「んん……」
「おはよう、417」
「おはよー……ヴィオラも?」
「うむ、元気に蹴ってくれた」
妊婦二人の朝の寝覚めは大体お腹の子の元気なキックで始まる。
横の方を見てみると寝間着姿のヴィオラも半身起こしていてお互いクスクス笑って朝が始まる。
更に別な方を見れば……死屍累々と言った感じで裸の女が7人。
真ん中付近には我らがダーリンが寝ている。こっちもやつれ気味だ。
ベッドの隣に鎮座しているローテーブルには空けられた精力剤が転がってたり。
毎晩毎晩お疲れ様……って感じだけど時折欲望まみれの目を私に向けてくるから怖いんだよね。
「じゃあ早速だけどご飯作ろっか」
「そうだな……時間的にはそろそろ416が起きそうだが」
「そうだね……お姉ちゃんを待つ?」
「それが良いと思うが、ん?」
「おやおや、珍しいこともあるね」
朝の目覚めが遅い組に分類されるUziが起き出した。
さらにその奥で寝ていたスプリングフィールドも……どうなってるんだ?
逆に朝がくっそ早いはずのわーちゃん、Mk23、お姉ちゃんがドベだった。
でもほぼ同タイミングで起きてくるなんて珍しいんだよね……
「おはよー皆」
「………うぶっ」
「気持ち悪い……」
全員顔色が悪い、調子悪いのは見てわかるけど前日そんな悪かったか?
前日のプレイ内容も至って普通の愛し合いだったはずだし……
「まさかねぇ」
「……わからんぞ」
みんな最低限の下着を着るだけ着てからトイレへと駆け込んでいった。
残された私とヴィオラが顔を見合わせて居たけど……私の予感ではこれはまた……
そんな騒動もあってからかダーリンも眠そうに目をこすりながら起きた。
「あれ?他の皆は?」
「さぁね、皆顔色悪くしてトイレに駆け込んでいったよ」
「ほーん……」
ダーリンは要領得ない感じで曖昧に頷いてから朝のひげそりに。
「とりあえずご飯作ろっか」
「そうだな」
――――――――――――
まぁ何というか私の思った通りというか何というか。お姉ちゃんがしてやったりって顔でトイレから出てきた。
片手には妊娠検査薬を持っててからコレでもかってくらい笑顔でダーリンに突きつけてた。
「良かったわね、さらに子供が最低でも7人は生まれるわよ」
「」
「ダーリィィン聞きなさい聞きなさい♪おめでたよぉ♪」
さらにその隣ではイサカと主任夫婦がおめでた報告を上げていた。
こっちのダーリンはすでに二児の父になるのが確定してるのにさらにそこから7人追加。
最低でもってのがミソでね、ワンチャン双子とか三つ子とかもあり得るんだよ。
こうなった場合がさぁ大変、育児に私達が追われることになる。
赤ん坊ってのはすごくね……手間がかかっちゃう物だから正直産んでからが一番たいへん。
事前知識として叩き込まれたのはとにかく泣く、コミュニケーションの手段が泣く以外にない。
だから何をして欲しいのかを察してあげないといけない。
「いやーしかしこれは参ったね」
「何か問題でうぶっぷ……」
「はいはい、いってらっしゃい」
これは結構酷いつわりだなぁ……私とヴィオラはまだ大人しい方だったか。
お姉ちゃんとスプリングフィールドがえっらい酷いつわりを起こしてる。
他のわーちゃんとかMk23とかUziもげっそりしている。
G36CとFALは平気そうな顔してるけどいつ来るかわからないつわりに戦々恐々って所かな。
個人差が出るとは言ったけど本当にそうみたいだなぁ。
ちなみにイサカは全然吐いちゃいない。ちょっと気持ち悪い程度らしい。
「ヴィオラ姉ちゃん、アイツ等どうしたの?」
「ん?私と同じでお腹に子供を宿したんだな……あとでおめでとうと祝ってやれ」
「「はーい」」
「妹枠で板についたね、デストロイヤー」
改造版のガイアもそろってヴィオラにベッタベタだ。
ちょっと血色が悪くて子供みたいな言動してるから割とすぐに分かるけど。
超そっくりの3姉妹が仲良く並んでるようにも見える。
控えめに言って微笑ましいけどその胸部は凶悪の一言に尽きる。
ガイアはガイアであの見た目で嬉々としてがっついてほっぺた汚してるんだ。
これが所謂大きなお友達ってやつだろうか……いや、まぁ違うんだけどね。
――――――――――――
「指揮官、妊娠計画は計画的にと申し上げたはずですが?」
「いや、申し訳ない……というかいつの間にって感じで……」
「過ぎたことは仕方ありませんが……そこの妊婦組は反省は?」
「「「「「「「してませーん」」」」」」」
全員正座させられている。どうも私達二人の妊娠が判明したその日にI.O.Pに申請したらしい。
そしてその日の夜に生で出してもらって首尾よく当たってたみたいだ。
一応のためにゴムに穴あけをしたり細工は色々していたらしい。
意地でもダーリンの子供を孕むっていう確固たる意思を感じる。
ダーリンは完全にとばっちりというか何というか……でもまぁ不用意にしちゃったのがまずかったよね。
医務長を務めるKar98kもお冠というかぷりぷり怒っていらっしゃる。
「人形の妊娠はまだケースがこのD08基地でしか発生していませんわ、予想できる事は少ないんですのよ?」
「それでも私達は指揮官の子を産みたいのよ」
「愛する人の子を孕む事がそんなに悪いわけ?」
「悪いとは言いませんが母親になる貴女達にも多大なリスクがあるんですのよ?」
最悪死んでしまう事もあるし妊娠安定期に入るまでは流産とかの危険もある。
どうなった刻の悲惨さたるや……私とヴィオラも安心してはいられないんだよね。
「ともかく二部隊は活動停止になりますわ、絶対安静ですわよ?」
「今のうちに完璧なママ活をしなければ……」
「ふふ、ダーリンとの子供……」
「指揮官との子供……この胸に抱くのが楽しみです」
それから新規妊婦組にはKarからの妊婦心得をしっかりと叩き込んでもらおう。
別に私とヴィオラの言葉で聞かせてもいいけど……そっくりな事はあっても同じはない。
「この後どうする?」
「一先ず形になったイサカのドレスを着させようじゃないか」
「あ、そうだったね……今のうちにさせないとお腹がぽっこりしてきちゃうもんね」
昨日一日朝から晩までみっちり縫っていたもんだから形にはなった。
いくらか手直しの余地は残しておいて縫い上げたから今のうちに着付けさせないとね。
フィッティングしておかないと後々で大変な目に遭うのがねぇ……
イサカがいつ主任に逆制約を申し出るのかはわからないけどね。
――――――――――――
「ダーリン、やっぱり貴方が私のパートナーで良かったわぁ♪」
「しまったなぁ……せめてこれくらいは俺が何とかって思ってたんだが」
「うふふ、これで身も心もぜーんぶダーリンのものよ♪」
おめでたカップルが早速工廠となりのベンチで甘ったるい空気作ってた。
イサカの左薬指には輝くシルバーリングがあったし子供が出来た報告ついでに申し込んだんだろうな。
まぁ断るとは思わなかったけどおめでとうってしか思えないな……ふふ、もう夫婦みたいなものだったし。
「おふたりさーん、ちょっといーい?」
「あらぁ、417ちゃん?そうそう見てみて♪私もねぇ、結婚したの!」
「見てたら分かるよ……おめでとう、イサカ」
「ありがとう♪」
「何から何まで尻に敷かれっぱなしだぜ」
「そんなイサカにちょーっとプレゼントがあるの」
小首をかしげるイサカをよそにちょっと強引に手を引っ張って連れて行く。
主任はそのままタバコをふかそうとしたので有無を言わさずついてこいとおど……説得。
「主任は良いって言うまで入ってきちゃだめだよー?」
「あとこれを期にタバコ、少なくしたら?ダーリン大好きだけど臭いキスはいやよぉ?」
「……禁煙するかぁ」
主任は待機してもらってイサカだけを私のお部屋に招き入れる。
「ふぅ……一日でなんとか形にしたんだけどね」
「私達からのささやかな贈り物だ、受け取ってくれ」
まだ仮縫い段階だけどウェディングドレスを見せてあげるとイサカはびっくりって感じ。
「式は挙げないにしても晴れ着は着てみたいでしょ?」
「サイズは合ってるはずだが念の為だ、フィッティングする……いいか?」
「……えぇ、もっちろんよぉ♪」
例に漏れずイサカも順調に発育しているみたいでおっぱいサイズに修正が入った。
ちなみに主任にこのウェディングドレスをお披露目してみると鼻を抑えてサムズアップをもらった。
ふふん?お嫁さんのウェディングドレス姿に悩殺されたな?
12年後を語ったからもうね、こうなるのは確定してるんや。