元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん   作:ムメイ

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まぁこんなのもする奴は居ると思うんだ。


Day171 生まれは違えど

「E.L.I.Dのコントロール実験?」

「そう、あたくし達の調査ではここ、K研究所跡がそういった研究をしていたそうですわ」

「関連文書はこちらに、閲覧は……正直止めたほうがいいわ、指揮官」

「……こりゃまた胸糞悪い研究だな」

 

早朝、私が副官席に座った頃、データルームに籠もっているPPKとグローザが出てきた。

E.L.I.Dと言ったら前にも触れた気がするけど言っちゃえばミュータント。

正規軍が主に対応している走るしめちゃくちゃ固いゾンビみたいなの。

人が変貌しているのもあるし昆虫とか動物も関係なく変異している。

その変異のメカニズムが一部解明されているから生体兵器なんてのも出来てたり……するのかもね?

私は流石にそこら辺はわからないから何とも言えない。

で、そのミュータントをコントロールする試みがあったらしい。

まぁゲームなんかではよくありがちな奴だね。ゾンビとかを外的なコントロールユニットで操るって奴ね。

あとは寄生虫を操ってとか……現実でも警察犬ってのがあったりね。

軍用犬とか人間にはない物を持ってる動物を飼いならすってのはあるけどね。

実際にコントロールする事ができれば低コスト……かどうかはさておいて、忠実で使い捨てても罪悪感が無い兵器が増える。

それもとんでもなく強くてメンテナンスの必要性がそうでも必要ない。

ランニングコストの面でみてもかなり良いまさに新世代の兵器となる。

 

「……孤児や死んで間もない子供の脳味噌を移植?」

「その他には脳だけをくり抜いた身体をコーラップスに浸して変異させてから電脳を搭載させてる……」

「それも残らず子供のパーソナルとは……ね」

 

子供のパーソナルっていうのは恐らくだけどそちらの方が言うことを聞かせやすいからだと思う。

痛み、恐怖で束縛するのも褒賞で束縛するにしても子供のメンタルっていうのは脆い。

少しの誘惑や傷で簡単に揺れ動き消えない跡を残す。

酷い痛みは一生消えない傷跡になる。手を振り上げるモーションだけでフラッシュバックして……

そういう暴力を振るう人に従ってしまうって言う人間も居るらしい。

幸いにも私は子供時代はそんな要因は無かったし……ココ最近植え付けられたトラウマも……

今はダーリンやここの基地の皆と笑いあって払拭しているから大丈夫。

けど、本当に酷い時は毎晩の様に夢に見ていたからなぁ。

これまたヴィオラが見て想像したらリバース案件だね。

 

「で、これを見せたってことは……」

「どうにも一部電源が生きているそうですわ」

「至急確認を取りたい、何処ぞのテロリストが根城にしているかもしれないわ」

 

電源が生きているって事はまぁそういう事が考えられるか。

通電しているってことは誰かしらがその施設内で活動している事になる。

 

「すぐに部隊編成してから調査に向かわせよう、お前たちも動けるように」

「あ、申し訳ありませんがコチラは暫く動けませんわ」

「どうにも無害そうだが覗き魔が最近入っていてな……カウンターでちょっと何処が覗いているのかを見てくる」

 

覗きねぇ……無害そうっていうけど覗きの時点で害ありじゃないかな?

 

 

――――――――――――

 

 

「デルタ部隊を潜入させてバックアップにUMP40とTAR21と9A91だな」

 

この基地の実働部隊はかなり多くなった。実際に基地の外に出ていける部隊は限られてるんだけどね。

M14自体は今日の未明に帰ってきている。どうにもドリーマーはあっちでちょっと作業があるっぽい。

大詰めになったらまた別な誰かを迎えに走らせるかヘリでお迎えかな?

保護観察?向こうの基地の人形が変なことをしないかは見張ってるでしょ。

 

「こちらオペレーターHK417、サポートに入ります」

『はいはいこちらデルタ1の45よ、目的地に到着したからさっさと入って中を制圧するわ』

「古い見取り図だけどMAPデータが出てきたの、戦術ネットワークにアップロードしたので見てください」

 

諜報部がもうちょっと頑張ってマップデータを引っ張り出してきたのでそれを戦術ネットワークにアップロード。

ちょっと古いデータだから内部の詳細は多少の差異があるだろうけど……

全く無いよりはマシだから渡しておくに越したことはない。

 

『……ダウンロード完了、外周データリンク確認……多分問題ないわね』

「気をつけて進んでください、もしかしたらE.L.I.Dが居る可能性もあります」

『多分ソレだと思う部屋はいくつかあるわね……あ、本当に通電してるわね……ちょっと何処かでハッキングして探ってみるわ』

「UMP40、準備はOK?」

『あたいはいつでも!えへへ、あの45がこんなに頼もしくなってるなんて驚き』

『ちょっとそういうのは作戦中にはやめてよね、40』

『ごめんごめん、とにかく45がヘマったらあたいが助けてあげるから大船に乗った気持ちで居てよね!』

「泥舟の間違いとかじゃないよね?」

『『おい』』

 

戦術マップでは逐一送られてくる稼働データからマップでどの方向に向かっているかを計算している。

こっちは諜報部が調べ上げた資料と照らし合わせながらナビゲートする。

 

「その先に入管用の端末があるはず、アクセス権限は限定的かもしれないけど……入れる?」

『……だめ、物理的に壊れてるわ』

『うわっ、何これ齧った跡?』

『……歯型』

「十分に注意して進んで、生存を最優先に」

 

PCを齧っている?金属製のPCケースが齧り取られている。

歯並び的には……まだ乳歯の子供って所だけど顎の力が尋常じゃないな。

これが資料に上がっていた試作型なのかもしれない。半ば成功していたのかな?

 

『待って!足音が聞こえるよ』

『うえぇぇ……ゾンビとか映画の中だけで良いじゃん……』

『手榴弾用意』

『あいあいさー』

 

通信越しに聞こえてくる足音はペタペタと床を素足で駆けている様にも聞こえる。

早速のエンカウントなのかもしれない、通信の先で手榴弾の安全ピンを外す音と息を呑む音が聞こえた。

 

 

――――――――――――

 

 

絹を裂くような悲鳴とはこの事なんだろうな。45姉と9姉の悲鳴が聞こえてくる。

続いてM14、G11、スコーピオンと悲鳴が連鎖していく……

 

「どうしたの!45、応答願います!」

『ぅ……ぁ』

 

声が遠い!なんだ、何かの拍子に通信機が弾き飛ばされたのか?

ペタペタと響く足音は……多分5!どうしよう、バックアップの皆に連絡……

 

『ままだー!』

『おっぱい、ちょーだい!!』

 

……はい?何この……通信越しに聞こえてくる間延びした声というか……

まんま子供のはしゃぐ声がしてくるんだけど。何事よ。

 

『………!!……!』

「……40、聞いてる?」

『もちろん、様子見に行ってくるね、タボール!9A91!出番だよー!』

『わたくしの出番ですわね、参ります!』

『作戦開始です……指揮官、見ていてくださいね』

 

早速バックアップで控えていた部隊の出動とは……たださっきから悲鳴の質が何か……

そう、夜に聞こえてきそうな悲鳴なんだよね。私も出してた覚えがくっそある悲鳴ね。

なんと言うかこの研究所もしかしてだけど……

 

『コンタクト!』

『……なんですのコレ?』

『……授乳会ですか?』

「え、えぇ……」

『ま、まだ来る!?ひぃっ!?』

『え、ちょ……!』

『きゃぁっ!?』

 

……あー、なんか今どうなってるのか分かった気がする。

多分だけどね、ミュータント化してその自我をもたせるのには成功したんだろう。

でもかなり思考が幼すぎて空腹を満たそうとひたすら求めてるんだろう……

口に入るものなら何でもバリバリ食う、空腹を満たせるなら何でもって……

でも思考ベースが子供だったり赤ん坊だったりなんだろう、求めるのはミルク。

で、今行ったメンバー全員そろってバインバインでしょ?母性あふれるおっぱいじゃん?

 

『あ、あたいはアンタたちのママじゃなぁぁぁぁぁぁ……』

 

お腹いっぱいになった仮名称ベイビーミュータントはかなり友好的だった。

とりあえずドリーマーがなんとかするらしい。今居ないけどね。

 

 

――――――――――――

 

 

「おかえり、ドリーマー……それとイントゥルーダー」

「私には無いんですかー?417ってひっどーい」

「M14ぶっ飛ばしすぎでしょ、帰りは飛ばす必要性無かったんだから……」

「ついつい、コメットの追従性が良すぎて♪」

 

昨日の昼間に急いで飛び出ていったドリーマー達だったけど一日カンヅメして帰ってきていた。

まぁこれから更にやってもらうことがあるんだけどね。

M14は無事に帰還した後シャワー浴びてからかっ飛ばしていった。

アルケミストが現在観察しているけど……どうやら超軽度の汚染を引き起こさせてそこからさらに外皮を人工皮膚で包んだ。

制御系とも言える脳味噌は電脳化されていて搭載されているメンタルはというと……

あの研究所に引き取られた子供……餓死した男の子のものらしい。

その為満腹になるまで食べ物や飲み物を欲しているらしい。

とりわけ大きなおっぱいを持った女性を見つけると……

 

「ままー!おっぱい!!」

「ぎゃー!!ちょ、ある……アルケミストォー!!!」

「ミルクの配給が間に合わん!ええいドリーマーママのおっぱいを吸っていろ!」

「やだ!このままがいい!!」

「いーやー!!」

 

とまぁ私みたいに襲われて超絶な怪力で無理矢理授乳しようとしてくるの。

割とフルパワーで抵抗してるんだけどコイツコレが強いのなんの……!!

これで軽度汚染でパワー的にはマジモノのE.L.I.Dとは比べ物にならんくらいに弱いってんだから。

 

「あーわかったわかったからお腹に乗ろうとするのはやめてー!!」

「あ、はいわかったー」

「いいこいいこ……」

 

ただベースの子供がかなり聞き分けの良い子だったんだろう。

食欲に関する事以外、つまりおっぱいちゅっちゅ以外の事に関してはすんなり聞いてくれる。

特にママ認定もらった私達の言葉は絶対っぽい。

この後だけど私は満足するまで搾られた。ひぃ、これで慣れておくのも手かもしれないなぁ。

赤ちゃんが生まれたらその後は数時間に一回こうして与えるんだもんね。

ママ修行と思えば良いのかもしれない。ヴィオラは……結構ノリノリ。

ドリーマーは今ダーリン成分を補給しているからソレが終わったら対策を打つんだろうなぁ……

……というか哺乳瓶かナニかでちゅっちゅさせてやれば良いのでは……?

 

「子連れドリーマー……」

「こんなおっぱいばっかり飲みまくる赤ん坊なんて産んだ覚えはないわよぉ……」

 

開発室でドリーマーが授乳させながら設計している姿が度々見られるようになった。

そんな状況を打開するためにタンク供給式のベイビーミュータント用のミルクサーバーを開発した。

ミルクの出処?もう察してくださいとしか……




という訳でなんちゃってE.L.I.Dの登場。
完全なE.L.I.Dでは無い、強化外骨格でガッチガチにブーストした人間程度?
でもまぁ兵器としては失敗も良いところ。

ドリーマー「これで生殖能力もあるってんだから怖いわねぇ」

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