まだまだ不安定だろうからと本番は出来ないけどいろいろ出来ることはしてツヤツヤしながら朝は出てきた。
最近焦らされ気味で悶々とさせられる事が多くなっておねだりばっかりさせられるなぁ……
まぁそれは良いや、今日は早速だけどダーリンの夏季用の私服をだねー……
さてさて兵舎のスペースでちまちまとお裁縫の時間かなー?
読み物中の編み物をしているママみたいでちょっとテンションが上ってくる。
暖炉の前でぎぃこぎぃこと揺れる椅子に座ってさ。誰かの為に編み物してるの。
んふふ♪外側から入っていってるみたいだけどママになったって感じで良いなー♪
「417、私達に手紙らしい」
「んー?どこから?」
「S09地区P基地……ユノ指揮官の所からだ」
「へぇ、私達って事は……早速妊娠したってのが知られたのかな?」
「らしいな、諜報部が引き笑いをしていたが」
何かあったのだろうか?まぁウチの基地にも諜報部が出来るくらいだし……
それこそあの基地の規模になれば普通に諜報部はあるだろうしなぁ……
多分だけど洗礼を受けたんじゃないかと思うな。こっちの情報はすっぱ抜かれてるだろうし。
で、ヴィオラが持ってきた今時また律儀な紙媒体のお手紙に目を通す。
まずはご懐妊おめでとうと綴られていて素直に祝われているみたいだ。
顔見知りが居る基地からも祝電が来るのは嬉しいね~にっこにこになっちゃうよ。
しかしその後に続けて書かれていたことには身が締まる思いだ。
妊婦になった私達へ宛てられた心構えだ。浮かれていたのは自覚するけどね。
まずお産についてかなり厳しい現実を叩きつけられた。かなりリスクを伴う事だ。
何年も出産を繰り広げて繁栄してきていた人間ですら出産という行為は死と隣り合わせ。
また人と人のめぐり合わせや同じ人形でも全く同じ様になる人形が居ないこと……
それと同じ様で一つとして同じ妊娠・出産はないという事。つまり今回が平気だったとして……
次に妊娠して出産したとしたらその時に私が死んでしまう事もあり得るということだ。
また妊娠したとして早期に流産してしまうって事もあり得るらしい……
現在支給されている栄養剤で補われているけど必要な栄養素もかなりあるらしい。
出産後の子供が脳出血等を起こさないためにトータルケアが必要と……
「でもやっぱり……私はダーリンの子を産みたい」
「だな、私もそうだな……」
「なら色んな事も我慢しなくちゃね」
「赤子は私達にすべてを預けている……か」
赤子は発育するために必要なものを全部全部私達に依存している。
酸素、栄養、血液全部そうだ。毒となりえるものは摂取は厳禁。
タバコの煙などは遠ざけてガツガツ物を食べるくらいしないといけない。
体型が悪くなる?んなの我慢しろ。元気な赤ちゃんを産むための犠牲だ。
「しかし結構遠いのに往診もしてくれるって良いね」
「思わぬかかりつけ医が出来たな……ちなみにD地区に病院は?」
「産婦人科があるのは……D05地区じゃなかったっけ……」
「私達が産気づいたら大変だったな……」
改めて産婦人科医が身近に居てくれたことに感謝する。
そして何かあったら兎に角連絡をくださいとS09地区の医者、PPSh-41の連絡先が書かれていた。
「私達、幸せだね」
「そうだな……ちょっと失礼する」
しかしヴィオラは早速不安があるらしくPPSh-41に電話をかけていた。
流産というワードが出てきた辺りで顔色が怪しくなってたから怖いんだと思う。
話してくれたんだけど実験で一度無理やり妊娠させられたんだって。
で、その時は一日でつわりが来た上に速攻で流れていたらしい。
かなり過剰な調整が加えられていた可能性が否定出来ないけど……今回は望んだ相手との妊娠だ。
これで流産なんてしたら泣き散らすし優しいヴィオラだからなぁ……
きっと産んであげられなかった赤ちゃんに対して謝って謝って自責の念で潰れかねない。
「んー?なんだろう……」
外がなにか騒がしいな。何かあったんだろうか……ちょっと見てこようかな。
あんまり私がそばに居たらヴィオラも思い切って相談できないだろうし。
――――――――――――
「何これ……」
ヘリパッドに置かれていたのは新品と思わしきヘリコプターだった。
購入予算とか組んでなかったしいきなり過ぎて見に来た私もこれには困惑。
SOPが面白半分でコクピットに座ってゴーゴー!とか叫んでる。
これは何だろうかと困惑に表情引きつらせていた私を見つけて近づいてきたのは防衛隊長のネゲヴだ。
「おはよう、あれ贈り物よ?」
「……はい?」
「だから、贈り物。人形が懐妊したって言うのは時代を動かす事よ。つまりこの基地での重要な人形は間違いなくアンタとヴィオラよ」
「あー……なるほど」
手紙のデータを見せてもらってから納得というか……まぁ懸念した事だな。
私とヴィオラは色んな所から狙われることになる事になる。諜報部が拾ってるだけでもI.O.Pの内部からも……
で、このヘリはと言うと所謂攻撃ヘリだ。アメリカ原産のAH-1Fコブラだ。
ちょっと改修されているモデルっぽいな。501FG?聞いたこと無い部隊だな。
軽くG&Kの部隊コードから検索してみてみると……ほほー、珍しい機甲部隊だな。
人間……G&K内の部隊じゃないな?外部の人間にも情報が行ってるんだね……
「しかし攻撃ヘリなんて必要なのかな?」
「過剰防衛なくらいが良いわ」
「ただ操縦手はどうするの?」
「ヘリパイロットは二人居るでしょ?」
「あぁー……そうだね」
この基地には普通にヘリパイロットは二人存在している。
で、交代で運転しているものだから一人ずーっと暇しているからね。
だから操縦は出来るんだろうと思う。ただ武器の使用はまた別か。
説明書をさらに読み漁ることが必要になるのか……一人乗りになるんだっけ?
輸送機じゃないからなぁ。左右にミニガンがくっついてるわけでもない。
20mm機関砲に戦車ミサイルとロケットポッド2セットなんだよね。
もう武装がガッチガチすぎてなぁ。これ一つでかなりの戦力だよね。
「贈り物でこれを送りつける事ができるのってどうなのかな……」
「それだけ思われているんだから良いじゃない、ほら兵舎に戻ってゆっくりしてなさい」
「はいはい」
どうしてこうなったのやら……普通にベビーカーとかで良いじゃん……
――――――――――――
戻る途中諜報部の人形が揃って手紙を見て端末を見て……頭を抱えてっていうのを繰り返していた。
何事だよ……と思ったらどうも出し抜かれたと言うか……手荒い歓迎をされてたみたいだ。
P7に至っては必死に作った防衛網を突破されて泣きべそかいてる。
どうにもアリババってハッカーに引っ掻き回されたっぽい。
しかもそれでこっちの情報とか丸裸にされた上でお情けみたいに情報を叩きつけられたっぽい。
良いように出し抜かれたのは諜報部としては悔しいらしくてこのお通夜ムード。
「人形の情報処理能力はこんなはずではない……」
「人間にはおいそれとハッキングされることは無いはずよ……」
「流石にあたくし達総出で無理であるならば……」
「かなりの手練だよね、流石に私もお手上げ」
「私の組み上げたファイアウォールがぁ……」
なお全員もれなくバインバイン。そしてすっぱ抜かれた情報にはそれぞれの3サイズも入ってる。
各々がいたずらで撮ってた寝顔写真や下着のスパイショットとかも……
あとDSRに至っては自家発電中の写真とかもスパイショットされてたらしい。
それがすっぱ抜かれる危機に全員決死の防衛戦を開催したらしいが……
まぁこのお通夜ムードだからお察しの通りで全員返り討ちにあってしまったとさ。
幸いにもお情けで重要データはすっぱ抜かれてないらしい。
そしてポップアップしたメッセージには……鍛え直して出直しな2流とさ……
煽る煽るぅ……でも出来上がったばかりなのを考えると人形のスペック高いよねって思うよ。
「ま、まぁ……なんか試してくれた感じじゃん……」
「知ってるか、腕利きのハッカーは金などでは動かないの」
「人の恥じらいよ……」
あっ……端末に送りつけられているエッチ風自撮り写真を脅しに使われてる……
グローザとか自分で結構スタイルとか自信あったけど実ってから調子のってたね。
そして端末で自撮りとかしてたのね……ふーん?誰に送りつけるつもりだったんだか。
「成長して5人がかりでも私とやり合えるようにならないとこればら撒くって」
「なんであたくしの個人情報まで……」
「絶対に捕まえてぶっ殺すファイアウォール作るわ」
情報処理能力に長けているHG人形が揃って沈んでいるなりに決起している。
「幸いなのは指揮官が本当に潔癖な指揮官だったことね」
「そうね、指揮官が何か不味い事をしていたら……」
「完全に弱みを握られることになったもの」
まぁダーリンだから絶対にありえないと思ったけど。
漁られてそれで痕跡すら無いなら益々持ってありえないって事か。
――――――――――――
「人類人権団体過激派の情報な……」
「諜報部でも集めていたのだけどそれより詳細な物が送りつけられたわ……してやられたって感じ」
「アリババね……前の糞会社でも聞いたな」
「有名なの?」
「裏世界では知られたもの、表しか知らない俺ですら名前を聞く有名ハッカーだな」
司令室にて報告を受けた指揮官は聞き馴染みがあった名前に眉をひそめる。
諜報部長のグローザが苦虫噛み潰した顔で報告する最中語るのはアリババというハッカーの事。
そのハッカーは二人組で動く物、アリババとメジェドと言うコンビだ。
義賊的に動いていて悪事を暴くハッカー達で指揮官の前の職場である警備会社もハッキングを受けていた。
そして出る出る社長の不正がばら撒かれたのだ。現D08地区における人形取扱協定に違反していたのだ。
現地ロボット権利団体もグルでズブズブの関係だったのも暴かれていた。
人類人権団体もこれ幸いにと潜んでいたものだからその当時のD08地区は悲惨だったらしい。
「まぁ悪いハッカーではないな……しかしウチがハッキングされるか……」
「良からぬ噂があったのかしら」
「まぁセクハラ基地ってのは流布されてるが……」
「今回の騒ぎで情報面の防御を試した……だけか?」
「ココ最近活動してなかったと思ったが……味方につけれたら心強いんだがな」
ちなみにグローザは何をすっぱ抜かれたかはひた隠しにしていた。
基地データは幸いにも漁られただけで済んでいるが……気が気ではない。
早く逆にハッキングして自分の恥部を奪還しなければ夜も眠れない。
「ま、今回のハッキング騒ぎや防衛計画も含めて社長に報告をあげねぇとなぁ」
「流石に過激派が大挙して押し寄せれば……」
「だからちょっとばっかし過剰防衛計画を立ててんのよ」
「はぁ、ちなみにどのような?」
そういう指揮官が机の上に広げたのは様々な兵器の写真だ。
今回501FGから送りつけられたヘリと連動する形で配備する事を検討している物だ。
「戦車ですか」
「その中でも第四世代MBTの先駆け、Type10だ」
第三次世界大戦に焼かれ失われた国の戦車だ。
この中規模前線基地にはちょうど良い防衛戦力になる。
少人数での運用も可能であり小柄な車体でもあるため基地に停泊させることも可能。
ついでに操縦とタンクデサント等を担当させる人形も新たに配置したならば……
「また兵舎の改装が必要ですね」
「んにゃ、もう一個別なテーマの兵舎を作るんだよ」
「そんなお金は……」
「ウチの嫁連中がこぞって実験参加したからI.O.Pから腐るほど貰ってるから」
「なるほど……避妊はちゃんとしてくださいね?」
「……」
「お返事は?」
「いや、その……出した後に言われて」
「羨ましいっ!(なんてことを!!)」
D08基地は騒がしくも平和に時を刻んでいく。
ヘリを送りつけられたんですわ……
https://syosetu.org/novel/191164/3.html
英国の珍兵器って紅茶ガンギメな名前の作者が書く501FGドルフロ戦闘詳報って所なんすよ。
ちょっと豪華過ぎませんかね?
Type10?あぁ10式戦車の事っすよ。
この基地過剰防衛の要塞化が進んでいくんだが良いのだろうか?