元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん   作:ムメイ

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テロリストの保有武器って大体はアレだよねー


Day155 Welcome and GotoHELL

私達妊婦組は基地の中でも一番安全とも言える兵舎の共有スペース内に集められた。

他の人形は全員戦闘態勢で出ていって私達以外居ない。情報を流すためのモニターが戦況を伝えてくれるけど……

私達は自衛用にとサイドアームの所持は認められてる、Mk23以外は戦闘力が落ちた状態だ。

ダーリンは作戦指揮に入る前に私達に顔を見せてくれた。いつもと変わらない笑顔私達の頭を撫でてくれた。

何も心配は無いと言って司令室に向かっていった……そうは言っても心配は尽きない。

スペースに据え付けられているモニターに映し出される戦況や司令室の様子を固唾をのんで見守る。

 

「身重じゃなかったら今頃戦線に立ってダーリンと私達の幸せを邪魔するヤツみーんな殺してるのになぁ」

「今は私達は戦って守る側じゃないわ……守られる側よ」

「もどかしいですがその為に防備を積み重ねてきたのですから……皆さんを信じましょう」

「そうは言ってもスプリングフィールド、アンタだって不安そうじゃない」

「わたくしも不安でしてよ?Uziもそうじゃない」

「敵の姿が視認されたみたいよ」

「強化外骨格でガッチガチね、これじゃどっちが人間か人形なのかわからないわね」

 

偵察用ドローンから送信された映像情報が入った。

映し出された映像の中では基地近くの森林を行軍する強化外骨格で武装した兵士が見える。

人形を嫌っている過激派が下手な人形よりも人形みたいになっているのは皮肉だね。

担いでいる武器はこれまた鉄血人形の物を鹵獲したり一般的な銃火器のごちゃまぜ。

見られる中で一番の脅威となり得るのはやっぱりRPG7に代表される無反動砲の類だ。

スレッジハンマーやショットガンなんかも散見できる。

攻め落とす気は満々だし確実に私達を殺そうとしている明確な殺意が見られる。

 

「そんなに人形が子供を孕むのがイヤなのかな」

「何かにつけて人形を迫害したいだけよ、あの手のバカは」

「人間が一番恐れるのは分からないもの……その次は自分の優位を脅かすものだ」

 

圧倒的なアドバンテージであった人類の再興の担い手という物が人形に取って代わられる。

それは確かに良く思わない人間も居るだろうさ、全員に好かれるなんてのは無理だもん。

だから良く思わないは別に構わないし関わらないだけだけど……

いま来ている連中は私達妊娠した人形が悪魔か何かに見えて仕方ないんだろうな。

焼き払わなければいけない、自然の摂理に反した存在だって感じかな。

2020年にはポリ袋の人口子宮なんて実験もあったのによくもまぁ……

まぁ昔から人間の一部の頭おかしい連中は色んな主義主張を掲げて殴り合いを展開していた。

肉食文化を許さないとか特定の旗を掲げるのを許さないとか特定政治家を許さないとかね。

兎に角悪者を作らないと団結しづらいのが人間っていう存在なのかもしれない。

特異な事をして飛び出てしまった私達は格好の標的となったんだろうな。

 

「お、一人さっそくダウンしてる」

「射程距離的にDSRでしょうね」

「対物ライフルに狙撃されちゃぁ……」

「流石に即死ですわね」

 

強化外骨格で吸収しきれない貫通力をもって一撃、バイタルエリアに着弾して一人倒れた。

強化外骨格って言ってもその装甲厚なんてたかが知れている。

パワーアシストによる高機動が売りの外骨格でのっしのっしと歩いてりゃそりゃね。

他の外骨格の連中も重装甲だったりするけど流石に対物ライフルの弾を受けちゃひとたまりもない。

狙撃手に撃ち殺されてからようやくすでに捕捉されているのを察知したようだ。

 

「まぁ早朝にカチコミかけてくるのはいい考えだと思うけどね」

「夜襲は奇襲作戦では一番ベタだものね」

「視覚情報が限られるから良いのだけど」

「あの強化外骨格のセンサーの光がちょうど良いガイドビーコン代わりですわね」

 

人形の視覚センサーはかなり優秀である。人間の限界性能に近い。

第一世代の人形はどうか知らないけどね、少なくとも私は人間の時より視力がかなりいい。

そもそも暗闇の中で光を放てばかなり離れた場所でもくっきり見えるものだ。

海上のような遮蔽物のない真っ暗な中であればかなり離れていても肉眼で視認できると聞く。

森林という月明かりや朝日の届かない所で動く光なんてガイドビーコンにしかならない。

ましてやそんなセンサーを撃ち抜けばあとはどうなるか?

得てしてセンサーや可動部等は装甲が薄くなるものだ。容易く貫通するだろうさ。

 

「装備だけご立派なだけの雑兵揃いだろうか」

「フン、テロリストなんてそんなモノでしょ」

「そうよそうよ、私達のダーリンが率いるあの面々に敵うわけないんだから」

「健気に物陰に隠れてるけど……それが悪手なんだよねぇ」

 

この基地の戦闘とは色々と派手に暴れまわるのが殆どだったりするけど……

暗殺が得意だったり暗闇でのマーシャルアーツを得意とするのも多い。

その筆頭とも言えるのがこの基地に配属されてから覚醒した……蹴り癖がついちゃったG36だ。

 

「あ、G36が横合いから蹴り倒したね」

「ダミーもきっちり他の強化外骨格兵を蹴り倒してるわね」

「隊列が乱れた所に……この淡々とした処理の仕方はグローザね」

「基本的に消音で叩いてるわね」

「ん、このヘッドショットはM14とG28だね」

 

映像を見てる限り本当に心配なんてなかったんだなぁって思う。

 

 

――――――――――――

 

 

兵士がそのまま突撃しても殺されるだけと悟ったのか今度は悪路走破性に特化した戦車を引っ張り出してきた。

かなり前世代的な物だ、旧ソ連製の戦車とか文字通りの動くアンティークだよ。

確かに対物ライフルの一撃を防ぐかもしれないけど……それじゃぁ心もとないんじゃない?

あ、ダーリンが通信機に手を出して何か言ってる……うーん、落ち着いて見ることなかったけどかっこいい……

仕事中、特に戦闘指揮中のダーリンはとってもかっこいいから大好き。

おっと、戦況がまた動いたな。おやおや、向こうはさらに多脚戦車を出してきた。

これはちょっとまずいかも。銃火器での有効打は限られるし榴弾とかの射程ではないしなぁ。

榴弾を扱えるのがD-CustomのM4とSOPぐらいだしなぁ。

あの子達は別方面の防備を固めていてすぐには駆けつけられない。

ではどうするか?現在対応に当たっているのはG36にグローザ、スオミの3人と後方からスナイプしているRF部隊だけど……

流石に脚部アクチュエータ等も装甲が施されていて有効打が中々決めれない。

 

「あ、出てきたね」

「今回はこちらで十分だな」

 

そんな兵器を持ち出すならこちらも勿論出しますとも。

レオパルト戦車です、この基地の保有武器の一つであるレオパルトを出したんだ。

車長はダネルが勤めていて偵察と時折愛銃を砲塔の上に出してから狙撃してたりする。

たまにおっぱいがつっかえてわたわたしてたりする。

私とヴィオラは絶対に入れないよね。私はともかくヴィオラはこの基地一でっかいし。

なんて思ってる間に主砲が火を噴いて目下の脅威である多脚戦車の戦闘室に砲弾を叩き込んでいる。

貫通力は純粋な値で600ミリは簡単に貫くとされている。

多脚戦車は足で支えて動かしていくっていう特性上機敏さには欠けるし重量に関しても制限が出てくる。

装甲材を吟味して複合装甲にしたとしても限界がある。

非爆発性の運動エネルギーを相殺できる許容値はおそらくだけど200ミリに足らない。

ではそんなのがレオパルトの砲弾を食らえばどうなるか?

戦闘室を覆う装甲板は容易く撃ち抜かれてその破片が戦闘室内にばら撒かれる。

それだけで済めば良いけど当然戦闘室には乗員がぎっしり詰まっているし……

搭載火器制御システムも搭載されている、そんな所に砲弾が飛び込むんだ。

そりゃもう大惨事って訳で多脚戦車の動きが止まる。

戦車を止めようとテロリストが群がるがそれはスオミとグローザが尽くなぎ倒していく……

G36はと言うと行動停止した多脚戦車の中へと潜り込んで生存者を確保してるんだろうな。

殆ど情報は握ってるから今回の惨状を本隊に伝えさせるための走狗にさせるのかな?

 

「あ、全体の戦況に……うわーひっど」

「圧倒的だな」

 

圧倒的と言うかほぼ一方的な虐殺になってた。

東西南北と囲まれてそれぞれから攻められていたんだけど……全部歩兵隊は全滅。

他に用意されていた機動兵器はセンサーを撃ち抜かれていたり駆動部を滅多撃ちされてたり……

徹底的に叩きのめされていてパイロットと思わしき人間がそれぞれ確保されている。

旧式の戦車はUziが本来持っている筈の焼夷手榴弾で無力化してるし……

特にステンが見事なトップアタックを決め込んでいて対戦車戦で輝いていた。

 

 

――――――――――――

 

 

「おつかれ、ダーリン……無事に終わったね」

「んまぁ今回のはってのがつくけどなー……」

「それで……またお嫁増やすの?」

「向こうがガチだったらな」

「そっか、ダーリンがそう言うなら私は止めないよ……信じてるから」

「……あーもう、そういう」

 

早朝から朝日が登る頃、戦闘態勢は解除された。簡単だテロリスト数人を残して全滅させたから。

戦闘指揮を執っていたダーリンが私達お嫁さんが待機している共有スペースに入ってきて終わったことを告げた。

まだお腹が出てない組は皆それぞれ抱きついてからキスをして無事を喜んでいたし……

私とヴィオラは労いの言葉を掛けてそっと寄り添う。

ダーリンはさらに自分のお給料から色々削ってから結婚費用を捻出するみたいだ。

さらにお嫁が増えるみたいだけどまた式を挙げるのかは不明。

 

「でもまぁウェディングドレスとかはきっちり贈るつもりだ。不公平だしな」

「ふふ、そういう所が好かれるんだよ」

「ありがてぇけど俺みたいなセクハラ脳は……」

「……そんなセクハラ脳を心底好きになったのが目の前にいるんだぞ?」

「隣にも居るんだが、忘れてもらっては困るな」

「お前ら……出産したら覚えてろ」

「「期待してていい?」」

 

戦闘が終わって基地の中の雰囲気はいつものD08らしい和やかな物になっていく。

後始末は……拠点らしい研究所跡の清掃くらいか。

さ、今日の朝ごはんを元気に作っていこー!

 

「「「おぶぅぉぇええええええええ!!!!」」」

 

キッチンに立つ前にゲロの処理だね……安心して気が緩んでつわりが来たか。




まぁそんなんだから普通にボッコですわ
防衛側の方が優位なんでぇ

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