――――――――――――D08地区前線
「M14、あれ見える?」
「なになに?おぉ、敵だね」
「その通り、1:1で殺る?」
「はっ、冗談でしょ1:9で私がほぼ食っちゃうよ?」
「そりゃ結構だこと。精々頑張りなさいよ」
はぁいどうも、HK417です。今日も元気に午後の警備に出ています。
出てきて早々に敵影を発見してM14との取り合いに発展している所です。
大群のDinergateがわらわらと押し寄せてきているのが見えたんだ。
さーぁ今日もちゃっちゃか片付けていきましょう。数は31…まぁ撃ち応えはあるな。
スコーピオンやUziに展開させるまでもなく撃ち殺してみせましょ?
狙撃に長けた私達が揃えばそんなのお茶の子さいさいってね。
「じゃあ勝負しましょ。負けた方がケーキ奢りね♪」
「泣きを見ても知らないよ?」
訓練の成果をお見せする時なわけで…あのちっこい缶に比べれば容易い。
踊れ踊れ私の掌の中で…鉄屑共が…風速は髪で計測。相対距離確認、修正。
「用意!」
「撃てー!!」
7.62mmの鉛玉の雨がDinergateの大群に降り注ぐ。
ヒャッハー逃げない鉄屑は良い鉄屑よ!それそれそれー!
「417楽しそうねー」
「私達は暇なんだけど…」
うん、あの訓練の成果が出てるな。ヒットレートは文句なしの100達成。
20キルを献上、ケーキの奢りは戴いたぜ、へっへっへ。おっといけないリロードリロード。
「うーん10キルかぁ」
「え?待てマジで10キル?」
「うん、そっちは21でしょ?」
「いや私は20ぴったしだけど…」
一匹撃ち漏らした?ウッソだろ…双眼鏡で確認しても見当たらないぞ。
おぉっとこれは一大事。スコーピオンとUziとMk23に伝達だ。
「一匹逃した?」
「何してるのよー」
「いや、面目ない…」
うーん…見逃したかな?スコープ外の情報は結構限られちゃうからな。
私達全員で鉄屑が転がってる付近に急行してからクリアリングする。
最悪痕跡さえ見つければどっちに行ったかは分かる。人間の住む内地に向かわなければ良いんだけど。
ん?この異音は…?カタカタと打ち鳴らすような音は…
「えぇ…」
「見つけたの?」
「あらま」
「これは…」
「ふぅーん…こういう反応もあるのね」
Dinergateの一匹は木の陰に隠れてブルブル震えていた。
器用に前足を頭上に上げてからさながら頭を抱えて身を伏せて怖がってるようだった。
どうしようか…と判断に困るケースだぞ…武装は破損してるね。
このまま放置してもまぁ危険性は無さそうだけど。
『はぐれDinergateを発見したって?』
「そうそう、どうするのー?」
「処分する?」
『いや、鹵獲しちまおうか』
「了解」
逃げ出す様子もないからひょいと抱えてみるとつぶらなカメラがこっちを見ている。
ちょっと頭?を撫でてあげると震えが収まった。ちょっと抱えていると大人しいな。
もうちょっと暴れたりするかと思ったけど聞き分けは良いみたいだ。
ずっと抱えているわけにもいかないしバックパックに入ってもらう。
ひょこっと顔を覗かせていてなかなか可愛いじゃない?
――――――――――――D08基地工廠・夜
その後何回かドンパチはあったけど背中のDinergateくんは大人しかった。
で、勿論そのまましておくわけにもいかないので…鹵獲した物は検査とかされる。
そのままペットロボみたく置いてると情報を発信してしまうかもしれないからね。
最低でも通信機能と武装は完全に排除される。仕方ないね。
「鉄血のを弄る機会はなかなかねぇぞ」
「ぐへへ、これか、コレが良いんか?」
「通信機能らしき基盤はこれっすね」
いろいろと不安になる絵面だけどまぁここのメンテナンス班は腕は確かだから信じておきましょう。
盗撮機能とかつけたりしてたらぶっ飛ばすけど。いくら変態でもしないよね?
「ねぇねぇ、なにか手伝えることないかな?」
「417ちゃんに手伝ってもらうこたぁ無いよ、その心意気だけで十分だ」
「じゃあそのおっぱいを」
「揉ませて」
「クレメンス」
「オメェ等は仕事しやがれ!!」
あははは…メンテナンス班のお兄ちゃんは欲望にど直球だなぁ…
主任にどやされてるよ…外装は区別化の為か明るいグリーンに再塗装されてるね。
外された外装とむき出しになったフレームとかが妙に生々しく感じる。
聞けば内面のAIもI.O.Pの物に置き換えられて普通のペットロボになるみたいだ。
ベースは犬で飼い主と認定した人にとにかくついて回る様になるらしい。
事あるごとにお腹を出して撫でてもらうのが好きになるらしいけど…
「再起動しまーす」
「お、終わったんだ?」
どうやら作業が終わったらしい。外装も組み立てられて武装部分にはでっかいメガホン。
起動してぐーっと伸びをするような動作をしてからキョロキョロ辺りを見渡した。
飼い主を探してるのかな?ちっちゃい犬みたいで可愛いね。
「お、おー?」
「417ちゃんが飼い主認定か」
私の足元に走ってきたと思うとコテンと転がってお腹を見せてきた。
ちょっとお腹を撫でてあげると嬉しそうに足をジタバタさせて尻尾代わりにメガホンを振ってきた。
こいつ完全に犬っころだな…うん。カメラには表情が浮かんでいて笑ってるね。
「んー…よっこいせ」
肩に乗せてみてしっくり来るね。丁度いいサイズとも言うか。
しっかり足で私の肩を挟んで姿勢制御してるから振り落とされることはないね。
ちょっと肩乗りDinergateの方見て微笑むとボディをほっぺたに擦りつけてきた。
一々可愛いなこんちくしょう。
――――――――――――D08基地兵舎共有スペース・夜
「で、アンタにベッタリなのね」
「そうそう…茶トラちゃんもだけど何で私懐かれるんだろ?」
「知らないわよ、羨ましいわね」
ペットスペースに入り浸っているわーちゃんは羨ましそうに私を見てきていた。
現在私の両肩はDinergateと子猫で占領されていまーす。
子猫は耳元でゴロゴロ喉を鳴らしていて耳とか舐めてきてくすぐったい
「みゃお!」
「はぁーんかわいい~♪」
保護されてから結構経ってからそこそこ大きくなってきた。
キャットタワーに登ったり元気いっぱいであるよ。
お世話係であるわーちゃんやG36と私には大変良く懐いていて愛嬌振りまいてくれている。
というか人懐っこくてペットスペースに入ってくる人形にはすぐ足元すりすりしてくる。
とっても愛嬌のあるこの基地きってのマスコットだ。
なおデレデレなわーちゃんもセットでマスコット扱いにされてるけどね。
「痛い痛い痛い!そこで爪とがないでー!」
バリバリと肩でされたら流石に痛いぞ。爪とぎはキャットタワーでしろぉ。
という訳で子猫はわーちゃんに押し付けてっと…
「武装だけ撃ち抜けば鹵獲できるかしら…」
「多分出来るんじゃないかな?」
「ねぇ417…お願いがあるんだけど」
「鹵獲してこいってお願いならきかねーぞ」
「何でよ!」
「自分でやってこいや」
武装だけ狙撃するのは簡単だけど鹵獲するに当たって逃さないようにするのは私じゃ難しいもん。
RF人形の脚部はお世辞でも良いとは言えない。最大戦速が遅いんだ。
それはわーちゃんだって分かってるはずだけど鹵獲の為だけに前衛を危険に晒すかと言ったらNOだよ。
あの戦闘キチ共なら喜んで危険だろうがドンパチ出来るならやるだろうけど…
つーか殺しのための人形が鹵獲に意欲的なのはどうなんだよ。
「じゃあその子を」
「飼い主認定してもらえたらね」
どう確認するかと言ったらまぁ簡単な事で…わーちゃんにDinergateを預けて私はペットスペースから出る。
その後わーちゃんにベタベタし始めたら良いんじゃない?
そうじゃないなら諦めて自分で鹵獲してきてねーってお話だけど…
わーちゃんお構いなしにDinergateを愛で始めたぞ。頭撫でーのお腹撫でーの…
うーんくすぐったそうな反応からするに悪くはないんだろうけど…
ちょっと地面に置くと私の方へ一直線にダッシュしてくる。
間仕切りを前足でカリカリしてから出してアピールがあざとい…
ちょっと視界から消えてみるか…カリカリ音がまだする。
「きゅーんきゅーん…」
おーぅAIにインプットされてるボイスがメガホンから流れてるな?
犬の鳴き声だ。寂しいアピールが激しいぞ…これは罪悪感がやばーい…
「わーちゃんやっぱりこの子は私の子だよ」
「くっ…」
私の良心が傷んできたからもう無理。なにこの可愛いペット。
間仕切りの上から抱きかかえると満面の笑顔がカメラに映し出されている。
ご機嫌な内にとっとと寝るかな…ペットロボも寝るんだろうか?
「じゃあ、茶トラちゃんの事よろしくね」
「任せておきなさーい、ほーらごろごろごろ~♪」
ごろごろと言いながらお腹をハスハスしてるわーちゃんなんて私は見てないぞー
――――――――――――D08基地兵舎HK417私室
ファンシーショップで購入した可愛らしい家具やデコレーションで女の子らしい部屋になった私の部屋。
ちょっと無骨なロードバイクとゲーム機がやっぱり雰囲気ぶっ壊してるけど…
Dinergate用のベッドには…このクッションで良いかな?
ハートのクッションをポイと床に置いてその上にDinergateを置く。
おやすみってワードに反応したのかスリープに入ったかと思ったら…
ちっちゃい身体をぴょんと跳ねさせてベッドの上に陣取った。
一緒に寝たい訳だ…ちょっとワガママなやつだな…しょうがない。
そんなにスペースをとるわけでもないし一緒に寝てやろうとしよう。
翌朝おっぱいをふみふみ揉まれて起きた。お前はネコか?
肩乗りダイナゲートって可愛くない?