――――――――――――D08基地司令室・早朝
「あぁ?まじかよ…分かりました、すぐに援護を派遣します。なんとか耐えてください」
『頼みます、あぁくそ!維持部隊3-2ダミー全滅!メインフレームは撤退しろ!!すぐに3-1は…Shiiiiiiiiiit!!!!』
D08地区は広大な森林地帯とその奥に構える豊かな街で構成されている。
その街からの連絡が飛び込んできていた。受け取っていた指揮官も切迫した様子だ。
思わずと言った様子で顔を手で叩いてから顰めっ面を浮かべる。
そして直ぐ様に基地内に居る人形に集合命令を駆ける。援護に向かわせる人形だ。
緊急スクランブルと言うこともあってか数分と経たずして呼び出した人形が戦闘態勢で入ってくる。
「よく来た。まぁ緊急事態だ」
「どういう事?」
「簡単に言えば街で凶悪犯罪が起こった。治安維持隊でも手に負えないバカが出やがった」
「なるほど、それで私達に白羽の矢を立ったって訳ね?」
「えー…私まで呼び出されるのはどうなんですか指揮官…」
「良いじゃないの、たっぷり弾をぶち込めるのよ?」
好戦的な第一部隊の筆頭ヤベー奴の3人…FALとスペクトラとステンはそれぞれ反応を示す。
唯一乗り気ではないのはステンだが恐らく戦線に立てば嬉々として爆弾魔と化すのでノーカウント。
その他に呼び出されたのは純粋な戦闘力の高いHK三姉妹。
対テロリズムにおいて効力を発揮するHK417とG28を配したのだ。
「差し当たって鎮圧してこい。生死は問わん。迅速に容赦なく潰せ」
「「「「「「了解」」」」」」
この手の犯罪者に情け容赦など必要ない。指揮官は普段の温厚な雰囲気を引っ込めて冷徹に指示を下す。
G&Kの統治下でそんな事をした場合どうなるか…見せしめにもなる。
比較的に治安は良い街でそんな事をした場合迎える結末というものを教えるのだ。
出撃に出ていく人形の背中を静かに見守り…誰も居なくなった後指揮官は溜息を吐く。
「あーぁ…嫌になるねぇ、自分の手を汚さずに人形とは言え女の子にその汚れを押し付けるってのは」
そして指揮官は何事もなかったように自分の為すべき仕事に戻る。
ドローンを飛ばして指揮に入る。相手が人間相手であるならば頭脳は必要である。
それ以上に自分が指示した結果どんな末路を迎えるのか見るのが指揮官の義務…そう思っているのだろう。
「あぁ、すまんな…今日の出撃は変則でな…えー?俺がそんな真面目な雰囲気なのがおかしいのかよぉ…」
「気持ち悪いったら無いわよ!まぁ…偶には良いと思うけど。私が第2部隊に編入して警備でしょ?」
「そうそう、理解が早くて助かる。じゃ頼んだぞぅ」
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「迅速を求めるから私のドライブが解禁とはねぇ!」
「振り落とすんじゃないわよ!」
「分かってるってよぅ!イィィハァァアアア!!」
ディーゼル機関が唸り声を上げながらハイウェイを駆け抜ける。
法定速度?んなの知ったことかよ。今は治安維持に向かってるんだからさ。
簡単な車両のスラロームだからベイビーサブミッションも良いところ。
ダミーにもハンドルを握らせて私の動きをトレースさせていく。
オープントップのバギーは走行風をもろに車内に巻き込んでいく。
速度を上げれば上げるほど私達の髪を靡かせていく。朝のハイウェイは気持ちいい。
しかし犯罪者ねぇ…どんな奴なんだろうか…まぁろくでなしってのは確定だな。
あんな治安の良い場所で何ドンパチやらかそうとするのか…理解できないね。
「それにしても生死問わずかぁ」
「怖いの?」
「んーん、まさか」
もう私にその辺に対する忌避感ってのは無い。引き金を引くことに慣れすぎた。
人の命を刈る事と引き金を引く事の軽さがほぼ同等なんだもの。
まぁ無力化って言うのは不確定要素があるし…確実に無力化するんだったら殺すのが手っ取り早い。
許しは請わないし恨んでくれよって思うけどさ…自分の行動に責任を取れよって話。
そういうヤツって自分が正しいと思ってるだろうから言葉が通じることはない。
つまりは見敵必殺、言葉など不要なんだよ。逃がす?いいや、そんなのは許さない。
「お姉ちゃんこそ人を殺す事にビビってたりしないー?」
「ハッその減らず口から縫い上げてあげようかしら?」
「おぉ怖い怖い、もうちょっと飛ばすよー!」
『犯罪者はグループ犯だ。人類権利団体を名乗るかと思ったら違うな…ただの強盗だが武装が武装だ』
「へぇー武装は?」
『前時代的だが強力なRPG-7とM249と来たもんだ。容赦なくぶっ放して死人も出ている』
「治安維持隊の被害状況はー?」
『1部隊壊滅第2部隊も時間の問題と来た。恐らくだが正規軍崩れだろうな。手慣れてやがる』
「それで前線基地の私達が援護に回るってわけねー…はいはい」
治安維持隊の人形はお世辞にも戦闘慣れしているとは言えない。
所謂目に見える抑止力としての機能が優先されている。勿論並大抵の犯罪者ならどうにかなる。
今回みたいにガッチガチに武装してるテロリスト一歩手前の連中は手に余ると言うやつな。
応戦して足止めしてるらしいけど…いつまで保つのかわかったものじゃないな。
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『もうすぐだ、視認できるか?』
「もう出来てる」
『なら417とG28は近くのビルに登れ、高所からの狙撃だ。行けるな』
「「勿論」」
『よろしい、なら後は下りてお掃除の時間だ。敵対勢力の位置情報は確認できるか?』
「えぇ、勿論よ。存分に榴弾を叩き込んであげるわ」
戦闘モード移行、さてとちゃっちゃか片付けてしまいましょうか。
ラペリングフックを打ち上げてから壁を駆け上がる。
下ではバギーから下りた416とFAL、スペクトラ、ステンが展開して敵に向かっていってる。
視認した限りでは現地警察と治安維持隊がシールド展開してから押さえ込みを行っていた。
お陰で犯人達は一歩も動けてないらしい…ふむ、被害はあぁ、逃げ遅れた人が何人か動かなくなっている。
あとはダミー人形が派手に散らばってるな…爆発痕から考えてRPGを撃ち込まれたか…
本当に容赦なくて笑いが出てくるけど…さて、そんな玩具を持ち出すんだから…
自分達も撃たれる覚悟はあるってことで間違いないわよね?
「417、ポイントに着いたわ。犯人と思わしきグループを視認。数は見える限り8」
「G28同じく配置についたよー!こっちからも見える数は変わらないね。撃っちゃっていい?」
『待て、FAL達が裏に回ってからだ。向こうはRPGを使い切って籠城してやがるから囲んで叩くぞ』
「ふぅん…じゃあ私達は逃げる蟻を一匹残さず潰せってこと?」
『そういう事だ。出来れば無力化は生きたままが良いが…最悪一匹だけでも残っていればいい。残りは好きにしろ』
「ふぅん…じゃ、私達の好きにやっちゃおうか…ねぇ、G28?」
「りょうかーい!」
裏から回り込んで順次制圧…それから表で騒いでる連中を射殺するなりなんなりか。
一匹足を撃ち抜いて…止まればいいけどね。そうじゃなかったら不運を呪って貰いましょう。
まぁ沢山人を殺してるんだから…別に容赦する必要なんて無いんだけどさ。
『FALよ。ポジションに着いたわよ』
『416、ブリーチング用意。何時でも行けるわよ』
『GO!中を占拠してるバカを一匹残らず叩け!』
遠くから爆発音が聞こえる。続けて発砲音が響く。スコープ内の犯人グループに動揺が走ってる。
銀行を襲ったのが運の尽きね。裏口や突入口なんていくらでもある。
その上カメラは多くてジャックしちゃえば見放題。つまり突入がかなり簡単になる。
おまけに指揮官のドローンは光学迷彩付き…高価だけど人形のサポートには事欠かない。
「じゃあ私達も行動開始だね」
ダミーと連携してから一匹目に狙いを定める。狙うのは膝。
簡単に行動不能にさせるならコレが手っ取り早い。勿論それでも抵抗を諦めないなら撃ち殺す。
抵抗意思をへし折れなかったらね…まぁ恨めよ…
「おぉおぉ痛がってる痛がってる…一人無力化に成功、速やかに鎮圧します」
おや、撃たれてからの行動が早いな…スナイパーを警戒して物陰に隠れたな。
建物内からは依然として銃声が響いてくるからドンパチやってるんだろうなぁ…
お、爆発音…FAL容赦ないからなぁ…きっと愉快な血みどろアートの出来上がりだな。
「1ダウン」
すっと顔を出した犯人の頭を素早く撃ち抜く…頭を一発で撃ち抜かれてから絶命した犯人はそのまま地面に横たわる。
ビクンビクンと痙攣しているがそれはどうでもいい。次のターゲットだ。
死にたくなかったら両手を上げて投降しなよ?じゃないと即撃ち殺してやるから。
『こちら416、屋内の犯人は制圧したわ』
『もうおしまい?はぁ…まだまだ撃ち足りないわ…』
『外にまだ的は居るわよ』
『突撃ィィィイイイイイイイイイ!!!』
ん、お姉ちゃん達のお掃除も完了してますか…じゃあ私達は制圧射撃をしておきましょうか。
「ん」
威嚇のつもりが足を撃ち抜いちゃったな…そのまま蹲ってのたうち回ってる。
お、中からスペクトラが出てきた。両手に持ったSMGで弾をバラ撒きながら影に隠れている犯人を1つ2つと蜂の巣にしていく。
おぉ…かわいそうに、顔とか人の原型留めてないんじゃない?
と、流石に反応して弾幕を張ったな…ん?でもなんかおかしいね。
止んだ?あぁーそういう…416とFALとステンのダミーが大量の死体を外に放り投げた。
そしてその死体にステンが綺麗に爆破して…これでもまだ抵抗するならお前もそうなるぞ?って脅しをかけたのな…
うわー…グッチャグチャ…火葬すらもったいないってか…エグいなぁ…
おっと逃さないぞ?逃げようとした犯人はさっさとヘッドを撃ち抜いて…っと
私とG28の撃ち抜く速度がほぼ変わらない。故に頭には2つの弾痕が出来上がっている。
それを見てまだ抵抗するって言うならお相手しますけど?
「あ、両手を上げて出てきたね…」
『一応両腕撃っておけ、何があるか分からん』
「うへぇ…了解、じゃあG28は右からよろしく」
指揮官も念には念を入れてエグいことをするなぁ…まぁ命令ですからやりましょう。
両手を上げてる所だったけどダミーと連携して一人一人両肩を撃ち抜く。
まぁ自爆とかされても困るしね。この街で騒ぎを起こしたことを呪え。
『作戦終了だ。皆ご苦労…すぐに帰投してくれ』
じゃ、私とG28はラペリング降下。お姉ちゃん達と合流して戻るとしましょうか。
帰る頃には夜だなぁ…全くもう街の反対側で騒ぎを起こしやがって…渋滞もあってからなぁ…
『待て、予定が変わった。悪いが指定方向に向かってくれ』
「今度は何~?」
『嘆かわしいことに補給基地がテロリストに襲われている。すぐに向かってくれ』
「了解。あーあ酷い出撃内容だねー」
「まだ撃てるのね!飛ばしなさい417!!新しい戦場が私を待ってるぅー!!」
「えーもう嫌ですよ…はぁぁぁ…ボンバーしなくちゃ…」
補給基地が襲われたらちょっと困るってレベルじゃないな。
全くもう酷いなぁ、基地待機だったのに連続戦闘ですかー…まぁ良いけど。
「ダミーは遅れないでよー!」
『本体に遅れは多分取らない』
『そうだそうだー』
バギーの車列が急速ターンを決めてから闇夜を駆けていく。
夜はまだまだ続きそうだ。
はい、今回はね…ソルジャーODSTさん所で開催するコラボへの切り口となってます。
ちょうど良い感じだったから通常の投稿と一緒にしたけど許してクレメンテ。