「……なぜ?」
「あー……」
「417、貴女は黙っていてください」
朝からエージェントが頑張ってお料理を研究しているんだけど……
コレが基礎から出来ていないもんだからさっきから焦がしたり味付けが素っ頓狂な事に。
味見して酸っぱい顔したり苦い顔したりと表情がコロコロ変わっていく。
そうしてから悩んでいる間はいつもの無愛想と言うかむすーっとした顔。
もちろんの事一応のセーフティでIFFとかのカスタマイズは受けてもらった。
エージェントはここでドリーマーに対して圧倒的な大差を付けて美味い料理を出すまでって言う条件付きだけどね。
流石に火を扱う事だから下手なことされると基地が火事になっちゃうから見張ってる。
一応搭載されているレシピはいくつかあるみたいでそれは出来るんだけど……
「まさかポテトサラダくらいしか出来ないとは……」
「黙っていてください」
インプットされている料理がモノの見事に簡単なのに限定されている。
おまけに調理経験はほぼ皆無、何度かレーションのアレンジに挑戦したらしいけど……
「あれはそのままの方がまだマシだ」
「そもそもだがあのレーションをどう改善しようにもな……」
「調味料の類はあったからそれで味を変えれば良い?はっ」
「その結果がゲロ甘レーションだったよね……」
「あれは食べた時吐きそうだった」
「二度は食べたくない劇物だな」
「うむ……」
「そうですね……」
「全くね、わたくしもアレにはウンザリでした」
とまぁ鉄血組からは非難轟々で特にドリーマーは思い出しただけでイヤって感じ。
ゲロ甘って事は砂糖をとりあえずどばーっと入れたんだろうか?
ちなみに味覚はちゃんとしているみたいだけど……加減ってのを知らない感じ。
調味ってのを知らないから小出しにするってのを知らない感じだ。
ポテトサラダとか調味もクソも無い奴だしなぁ。マヨネーズ等はまた貴重品だから……
鉄血内部でもある調味ペーストでやりくりしてたらしい。
まぁそんな訳で天然物やそれに近い形式でのお料理に関する経験はほぼゼロ!
だから味付けがめっちゃくちゃだったり……というか味見するってことを知らないみたいだ。
「ぐ、ぐぐぐ……」
「教えてあげようか?」
「結構です!」
「あ、うん……でも食材も無限じゃないから今日はそこまでね?」
しょんぼり顔で肩を落とすエージェントがそこに居た。あらやだ可愛いこと。
――――――――――――
「ぶっはははははは!!それでよく私に勝負を挑もうなんて思えたわねぇ!!」
「くっ……」
「無理せず一から教えるよ?」
「くぅぅっ……!!」
なお今自分の昼ごはんを作っておこうとしてドリーマーがエプロン着けてキッチンに立っている。
コイツも最初は人のことを笑えないくらいに酷い知識量だったのにね。
まぁ私とヴィオラで手取り足取り教えこんだから失敗の経験はない。
今だってガシャガシャ振るっているのは中華鍋。その中で踊るのはこれまた見事なチャーハン。
ドリーマーは自分で調理するのは大体中華料理になる。なんかハマったらしい。
後単純にダーリンの視線を集めれるからだと思うけどね。
中華料理は素早く大火力でってのがあるから鍋の動かし方が激しくなる。
するとまぁ必然的に身体も揺さぶられるわけ。で、ここのメンバーだと……
それはもう見事なたゆんたゆんばっかりだから男の視線を独占しちゃうよね。
ダーリンも怖い怖いって言ってたけどドリーマーのおっぱいには逆らえないらしい。
で、そんなお料理上手を見せつけて煽ってくるドリーマーにエージェントが悔しがってる。
メイドとして生を受けているエージェントとしては教えを請うのは中々くるんだろうなぁ。
鉄血側にもちゃんとプライドってのがあるのが見れたから結構新鮮。
「常識だけでもね?」
「……お願いします」
「ん、まっかせて♪」
エージェントこの煽りに堪えたみたいで私に頭を下げてお願いしてきた。
とりあえずお料理入門編だけでもちゃんと教え込んでおかないとね。
「じゃあ取り敢えずだけど……リフレッシュついでにこれどーぞ♪」
「これは?」
「SAAお気に入りのコーラ」
ね♪と言ってからパチンとウィンクしてから缶コーラを渡す。
エージェントからしたらデータ上でしか見たことも聞いたこともない代物だろう。
プルタブの開け方はちゃんと知ってるみたいで恐る恐るだけど開けて……
「ふむ、これは……く、口の中で弾けて……」
「炭酸飲料も初めて?」
「は、はい……」
とっても可愛らしい様子が見られる。慣れてないのが丸わかり。
――――――――――――
んじゃあという訳でデータに頼らず私とヴィオラとが教える事に……
「だからレシピはこれ、完璧に1グラム単位であわせるの」
「完璧じゃなくても良いじゃない、そこは食べる相手の好みに合わせるものよ」
「わたくし的にはここはダーリンの好物で……」
まぁお察しの通り妊婦がぞろぞろ集まってきてエージェントを囲っている。
それぞれ思い思いに言ってるものだからエージェントも流石に困り顔。
「はいはい全員散れー!」
「初歩から教えると言っている」
「……助かります」
「お姉ちゃんはそこで正座!FALてめぇもだ!!」
「スプリングフィールドはゆっくりと教えてくれるな?」
「えぇ、勿論です」
困った表情でオロオロしかけていたエージェントをちゃんと救出してから……
優しく教えることに定評のあるスプリングフィールドを呼んでから教え込みスタート。
初歩も初歩からだから取り敢えず簡単な焼き物をやろうかなって思う。
オーソドックスなスクランブルエッグとかにするかなぁ……
「エージェントはなにか作りたいのがある?」
「……オムレツを」
「オムレツ……まぁちょっとむずかしいかもしれないけどやってみようか」
「ではデモンストレーションをしよう」
「その後手を取って教えていきましょう」
「軽く……レシピを最初に見せておくね……っと」
「待ちなさい、417……貴女は端末をどこに?」
「え?おっぱいの上に載せてるんだけど?」
レシピを検索しながら食品とか調理器具出すもんだから両手フリーにしなくちゃいけない。
三人揃っておっぱいの上に端末とかひとまず置くものを置いている。
いやこれが楽なんだもん。私達のおっぱいばっかみたいにでっかいんだもん!
ちょっと置くくらいだったら抜群の安定感を発揮してくれるんだよ?
飲み物飲みながら両手フリーとか余裕なんだもん。
「はい、それじゃあ私とヴィオラで2パターンの作り方を見せるから」
「私がプレーンオムレツ、417がレアオムレツだな」
きっちりカッチリ焼き込むか半熟のふわっふわのにするか。どっちも美味しいよ。
――――――――――――
「うん、うめぇな」
「そうですか、それは良かったです」
「ただドリーマーのに比べっとまだまだかもな」
「うぐっ」
「ただまぁうめぇのは変わりねぇからこれからもよろしくな、エージェント」
「……毒を仕込んでいるとは考えないのですか?」
「ん?そんな事することはないだろ」
「底抜けのバカということはよく理解しました」
「そりゃどうも」
エージェントはちゃんとプレーンオムレツを作り上げた。
ただまだぎこちなさが残っていてからちょっと焼きすぎ感があった。
んでもって分量がちょっと間違ったもんだから……エージェントの味覚はちょっと濃い目っぽい。
調味料多めになっちゃってなぁ……まぁ美味しいと思うけど。
ドリーマーのやつどうやってかダーリンの好みをパーフェクトに抑えてやがんだもん。
私でも結構聞きながら好みに近づけたっていうのに……
「しかしまぁ壮観だよね」
「何がですか?」
「おっぱい」
「……正直イヤでしたがドリーマーに負けているのは癪ですので」
この基地に来た人形の行き着く末路というべきか……エージェント以下鉄血人形はみーんな改造受けてる。
エージェントは心底嫌そうにしていたけどドリーマーに煽られてそのまま乗ったんだよね。
まぁドリーマーは改造受けても飄々としててたわわに実ったおっぱいを揺らしながら基地を闊歩してるし……
それで開発も良くやってるしお料理だってお手の物にしてるし……
そんなのだからエージェントが改造受けなくて勝ってもねぇってドリーマーがくっそ煽ってるの。
ちなみにエージェントもそこそこにあった方だけど……普通に盛り盛りされちゃったね。
かなりおっぱいが存在感を放ってるもんだからメイド服の胸元がやっばいの。
「……ん、あれは」
「あぁワンちゃんのお散歩だね」
「何よ、渡さないわよ?」
「417もお散歩に付き合う?」
お散歩に連れ出しているわーちゃんとお姉ちゃんがこっちを見ていた。
エージェントの視線はもふもふな子犬に釘付けになってて……ガン見である。
「もふもふ……」
「こにゃんこは?」
「417の足元よ」
「んみゃぉ!」
「あいだだだだだだだ登ってくるぅ……!」
「はぅ……」
エージェントが子猫の無邪気な至近距離での鳴き声でやられてた。
ただ撫でるのをためらっている様子でちょっとだけ撫でて表情を崩していた。
可愛いのが好きだってそう言えば言われてたな……
あれ?普通にどっかの可愛がられ系エージェントっぽくなっちゃってるぞぅ?
もっかい来たらエージェント二人して可愛がられるんじゃね?