――――――――――――D08基地司令室・朝
「………」
「ダーリン?」
「ん、あぁ…悪い悪い…」
「どうしたの、険しい顔して」
「…前線支援要請だ」
早朝に伝達があり一部隊を投入してとある前線の支援を行なえという命令だ。
編成部隊を考えなければならない…1部隊のみという縛りもあり考えることになる。
作戦内容も一つ面倒であり悩むことになる…
夜間行動。それも破壊工作だ。破壊工作に長けた人形などこの基地には配属されていない。
指揮官の頭を酷く悩ませることになった…
「そんなに難しいの?」
「破壊工作できる人形いたかぁ…?」
「……居ないわね」
Mk23の頭にもそんな人形が居たなんて記憶はない。できそうなのはFALか?
いや、ただの爆弾魔だから隠密が肝になる夜間行動は不向きも良いところだ。
というか第1部隊がそろって戦闘したがりのマジキチだから隠密が大事な夜戦との相性が悪い!
指揮官は頭を抱えた。そんな指揮官の背中にはMk23がぴったりと張り付いて慰めていた。
「いや、マジどうするってんだよ…」
「ヘリアンも分かってないワケじゃないはずなのに…どういう事かしら?」
「その基地に潜入のプロが居るみたいな言い回しだったがいや…いねーよ…」
「大丈夫?おっぱい揉む?」
「いや、マジで悩んでるから結構です」
「(´・ω・`)そんなー」
本当にどうなるんだこの作戦。無情に時間だけが過ぎていく。
「話は聞かせてもらったわ」
「お前は…」
――――――――――――D08基地第4部隊兵舎・朝
「という訳で夜戦を引き受けたわよ~」
「なんで私も…?」
「家族一緒にお出かけだね♪」
「じゃあ私サボっていい…?」
「駄目に決まってるでしょ…」
朝のお化粧していたら45お姉ちゃんに引っ張られて連れてこられた。何事?
確かに私の銃には夜戦装備が装着されてるし私もNVゴーグル持ってるよ。でも…だからって…私?
いや、私も潜入とかしたこと無いんだけど?45お姉ちゃんも分かってるよね?
G11はサボろうとしてお姉ちゃんに打たれてるし…私を戦力に数えないほうが良いよ…
たしかにね…元々は416型のダミーだよ。でもね、お姉ちゃんと同じ様に動けるかと言ったらNOだよ。
その辺ちゃんと理解してるのかなぁ…いやまぁ…やれって言われたから死に物狂いでやるんだけど…
まぁスニーキングの基本は知ってるようなものだからそんなに足は引っ張らない…と思いたい!
「はぁ…まぁ良いけど…動き方とか教えてくれる?」
「実地教育ね~逸れないようにしなさいよ~」
「そんなに難しい潜入じゃないしだいじょーぶだいじょーぶ♪こなせたら」
「家族だ…でしょ?」
「わかってるー♪」
今日に限り私は第3部隊を外され第4部隊に配属。行動を共にすることになった。
この先も夜戦任務が下ったら一々こうするんだろうか?まぁそこは柔軟に…なのかなぁ?
行動開始は夕方から…ヘリで移動してから陸路を歩き夜闇に紛れて敵の通信施設と防衛設備の破壊が目的。
最悪私のグレネードで狙撃してもいいと思うんだけどね…今回は敵のハイエンドと遭遇する可能性もあるし迂闊なことは出来ない。
私の独断で動いたらマズいよね…はーぁ、気が重いなぁ…
ブリーフィングはこうだ。先ずは私とお姉ちゃんとG11で潜入、待機してUMP姉妹が敵を撹乱しながら敵指令所を強襲。
その後に私達が動いて可能な限り敵を排除、通信施設と機銃を爆破して撤退。
私の半身には消音器はくっついてないから今の内にくっつけておいて…
「お姉ちゃん、サプレッサーの余りない?」
「はい、予備だから後で返しなさいよ」
「ん、了解」
私の手持ちのアクセサリーは全部くっつけてある。つまりは消音器は無い。
お姉ちゃんのお古を借りて取り付ける…うわ、バレルがとんでもなく長くなった。
潜入に入る密林とかじゃ取り回しに困るなー…こういう時だけは16インチバレルが欲しくなるなー…
部品さえあれば簡単に取替できるんだけどね。ボルト2本でポロリだもん。
――――――――――――D08基地司令室・おやつ時
「45、本当にお前たちで大丈夫なんだよな?」
「心配性ね~大丈夫よ、ヘリアンに私達の名前を出しても良いんだけど?」
「うーん…問い合わせしたらまぁ間違いないとは言ってたしなぁ…とにかく、あの周辺には装甲型が確認されている。いざって時はHK姉妹お前らが頼りだからな?」
「「了解」」
「定時連絡は怠るなよ、連絡が途絶えた場合はすぐさま救助部隊を編成しなくちゃならん」
「見捨てるって選択肢はないのね~」
「あ"?今なんて言った?」
「あら、怖い怖い…軽いジョークよ♪」
こわっ、お兄ちゃんを煽らないでよ…お兄ちゃんもガチギレしてるし…目が据わってるぅ…
まぁ甘ちゃんなお兄ちゃんだから見捨てるなんて選択肢は絶対ないな…
しかし装甲型の鉄屑かぁ…私の7.62mm弾と榴弾がキーって事ね…
お姉ちゃんの5.56mmでも狙えばOKなんじゃ…?いや、装甲が結構厚いから弾かれるのか。
徹甲弾とかもあったら確実なんだろうけど…無い物ねだりだなぁ。
「いいか、絶対に生きて戻ってこい…」
「「「「「了解」」」」」
まぁお姉ちゃん達慣れてる感じだし間違いはないと思うよ…間違いがあるとしたら私だ。
眠い眠い言ってるG11も流石に作戦行動始めたらキビキビ動いてる…普段からこれくらい動きなよ…
あれかな、能ある鷹は爪を隠すって奴かな…?とにかく出撃だ。
――――――――――――
「ここからは徒歩で作戦領域に侵入、ついたら丁度日が落ちてる頃合いよ~」
「りょうかーい、楽しいピクニックにしようね♪」
「がくー…」
緊張感が抜ける事を言うなぁ9お姉ちゃん…ピクニックとは違うよー…
作戦行動中に本当にも~…気が抜けるぅー…っとと、NVゴーグルが落ちそうになった…
何時にも増して私の装備は多くなってる。お決まりの双眼鏡に無線機…その他にNVゴーグルとスペアバッテリー。
殺傷榴弾10発分、スペアマグ8個…夜間行動が長くなり敵との遭遇戦も多くなるだろうから…だけど。
お姉ちゃん達は何時も通りの割と軽装で来てる…心配しすぎたかなー?
「作戦領域が近くなったら散開同時に連絡を入れるのよ?」
「了解よ」
今回の作戦が作戦なだけにダミー人形は連れてきていない…損傷はそのまま死につながる。
バレず的確に潰していかないと…ポジションに着いたら私は狙撃支援かな?それともCQB?
「私はどうするのが正解?」
「G11と同じで狙撃支援、可能ならCQBもって言いたいけど…」
「ん…やってみる」
ツーマンセルとスリーマンセルで別れて行動開始…私は支援役ね…
役割だって想像通りってところだしやってやろうじゃない…私は完璧なんだから。
「じゃ、後は殺るわよ~♪」
「それじゃーまたねー♪」
「やるわよ」
「はいはーい…さっさと終わらせて寝たい」
「了解、行動開始」
チャージングハンドルを引き初弾装填、いつでも戦闘できる様に準備。
もう日は傾きいつ闇が訪れるか…初の破壊工作に緊張しながらも私は416姉に付いて歩いた。
夜の帳が降りた、私達の行動開始時間だ…作戦開始前の無線を入れて作戦領域に侵入。
鬱蒼と茂る密林の中を進んでいく…最前線という事もあってかどこかしこで銃声が聞こえる…
戦場は眠らない…この地区担当の部隊が小競り合いをしているんだろう…好都合だね。
作戦領域内では不必要な無線、会話は無い…UMP姉妹はどうだろうか…無事なのか…
現在の鉄血の意識は戦闘中の正面に向いている。好都合だけど何があるか分からないし内部から敵を排除するのも目標だ。
なお、私達の事は知らされていない…指揮系統が乱れたら雪崩れ込む可能性も高い。
冷静な人形ならそうでも無いかもしれないけど…いきなり発砲なんてのも有り得る、証拠は残さず撤収するの。
「こちら416、潜入開始」
416姉のピッキングでロックを解除してさっさと潜入、近くの施設に侵入。
電気は落ちている…NVゴーグルを掛けて私が内部を伺う…よし
「…クリア」
少しずつ扉を開け入ればもぬけの殻だ。短く状況を伝えて内部でカバー。
416姉とG11が入れば扉を閉めて…416姉が先行、G11がカバーを行い…私はその後ろでバックアップ。
パスッパスッパスッ
短い間隔で発砲音…中に敵が居たのか?
「3ダウン、417はここから狙撃して…私とG11で施設に侵入して破壊してくるわ」
「了解…全部倒しても構わない?」
「えぇ、勿論よ…ただしバレないようによ?」
狙撃ポイントは確保された。装甲型の人形が巡回しているが…弱点はおそらく変わらない…
デカい四足歩行のオモチャが指令所付近に陣取ってるけど…あれはちょっと難しいか。
とにかく私は416姉の支援だ…巡回してくる木偶人形を撃ち殺せばいい…NVゴーグルを上げてスコープを覗き込む。
身を屈めて進む姉の後ろ姿を視認しながらそちらに向かおうとする木偶人形に照準を合わせる。
生意気にもツーマンセルで動いているが後方を動いてる人形から撃ち殺してすかさずもう一体も撃ち殺せば…OK。
警戒するどころか不審な物音に立ち止まって振り向く始末…お粗末ね。
ザザッ
『こちらUMP45、これから指令所にカチコミいれま~す…416生きてるー?』
『生きてるわよ、さっさとしなさい…こっちはもう行動してるから』
指令所の方面に視線を向ければ小さく見慣れた姿が見えたような気がする。
まぁ向こうは任せよう…こっちの支援が終われば移動して向こうの脱出支援だ。
パスッ…パスッ…
「2…」
スコープを覗く先で倒れる装甲つきの木偶人形を一瞥して狙撃支援だ…
夜はまだまだこれから。私の眠れない夜はまだ…始まったばかりだ。
『定時連絡入れたわよ~皆無事でしょー?』
『もちろん』
『あーい』
「無事よ」
ま、無事に帰れるでしょ…
次回までちょっとこんな雰囲気に付き合ってくれ
指摘どうも、恥ずかしい間違いしてたヨ…とほほ…