ボクは人形が拾ってきてると思うんだ。
――――――――――――D08基地司令室・朝
「「「私悪くない」」」
「悪いわよ、指揮官の部屋に勝手に入り込んではしたなくないと思わないの!?」
「何ではしたないの?」
「一緒に寝ただけ」
「添い寝と変わらない」
「あの変態が牙を剥かないと思ってたわけ?それにはしたないって…そんなの大声で言えるわけ無いでしょうが!!」
「「「チキンだもん、ないない」」」
「ごめんね、お兄ちゃん…」
「いや、良いんだ…」
朝から騒がしくてごめんなさい、417です。
私のダミーが暴走してお兄ちゃんのお部屋に勝手に入り込んで腕を締めてたみたいで…
お兄ちゃんの腕が不能状態なのでお仕事を代行して私がしてる。
「痛いっ!?」
「ふにゃし!?」
「あだぁっ!?」
「いい加減に迷惑をかけるのは止めなさい、良いわね?」
おー痛そう…お兄ちゃんは暴走して猫になってるMk23にまかせて…
動けるようになるまでの間お仕事頑張るぞー…
そんなこんなで作戦開始までちょっと遅れた。
今週は私達第3部隊が午前出撃、張り切るけど…朝からダミーが暴走気味だから不安だなぁ。
ん?なになに?近々お兄ちゃん宛になにか来るらしい。
なんだろうね、機密につき同封した資料で詳しくは知れって…
お兄ちゃんも皆目検討つかないって表情だった。
「Mk23」
「なーにダーリン、おっぱい揉む?」
「そろそろ降りて、お仕事」
「もう少し抱っこして♪」
「417」
「なぁにお兄ちゃん?」
「もう少し代理頼んだ」
「はーい」
Mk23、貸し一つだからね?
お兄ちゃんの為なんだから…!
唸れ私のペン!
――――――――――――D08基地司令室・朝
結局お兄ちゃんのお仕事半分潰した。えっへん。
さて、今日はこれから出撃だ。前線の様子を見て戻ってくる偵察だ。
昼までの出撃だけど気をしっかり締めないと。
皆はゆるゆるだけど私はしっかりするの!
さてと、切り替えていきましょう。
ダミーもお遊びは止めよ?良い、任務は簡単よ。
全員無事に基地に帰す、たったこれだけよ。
目が据わった私を指揮官は頼もしそうに見てくれる。
それだけで私は頑張れるのよ、ふふ…
「それじゃ、いってらっしゃい」
「いってきまーす、お土産に期待しててねー」
「今日はヒットレートどれくらい行けるかなぁ…頑張ってきますね♪」
「ダーリン、行ってきます♪」
「いってきまーす…何見てるのよー…」
「行ってきます、皆無事に帰すから安心して?」
私は完璧よ。それは揺るがない。
――――――――――――D08地区前線・朝
「では、お気をつけて」
見やすく大げさに手を振って返答。
さぁ行動開始、最前線を抜けてやってくるバカはどれだけ居るか…楽しみね。
私は嗤いながらチャージングハンドルを引いた。
小気味いい音と共に初弾がチャンバーに装填された。
いつでもぶち抜いてあげる。
「それじゃー偵察よろしく、417」
「任された。発見後の展開は迅速にね?」
「それより今日こそ私の実力を見せますよー!」
偵察の私と狙撃のM14は早速戦闘モード。
意欲満々なのは良いけどM14はさっさとそのアタッチメントに慣れてからよ?
スコープを高倍率にしてから初めての作戦行動、誤差修正するまではどうかしら。
暫くの間、接敵することもなく私達は前線を警備する…
ダミーも無駄口を叩かず双眼鏡片手に偵察を続ける。
ん?ガサガサと草が揺れている。
敵かも知れない…注視していると中から現れたのは…尻尾?
茶トラ模様の尻尾だ、敵じゃないけど…
ちょっと衰弱した様子の子猫が出てきた。
ど、どうしよう…スコーピオンに聞いてみようかしら?
見殺しにするのは後味が悪いわ…
「スコーピオン、あの先なんだけど」
「何なに!?敵?」
「いえ、敵じゃないけど…猫が居るの」
「うーん?」
「衰弱してる様子だし…保護とか出来ないかしら?」
「……指揮官はOKだって、417が回収しておいでー」
指揮官は本当に甘ちゃんね、そこが良いんだけど…
許可は取れた…あとはあの子が逃げたりしなければ良いけど…
ダミーに周辺を見させながら子猫ちゃんに近づく。
向こうもこっちに気づいて警戒した様子でこっちを見てる。
「大丈夫…大丈夫だよ…」
「みゃーぉ…みゃーぉ…」
母猫とはぐれたのか…それとも見捨てられたのか…
このままだといけない…私の小さな両掌くらいのサイズだ。
一人で行きていくにはこの土地は痩せてるし…
本当はお母さんが良いよね…ごめんね、お姉ちゃんで…
うんうん…弱ってたからか大人しく捕まってくれた。
胸に抱えてみるとちっちゃくも暖かくて…可愛い…
「こちら417、子猫を保護したわ…」
『じゃあ警備に戻ろうかー敵影は?』
「無いわ、今日も暇で終わりそうね…」
『平和でいいけどねーつまんないなー…』
スコーピオンの言うことも分かるけど、私は平和のほうが好きよ?
それにこの子を驚かせなくて良い…
何事もなく警備任務は終わりヘリで帰投した。
猫ちゃん暴れないで、あ、やめて…おっぱいに爪を立てないで!
――――――――――――D08基地救護室・昼
帰ってからはダミー達に食堂のお手伝いに行かせて私はこの子猫のお世話に精を出していた。
衰弱してたけどミルクはちゃんと飲んで餌に貰ったお肉なんかももりもり食べて…
今は私のお膝の上で丸まって寝てる。懐いてくれてるのかな。
猫は恩知らずなんて言われたりするけど…どうだろう?
「……じー」
さっきからWA2000が見てるけど、何?
キラキラした目で子猫を見てるし…可愛い物好き?
カシャカシャと端末で激写してないで入ってきたらどうかな…
「あのー」
「な、何よ?」
「愛でたいなら入ってきたらどうかなって…」
「ちょ、ちょっとだけ…はわー…可愛い~♪」
あのいつもキリっとしたWA2000がふにゃふにゃ笑顔に…!?
撫でて笑顔になったかと思えば寝てる子猫を抱きかかえて頬ずり…
起きた子猫が大あくびすると悶てるし…膝の上に抱っこして撫でまくって…
あんまりしつこくすると猫って…
「ふぎゃ!?」
あー、爪立てられた…
そんな泣きそうな顔でこっち見ないで…猫ってそういうものです。
「撫ですぎですね…」
「可愛いから仕方ないじゃない!」
「どうどう、怒鳴らない…」
怒鳴るWA2000に対して…膝の上で寝てる子猫はゴロゴロと喉を鳴らしていてリラックスしてる様子。
人懐っこいのかな?人見知りしなくて良かった。野良猫ちゃんって警戒心が強いはずだけど…
生後間もない子なのかも…
「ねぇ417」
「なんですか?」
「この子私に頂戴」
「お兄ちゃんに相談してください」
物じゃないから頂戴もなにも…管理はお兄ちゃんがするって言ってたし…
暫くはこの救護室で生活してもらって人間に慣れてから飼うか決めるって言ってたけど…
…それにこのWA2000暴走気味で不安が残るの。
「ちょっと直談判してくるわ」
「素直に言ってくださいね?」
「う、うるさいわよ…アンタには関係ないでしょ?」
「はーい…じゃ、私はこの子の様子を見てますから」
その後WA2000がまた戻ってきた上に猫目当てにイサカとかお姉ちゃんとかG11まで来た。
45お姉ちゃんがそっと横に居たのはびっくりした…いつの間に?
いきなり「猫かぁ、気まぐれで良いわよね~」なんて囁かれたから心臓止まるかと思った。
子猫も人見知りしないで愛嬌振りまいてくれて来た皆和ませてた。
暇していたメンテナンス班のお兄ちゃん達が急造でダンボールハウスを用意してくれていた。
暫くの寝床はそこになるって…ごめんね。
――――――――――――D08基地司令室・昼
「お、417…猫の様子はどう?」
「あれからぐっすり寝ちゃったよ」
「この基地のマスコットがまた増えるな」
「ふふ、そうかもね♪」
お兄ちゃんは休み時間も書類仕事をしていた…あれー?今日の分はもう終わってても良い頃だけど?
お仕事熱心なのは良いけど無理とかしないでよ…お兄ちゃん。
所でマスコットって私も含まれてるのかな?
お兄ちゃんは私の頭を撫でてくれて視線を書類に戻して難しそうな顔をしていた。
機密っぽいから見ないけど…何だろう?
「その書類、難しいの?」
「んぁ!?あー…まぁ、困ったものだな…うん」
過剰な反応もある…むー?よく分からないけどお兄ちゃんは悩んでる。
何がこんなに悩ませてるんだろう…
「それより猫が来たから保護施設の本格始動だな…」
「もっぱら投資してたのデータルームだもんね、お兄ちゃん…」
「今まで見つからなかったんだもん…キャットフードも注文しておいたからな」
「ナイスだよ、お兄ちゃん♪」
普段はスケベだけどこういう時は頼りになるなぁ…
余談だけど猫のお世話は非番や出撃帰りの人形の希望者でやるって。
WA2000がすっごいやる気満々で立候補したからお兄ちゃんが苦笑いしてた。
――――――――――――D08基地第3部隊兵舎・夜
「猫ランジェリーってどう思う?」
「いきなり何言ってるのMk23」
猫が可愛いからってランジェリーを着ても可愛がられるとは限らないよ?
Mk23は聞いちゃいない、血走った目でカタログ見てるし…
お兄ちゃんに喜んでもらいたい?まぁ止めないよ?
元からMk23は猫っぽいから似合うと思うし…
でも、良いなぁ…好きな下着を選べるのは。
私は支給されるのしか合わせられないし。
私のおっぱいのサイズに合うブラはオーダーメイドクラスになる。
人形にはちょっと手が出ないかなぁ…
本当に欲しいと思ったらI.O.PにおねだりしたらOKだと思うけど。
うーん…お兄ちゃんの喜ぶ下着かぁ…
トレンド視察も兼ねてお出かけ申請しよう。私に似合う服って言うのも探してみたいし。
何より、遠くなってしまった内地をまた見たい。
所で指揮官君が悩んでた書類ってなんだろうねー(棒読み)
誤字報告ありがとですー