元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん   作:ムメイ

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ハンドル握ると性格変わる人って多いよね?


Day78 ドライバー417の爆走

――――――――――――D08基地兵舎共有スペース・朝

 

 

「え?今日の出撃は緊急?どういうこっちゃ」

「ヘリが壊れたらしいよー」

「なんじゃそりゃ」

 

朝出撃準備をしていたら飛び込んできた伝達係のSAAがそんな事を言った。

出撃に使用するヘリコプターは一機しかない。もっとデカい基地なら二機位あるんだろうけど。

残念ながらD08基地には一機しかないのだ。そんなヘリが故障したとなれば死活問題な訳で…

今日一日は基地運営がストップする形になる。無論警備には出るんだけど…うーん…

しばらくはバギーを乗り回す必要が出てくるって訳だ。

まぁバギーを使用しての警備ルートっていうのも設定されてるしそのために木々を伐採してルートを作ってるらしい。

だから業務的に支障は…あるにはあるけど止まるほどじゃない。

今日一日で故障が直れば良いけど…十中八九そうはいかないだろうなぁ。

 

「そういえば417ってさー社内報に出てたの知ってる?」

「はい?」

「D08地区に現れた唯一無二の個体って」

「ウッソだろお前」

 

社内報でなんで私が出てるんだよおかしいんじゃねーの?

って事は他の基地にも私って言う異常個体の存在が認知されてるってことじゃん。

どういうこっちゃねん。というか何時そういうの記述したんだよ。

うわ、ほんとだし…写真とプロフィールまで載ってるし…比較にHK416型と並べられてる…

いつの間に撮ったんだよこれ!私に気づかれずに撮ったのかよ!

うわ…なんかプライバシーって無いんだなって突きつけられた気分…

まぁそうだよな、HK417なんて人形は本当は居ない筈だったのにぽっと出で出現したんだし。

でもこういうのは…社内報で取り上げるほどかなぁ…いや、良いんだけどさぁ…せめて一言伝えてくれよ。

 

「とりあえずほら運転任せたよー」

「はいはい。私が運転ね…振り落とされんなよ?」

「そのちんまいボディでそんな乱暴な運転できんのー?」

「ぁ?よし、じゃあお前覚悟しておけよ。お前の胃袋の中身全部吐き出させてやるからよ」

 

私が運転するのは本体が収まるバギー。

その後は各ダミーが追従するって形で警備に出るんだけど…

んな挑発されちゃぁ私の闘争本能に火が点いちゃうわけでーバギーの走行性能は正直よろしくない。

だが私のドラテクを甘く見なさんなよ。ダミーごときすぐにぶっちぎってやるからよぉ…!

からかうスコーピオンに一方的に叩きつけてから戦闘準備に入る。

脱落防止用のハーネスを付けておかないとな…まぁバギーを横転させるってことも考えられるんだけどさ。

 

 

――――――――――――D08地区前線

 

 

「イィィィイイイハァァアアアア!!!」

「ちょっと運転が荒すぎるわよぉぉぉおおお!!」

「417ステイ!ステェェェイ!!」

「誰よ417を焚き付けたのはー!」

「あっははは良いじゃんもっと飛ばせー!!」

 

無線機と逆側の耳に突っ込んでるのはミュージックプレイヤーと繋がったイヤホン。

爆音でノリの良いミュージックを流しながらバギーを転がしていく。

自分でも自覚してるんだけど私はハンドルを握ると性格が変わる。

それはもう好戦的で誰よりも早くガンガンにぶっ飛ばしていきたいってアドレナリンどっぱどぱなやつにね!

オープントップに補強用のバーで鳥かごのようになったバギーをかっ飛ばしていく。

路面はウェットな泥道でかなり不安定だがレースゲーやシミュレーターじこみのドラテクでねじ込んでいく。

切り開かれている順回路は一応車二台は並べる位に切り開かれていて幅は良いのだが…

お世辞にも舗装?んなの知るかと言わんばかりの悪路だ。ぬかるんでいるのは当たり前。

凹凸はどこそこあるし跳ねることだってガンガンある。

そんなところを猛スピードで駆け抜けりゃどうなるかって?そりゃジェットコースターみたいな事になるでしょ。

後方を見ようにも土煙でよく分からん。ダミーリンクからついてきてるのは確認してるけどな。

 

「突っ込むぞ掴まれ!!」

「誰か417を止めなさいよぉ!!」

「むり!振り落とされるぅー!!」

 

派手な土煙を巻き上げながらスライドする車体。柔らかいサスペンションは大きくロールを発生させていく。

絶妙なアクセルワークでスライドコントロールしながらスリル満点にコーナーを突き抜けていく。

悲鳴が聞こえる気がするが知らねーな!スコーピオンのゲロを拝ませてやるよぉ!

 

「あ、敵発見」

「うっそ」

「ぎゃー!!」

「スピンで止まるのは無しよぉ…うぅぇ…」

「よっしゃぁ敵だー!突撃ィー!!」

 

サイドブレーキからのスピンターンで急停車。間違いないな。敵だ。

ダミーリンクにも伝えてるから程なくして合流するだろうけど…まぁその前に潰せるか。

荷台から飛び降りたスコーピオンがちょっとふらつきながら突撃かましていったから狙撃で数減らしとくか。

私の運転でグロッキーになったのかM14とか青い顔してるし…

ちょっとスリリングだっただけじゃんかー…そんなにきつかったかなー?

しょうがねぇなぁ…まぁ次からはちょっと抑えめに行きますかー

じゃ、ちゃっちゃか的当てしましょうか…

 

「ターゲット・インサイト…」

 

運転席から動くこと無く我が半身をそっと構えるとスコープを覗いて…引き金を引いた。

うん、今日も絶好調ですよ。じゃ、くたばってくれや。鉄屑共。

 

 

――――――――――――

 

 

「えー?もっと抑えて走れ?楽しいじゃん!」

「そう思ってるのは417とスコーピオンだけよ…」

「ほらUziなんて今にも吐きそうなのよ?」

 

スコーピオンがはしゃいで帰ってきたけど不満がすぐに出た。

まぁ私の運転がくっそ荒いからスコーピオン以外がグロッキーだったしね。

Uziの他にもM14も青い顔して吐きそうなんだけどね。

そんな状態なので私も流石に抑え気味で行くんだけどさ。

 

「それじゃ発進するよー」

「飛ばすんじゃないわよ」

「分かってる分かってるー」

 

信用ねぇな…いやいや抑える時は抑えるからさぁ。大丈夫だって安心しなよ。

じゃクラッチ踏んでローにギアを入れてやんわり発進。

ディーゼル機関の独特の駆動音が響きながらバギーは発進する。

大体時速40キロくらいか。そよ風レベルだよ…あー眠くなる。

柔らかいサスペンションのお陰でロードショックはあんまり来ないんだがゼロじゃない。

当然バランサーがエラー吐いてて酔ってるUziとM14には辛いよねー

あ、吐くなら荷台から顔を外に出してねー…うんうん…私は何も見てなーい。

 

「417…あんた恨むわよ…」

「焚き付けたスコーピオンを恨もうよ…」

「ごめんて」

 

Uziに恨まれた。運転中だからちょっかいは出さないだろうけど…

これ運転変わったら私くっそいじられるパターンだったんじゃないかな?

ちなみに今荷台ではスコーピオンがM14に抑え込まれてUziとMk23によってくすぐり地獄になってる。

 

「ぎゃーはははははははぁー!!」

「私の恨み…」

「アンタが焚き付けなければ…」

「ちょっとオイタがすぎたわねー」

 

おー怖い怖い…安全運転で行きましょうか。あ、荷台でガッタンガッタンするからハンドルが…

ダミー運転のバギーも追いついてるしこのまま巡回ですねー…これはこれで楽だな。

いつもは徒歩での警備だったしさー…あ、バイクを導入してから…

 

「不穏なことを考えてるおっぱいはこれかしらー?」

「んんぅっ!?」

 

Mk23…バカなアンタは今スコーピオンをくすぐってる筈じゃ…

運転席の背後からぬっと腕が伸びてきて私のおっぱいを鷲掴みに…あ、やめろ…

 

「にゃぁぁぁぁぁあああああああ……」

「アクセルから足を離しなさーいー!!」

 

振り払わせてもらうぞ、あ、やばいなんかビクビクしてくる…なんか来ちゃう来ちゃうよぉ…ふえぇ…

 

 

――――――――――――D08基地司令室・昼

 

 

「で、417申し開きは?」

「スコーピオンを吐かせたくてやった、反省はしてない」

「よし、げんこつな?」

「んがぁ!?」

 

出撃から帰った私に待ってたのはお兄ちゃんからのガチげんこつだった。

私が暴れ馬にさせてたバギーのエンジンがちょっとおかしくなったらしい。

まぁスポーツ走行なんて視野に入ってない様な運用させてた物をいきなりスポーツ走行させたんだもんな。

緊急メンテが増えてメンテナンス班に恨まれてるかもしれなーい。てへっ…

ちなみに焚き付けたスコーピオンも同じくげんこつ食らって床で伸びてる。

吐いたM14とUziには私支払いでのケーキがごちそうされることになった。

まぁ私のせいだから別にそれは問題じゃないんだけどさ…

 

「とりあえず417、お前の禁止行為リスト更新な」

「えー?」

「1:酒は公衆の面前で飲むな。2:絶対に出撃時にハンドルを握るな」

 

むぅ…私の楽しみが1つ減ってしまった…実物の車両を転がすの楽しいのに…

ドリフトターンとか決めたら気持ちいいんだぞ?お兄ちゃんも試してみたら…

あ、そうだ今度お兄ちゃんを無理矢理にでも連れてドライブに出かけてみるのは…

それかお兄ちゃんのバイクを逆に私が運転してみるってのは…

 

「お前に絶対に俺のVを運転なんてさせねぇからな?」

「ぶー!けちー!」

「ふざけんなアレは俺が前職3年かけてようやく買った逸品なんだぞ!」

 

大事なのはわかったけど私にちょっと運転させてくれてもいいじゃん!

タンデムするときに変な所触っても私は怒んないんだよ!?ほらお兄ちゃんの大好きなおっぱいだって…

あ、やばいなんか変な気分になってきた…想像してみたら…なんかヤバい…

 

「お兄ちゃん…」

「おう、なんだ?」

「ちょっとナデナデしてー!」

「のわぁー!?」

 

んひひひお兄ちゃんの匂いはすはす…んはぁ…いい匂い…

ぎゅっとしてみると私が知ってる男の体よりがっちりしてて頼りがいありそう…

胸板も厚いし抱きしめられたらスゴイんだろうなぁ…はぁー…すぅー…はぁー…

あ、ナデナデしてくれた…これは合意とみても良いな?

もうちょっと身体をくっつけてスリスリしちゃえ…うぇへへへ…♪

 

「はい、そこまでよー」

「Mk23!?いやー!はなしてー!!」

 

どっから駆けつけたかMk23によって引き剥がされて私は兵舎に叩き込まれた。

もうちょっとでお兄ちゃんの理性が溶けたかもしれないのにー…ぶー…




あ、車は交通ルールを守って運転しましょうね。間違ってもゲーム知識を鵜呑みにしたらいかんぞ?

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