何時の時代もペットというものは人間の心を支えてきた。
猫ちゃんがにゃーんと鳴けば多くの人間が可愛いって思う。
撫でてあげてから目を細めて気持ちよさそうにしてる姿を見てたら和む。
誰かの膝の上に乗って丸まってゴロゴロ喉を鳴らすのも微笑ましい。
構ってと手や足に抱きついたり猫パンチしてくるのも微笑ましいでしょ?
ワンちゃんだって同じだ。ロケットみたく走ってきてからお腹を見せて尻尾をブンブン振る姿はなんて愛おしいか。
私だって理性をかなぐり捨ててから撫で回してあげたい。
で、猫ちゃんもワンちゃんも凄く賢いんだ。人間の言う言葉をちゃんと理解してる。
ご飯とかお魚とか骨とか特定ワードでちゃんと反応するの。
とまぁそれは良いだろう……ペットとして長らく愛されているワンちゃん、猫ちゃんの事はわかったかな。
軽く人の理性っていうのを突き崩しえる存在なのは分かると思うの。
「はうぅ~可愛いでちゅね~このままお持ち帰りです~」
「エージェントォ……」
我が基地に居る可愛いもの大好き人形エージェントが今日も今日とて大暴走していた。
何でこんな事になったんだか……とちょっと過去を振り返る。
あれはそう、今から二時間ほど前だ。今日のお仕事として街の野良犬、野良猫保護施設に行ったんだ。
今は人の食料もあまり良く取れない状況で野良犬や野良猫が繁殖してしまうと作物などを食い荒らす可能性がある。
無論、その他の害獣というものも居るんだけど……出来ることなら余裕がある人間に引き取られるべきって事だ。
保護施設もG&Kの息がかかってるけど結局慈善事業じゃない。
格安でペットを売るペットショップ崩れな所がある。当然保護期間が過ぎれば……
「という訳で417と416、WAで引き取りに行って欲しい」
引き取るにあたって割り当てられたのは私とお姉ちゃんとわーちゃん。
動物の扱いに慣れてる人形があてがわれたわけ。
スオミも扱いには慣れてるけど……カルガモちゃん一家のお世話だし……
ワンちゃん猫ちゃんが相手となるとちょっと勝手が違うかも。
という訳だろうね、私もお姉ちゃんもわーちゃんも時間があればお世話に来てるし。
お姉ちゃんは猫ちゃん適正が高くてわーちゃんはワンちゃん適正が高い。
私は特定の子からえらくベタベタ甘えられるくらいだ。
ベイビーの時もそうだけどね。私はなんだか特有の波長があるみたい。
これは私から復活したジャッジ・ガンツも同じだ。
嫌がってたけどベイビーに取り付かれたら大人しくおっぱいあげてたから私だなぁって。
なんて思いながら私達が命令受託して出ようとした時だった。
「その話、ちょっと待ちなさい」
何を隠そう、聞きつけたのはこの基地でメイドとしてめちゃくちゃ動いているエージェントだ。
因みにペットのお世話全般進んで喜んでやっている重度のワンちゃん猫ちゃんジャンキー
保護犬、保護猫を見に行くという事を話す前にこのポンコツかわいいメイドの耳に入ったな。
「新しい犬と猫を迎えるのですね、僭越ながら護衛を申し出ます」
「いや、お前保護の身分だからな?」
「それがどうしました、ご覧の通りドリーマーにきょ……頼んで主兵装を再びこの身に着けましたので」
「お前今脅迫って」
「気のせいでございます、ご主人様」
「ハンター!エクセキューショナー!!出番だ!」
「では、行きますよ417に416と同志WA」
流石鉄血ハイエンドの統括者とも言うべき存在か。私達をサブアームで絡め取ったと思ったら担ぎ上げて拉致。
そして保護施設に着き……冒頭に至る。
ハンターとエクセキューショナー?エージェントの体術に張り倒されていた。
――――――――――――
「あーうん、ダーリンの言いたいことは分かるよ……エージェントが暴走するのはいつものことだしおすまし顔があんなにも崩れるのはね……」
「待ちなさい、こら!スカートの中に顔を突っ込まないで!ステイ!ステイ!!」
「私の上着は爪とぎ用のバリバリじゃないのだけど?」
『エージェントがぶっ壊れて視察にならねぇのはもう分かってたけどよぉ……何この惨状』
「わかんない……」
わーちゃんはワンちゃんに気に入られていて集られてるんだけど……
鼻の頭をひたすらスカートに突っ込まれたりしていて大変な事に。
お姉ちゃんは猫の止まり木状態で上着でバリバリされてたり……
「はぅー……」
一番の誰だおめぇ状態になってるエージェントはひたすら小型犬を抱きかかえてすりすり頬ずりしてる。
お前こそ今尻尾なんか生えてたらぜったいバッサバッサと尻尾振ってるよね。
そうそう、そのスカートの中でモコッとしてるのが揺れるように……
「ん?んん????」
「どうしたの、417?エージェントの方をみ……」
「あーもう!おすわり!!言うことを聞かないと……ったく……やんちゃな子ばかりで暫く暇しないわね、で?何ご……と……?」
エージェントのスカートがもこっと膨らんでる上になにか揺れてるんだよね。
そう、マジで犬のしっぽでも生えてんじゃないかって感じなんだよ。
私が絶句したのを見てお姉ちゃんもわーちゃんも続けてエージェントを見て絶句。
「はぅー、かぁいいよぉー……お持ち帰り決定です……」
当のエージェントはと言うと今まで見た中で一番の蕩けた笑顔で小型犬抱っこしてる。
なお、小型犬の頭がおっぱいに埋もれていてワンちゃんは非常に嫌そうにしてる。
「ねぇ……エージェント?」
「はぅー……はい?あ、何でしょうか」
「そのスカートのもこっとしてるのは……?」
「……ようやく気が付きましたか」
ゆらりと小型犬を放してから立ち上がるエージェント。
おもむろに腰に手をやったかと思えば……リアジッパーを下ろした!?
いや、お前何やってんだってびっくりしたらその下からひょこっと顔を出したのは……
紛うことなきワンちゃんの尻尾。それもエージェントの髪色とおそろいの。
「ドリーマーに開発をせがんでいたのに忘れられていたので締め上げて徹夜で作らせたワンちゃんモジュールです」
ドヤ顔で言うな。因みにオプションで犬耳まであるらしい。
――――――――――――
取り敢えず保護期間が迫っていたミックスの子達を引き取ってお世話することに。
今までは別地区の基地に送ったりしていたらしいんだ。
でも今はウチにもちゃんとした施設ができてるから保護しない道理は無い。
……それに、若干一名が大暴走不可避なんで。
「何でしょう?」
「何でもないよ、ソレより続けて?」
「えぇ、そうさせていただきます……スーハー……」
エージェントがかなり良い人だって言うのが猫ちゃんたちも分かるんだろうね。
安心して身を預けてるんだけど……エージェントはそれを良い事にがっつりお腹に顔を埋めている。
その上そのお日様でしっかりぽっかぽかになってるもんだから香りが良い。
で、そこから顔を上げれば……お澄まし顔じゃないのは間違いないんだけど……
「(๑´ω `๑)うふふふ♪」
「顔、顔」
「はい?」
一瞬ですまし顔になるからこの切替の速さだけは見習いたいよ。
「あぁ、そうですウロボロスにも写真を送っておかなければ」
「え、ウロボロス?」
「知らないのですか、アレはこっそりと猫を愛でに来ているのですよ」
「……見たことある?」
「私は無いわ、いっつも尊大な態度とって素っ気ない態度取られてその後隅っこでイジケてるじゃない」
「私も無いわね、何時も一人でゲームしてる所しか見てないわ」
エージェントが端末を胸元から取り出してから猫ちゃんの寝顔を送信……すぐに電話がかかってくる
『エージェント?』
「はい、エージェントですが。どうです?」
『さいっこう!今度お部屋に連れ帰って良いか?』
「その後ちゃんとブースに戻すことが条件です」
『やった♪恩に着るぞ』
スピーカーから今まで聞いたこと無い心底ウッキウキっぽいウロボロスの声。
「ねぇ、お姉ちゃん、私バグったかな?」
「正気だから安心しなさい、ついでで私のおっぱいを揉むのはやめなさい」
――――――――――――
帰って早々ウロボロスが暴走した。
「はぅぅー!おんもちかえりぃー!!」
ドリーマーは笑い転げて床を何度もバンバンぶっ叩いて大爆笑。
デストロイヤー三姉妹が呆然、ハンターは遠い目。エクセキューショナー?がっつり寝てる。
「あれ、あれ……ナニ?」
「クヒヒヒヒヒッ無理っお腹が壊れるわwwwww」
「わからん……私の見た幻かもしれん」
デストロイヤー三姉妹揃ってお互いのおっぱいを揉んでる。
「ねぇ、ちょっと見てみない……?」
「覗きですか、同行しましょう」
その場に居た全員……鉄血ハイエンド組と談笑していたAmeliとMG3が食いついた。
「ほう、ごめん寝撮影ですか」
「なんですかコレ……こうするのが規定なんですか……?」
「いや、アタイはそうは思わないけど……へぇー可愛いな……猫は」
「無理っ死ぬwwww」
エージェントが普通に冷静に解説しているんだけど……
AmeliとMG3が引いた感じで呟いてえぇ……って感じで顔を合わせて
で、ドリーマーはまた大爆笑して床に転げ落ちてヒーヒー言ってる。
中でウロボロスが何をしてたかって?
めっちゃデレッデレな顔で写真をパシャパシャ撮ってるんだよ。
おまけに子猫はね、うっとうとしてからコテンと寝ちゃってるの。
つまり、ごめん寝って感じでなってるから超かわいい。
ただソレを見ているウロボロスの顔がめちゃくちゃ崩壊してるの。
「可愛いねぇ可愛いねぇー♪……誰だ!?」
「ひーwwwwwひーwwwww」
「ドリーマーァァァァ!!!!」
「え、ちょwww他のwwwやつぅwww」
僕の中に居る鉄血モデルがね……