元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん   作:ムメイ

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閲覧注意:ヤンデレ
いつものほのぼの要素は一切ないからな


IF番外 全部私に任せれば良いの

――――――――――――D08基地司令室・深夜

 

 

その日の417はとても妙な胸騒ぎに襲われていた。虫の知らせと言う物かもしれない。

居ても立っても居られなく指揮官の下へと駆ける。夜間照明が靡く銀髪を照らしていた。

指揮官の私室からは普通なら何も聞こえない筈…でもその日の夜は違った…

夜間照明に照らされた司令室は薄暗く不気味であった。

胸騒ぎに駆られた417はそんな司令室の中にある指揮官私室の扉を目指す。

コツ…コツ…と自分の足音以外聞こえるはずのない空間だ。

だがどうであろう、扉の向こうから何か薄っすらと聞こえてくるのだ。

そう、普通ならば聞こえるはずのない音が扉から漏れ出てきていたのだ。

不審に思い扉にそっと耳をつけて中の様子を窺う…すると耳を疑う様なやり取りが聞こえてくる。

 

「うっ…くぅ…」

「我慢されず出しても良いんですよ♪」

「ダメだぁっ出るぅ!!」

 

何をしているか…このやり取りだけでも窺い知れる…

聞こえてきたのは上擦った指揮官の声と甘く蕩けたスプリングフィールドの声だ。

だが…しかし…と一縷の望みを乗せてそのまま開いているだろう扉をそっと…開ける。

 

しかし現実は非常なもので月明かりに照らされた指揮官の私室のベッドの上には…

半裸で絡み合いお互いを貪り食う指揮官とスプリングフィールドの姿があった。

長い髪を振り乱しよがったスプリングフィールドは指揮官の上に跨がり指揮官に覆いかぶさり深くキスをした。

指揮官はそれを拒む様子もなく下からスプリングフィールドの豊かな胸に手を重ねていた。

何をしているか等もう見るまでもなかった…そういう事だ。

 

そっと扉を閉じてから駆けて宿舎に戻る。これは悪い夢だ。

そう言い聞かせながら揺れる心を落ち着かせて床についた…

 

だが寝れど覚めど脳裏にこびりついて離れないスプリングフィールドが指揮官を襲った…?

いや、あのやり取りと様子から双方の合意があったように見える。

スプリングフィールドは確かに指揮官への好意を募らせていた…だが、いきなりこんな事に?

そんな素振りは一切見せていなかったのに一体何を…指揮官は弱みでも握られてしまったのか?

部下との関係を重要視していた指揮官が進んで事を致そうとはしない。

そんな指揮官ならもう既に自分やMk23がいただかれている筈だ…そんな素振りはない。

 

「そうだ…これは…スプリングフィールドがお兄ちゃんを騙したんだ…」

 

そう断定したその夜、417は静かに狂い始めた。

 

 

――――――――――――D08基地司令室

 

 

「おはよう、指揮官」

「お、おう…おはよう」

 

その日からというもの417は出撃ローテーションから外れて副官になると言い出した。

指揮官もその勢いに押されたのだが滅多にない417のワガママに許可した。

その時は満面の笑みを浮かべていた…様に見えた。

それから副官としてずっと執務中ついて回られたのだが…何か様子がおかしい。

ずっと笑顔なのだ。比喩ではなく事実でずっと何をしていようが笑顔なのだ。

満面の天真爛漫な笑みではなく貼り付けたような奥底が窺えない笑みだ。

そして指揮官を見る目が末恐ろしい、見透かすような物に変わっていた。

 

「指揮官、はい書類できたよ。次の作戦の指示だけどこれは…」

 

そんな417の様子に戦々恐々としながらも指揮官はそれを指摘する度胸は無かった。

それよりも的確にこなされていく仕事に自分のやることがほぼほぼ取られていってしまって…

危機感を覚えてから417に懇願する…仕事をくれと。

 

「なぁ417…俺の仕事…」

「指揮官は何もしなくていいの…私がぜーんぶやってあげるから」

 

しかし417は取り合わず一方的に言葉を投げてから仕事を奪う。

この様子に指揮官は何か怒らせるようなことをしたか?と首をかしげる。

そう、指揮官はこの様子の急変は怒りから来るものと思って頭を掻いていた。

 

「手持ち無沙汰なら私のおっぱいでも揉んでたら?」

「い、いや…それは…」

「私は指揮官が望めばなんだってしてあげるよ…エッチだって…」

「417それは…」

「私は本気だよ、指揮官が望めば今ここで衣服を脱ぎ去って全裸になってどんな動きだってしてあげる。死ねっていうんだったら死んであげる。子供が欲しいって言うんならそう出来るようにI.O.Pに殴り込んでからなって戻ってくるよ。戦果が欲しいなら最前線でD08基地の旗を掲げて戦いいっぱい鉄屑を作ってくる。指揮官は私に何を望むの?言ってよ…ふふふふ♪」

 

明らかに様子がおかしい事に気づいたが何が原因なのかがさっぱり理解できない。

恐ろしくなった指揮官は417を見ていた視線を外してしまう。

 

「しきかぁん…私を見て♪」

「ひっ」

 

甘く蕩けた417の声は背筋を凍らせて指揮官に恐怖を与えるものだった…

それと同時に夜の事を思い出させて不覚にも…熱り立たせてしまったのだ。

 

「奥ゆかしいんだね、指揮官…でも、我慢は良くないんだよ…野獣になっちゃいなよ…私は受け止めてあげる…気持ちいいこと、シヨ♪」

 

甘く誘う417は指揮官の両手を取って自らの豊満な胸に導き触らせて笑った。

それが指揮官のその日最後に見た417の笑顔であった。

 

 

 

 

「おやすみ、指揮官…気持ちよかったでしょ?」

 

ベッドの上で昼間から盛りあって私は起き上がって夢見心地な指揮官の頭を撫でた。

お昼ご飯に睡眠薬を仕込んでいたから…このまま寝続けて起きるのは翌朝かな?

その間にお掃除しないとなぁ~うふふふ…怪しまれないために日中は副官として仕事しなくちゃ。

 

「あら、417…指揮官は?」

「指揮官は寝ちゃったよ。疲れてたんだろうね」

 

FAL…お掃除対象だな…コイツだって何をするかわからないんだから…当然だよね?

事実指揮官は寝ている。怪しまれることはないだろう…ふふふ。

 

「そう?あら、本当…じゃあ417が頑張らないといけないわね」

「うん、だから今書類を片付けてるの」

「頑張ってね♪」

 

書類に視線を落としていたから顰めっ面しても怪しまれないね…ふふふ。

あぁイライラするなぁ…あの人形もあの人形も私の指揮官を騙して言い寄るんだよね?

渡さないよ、誰にも絶対に…私だけの指揮官なんだから…ふふ、ふふふふふ

早く夜にならないかな…ふふ、ふふふ…お掃除は静かにしなくちゃね…

計画は念入りに…あぁ、早く実行したいなぁ…

 

はやく私と指揮官だけの基地にしなきゃ…

 

 

――――――――――――

 

 

夜の帳は降り人間は眠り基地全体は寝静まった頃。

一人だけ変わらず起動していた人形が居る。この基地独自の人形417だ。

私室の中で完全武装をしてから感情のない顔で淡々と銃器を取り出していた。

自身の半身であるHK417にサウンドサプレッサーを装着してから自室を出る。

情報端末で簡易的に作ったジャマーもあって人形の起動を抑制させながら…一人一人の部屋に忍び込む。

 

指揮官を誑かす人形…死ね。私の邪魔をする人形は死ね。障害になるんだろう?死ね。

悲鳴すら上げさせず寝込みを襲い電脳を撃ち抜いて一人一人排除していく。

その度に自身のボディに返り血が付着していき段々と血染めになっていく。

嘗ては笑いあった仲間であろうが、何であろうが…邪魔になる。

その矛先は姉と慕った相手にも向けられ引き金は引かれていった。

 

「あれ、おかしいな…何で泣いてるんだろう?」

 

声もなく屍となった姉の前に417は涙を流しながらも止まることは無かった。

合計18発使った半身をそっと姉の亡骸の横に置くとそのまま出ていき…最期に回していたある人形の所へ素手で向かう。

薄ら笑いと目の奥に憎悪を抱えたまま…

 

 

 

「はぁいスプリングフィールド…」

「ぅ、が…あ…あぁ…!」

「苦しい?苦しいよね…そりゃそうだよ苦しめてるんだからね…お前さえ指揮官を騙さなかったら良かったのに…」

「な…に……」

「お前が憎い…邪魔なんだよ、私にとって…指揮官にとっても…」

 

スプリングフィールドの私室に侵入した後流れるように両腕の関節を外すと馬乗りになってからその細腕を万力のように握り込む。

抵抗を許さずじわじわと苦しめてから殺すという意思の現れだった。

417の表情は能面のように無表情でその濁った目の奥には憎悪が揺らいでいた。

 

やがてスプリングフィールドが酸欠により意識を手放した後…そのまま首をへし折って使い物にならないようにして脱力した躯体を引きずる。

そのまま寮を出てから人間たちが眠る寮へと放り込んだ。

 

 

――――――――――――

 

 

翌朝、人間たちが起きてから騒然となった。

スプリングフィールドが苦悶の表情で機能停止しているのが発見されたからだ。

どういう事だと騒ぎになっている所に一人の人形がやってくる。

 

「それ、やったの私だよ」

 

まるで誇るかのように薄ら笑いを浮かべていて更には武装してダミーまで引き連れて剣呑な雰囲気を醸し出していた。

黒と紫の2色だった服装は真っ赤に染まり胸の谷間にも血糊が張り付いている。その様子は殺人鬼と言った様子だ。

下手人である417はもう狂いに狂っていた。人間に対しても躊躇なく引き金を引く事ができる。

職員たちは恐怖に震えたが…その次に出てきた言葉は…

 

「人間は殺すつもりはないよ…ただもうこの基地には関わらないでよ…私と指揮官だけの基地にするんだから」

「お、おい…」

「兄さんは…殺したくないんだよ。殺したくないの…気が変わらない内にとっとと車に乗って引き上げて?」

「ジョシュア!お前が何をしようとしてるのか」

「ジョシュア・ガンツなんて名前はもう捨てたよ?あぁでもファミリーネームは貰っておいてあげる…ふふ。指揮官との子供にあげるの♪」

 

どんな説得にももう応じないつもりだろう417は淡々と語り…わざとらしくチャージングハンドルを引いた。

早くしないと撃ち殺すぞ…という脅しなのだろう。

抵抗するのは無意味と己の命が大事な職員達は残らず基地の車両にてD08基地を去った。

 

かくしてD08基地は一人の人形の発狂により壊滅してしまったのであった。

 

 

――――――――――――旧D08基地指揮官私室

 

「頼む…417目を覚ましてくれ」

 

おかしいなぁ、指揮官はずっとこんな調子だ…もう私と指揮官の間を邪魔するヤツは居ないのに…

料理が不味かったかな、夜のアレが気持ちよくなかった?なんでそんな泣きそうな顔で私を見てるの?

目を覚ますって…もう私はしっかり目覚めてるよ。何を言ってるんだか…

今日の触れ合いがまだだからかな…指揮官はやっぱり変態さんだから泣きたくなるくらい私と交わりたいのかな?

あ、でもその前にご飯にしないとね。何事も食事が大事だもん。

 

「ほら、指揮官今日のお料理だよ。食べて♪」

「食いたくない…」

「そっか…口に合わなかったんだね。じゃあ今度はイノシシでも狩ってくるね♪大丈夫今度はちゃんと血抜きしてから美味しくお料理するから。きっとお腹がくぅくぅ空いちゃって食べたくなるようなとびっきりのお料理にするから♪」

 

じゃ、妻である私がしっかり狩りをしないとね…ふふふ♪

 

 

 

D08基地は新設され旧D08地区付近は立入禁止となった。

調査に行った人形は尽く通信途絶し人間は撃ち殺され動植物は焼き払われる地獄と化していた。

悪魔のような一人のRF人形がそこには居る…噂はそう流れていた。




需要があったから書いたけどもう大暴走した。
ヤンデレってこう?僕にはわかってないんだ…
本編とは全く繋がってないので安心しろよなー

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