元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん   作:カカオの錬金術師
<< 前の話 次の話 >>

70 / 160
降って湧いた構想がしたかっただけ


Day63 イタズラ騒動

――――――――――――

 

 

その日の騒動は些細なことから始まった。

朝起きた指揮官が何気なしに身だしなみを整えている時だった。

姿見を見ながら髪を整え髭を剃っている時だ。ふと鏡の隅に何かが映っていた。

 

「ぎゃあ!?」

 

そこに映っていたのは自分の肩から顔を覗かせる漫☆画太郎風のヘリアン女史であった。

ご丁寧に吹き出しには「うるせー!!お前にはオナニーがお似合いだクソ童貞!!」と言うセリフまで。

振り返れば単純に貼り付けられただけのペラ紙であるがヘリアン女史の反転プリントが。

鏡で見ることを見越した上での物だ、無駄に手が込んでいる。

こんな下らない事をしたのは誰か、驚いたがそれより微笑ましく思ったが…

私室に勝手に入ったのはあまり褒められたことではない。下手人は誰かと指揮官は考える。

 

「プリンター使ったって考えたほうが良いよな…」

 

貼り付けられていたプリントを引き剥がすA4サイズの紙はこの基地のネットワークプリンターの物だ。

となると利用履歴から逆算出来るはずだ。このイタズラの犯人はすぐに割れる。

 

「それより朝のコーヒーだな」

 

解決したと見た指揮官はそのまま原因究明をほっぽりだしてコーヒーを淹れ始めた。

毎朝指揮官はアイスコーヒーを飲んでから覚醒させてから職務に当たる。

そのルーチンに従って慣れた手付きでコーヒーメーカーから注がれた黒い液体を口にした。

 

「ぶふぅっ!?」

 

しかしその液体は苦い物ではなく弾けるフレーバーと甘みと炭酸の暴力。コーラであった。

そう、仕掛けられていたイタズラはスキを与えない二段構えであった。

流石のこれには指揮官も顔が引きつる。くっだらないイタズラではあるが…

中々にパンチの効いたイタズラにしゃっきり朝は起きれた。それには感謝しよう。

だがこのイタズラはまだ序章に過ぎなかった。

コーヒー片手に私室から出て指揮官は自分の執務椅子に座った時だ。

 

パァァァァァアアアアアアン!!

 

「Fooo!?」

 

椅子の下から大音量のホーンが鳴ったのだ。見れば椅子の下のショックアブソーバに仕掛けられていて座ると鳴る仕組みになっていた。

早朝から3連続してイタズラを食らった指揮官は流石にキレた。

絶対に犯人には相応の罰を与えると…静かにキレていた。朝の仕事をする前にデータルームに行き履歴を漁ることに。

 

 

それとほぼ同時刻。イタズラの魔の手はこの基地のヘリにもあった。

毎朝早起きしてからヘリの様子を確認している健気なヘリパイロットの姿があった。

エンジンの調子はすこぶるよく満足気に頷いてから離れた所だ。

こそこそと人影が操縦席に何かを仕込んでから離れた…

エンジン音に掻き消されそんな事に気づかないパイロットはそのまま暖気運転をさせつづけて…

 

「よし、今日のイーグルちゃんはご機嫌だな」

 

エンジンを切ってからヘリから離れる。その表情は喜色満面だった。

朝食後にまた座ることになるのだがその時にイタズラが火を噴く事になる。

 

 

――――――――――――D08基地兵舎共有スペース・朝

 

 

「きゃああああああ!!!」

 

朝から絹を裂くような悲鳴が兵舎に響く。何事だよ…と目を擦りながら出てみれば…

FALが寝間着姿のまま共有スペースに飛び出していた。メイクもしてないから起き抜けだな。

皆も一様に目を擦りながら出てきてるからFALだけに何かあったな…

 

「まったくもー今何時だと思ってるの?」

「誰よ枕元にデカい蜘蛛のぬいぐるみ置いたヤツ!」

「はぁー?」

 

聞けば枕元にでっかい蜘蛛のぬいぐるみが置かれていてびっくりして跳ね起きたってさ。

そんなバカ騒ぎのせいで朝から起こされる身にもなってくれよ…と情報端末で時間を確認する。

 

「ぶっ」

「なにこれ…」

 

情報端末の待受画面がなんか変なおじさんの絵に変えられていた。

確かヤーパンのコメディアン、エガシラ2:50だったっけか。上半身裸でやったらめったらやらかすコメディアン。

今も一部の熱狂的なファンが彼の雄姿を再現していたりするけど…

知らない人形からしたら変顔で変な格好した変質者が待受画面にされてるだろうな。

お前らに一言物申すがお決まりのセリフだったっけ?

 

「そんな時はコーラを飲んでリラックスしようよ」

「ふぅ…そうね…あれ?開かないわよ?」

「およ?プルタブが逆だね」

 

SAAの愛飲コーラの缶にもイタズラされてたらしい。プルタブが逆だってさ。

古典的なイタズラだけど下手人は誰かなー?

 

「うわ、わわわわわ…しゅわわわわー!!?」

 

さらにSAAからも悲鳴が上がる。見れば異様に泡立ったコーラの噴水。

ペットボトルの蓋の裏にメントスを仕掛けられていたらしい。

その結果があのコーラ噴水だ…おぉ黒い噴水黒い噴水。お掃除が大変だな。

幸い飲みかけだから被害は少ないけどね。まったく誰がやったのやら。

 

 

――――――――――――D08基地司令室・朝

 

 

「で、お兄ちゃんは私を呼んだのはなーんで?」

「惚けるなよこのイタズラっ子め」

「んー?」

 

私は午後出撃のはずなんだけど朝から呼び出された。

あのイタズラが早速バレたか…朝からあれは流石に驚いたかな?

でもえらく怒ってるような…そんなに短気だったっけ?

 

「ネットワークプリンタの履歴」

「私利用してないけど?」

「じゃあなんで履歴削除操作のログが残ってるんだ?」

「うげ…はいはい、あの張り紙は確かに私がやったけど?」

 

ちょっと調べて上級委員の顔を出してからちょっとイメージ出力しただけじゃないか。

あとエアホーンを仕込んだくらいでそんなブチギレる?

 

「朝からコーヒーって言う俺の楽しみを邪魔したのはデカいぞ」

「待ってそれは私じゃないよ?」

「じゃあコレは」

 

パァァァァァアアアアアアン!!おぉエアホーンがでっかい音をたてる。

 

「それは私」

 

朝からいい目覚ましになったでしょ?って首を傾げて見せたらお兄ちゃんが拳を握ってプルプル震えた。

しかし操作履歴が残ってたか…しまったな、それは盲点だった。

でもマジな所コーヒーの下りは知らないぞ。私以外にイタズラしてたのが居るんでしょ。

仕込んだとしたら昨日の夜中だと思うんだけど…私が忍び込んだときにはそんな素振りは無かったしなぁ。

 

「ヘリパイロットから苦情が来ていたブーブークッションは?」

「それは私がやったヤツ」

「工廠のロッカーにペニーワイズ仕込んだのは?」

「私だね」

「じゃあデータルームのPCのスクリーンセーバーをブルースクリーンに弄ったのは?」

「それも私だよ」

「星はクロ、繰り返す星はクロ。保護者416は至急このイタズラっ子のお仕置きを」

「待って兵舎のは私じゃないしコーヒーに仕込んだのは違うよ!?」

「問答無用」

 

私の無線機もミュージックプレイヤーにすり替えられていてびっくりしたんだけど!?

そしてお兄ちゃんは無慈悲に通信機でお姉ちゃんに通報していた。

 

「417ァ!こんのバカ妹はぁ!!」

「ひゃっ!?あ、あの…この態勢って…」

「ふんっ!」

「痛いっ!やんっ!ぃやぁっ!あひぃん!?」

 

即刻現れたお姉ちゃんは私を小脇に抱え込むとはー…って右手に息を吐きかけて…振り上げた。

そして私は小脇に抱えられてお尻を突き出している状態だ。

振り下ろされた掌が行き着く先は私のお尻で…パシィン!と音を立てた。

早い話がお尻叩きって言う古典的なお仕置きで…それがお兄ちゃんの眼の前で執行されたの。

ぶっ叩かれるたびに全身に衝撃が走ってから人工皮膚の表面が赤く染まっていく…痛い。

お兄ちゃんからの視線も突き刺さってて恥ずかしい…ダブルパンチですよぉ…

 

「きゅぅ…」

「こんのバカ妹は…」

 

百叩きされた後の私のお尻は手形が出来上がっていてしゅぅぅぅ…と煙を上げていた。

痛覚カットはお兄ちゃんの割り込み命令で妨害されてカットできないからくっそ痛い…

司令室の床におしりを突き出したままへばってのびてまーす…

 

「で、兵舎のイタズラの下手人はわかったのか?」

「その下手人はG28よ、自分だけ端末の待ち受けを変えていなかったからすぐにバレたわよ」

「お仕置きは?」

「現在執行中ね」

 

G28のイタズラのとばっちりかよ…G28めアイツもケツ叩きしてやるぅ…

で、G28のお仕置きってどんなお仕置きになってるのさ。お姉ちゃん…

 

「あのバカのお仕置きはFAL達第1部隊の的役ね」

「おぉぅ…」

 

あぁーあのキレたFALが多分率先してやったんだろうな…

訓練用の弾とは言えくっそ痛いのは変わり無さそうだから私よりきっついんじゃね…?

だってFALの使用する弾ってほら…私と同じ7.62だぜ?

さらにあのトリガーハッピーなスペクトラとか嬉々として弾を雨あられと浴びせるし…

 

「じゃあそのいたずらっ子を引き上げてくれ」

「了解」

「ごめんなさーい…」

「謝るくらいなら最初からするんじゃないわよ!」

「ぁいだぁ!!ぐすっ…ふえぇぇえええ…」

 

抱えられてダメ押しの一発を貰って私の涙腺が決壊した。

お姉ちゃんのガチ説教はこれからなんだよ…出撃があった後にね…

 

「おう、417出撃後に畑をちゃんと見ろよ。帰ってきた頃には工事終わってるだろうから」

「ほぇ?」

「あとスオミが名乗りあげたからお前と交代交代だな」

 

そういうのはもっと早くに言ってよぉ…

 

 

 

午後の出撃後帰ってみれば農業エリアは立派な柵で囲われ土も十分に盛られて農耕出来る状態に。

傍らには作物や道具を収納する小屋も建てられていた。これには感動したけど…

結局その日痛いお尻を摩りながら畑を耕す事になった。思いつきで行動したバチなんだけどね…人間だった頃の残滓ここに来てちょびっと出ちゃった。

スオミはそんな私も心配してくれた。なにこの天使。

今日は畑を耕しておしまい。明日はスオミが種芋を仕込むみたい。

どうせだし果実とかも栽培してみたいね。




この回ね、416に417のケツを叩かせたい為だけに書き上げた。


※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。