ばして来ますから!」
さてと、私はこれから帰ってから…っと…んーどうにかして情報網も広げて行きたいなぁ…
こういう情報を拾っていけるルートを構築するのも必要かな…
帰ったらダーリンに提言してみても良いかもね…うーんでもどこから引っ張ってくる?
情報戦用の人形を発注する?いや…そんな人形が居るのか?
電子戦は45姉みたいな人形が居るけど…うーん…情報戦の人形…
I.O.Pのカタログをひっくり返してもやっぱり出てこないな。
諜報戦に転用できそうな人形を採用してそいつらにさせていくのが一番なのかな?
「という訳で追加注文しようねー」
「いや、ユノちゃん大丈夫なのかよ…」
「あの基地が大騒ぎになってないって事はユノちゃんの命に別状はないってことでしょ」
「だと良いがねぇ…そして情報戦かぁ、確かに必要だわな…自前で用意しておきてぇし…よし発注しよう」
明日は新入りが更に増えるのか…さーて忙しくなるね…
「待てよ…基地防衛戦特化も欲しいよな…」
「実働部隊更に増やすの…?」
「基地から出なけりゃカウントされねぇからセーフなんだよ待機戦力ってやつ!」
あーあ、さらに5体…どうなることやら。
新たに15体追加するやで。
なおD08に配属されるって事は…そういうことやぞ?
暫く417と春田さんが必死こいてお料理を振る舞うことになるな!