端的に言おう、オイラの存在は消された。保護されたっていう経歴も全部ね。
今の俺の所属する部隊は拾われたD08地区の基地ではなく…クソッタレた部隊だよ。
404-NotFoundヘリアンのクソやペルシカのクソに主に依頼されて動くG&Kの暗部だ。
当然俺の個体IDは抹消され行動ログも抹消済み。文字通りの存在しない存在って訳だ。
「皆居る~?新しい依頼が来たわよー」
あぁ今日もどんな殺しが待ってることやら…隊長である45がお呼びだ。
名残惜しいがタバコの火を消してからブリーフィングに向かった。
面倒だが行かなければどやされるのは俺だ。生きていく上でこの小隊に居なければならない。
使えない人形は淘汰される。少なくとも俺は有用性はある。
見捨てられない程度にやるだけだ。非常に面倒だがね。
「はぁ…」
この部隊に馴染んでから増えた溜息。人を殺すことにも慣れた。
人を見捨てることにも慣れた。全ては任務のため。部隊の存続の為。
戦闘装備を整えてからブリーフィングに望む。薄ら寒いセーフハウスに戻る。
「遅いわよ417」
「ヤニ吸ってたんだ…ちったぁ譲歩しろ」
「まぁ良いわ、じゃあ今回の任務を大雑把に説明するわよ」
本当はこのブリーフィング中にでも吸っていたい。人形だから何だって言うんだ。
何時消えるか分からない俺達だ。生きている実感をくれても良いだろ?
この何も娯楽のないクソみたいな部隊で許されている唯一の娯楽だ。
人間が依存したくなるのも分からんでもない。最も俺も昔はそうだったんだがな…
ブリーフィングに混ざれば俺が一番最後だったらしい。隊長の45以下4人が雁首揃えて待っていた。
何時も薄気味悪い笑顔を貼り付けている9に自称完璧な人形の416そして寝坊助の11。
いつものように端末からホログラムで浮かび上がったヘリアンがこっちに命令を出していた。
出来りゃこのスカした面に一発イイのをかましてやりたいが…
大雑把に言えば今回の任務は鉄血の勢力圏内に不時着したAR小隊のバカ共を救出しろって話しだ。
416はそれはもう大層憤慨して嫌という感情を隠しもしなかった。
11はいつものように任務そのものを嫌がって眠いだのダルいだの文句を垂れている。
まぁここでの決定権を持っているのは45だから俺達は逆らうことは出来ない。
逆らったら置いていかれるだけだ。あとは野となれ山となれって所か。
つまりは野垂れ死に待ったなし。生きてくためにAR小隊を何が何でも救えってか…
これは俺も気乗りがしない。俺の根底に根付いている物が嫌悪感を発生させている。
M16とM4が憎い。俺自身はどうでもいいと思っていても根底がそうは思っていない。
難儀なものを抱えてしまったもんだよ…だからタバコって言う逃げに走ってんだけどよ…
「移動までは何時間ある?」
「すぐに出るわよ♪」
「チッ…今頃ARのバカ共は吹雪の中タイミング見て補給受けてんだっけか?」
「もうじき私達もそうなるのよ?」
「じゃあ移動中ヤニ吸ってもいいか?」
「どうぞ、お構いなく」
許しが出たので遠慮なく紙巻煙草を咥えてライターで火をつける。
紫煙が夜空に消えては散っていく…吐く煙もまた同じ。
まったく、こんな生活クソっ喰らえってんだ…
――――――――――――
夜の帳は降りた。クソがつくほど寒い豪雪地帯に俺達は侵入していた。
UMP共は別ルートで潜入。俺達はまた別ルートで侵入して待ち伏せだ。
「寒い…もう帰ろうよぉ」
「黙れ、とっとと歩け」
すぐごねる11のケツを蹴り飛ばしてからキビキビ歩かせる。
M16を救出するって言う目的上416の機嫌はコレ以上無く悪い。
加えて言えば俺の機嫌だってよろしくない。今すぐヤニを吸わなきゃやってられねぇな。
猛吹雪の中補給もクソも無い状況での待ち伏せはかなりくる物がある。
元々あまり潤沢な補給なんてものは無いし食事も味気ないレーションばかりだ。
そんな味気ないもんも一個一個ケチって行かないといけないのが苦痛だ。
ごねる11は計画性もなくひょいぱくと食っては後で泣きを見るんだがな。
『416~応答して』
「416呼ばれてるぞ」
「……」
『もしかして死んじゃった?』
「お生憎様まだくだばっちゃいないわよ」
そうとうお冠なようだ。ささやかな反抗を見せてやがる。
それを意に介した様子もない45はそのまま作戦を告げてきた。
まぁブリーフィングのおさらいみたいなもんだ。先に俺達が基地に潜入。
そのあと45と9が潜入、工作してから合流って所か。
「オラ行くぞ寝坊助」
「もう417は乱暴だから嫌だよぅ…」
「だったらキビキビ歩けスカタンが」
さて、行動開始だ。夜闇に紛れて障害を排除しながら潜入か…
「417は狙撃支援を」
「言われなくても分かってる」
「しくじるんじゃないわよ」
「もうしくじらねぇよ」
隊に合流したばかりの頃ではないんだ。もう俺は殺すことに躊躇いはない。
マガジンを装填しチャージングハンドルを引きセーフティを解除してセレクターをセミにしてトリガーに指をかける。
他の誰でもない俺の意思がスコープの向こうの標的を殺す。
嫌という程やった工程、吐き気を催さなくなった行動。硝煙の匂いが染み付いて取れなくなった。
もう陽だまりの中に戻ることは出来やしない。俺はどうしようもなく戦術人形になってしまったんだ。
「じゃ、とっとと死んでくれや、木偶人形」
夜闇の吹雪の中マズルフラッシュとサウンドサプレッサーによって消音された気の抜けた発砲音がした。
スコープの先で装甲に包まれた木偶人形が電脳をぶち抜かれて倒れていた。
――――――――――――
「監視カメラが?」
「えぇ、見てなかったの?」
「あー?」
基地に潜入してから45を待っていると416がなにかほざき始めた。
監視カメラが自分達を追っているなんて言い出す。試しに見てみれば確かに…動いてる。
しかしそういうもんだろう?と別に気に留める必要もねぇだろ…
だがそんな俺を裏切る事が起こった。直ぐ側のモニターが点いた。
「何だ?」
「はぁい、こそこそ動き回ってる子ネズミちゃん達」
「……」
こいつは敵のハイエンドモデルか。向こうから接触してくるか。
まぁこれで俺達の潜入ってのは筒抜けか…滑稽極まるな。
416が警戒しながらもなにやら持ちかける雰囲気を出していた。
まさかと思うがなんか交渉できると思ったのか?アホくせぇ…
そんな俺達の背後から弾丸が飛んできてモニターを破壊した…
振り返ればそこに突っ立っていたのは…合流待ちをしていた45だ。
「よぉ45、遅かったな」
「くたばってないようね、安心した♪」
「抜かせ、アバズレが」
愉快な的当てからの潜入なんざ赤子の手を捻るようなもんだ。
11の子守が面倒臭いだけでその他に危機的状況に陥る要素が見当たらん。
基地に潜入してから呑気にヤニを吸ってる余裕すらあるわ。
微塵も心配も安心もしてねぇだろう45の戯言なんざ信じやしない。
アホくせぇと鼻で笑ってから紫煙を吹きかける。まぁ気にした様子は無いな。
「それより416、さっきのはいただけないわよ?」
ま、敵と内通するような事しようとしたんだからな。非難されらぁな。
45がからかったりしてるが俺には関係ない。それよりさっさと終わらせて帰りたい。
「で、これからどうすんだ?」
「ここからAR小隊の痕跡を辿って追いかけていくわよ」
「あっそ、迷子を探して迷子にならなきゃ良いけどな」
この基地にもARのバカ共の痕跡はあった。それからどの方向に向かったかを推定して追っていく。
あーあ面倒臭い…補給もクソもねぇし…やってられねぇ…
「チッ…ヤニが切れたか…」
基地の外に出て吐く息が紫煙に近く吹雪の中に溶けて消えていった。
――――――――――――
「おいどうなってんだ」
「これも計画の内よ」
夜明けと共に大型砲台の弾丸が付近に降り注いだ。俺達の居場所がまるっきりバレている。
撤退するしか無い。こんな弾丸食らったらひとたまりもあったもんじゃねぇ。
作戦の責任者である45の判断ミスか潜入時のミスか…それともまた別な何かか。
ともかく俺達の行動は向こうに筒抜けだったのが納得いかん。
45がどっかしらに通信してたようにも思えてたが…まさかと思うが…と視線を投げる。
しかし45から帰ってくるのは計画の内というだけの物だ。ふざけてやがる。
こんな危険に晒すのが計画の内に入ってるなんてどうかしてやがる。
やっぱりこの45って人形は狂ってやがる。クソッタレが。
こんなトチ狂った小隊にぶち込みやがったペルシカもヘリアンも等しくいつかぶっ殺す。
人間が憎い、この小隊も憎ったらしい。世界そのもの滅んでしまえ。
「私達の動きがアーキテクトのカメラに捕らえられていたのはなぜ…?」
「知るか!今はそれより逃げるんだよ!!」
「もしかして…「傘」が…?」
あぁくそっ!呑気に考えてる暇もねぇ!降り注ぐ砲弾の雨から逃げる。
こんな計画を立てやがった45を恨んで恨んで恨みきっても死ねねぇからな。
「で?逃げた先がまた砲台の森ってなんだよ?自殺願望でもあんのか?45よぉ」
命からがら逃げた先も砲台の森と来たもんだ。自ら出ていって殺されるのか?
我らが隊長殿はいつから自殺志願者にでもなったのやら。あーくそったれ…
こんな作戦ついてくるんじゃなかったぜ…一度拾った命もここで無駄に散るか。
「恨むぜ45」
「ここにアーキテクトが居るわ」
ぽつぽつと話したのは新造したての人形と通信してたって事と有用性が確立されたばっかりの作戦を使うって事。
正気の沙汰ではない。あの砲台に正面から突撃するってもんだ。馬鹿げている。
あぁ俺の人生…どうなるんだか。404に呪いあれ。
ヤサグレて俺口調の417。
本編と違うことは装備品にボロ布マントが追加されてること。
ヤニ中毒者になってること。
人間に深い恨みを抱えていること。
人間だった頃の記憶は殆ど消えている事。