――――――――――――D08基地工廠・朝
今日はダミー人形の搬入が朝から行われていた。
I.O.Pのテクニカルスタッフによる簡易チェックで規定以上の最適化が終了している人形にダミー人形を配給するってやつね。
今回納入されたのは私の追加の一体とG36、G28、スオミのダミーだね。
一般的なダミー人形はぶっ壊してもすぐに修復可能な簡易量産型みたいなところがある。
私のダミー人形は私って本体が特殊なせいでAIがトンチンカンな事をしでかしたりする。
本体のAIを大雑把にコピーして複写してるらしいんだけどね。ほら私のは完璧にコピーできなかったって言ってたし。
同じくコピーが出来ないM4A1って人形のダミーはそんな事無いらしいけどね…
本体が工廠に呼ばれてるのは一応ながらシステム的にリンクさせるわけだから異常がないかその場で申告してもらおうって事だろう。
私は増加だからそんなに問題は無いはずだけどね。システム的に限界である5リンクになるから予期せぬ事も有り得るんだろう。
専門家じゃないし詳しくないから分かんないけどね。私的には手のかかるダミーが増えるって思うと気が重い。
だって私生活がね…事あるごとにセクハラ被害に遭おうとするし…
私の何をフィードバックしたらああなるんねん。訳がわからないよ。
あれか?野郎だった時の性欲とかがそのままフィードバックされた結果なのか?
ダミーのAIの奔放っぷりに手を焼いてるんだけどどうにかならないかなー…
「ん、私の人形か」
「こうして自分が並べられていると不思議な気分ですね」
「そうだねーどれも私とそっくり!」
「寸分違わず同じですね…すごい…」
納入されてきて最終チェックを受けているダミー人形達。
本体と寸分違わない外観で眠ったままあちこち触られているのを見ているのは不思議な気分だ。
全く知らない相手じゃないから嫌悪感はそこまでないけどね。
ダミーの初期設定が終わると今度は私達とのリンクが始まる。
自分の指揮下に各ダミー人形を置くことになる。私の場合は既にある指揮系統に追加するだけ。
他の人形は新たに指揮系統を作ってからその傘下に各ダミー人形を登録することになる。
これで各作戦行動や大雑把な指示を出せるようになるわけです。
私はさっさと終わるけど他の人形はちょっと調整が入るから長引くかな?
「ん、ちゃんと登録完了。起きなさい」
「おー…お、本体おっす」
「各システムリンク正常、問題なしです」
「こちらでも確認している。君はもう行っていいぞ」
「はい、じゃあダミー行くよ」
「暑い、脱ぐ」
「脱ぐなぁー!!?」
早速トンチンカンなことをしでかしおってからに!制服を脱ごうとするダミーなんて聞いたことねぇぞ!
――――――――――――D08基地食堂・朝
さぁメイド姿でのご奉仕です。G36は今調整中なのでね。私がやるっきゃ無い!
早速追加されたダミーも総動員してから配膳とお料理の2つをこなしてるんですが…
ストッパー役にお姉ちゃんを雇っておいてよかったというか…
「ダミーA!そこで何をしてるの!」
「えー?おっぱい持ってもらおうかと」
「いい加減に「指揮官だ!囲め囲め!」こらぁ!!」
「「「おー!」」」
「うぉ!?」
「仕事をしなさいアンタ達はぁ!!」
「「「「いにゃぁぃ!!!?」」」」
もうこの有様でさっきからお姉ちゃんの怒号がキッチンにまで届いていて私はお料理に集中できてない…
ちらっと見たら食堂に朝ご飯を食べに来たお兄ちゃんを囲んでカゴメカゴメしてからお姉ちゃんにゲンコツ貰ってる。
あーもう何やってんだか…配膳とお片付けのお仕事してよ…
因みに私が作ってるのは朝に嬉しい小ぶりの生姜焼き。一口サイズのを三枚セットで提供してるの。
下準備と簡単な焼料理だからそんなに集中しなくても失敗しないから良いけどね…
勿論私もメイド服でお料理していますとも。お料理終われば私もお片付けに参加しますからね。
「ぶーぶーお姉ちゃんだって指揮官とベッタリしたいくせにー」
「そーだそーだ」
「私達と一緒にべったりしようよ」
「しきかーん子作りしよ♪」
「「ぶっふ!?」」
ダミー!!?何を口走ってるぅ!?あまりの事に私とお兄ちゃんがシンクロしたよ!?
私は確かにお兄ちゃんの子供を産んでもいいくらいに大好きだけど!ど!!
ちょっとお口にチャックしろバカダミー共!あとちゃんと働け!!
「ふんぬ!」
「たわばっ!?」
「嬢ちゃん、おたまを投げないでくれ…」
キッチンから調理器具の1つを投擲してからダミーの頭にぶち当てて黙らせることにした。
停止命令を聞き入れないんだもん。もうやだこのダミー…
「はい、さっさと運んでいけバカダミー!」
「本体もべったりしたいくせにー」
「だまらっしゃい!!」
今度は私の鉄拳が唸った。フィードバックで私にも帰ってきた、くそぅ…
――――――――――――D08基地工廠
「これはどこー?」
「それはそこに、いまダミーが担いでるのもそこで頼む」
「了解」
「「おー」」
メイド服から着替える事無く今日はそのまま工廠の方に戻っていた。
なにせダミーの納入は結構な重労働なのだ。人の手でやると結構ダルい。
本体はすぐに納入出来るんだけどその後に届くメンテナンス用品とかが兎に角多い。
あと銃とか替えの衣装とかね。かさばるんだよ。そこで私がお手伝いを申し出たのだ。
ちなみにまだ作業中だからあんまり声がけは出来ない雰囲気…
いつもは軽口を叩いてたりするメンテナンス班も今ばかりは真剣そのものだ。
こういう雰囲気を時たま見せてくれるから私はこの人達を嫌いになれないんだ。
「よし、じゃあちゃっちゃと終わらせよう」
「そして指揮官にナデナデしてもらうの」
「あわよくば抱かれる」
「既成事実の作成」
「にんっしん」
「よしお前らから先に片付けてやろうか」
こっちの減らず口は全然閉まらないぜ。ゲンコツで結局黙らせたんだけど私の頭が割れそう…
アレなのか、私の深層心理が出てたりするのか?私ってそんなにやらしい子なの?
いや、このボディになってからそういう欲は結構減ったと思うし…うーん。
「これで終わりかな?」
「「「「もうない!」」」」
各物品の運び込みは完了、納入品チェックリストと照らし合わせながら漏れがないか確認。
……うん、漏れなし。パーフェクトだね。じゃあこれでおしまいかな?
「主任、納入完了だよ。漏れなし!」
「おう、ありがとよ417ちゃん」
「えへへ♪」
「「「「私にもやれー」」」」
主任のゴツゴツとした手が私の頭を撫でたらダミーが主任を取り囲んだ。
それぞれ頭を撫でられると満足したのか離れていってから宿舎に戻るかな…?
あんまり変なことはもうしないでくれよ…頼むから…
「調整終了だな、どうだ?」
「初めて一からさせてもらって楽しかったっす」
「俺達もスキルアップしてきたって事っすよね」
「あ、417ちゃん今日も良いおっぱい…」
「あははは…」
ふーん、メンテナンス班の若い衆に今日は任せていたのか。
なるほど、後進もちゃんと育ててるんだね。良い事だと思う。
「ん…終わりましたか?」
「ふぁぁーぁ…終わったの?」
「……ぁふ…終わったんですか?」
「おうよ、こいつらがばっちしやってくれたからな!」
ふふ、主任に背中を叩かれて照れながらもいい笑顔だ。こういう雰囲気大好きだよ。
因みにスオミ達のダミーは普通にちゃんと言うことを聞いてた。ちくしょう。
――――――――――――D08基地カフェ・夜
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃーい♪」
フレンチなメイド服に身を包んだ私達417がお出迎えする夜のカフェ。
マスターは黙々とお酒やコーヒーを提供して私達がおもてなしするの。
まぁ今日は全休明けで規定量以上のお酒は絶対に提供されません。
飲み過ぎで翌朝動けないとかシャレにならないからね。マスターの心配りです。
「お姉ちゃんだ」
「囲めー!」
「ちょっと…もう、何よ?」
ダミーがまた暴走し始めた…今度のターゲットはお姉ちゃんだ。
お姉ちゃんもこれには満更でもなさそう。お姉ちゃんは夜のバーの雰囲気が好きらしくてお酒は駄目でもよく訪れる。
付き添いはG28だ。ついでに私のダミーに囲まれてG28はかなり嬉しそう。
「ご注文を」
「チョコレートケーキとキャラメルマキアート」
「私は春田さん特製のプリン!」
「かしこまりました」
こういう士気に直結する事には金に糸目を付けないお兄ちゃんだから割といい素材が手に入る。
そしてそれにテンションが上がるのが私とスプリングフィールドな訳で…
スプリングフィールドお手製のケーキとプリンは絶品なわけで。
私が淹れたキャラメルマキアートも割と好評でリピーターが地味に増えてきている。
「はい、ダミーはお姉ちゃんとG28の案内」
「がってん」
「しょうちのすけー」
びしっと敬礼してから二人の手を引いて空いている席に案内して…
注文の品を渡すとそのまま配膳していったんだけど…お姉ちゃんに頭を撫でて欲しいのか傍から離れないな。
はーいそこのバカダミー共撫でて欲しけりゃちゃんと働けー?
「おっす、やってる?」
「指揮官!」
「一番乗りー!」
「二番乗り!」
「おっぶふ」
あーあ、お兄ちゃんに我先にひっついて…前から後ろから抱きついてから
ダミーによる輪形陣が完成していた…おい、離れろや。そしてさっさと案内しろ。
「はいはい、バカダミー?」
「へーい」
「ちぇっ…ごあんなーい」
他の職員にはこんな反応は無い。精々セクハラされに行く程度…うーんやっぱり私の好意とかが逆流してるのかな?
それとも無意識にそういうのを送っちゃってたり…?うーんダミーの暴走理由がわかんないなぁ。
「417ちゃん、ビール」
「おつまみは?」
「チーズクラッカー」
「はい、了解しました♪」
今日の夜遅くのバーはしっとりと時が流れていく。
毎日飲んだくれで溢れるような事は無いのだ…多分。
いっつも飲んだくれに溢れるバーなんて無いんやで。