「ねぇお兄ちゃん…緊張しない?」
「やべぇよやべぇよ…」
「まぁまぁ指揮官リラックスしましょ~?」
「45姉の言う通りだよ、指揮官♪」
「ガチガチなのは問題だけど…程よく緊張しなさいよ」
ドレス姿の私達とパリッとしたスーツ姿のお兄ちゃん。
ここはどこかと言うと最近交流ができたS09地区の基地だ。
表立っての用事は基地間の交流となってるが実際の所は結婚式だ。
それも人間と人形。同性同士での結婚だ。私は聞いた時は耳がおかしくなったのかと思った程だ。
両方新婦になるわけだけど…指揮官がユノって名前のティーン・エイジャーで人形がPPK。
基地総出でわちゃわちゃ準備してる感じらしい、道中の案内役の人形がそう言ってた。
車での移動中私もちょっと緊張気味。このドレスでさらに余興もやるんだからへまできないもんね。
さらに言えば私達以外の基地からも来客があるらしい…余計にへまできねー…
「あの大規模作戦を成功させた切れ者が結婚なぁー…」
「低体温症作戦だっけ?」
「そうそう…俺達D地区の指揮官は戦力外通告受けたやつな!」
大規模作戦を終わらせた祝も含めてたりするんだろうか?
ハイエンドモデルが多数目撃された作戦らしいけど無力化に大きく貢献したって話しだ。
お、見えてきたのかな?あれがS09地区の基地かぁ…中々でっかい…
門番と護衛の人形が話し合ってから…よし、通ってよしって?
…私メイク変じゃないよね?ってちょっと心配になってきた。
「大丈夫よ、417のメイクはバッチリだから」
「ほっ…」
お姉ちゃんがサムズアップしてからばっちりだって保証してくれた。
ここの基地の64式が誘導してくれて…お、もうOKですか?
「おぉ~」
車から降りてみればかなーりわちゃわちゃしてる。
ん、ここの人形かな?あ、スチェッキンおっすおっす!
「いらっしゃい、急な招待だったのに来てくれて嬉しいよ~」
「うむ、そこまでまだ付き合いが長いというわけではない、それに距離もあるというのにありがたいことじゃ」
M1895とスチェッキンのお出迎えだ。M1895はこの基地の副官を務めている。
指揮官との間柄はかなり親密らしくおばあちゃんなんて言われてるらしい。
私が知ってるM1895は白いコートを羽織った出で立ちだけど…今日は流石におめでたい席だからドレスで着飾ってる。
確かに付き合いが出来たのはつい最近だけど招待されたとあっちゃぁ来ないわけにもいかないでしょ。
「いやいや、そちらのスチェッキンには良くしてもらったからな、改めてだがこちらも招いてもらってありがとうございます」
「そうだよね~、ここの指揮官さん見るのも楽しみだし、何より結婚式っていうのも初めてだからね」
そうそう、私は結婚式って言うのは見たことがない。楽しみなんだよ。
それにここの基地って私を見ても驚かなかったし…どんなイレギュラーが居るのかなって。
「ねぇ、あれダイナゲートじゃない?」
「え、嘘、どこどこ!?」
だーちゃん!?と45姉の指差す方向を見るとぴょっこぴょっこ跳ねながら警戒行動してるだーちゃんを発見。
ボディのカラーはウチのと違ってノーマルっぽいけどマークはしっかりG&Kのマークだ。
かっわいい…私達の声に反応して怪訝そうな様子でこっちを見てるのもかわいい…
「はぅ~ん…♪」
「いや、戻ってきなさい417」
「あぃた…」
いかんいかんトリップしてた…やっばいスチェッキンの目が怪しい。
「まぁ詳しい話は受付でね~」
「了解だ…ん、俺達以外の招待客か?」
後方を見ると私達が乗ってきた車の隣に似たような車が二台止まってぞろぞろ人が…
ん?ん!?んんん!!?まってアレはまずいんじゃねーの!?
「ハンター!?」
「いや待って、デストロイヤーとゲーガーも居る!」
鉄血製のハイエンドモデルなんてのが3体も降りてきたんですけどぉぉぉおおおお!!?
待って待って銃はガンケースの中だぞ。今から取り出して間に合うかよ。
さ、最悪お兄ちゃんだけでも逃さないと…私達がすっと指揮官を庇うように立つと…
「ああ、待て。すまぬ驚かしたがあれは味方じゃよ、久しぶりじゃなF小隊、それとベルリッジ指揮官」
「はい?え?あぁー…あの噂の…」
「え?」
M1895…いや、もう面倒くせぇから副官でいいか…副官の言にお兄ちゃんは納得した様子で私達を下がらせた。
F小隊…ベルリッジ指揮官?ん、社内報で見たことある名前だな。
「F、ね…」
お姉ちゃんはなにか思う所があるんだろうか?F小隊の方を見ている。
見た感じでは私達のメンツを変わらないように見えるけど…
「Meaning of freedom, me there」
「わぁお」
F小隊の416が口を開けば飛び出したのは流暢な英語でございました。
向こうのメンツうん…何というか…個性的すぎて笑えてくる。
F45は何というか小動物的な印象を受けるしF11はお前…本当にG11型?って思うほどキビキビ動いてるし。
唯一大差無いかなってなるのはF9だけど…やっぱりなんか違うってなるな。
「ハンターだ。色々あってな…敵ではないから安心しろ」
「デストロイヤーだよ!」
「ゲーガーだ」
そしてこのイレギュラーよ…鉄血ハイエンドがこうなってるって…噂程度に聞いてたけど…
夢物語か何かと思ってたけど…うーんF45の言もあるし様子から見てもマジな家族って感じだな。
「HK417よ。まぁ元は416の不良ロットなんですけどね。よろしく♪」
敵じゃないなら…邪険にする必要もない。仲良く出来るならそれに越したことはない。
ん?私達の紹介が終わったところに基地から誰かきた…この先の案内かな?
「いえ、着替えてこようと思ってね、今日は『めでたい』日だから、二人を『愛でたい』からね、ふふっ」
「は?え?いやいやいや、え、何?あのVector、え、Vector?」
私の知ってるVectorって人形はあんなギャグを言うキャラじゃねーぞ!?
それにあんなふうに笑ったりしねーし…もっとこう退廃的な…いや違う、何にも意味を持てないというか…
戦いにこそ自分の価値があるみたいな?そんな雰囲気だよね?どうなってるの?
「言っただろ、イレギュラーな人形は茶飯事だって、つまりそういう事さ」
これ?これがイレギュラー?私みてびっくりしただけで済んだ理由、これ?
「……あれよね、この基地に少し居るだけで驚くのが無駄だって理解できるわね」
「同感…」
思わずといった様子でお姉ちゃんがぼやいたけどまったくもって同感だよ!
何だよこの基地…ほらー!お兄ちゃんだって変な顔で固まってるし…
45姉と9姉はまぁ面白いからOKみたいな感じか?
で、受付で招待状と私達の登録?が行われる。網膜とかの登録って…ふーん?
って待て、ここにもハイエンドモデルじゃねーか!しれっと居るから見過ごしそうだったぞ!?
どうなってんだこの基地ぃ!!ここにもハイエンドモデルって…この基地も共存できてる基地なの!?
「はいオーケー、これで警備ロボは無害だし、ダイナゲートと遊べるようになる特典も付いたよ~」
「え、マジ!?ダイナゲートと遊べる!?」
「遊べるよ~、ほらしゃがんで呼んでみて」
私とF45が食いついてからしゃがんでダイナゲートを呼んでみる。
「「おいでー♪」」
ぴょっこぴょっこ警戒してたダイナゲートが反応してこっちを見た。
照合してるのかちょっとこっちを見つめた後…わーこっちに来てくれ…
「ぎにゃぁあああああああ!!!!?」
何この数いやー!どばーっとやってきて私に我先にって感じに群れてきたー!?
ひーふーみーよー…たくさん!!もうこのだーちゃんの群れは想定外だよー!?
いや、ちょっとドレスの裾をつまんで登ってこないで、いやー!見えちゃう見えちゃう!
しゃがんでるから飛び乗れるのか私の頭の上や肩の上は占拠されたし…
乗れるのかおっぱいの上にすらちょこーんと乗られて…これは動くに動けないんですけど…?
というか落とさないようにって胸の下に腕を回さないといけないから…
お隣のF45は普通に撫で回してたりしててから特に影響なさそうなんだけど…何この差。
あれか?鉄血と共存できてるものとそうじゃないやつの差的なものなのかな?
「お兄ちゃん…へるぷー…」
「416、ゴー」
「了解」
結局私は数体引き剥がしてもらうまで満足に戯れると言うことは出来なかった。
過剰に集られて身動き1つとれない状態になっちゃったんだもん…
「おおっと、お二人悪いけどそろそろ式場に迎えないとね、なぁにこの後でも遊べるしなんだったら何体か見繕ってみるかい?」
「マジで!?お兄ちゃん!」
「え、マジ?いやウチにはもう一匹…」
「駄目なの…?」
「うぐ…しょうがねぇ…」
「やったー♪お兄ちゃん大好きー♪」
やったぜ。これでウチにもだーちゃんがいっぱい来るんだ♪んふふ♪
わーちゃんもこれには絶対にっこりだよ。それどころか他の人形もこれにはにっこりだって!
それにほら。警備ロボットっとしても機能するんだったら良いじゃん!
さてと…それじゃあ式場内にお邪魔しましょうか。
――――――――――――
案内のスチェッキンについて行って基地の中に入っていく。
外観からも察していたけどかなり大きい…これが最前線の基地か。
それ以上にすれ違う人形の数がスゴイ…この基地だけでいったい…何体所属しているんだろう?
Storage…倉庫か。うわ、でっかいな…工場の倉庫って言っても信用するぞこれ…
これには皆驚きって言った所だね。いやF小隊はそんなに驚いてなさそう…結構来てるのかな?
倉庫の一角がチャペルに改造されてた…真っ白な内装に賛美歌用のピアノかな?
上を見ればステンドグラスもあるし…かなり手が込んでいるな。
そして壇上には聖書を持ったシスター風のG3か…となると牧師役か。
先に到着していた組だろうか。副官と同じM1895の姿があるが別の基地の子だろう。
そして今壇上に居るG3とは別なG3も参列している。うんうん…訳わかんなくなりそうだぞー?
とと、賛美歌と新婦同士の紹介のパンフか…新婦ユノと新婦PPK…うわ、幸せそうなカップルだな。
どの写真を見ても笑顔だ…それもとっても幸せそう…あは、この赤面とか見ているだけでもこっちが幸せになる。
「それでは、新婦PPKの入場です」
一同揃って式場の入り口を見ると扉が開かれ戦術人形のPPKが純白のウェディングドレスに身を包みヴァージンロードを歩いてきた。
付き添いの人形と一緒に晴れやかな笑顔で…ふふ、おめでとう。
「おめでとう」
自然と口に出てた。耳に入ったのか笑顔がより一層深くなった気がする。
壇上に上がり…これから待つのか…夫側の立場になるのかな?
しかし…良いなぁ、ウェディングドレス…かなり憧れちゃう…綺麗だもん。
瞑目していた牧師のG3が目を見開き扉を見る…いよいよかな?
「それでは、新婦ユノの入場です」
一斉に扉を見れば…ゆっくりと開け放たれた扉の奥にこれまた…太陽のような暖かな装飾が施されたウェディングドレスを身にまとった可愛らしい人間でした。
副官と手を繋ぎP7とステアーにベールを持ってもらいながら入場する姿は…綺麗だった。
「っ…」
「これは…」
しかし見れば痛ましい傷跡が身体に刻まれていて…壮絶な過去を物語っている。
でも本人は朗らかに…今にも泣きそうな幸せな笑みを浮かべている。ここで祝福以外の感情を持ち出すのは無粋だね。
「おめでとー!」
「幸せにな、嬢ちゃん」
一歩一歩…副官と共に壇上へ向かいヴァージンロードを歩む指揮官さんに視線と拍手以外に言葉で祝福する。
PPKの元にたどり着けば副官はそっと離れ…式が始まる。
賛美歌斉唱に聖書の朗読…そして神への祈りを捧げて…お決まりのアレでしょう?
G3がPPKを見抜いて誓いの言葉を読み上げていく…
「汝、PPKはこの女を妻とし良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことに、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
おぉ…G3からの言葉に圧がある…誓わなきゃ殺すぞみたいな…
でもPPKは全く動じずしっかりと見つめ返してから真剣な眼差しで誓った。
「誓います」
ふっと重圧が霧散してからG3は嬉しそうに頷く…試していたのかな?
っと今度は指揮官さんに向き直って言葉を続ける。
「汝、ユノはこの女をを夫とし良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことに、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
おぉぅ…こちらにも圧をかけるねぇ…でも指揮官さんも全く動じてない。
笑顔を浮かべたままながらも真剣に言葉を続ける。
「誓います」
「その言葉、確かに聞きました。では指輪の交換を」
お互いの手を取り結婚指輪を左薬指に嵌め込む。ふふ、二人の笑顔が眩しいな。
誓いのキスも手慣れた様子で済ませて…あーあ、凄く幸せな雰囲気だなぁ…
「ここに、二人の婚姻の儀を終え、皆様に夫婦になったことを宣言し式を終えることに致します」
お幸せに、これから歩む二人の道に幸多からんことを祈ってます。
改めてですけど、ユノちゃんおめでとうございます。
D08地区の417ちゃんが代表して祝福します。
勝手に描写した所がある?許せカツオ
キャラの口調がおかしい?許せカツオ
あ、すいません今日の分はこれで…ちょっと作者の調子が悪いので…許して許して…