テストケースとしては私達は良いデータの収集先なんだろうなーとは思う。
人形妊娠実験の1stフェイズではヴィオラが犠牲になったが着床に失敗。
2ndフェイズで私も実験に加わり通常の妊娠期間の半分での発育ならばギリギリ着床に成功できるっぽい?
とまぁ探り探りながらちょっとずつテストケースを増やしていたのは分かるんだ。
3rdフェイズでテストケースがさらに増えて9人に増大してからデータ収集も捗っただろうね。
皆結果的にちゃんと妊娠してるし人工卵子の受精率は今の所100%かな?
人工子宮に関しても昔から研究はされていてそこの問題は今の所無し。
まぁ順調にフィードバックが進んでいるから今度は各基地に配布しても問題は……わからないから今の所D08基地だけにとどめてるのかな?
その辺のI.O.Pの意向ってのは分からないから何ともいい難いけど……
「一気にテストケース増えすぎじゃね?」
この基地所属の人形大半と婚姻関係を結んでいる事になると思うんだけど。
消極的なYesに対しても普通に指輪を渡して幸せにするなんて言うもんだからなぁ。
I.O.Pとしてもテストケースが増えて万々歳。
さらに貴重な鉄血人形のデータも収集できてさらに良かったねって感じで……
「本当に養いきれるの、ダーリン?」
「何とか……計算上」
「これで全員に赤ちゃんが出来たら地獄だよ?」
「そうだな……」
「野球チームレベルじゃないよ、小学校の一クラス分になるよ?」
「怖い想像はさせないでくれ……」
今は私達の稼ぎっていうのもある。経済を動かしているのは人間だけじゃねーんだ。
私達人形が経済を動かしていたりもする。つまり私達の働きにも相応の給料が出ている。
まぁ今は私達妊婦組は産休に近いのでお給料は減ってるけどね。
その分データフィードバックでI.O.Pから結構貰ってるけど。
「これは暫く私達が貯金しないといけないね……」
「すまんな……」
「んん、いーの、ダーリンに無言の信頼を預けてもらってるって思ったら嬉しいもん」
ぐっとサムズアップしてから微笑むとダーリンも気が抜けた笑みを浮かべる。
「そういやドリーマーのヤツが培養技術について研究を始めたみたいだ」
「ふーん?」
「タコの触手とかに絡まれたいって言う歪んだ欲望の為だけにな」
「バカと天才は紙一重だったか……」
もうわけわからん……ドリーマーがかなりのド変態になっているのはもう知らん。
――――――――――――
「人形教団?」
「つい先日殲滅の憂き目をみたカルト宗教よ」
今朝方諜報部のグローザが報告に上がっていた。気になる動きがあったらしい。
ちなみにダーリンにはもうすでに報告済み……いつしたか?多分夜中でしょ。
「人形を所謂新人類と見たり救世主と見て崇めている宗教団体よ」
「なんだそりゃ、人形は所詮は人間の被造物だよ?」
「まぁそうですが……この愛情や親愛、情欲が全て作り物とは思いたくないわ」
「それだけ聞くなら別に普通のそこら辺に居る新興宗教じゃない?」
「実際はと言うと人間を虐殺し自爆テロや暗殺などテロリストと何ら変わりない組織だったみたいよ」
「うわ、人類人権団体の過激派とかわんねー……」
「因みに私達も抹殺対象だったみたいよ」
ほへ、そいつらの主張曰く私達は無理やり人間に働かされている。
おまけに妊娠が可能になった私達は無理やり犯されて孕まされた人形って事らしい。
その望まぬ子供を産むくらいならば殺してしまうのが良いのだろう……だってさ。
「ま、殺されて当然だね」
「どこの部隊が掃除を行ったかはI.O.Pの中でも秘密裏のようですね」
「割れなかったって訳ね」
どうやら暗部が動いているっぽい。そんな訳でグローザ達でも一日じゃ調べられなかった。
まぁどこが動いたとしても排除してくれたのは大きいね。
「で、その人形教団の残党はもう居ないの?」
「えぇ、もう居ないみたいですね」
なら暫くは良いのかな。一応だけど人類人権団体の過激派もこっちで掃除したばっかりだし。
また襲ってきてもいいけどまた虐殺になるだけだし。
「で、結婚指輪を貰って初夜はどうだった?」
「えぇ、それはもう乱れに乱れ……あ」
「なるほど」
グローザはやっぱり夜のほうで大活躍と……ダーリンもこれはまた暫く唸ることになるかなぁ。
積極的にガツガツ来るのが両手で数えられるだけで良かったね。
全員がガツガツ来てたら絶対干からびてたと思うけど……まぁそうなったらローテーション組むことになるか。
夜のローテーションとはこれいかに……ふふ、大分アレなことだね。
――――――――――――
またドリーマーのアトリエが騒がしくなっていた。今度は何を作ったのやら。
「うふふふ……見なさい、これが私の答えよ」
あぁ、このまえのなぜなに……じゃないや、みらくるふぁくとり~か。
あれでまた触発されてなにか作ったんだろうな。確かこの前のは……家庭的なものだったと思うけど……
ドリーマーの開発趣旨からはちょっと外れてると思うんだけど?
「ハウスキーパーVerDよ」
「ごきげんよう、お嬢様」
「ドラグーンじゃねーか」
これまたクラシカルメイド服を着た鉄血人形のドラグーンがそこに鎮座していた。
勿論D地区仕様に仕上げているんだろうこれまた豊満なバストをお持ちで。
名残といえばその目元のバイザーと無愛想な口元くらいじゃないだろうか。
D基地にちなんでD頭のドラグーンにしたのか……それともドリーマーの趣味か……
「家事に関する全てをプログラミングしているわ」
「お嬢様の身の回りのお世話から炊事洗濯まで何でもお任せください」
「まぁ市販化するわけもないから普通にこの基地に放っておくだけね」
「あ、じゃあ皆と同じでご飯を囲ったりするんだ」
「ちなみにこっちは触手育成用に特化したモデルで……」
「うっわ……」
これまたコッテコテというか……ドラグーンのいつもの服装みたいなんだけど……
そのおっぱいが私クラスにでっかい。私達やドリーマーも飲んだ例のカプセルを解析したっぽくて量産体勢に入ってるし……
きっとこのドラグーンもあれなんだろうなぁ……と思うと頭が痛くなってくる。
そしてこの距離から漂うミルク臭がやべぇの。どう考えてもそういう用途じゃん。
「効率特化最初期型の417のに比べても随分生成効率が良いのよ?」
「ふぅん、私4つ服用してるんだけど」
「え"?」
「あれ?そういう説明だったけど……」
「……417、アンタ騙されて過剰摂取させられてるわよ」
「あー、だから私もヴィオラも困るくらいに出ちゃうのか……なるほど」
「子供は空腹に困ることはないわね」
「そうだね」
私は妊娠する前から子供が出来た後の準備ってのは出来てたりする。
まぁアレな目的で手を出したテスト用品だったりするけど……
「これは搾乳機とかもつくらないといけないわね」
「やめろ」
――――――――――――
ドリーマーのアトリエを出てから最近また賑やかになっている区画に入る。
倉庫内ってのを忘れちゃいそうだけどまぁ多目的空間てきな用途も兼ねてたから良いか。
という訳で倉庫内の養殖プラントに入る。近くの鉱山から岩塩とかが出たらそれを複製ってのも……出来なくもないのだろうか?
ドリーマーも今頑張って塩化ナトリウム生成装置を作ってたりする。
まぁそれが今は出来てないから淡水魚の養殖槽が稼働している。
あの研究施設から回収できた卵でラベルが張られていた乾燥卵を水にひたしてから卵が孵るのを待っている。
見ると段々と水気を吸っているようにも見える。マジでこれ孵るのかな。
今はエアーポンプの稼働する音と水循環の音が響くばかり。
これが暫くしたら色んな生物が顔を覗かせるようになるんだろうか。
「あ、いけね、迂闊にこんな水舐めたらダメだね」
案外黙ってるだけで海水生成装置開発終わってたりしてー……と思って水に指突っ込んだ所。
雑菌が沸いてる可能性がある水を飲んだらそれが私を伝って赤ちゃんに行っちゃうんだよね。
だから私は何を摂取するにしても赤ちゃんにとって有害じゃないものを取らなきゃいけない。
お酒は飲まないしタバコも嫌いだからアレだけどそういうのが好きな人形だったら辛いかもね。
まぁそれで止めれないならママになるべきじゃないと思うけど。
「あ、これ稚魚かな?」
水槽には卵が無くて何かあるのかな……と覗いていたらちっちゃいのがうろちょろしている。
よーく見てみると半透明だけど内蔵らしきものが見えている。
どうやら稚魚っぽいのが生まれてるみたいだ。恐るべし生命の神秘……
そして生まれるのが早いこと早いこと……これが食われる側のサイクルか。
「早く実際にみてみたいねー?」
けっこうぽっこりと出てきたお腹を撫でながら赤ちゃんに話しかけてみる。
お返事代わりのお腹キックが飛んできた、あー今日も元気で大変よろしい。
ママは早く抱っこしてミルクをいーっぱい飲ませてあげたい所です。
「私の幸せは私がちゃんと定める……誰かに決めつけられるもんじゃないもん」
どんな思想をもつのも自由だけどそれを押し付けて幸せだろう?なんてのは間違ってる。
私は私の意思でダーリンとくっついて色々やって好き合って子供を授かった。
強制でも無理やりでもなんでもない、自然な流れで授かるべくして授かった物だ。
……絶対にこの幸せを壊させはしない。
「ダーリンに手を出して傷をつけたら……地の果てまでも追いかけて……」
「417、少し実験に手伝って」
「……やだ!」
あんまり長くここに居たらドリーマーに捕まっちゃうな。
気分もちょっと悪い方向に行ったし気分転換にお散歩しよっと……
大量追加、尚ベビーラッシュはイケイケガンガンな連中……だけカモネー
どんどんフラグを立てていくぅ