やはり俺が“とある本丸鎮守府”の審神者兼提督で戦車道までやるとか多忙過ぎるだろう   作:BREAKERZ

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今回、八幡にフラグが立つガルパンキャラと新しい艦娘と刀剣男士達出ます。


八幡は喧嘩を売る

聖グロリアーナとの練習試合も終わり、その夜に『あんこう踊り』を披露して本丸鎮守府が大爆笑に包まれ、俺にとっては新たな、清光と安定と伽羅には現世に顕現して初めての黒歴史が刻まれた(鶴丸と太鼓鐘と光忠は楽しんでいたが)その翌日。来週に『戦車道の全国大会の抽選会』、そして再来週にその一回戦を控えた大洗学園ではこれから聖グロリアーナ戦での敗北から学んだ事を活かそうとしていた。とりあえずカラーリングは元に戻した、あんな金ピカやピンク一色やごちゃごちゃカラーや『バレー部復活!』なんて悪目立ちするだけだ。

 

まずは一年生チーム、また戦車から逃げないように砲音や振動、被弾時の衝撃にも堪えられるように訓練を行う。本人達も反省を踏まえて乗り気で取り組んでいる、根は素直な奴等だな。ちなみに逃げた時の動画見ていた加賀や何人かの艦娘や刀剣男士らは口を揃えて。『無様な・・・・』と辛口コメントがあったが。

 

歴女チームは旗を取る事にした、せっかく車体の低いⅢ突も、旗のせいで居所がバレたら元も子もないからな。カエサル達が『我等の生き様がぁ!!』と最後まで渋っていたが問答無用だ。

 

会長達『生徒会チーム』。とりあえず河嶋先輩に砲撃訓練と小山先輩は運転訓練、会長は干し芋食ってるだけだが大丈夫か? 河嶋先輩が「何で私が砲撃訓練をせねばならんのだ!!」と喚いていたが。試合での失態忘れたのかなこの人は? ちょっとムカついたので睨んだら直ぐに小山先輩の後ろに隠れやがった。小山先輩がやらせておくと言ったのでこれ以上の追求は不問としよう。

 

西住達のチームはほとんど心配ないな。冷泉の天才的な運転技術、五十鈴も母親との約束の事も有ってより意欲的に取り組んでいるし、元々積極的だった秋山も問題無し、チームのムードメーカーとして武部の存在も大きい、車長である西住も普段はヌケているのに戦車道をやっているときはキリッとした感じになり、素人戦車道チームを上手く纏めている。

 

そして現在俺は昼休み、清光と安定と共に昼飯を食おうと教室を出たのだが、食堂は満員、屋上も結構人がいる、体育館は五月蝿いし、生徒会室に行ったら会長に何を命令されるか分かったものじゃない、仕方無いので日にあまり当たらない裏庭でメシを食べていたのだが・・・・。

 

磯辺「比企谷! 私達バレーボール部のコーチをやってくれ!」

 

河・佐・近「「「お願いします!」」」

 

八幡「・・・・・・・・なんでこうなった??」

 

安・清「「さぁ???」」

 

おかしい、本当になんでこうなった? 順を追って思い出してみよう・・・・。

 

・俺達は確か昼飯(日によって光忠、歌仙、鳳翔が代わりばんこで作ってくれる)を取ろうと裏庭に来た。そしたらバレーの練習をしているバレー部に出くわす。

 

・昼飯を食い終わった安定と清光が食後の運動にバレー部と試合をし、そして俺も巻き込まれた。バレー部VS八清安トリオで試合をする。

 

・最初はバレー部が優勢だったが艦娘達とビーチバレーで培った経験で清光と安定が攻勢に出て、俺はトス役をやりながらバレー部の動きを観察し、弱点等を攻めて勝利する。

 

・悔しがるバレー部にとりあえず観察して気付いたそれぞれの弱点を教える俺。練習をしながらそれぞれの弱点を教えられて、おぉー!と納得する磯辺達。

 

そしていつの間にか『バレー部コーチ』をしてくれと頼まれた。ただでさえ戦車道のマネージャーまでやらされて多忙なのにこれ以上やることが増えたら身が持たんわ!

 

八幡「イヤな磯辺、俺こう見えて戦車道のマネージャーやら結構多忙でな、コーチ役なんてムリだぞ」

 

磯辺「そんな事云わずに! 朝と昼休みと放課後の練習の時だけで良いから!」

 

八幡「オイコラ、朝昼放課後って、丸々1日だろうが? それに放課後って、お前ら戦車道の後にバレーの練習までやってんのかよ?」

 

なんで戦車道をやってンのかなぁ?

 

磯辺「(頭を下げ)頼む比企谷!」

 

河・佐・近「「「(同じく頭を下げ)お願いします! 比企谷先輩!!」」」

 

頭を下げる磯辺とバレー部一年組。

 

八幡「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

清光「やって上げたら八さん?」

 

安定「ここまでお願いされて邪険に扱うのも悪いしさ」

 

八幡「(ため息)たまに昼休みに付き合ってやる」

 

バレー部「(パァ!)ありがとうございます! 比企谷コーチ!!」

 

コーチは止めろ。予鈴が鳴ったので解散しようとしたのだが、おいバレー部! その格好で授業出ようとするな! せめて運動着から制服に着替えろ!!

 

 

~放課後~

 

兎にも角にも授業が終わり、戦車道の訓練も滞りなく終わり、【要請連絡】もなかったのでバレー部の放課後練習にも付き合い、その際練習でサーブが上手くなった近藤の頭を思わず撫でたら、凄い勢いでひかれた。暁達や藤四郎兄弟達にやるような感じでやってしまった・・・・。

 

近藤「////////」

 

清光「(ボソボソ)うわ~、妙子ちゃん顔真っ赤か」

 

安定「(ボソボソ)小町ちゃんに連絡しなきゃ、“主が年下の女の子を落とした”っと♪」

 

何か騒がしいが無視する。そして磯辺達の方も問題無い、バレーボールも戦車道も両立出来ているようだ。今回で俺達との距離感がかなり縮まった気がしないでもないが。

 

 

* * *

 

さてと、学校が終わりバレー部の練習にもそれなりに付き合った俺達は鎮守府に戻り、俺は提督服に着替え書類の片付けていた。艦娘の仕事は『学園艦の護衛』だけではない、『海上自衛隊と協力して領海侵犯をしてきた船の調査』、『タンカーやコンテナ貨物船の護衛』等が有り、任務に付いていた艦娘達からの報告書の確認(俺がいない時は大淀がやってくれるので俺は軽く読んだ後に判子を押すだけ)を終えると、長門と陸奥が新しく着任した艦娘を連れてきた。

 

長門「提督、阿賀野の“姉妹艦達”が着任しました」

 

八幡「ようやく来たか。長門、陸奥、ご苦労さん」

 

陸奥「それじゃ皆、自己紹介よろしくね」

 

この本丸鎮守府にやって来る艦娘は基本他の基地に配属されており、そこからこの本丸鎮守府に異動してくる。基地によっては艦娘が冷遇扱いされている基地も有るようだが。

 

そして新しい三人の艦娘が前に出る、阿賀野と同じく高校生のようなルックスで上は白地に紺色の前留式ノースリーブセーラー服を着用し、首周りは余裕で広く、丈が短くヘソが見える、錨が刺繍されたネクタイを付けて、両手には肘まで届く手袋をつけており、短く朱色のスカートを着ている艦娘。

 

「阿賀野型軽巡二番艦、能代。着任しました。よろしくどうぞ!」

 

「軽巡矢矧、着任したわ。提督、最後まで頑張っていきましょう!」

 

「ぴゃん♪ 阿賀野型軽巡四番艦、酒匂です! 司令、よろしくね!」

 

最初に自己紹介したのは『阿賀野型軽巡洋艦二番艦 能代』。赤みがかった茶髪で太い三つ編みを左右に作っている美少女だ。

 

次に自己紹介したのは膝くらいある長い黒髪をポニーテールにした『大和』に似た容姿をした『阿賀野型軽巡洋艦三番艦 矢矧』。

 

最後に紹介したのは『阿賀野型軽巡洋艦四番艦 酒匂』。 薄鼠色のショートボブ+アホ毛に薄茶色のタレ目が特徴的だ。胸部装甲は姉妹で一番スレンダーだな。

 

長女の阿賀野に負けず劣らずのメリハリの効いたプロポーション(四番艦は除く)をしているな。すると『提督室』の扉が乱雑に開かれる。

 

阿賀野「能代! 矢矧! 酒匂! ようやく来たね!!」

 

能・矢・酒「「「阿賀野姉ぇ!!」」」

 

長女の阿賀野参戦! あぁ賑やかになるな・・・・。長門達もため息付いたり苦笑いを浮かべたいた。

 

能代「阿賀野姉ぇ、提督や皆さんにご迷惑とかかけてない?」

 

矢矧「手紙で近況報告は受けていたけど、他の艦娘の皆と刀剣男士の皆さんに失礼な事とかしていない?」

 

妹達に迷惑かけている事を前提で心配される姉ってどうなんだよ?

 

阿賀野「そんな事無いよ! お姉ちゃんはみんなに頼られるお姉ちゃんなんだからね!」

 

酒匂「阿賀野姉ぇの手紙の通りだね! ここの司令って本当に目が腐っているよ♪」

 

オイコラ待てコラ、阿賀野は俺の事をどう手紙に書いているのかゆっくり聞く必要が有るんだが?

 

阿賀野「提督! 妹達は私が案内するよ!」

 

八幡「あぁ分かった。本丸の方も任せるぞ」

 

阿賀野「任せて! さぁみんなお姉ちゃんに付いて来て! 鳴狐にもみんなを紹介するから!」

 

矢矧「“鳴狐”って、阿賀野姉ぇがお世話している(?)刀剣男士の人?」

 

能代「それは是非ともご挨拶に行かないと(阿賀野姉ぇがご面倒をかけている謝罪も含めて)」

 

酒匂「阿賀野姉ぇ! 連れてって連れてって!」

 

そして阿賀野達は提督室を出ていった。

 

陸奥「何かまた賑やかになりそうね・・・・」

 

長門「まぁ阿賀野の面倒を見ていた鳴狐も、これで少しは楽ができるかもしれんな」

 

大淀「ですね・・・・」

 

八幡「さてと。鎮守府の書類も終わったし、今度は本丸の方に行ってくるわ」

 

長門「はい、提督。お疲れ様でした」

 

陸奥・大淀「「お疲れ様でした」」

 

八幡「おう、また後でな」

 

 

* * *

 

俺は今度は本丸での研ぎ部屋にいた。

 

八幡「それじゃ山姥切、叢雲、新しい刀剣男士を顕現させるぞ?」

 

山姥切「あぁ」

 

叢雲「今回は誰が顕現するんだか?」

 

審神者の仕事も片付き、研ぎ部屋に来た俺は、丁度部屋の前で出会った山姥切国広と、『吹雪型五番艦駆逐艦 叢雲』を連れて、新たな刀剣男士を顕現させる。

台座に置かれた二振りの刀剣に、一枚ずつ札を置くと、刀剣が光り輝き、“二人の男性”が顕現した。

 

癖のある長い黒髪に赤い瞳をし、長身痩躯の強面で威圧感のあるワイルドな見た目の刀剣男士。

 

同じく癖のある黄土色の髪に赤い瞳、現代ヤンキーのような見た目のこれまたワイルドな容貌の刀剣男士。

 

あれ? 頭文字Yな人を顕現させたのか? 山姥切と叢雲も同意なのか首を傾げると、黒髪の方がボソボソと小さな声で自己紹介を始めた。

 

「『天下五剣』が一振り、『大典太光世』だ・・・・」

 

「『ソハヤノツルキ』 ウツスナリ・・・・坂上宝剣の“写し”だ。よろしく頼むぜ!」

 

なんと! 新たな刀剣男士は『天下五剣』の『太刀 大典太光世』かよ!? ソハヤノツルキって確か『太刀』だったな、しかも“写し”って・・・・チラッと山姥切を見るとパチクリさせていた。

 

ソハヤ「よぉ兄弟! 一緒に顕現できて嬉しいぜ!」

 

大典太「あぁ・・・・」

 

どうやらソハヤノツルキと大典太は兄弟刀のようだな、後で調べよう。

 

八幡「俺はこの本丸鎮守府の審神者兼提督の比企谷八幡だ。よろしく頼む大典太、ソハヤノツルキ」

 

ソハヤ「おう! 任せておけ主!」

 

大典太「よろしく頼む主・・・・」

 

八幡「あぁ。山姥切、叢雲、お前らも挨拶しろよ」

 

叢雲「分かっているわよ。私は艦娘の叢雲、コイツは刀剣男士の山姥切国広よ」

 

山姥切「(ソハヤノツルキを見る)・・・・・・・・」

 

ソハヤ「ん? どうした?」

 

山姥切「お前も“写し”、なのか?」

 

ソハヤ「あぁ“写し”だ! ヘヘッ」

 

山姥切「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

同じ“写し”でも、“写し”である事にコンプレックス抱いているネガティブ思考の山姥切と、明るくポジティブ思考のソハヤノツルキは違うようだな。

 

八幡「さて、この本丸鎮守府や他の刀剣男士や艦娘にも紹介するぞ。大典太、ソハヤノツルキ。ついてこい」

 

ソハヤ「おぉ! 他の刀剣男士達にも会えるのか!? 楽しみだな兄弟!?」

 

大典太「イヤ、俺が行ったらみんなが恐れる・・・・」

 

ソハヤ「んな事ねぇって! さぁさ行こうぜ!」

 

俺は大典太光世とソハヤノツルキを連れて、部屋を出ていった。

 

 

ー山姥切sideー

 

山姥切「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

叢雲「山姥切・・・・」

 

山姥切「アイツは・・・・ソハヤノツルキは、自分が“写し”である事を堂々と言っていた・・・・」

 

叢雲「そうね・・・・」

 

山姥切「何故あんな風な態度を取れるんだ?」

 

叢雲「さぁね、私も提督も皆も、アンタが“写し”だろうが何だろうが別に気にしないけど、ソハヤノツルキもそうなんじゃない?」

 

山姥切「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

~数日後~

 

俺と清光と安定は『戦車道全国大会 抽選会場』の外で『戦車喫茶 ルクレール』にて、抽選会に参加した西住、武部、五十鈴、秋山、冷泉を待っていた。いくらマネージャーとは言え女子がいっぱいいる会場に男子が入っていくのは気まずいからな。

清光と安定がケーキに夢中になっている間、俺は練乳(店員さんが戸惑っていた)をたっぷり入れたコーヒーを飲みながら、タブレット(提督用と審神者用)で仕事をしている。何かこの一年ですっかり社畜のような精神が生まれたような気がする・・・・。おかしい、俺の将来設計は“専業主婦”の筈、こんな休日のサラリーマンみたいな事、俺の人生であり得ない・・・・まぁこの一年で貯金の額が“多い6桁”になったのは将来的に吉だが、その貯金は親に管理されているんだよなぁ、学校卒業しても長谷部か、大淀が管理しそうだな。

 

ポロロ~~ン♪♪

 

西住達を待っている俺達の耳にカンテレの音が聴こえたので目を向けると。

 

八幡「ん?・・・・・・・・ゲッ!」

 

見たことのあるチューリップハットと長い灰色がかった黒髪をした同い年の女子が後ろにいて、俺は苦虫を噛み潰した顔になった。

 

???「やぁ八幡、こんな所で君に出会うだなんて、数奇な運命を感じるね」

 

八幡「俺としては、運命は運命でも“不運な運命”を感じるわ」

 

目の前にいる女子は『継続高校戦車道チームの隊長 ミカ』出会った。継続高校は貧しい学校だが、戦車道は盛んに行われており、護衛艦の打ち合わせで寄った時にこのミカに出会ってしまった。その時。

 

ミカ【君は面白いね、何か“秘めたるモノ”を隠している。君を中心にまるで桜舞う涼やかな風が吹いているよ・・・・】

 

なんて訳の解らん中二病なセリフを言い、何かしら絡んで来る。この間なんて何処をどうして来たのか“本丸鎮守府にやって来て”、刀剣男士達の事を隠す為にてんやわんやになった程だ。

 

八幡「んで? 何でお前がここにいるんだ? 抽選会はどうした?」

 

ミカ「それなら“ミッコ”と“アミ”がやってくれているから大丈夫だよ」

 

コイツ、面倒事をチームメイトに任せやがったな。

 

清光「八さん、西住ちゃん達が出てきたよ」

 

安定「(携帯を操作しながら)電話で呼ぶね」

 

ミカ「さてと、それじゃ私も退散するよ。“ミッコ”と“アミ”が探しに来るからね」

 

八幡「あぁ、それじゃなミカさん」

 

ミカ「呼び捨てでも全然構わないのだけどね」

 

八幡「・・・・・・・・じゃあな“ミカさん”」

 

ミカ「やれやれ、連れないなぁ・・・・」

 

そう言って颯爽と去っていきやがった。あっ、しかも伝票を俺に押し付けやがった! クソッ! 今度会ったら払わせてやる!

 

 

~数分後~

 

西住達と合流し、西住達は俺達の隣のテーブルに座った。

 

カチッ、ドーーーーーン!!

 

店員の呼び出しボタンが戦車の形をしており、ボタンを押すと砲撃音が鳴り響く仕掛けだ。芸が細かいなこの喫茶店。西住達が店員へ注文を終えると注文ボタンに目を向ける。

 

沙織「このボタン主砲の音になってるんだ?」

 

優花里「この音は90式ですね」

 

華「流石戦車喫茶ですね?」

 

店中から砲撃音が鳴り響いて少し五月蝿いがな。

 

沙織「あぁ~~、この音を聴くともはやちょっと快感な自分が恐い♪」

 

清光「沙織ちゃん、ちょっと危ないンじゃない?」

 

俺もそう思う。テーブルの隣の小さな通路からラジコンのドラゴンワゴンが戦車の形をしたケーキを持ってきた。本当に細かいなこの喫茶店・・・・。

 

八幡「それで一回戦の相手は何処になったんだ?」

 

優花里「はい、『サンダース大学付属高校』です」

 

八幡「・・・・西住、お前ってくじ運悪いな」

 

みほ「やっぱり比企谷君もそう思う?」

 

八幡「一回戦で『4強』にぶつかるだなんて、不運以外のなんなんだよ?」

 

沙織「『4強』って?」

 

華「サンダース付属の他にも強豪があるのですか?」

 

首を傾げる武部と五十鈴、冷泉はケーキの方が重要なのかあまり興味無さげだが説明する。

 

八幡「まぁ“4強”って言うのは、五十鈴の言うとおり優勝候補達だな。

M4シャーマン戦車を大量に使ってアメリカ軍宜しくな物量戦で正面戦術を駆使する『サンダース大学付属高校』。

重装甲の戦車を使った浸透強襲戦術でじわじわと侵攻して相手を撃破するのを得意とする、この間練習試合をやった『聖グロリアーナ女学院』。

ソビエト製の戦車を使い局地戦を得意とする去年の優勝校『プラウダ高校』。

そして言わずもがな、去年は悪天候のせいで優勝を逃したが、実力的には優勝候補No.1と言える『黒森峰女学園』。

まぁ概ねこの辺りが優勝候補の“4強”と呼ばれる戦車道高校だな」

 

優花里「(キラキラキラキラキラキラキラキラ)」

 

八幡「ん? なんだ秋山??」

 

何で俺をそんなキラキラした目で見つめるんだ?

 

優花里「凄いです比企谷殿! 待っている間に優勝候補の高校の事を調べていただなんて、マネージャーの鑑です!」

 

まぁ何度か“仕事”の打ち合わせで行った事有るからな。

 

優花里「サンダース付属は凄いリッチな学校で、戦車の保有台数が全国一なんです! チーム数も一軍から三軍まで有って」

 

安定「うわっ、物量戦で来られたら負け確定だね・・・・」

 

清光「“数は力”とは良く言ったもんだね・・・・」

 

みほ「でも、公式戦の一回戦は“戦車の数は10両まで”って限定されているから、砲弾の総数も決まっているし」

 

沙織「でも“10両”って、ウチの倍じゃん! それは勝てないんじゃ・・・・」

 

みほ「・・・・・・・・」

 

麻子「単位は・・・・?」

 

沙織「負けたら貰えないんじゃない?」

 

麻子「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

オイ冷泉が無表情でケーキをフォークで突き刺したぞ、何か猟奇的な雰囲気を感じたのは俺だけか?

 

沙織「それより、全国大会ってTV中継されるんでしょ? ファンレターとか来ちゃったらどうしよ~♪」

 

清光「沙織ちゃんって本当にブレないな・・・・」

 

安定「ある意味尊敬しちゃうよ・・・・」

 

華「それに生中継は決勝だけですよ」

 

沙織「じゃ、決勝行けるよう頑張ろう!」

 

暢気言ってるように見えるが、お陰で少し重くなっていた空気が和らいだ。武部って本当にムードメーカーの素質が有るな・・・・・・・・何でモテないのだろう?

 

???「副隊長・・・・?」

 

みほ「っ!」

 

ん? 聞いたことが無い声が聴こえたが?? ちょっと目を向けると、『黒森峰女学園』の軍服を着た二人の女子がいた。一人は西住に良く似た顔立ちの女子と、灰色の長髪をした気の強そうな女子だ。

 

???「あぁ、“元”でしたね」

 

長髪の女子が含みの有る上に棘の有る言葉を出して小馬鹿にした態度を取っていた。

 

???「・・・・・・・・」

 

みほ「お姉ちゃん・・・・」

 

沙・華・優・麻『あっ・・・・!』

 

西住の姉にして現黒森峰戦車道チームの戦車長、西住流戦車道正当後継者、『西住まほ』か。何度か“仕事”で黒森峰に赴いた時に会った事がある。

 

まほ「まだ戦車道をやっているとは思わなかった」

 

みほ「・・・・・・・・・・・・」

 

優花里「お言葉ですが! “あの試合”での、みほさんの判断は間違ってませんでした!」

 

???「部外者は口を挟まないでほしいわね」

 

優花里「・・・・スミマセン」

 

西住を庇おうとして秋山が立ち上がったが、西住姉の隣にいた女子に一喝されて引っ込む。おい秋山負けるなよ・・・・。

 

八幡「(ボソボソ)所で西住まほさんの隣にいるの誰?」

 

清光「(スマホで調べ)『逸見エリカ』、黒森峰女学園の二年生で現戦車道副隊長。彼女の前は西住ちゃんが副隊長だったようだよ」

 

なるほど、西住への辛辣な態度はそういう事か。

 

まほ「行こう」

 

エリカ「はい、隊長」

 

去ろうとする黒森峰隊長と副隊長、すると副隊長さんが西住達に目を向ける。

 

エリカ「一回戦はサンダース付属と当たるんでしょ? 無様な戦い方をして、西住流の名を汚さない事ね」

 

みほ「あっ・・・・」

 

清光・安定「「・・・・・・・・・・・・」」

 

オイオイ、清と安の目付きが鋭くなったぞ、あまりにも高圧的副隊長さんに武部と五十鈴も立ち上がる。

 

沙織「何よその言い方!!」

 

華「あまりにも失礼じゃ・・・・!」

 

エリカ「貴女達こそ戦車道に対して失礼じゃない? 無銘校の癖に。この大会はね、戦車道のイメージダウンになるような学校は、参加しないのが“暗黙のルール”よ」

 

んなルールが有ったのか? 今度“茶会でじいさん”に聴いてみよう。

 

麻子「『強豪校が有利になるように、示し合わせて作った暗黙のルール』とやらで負けたら恥ずかしいな」

 

エリカ「っ!」

 

まほ「・・・・・・・・・・・・」

 

お~お~、冷泉のクールな言葉に現副隊長さんの目付きが不快そうになったわ。それにしても・・・・。

 

八幡「さっきからケーキが不味くなるんですけど? 『繰り上げ副隊長さん』」

 

エリカ「(ピクッ!)何ですって?」

 

みほ「比企谷くん?」

 

まほ「っ!?・・・・・・・・」

 

みほ「お姉ちゃん・・・・?(何で比企谷くんを見てあんなに驚いているんだろう??)」

 

八幡「ここはケーキを楽しむ喫茶店だぞ? そんな所で聴くに絶えない嫌みのオンパレードを聞かされて、こっちの気分が悪くなったじゃねぇか」

 

エリカ「何貴方は? 関係無いでしょう?」

 

八幡「“関係無い”って事は無いな、俺はそこの西住さん達のクラスメート兼戦車道マネージャーなんでね」

 

まほ「っっ!!??・・・・・・・・」

 

何か西住姉がさっきから無表情に俺を見ているが、ここは無視しよう。

 

エリカ「“マネージャー”? フン、無銘校は人手不足なのね、男を戦車道に関わらせるだなんて、とんだお笑いだわ!」

 

清光「聞いた安定? “男が戦車道に関わるのはお笑い”だってさ」

 

安定「今の時代、男子バスケや男子サッカーには異姓のマネージャーがいるのは不思議じゃないのに、戦車道では男子マネージャーがいるのは変な事なのかなぁ?」

 

清光「古い考えだよねぇ~、何そのカビの生えた男女差別。黒森峰の『成り上がり副隊長さん』は頭が戦車の装甲位に固いのか、それとも錆だらけの廃れた脳ミソなんじゃないの??」

 

エリカ「(ピクピクピクピクピクピク!!)」

 

わお、清と安の挑発に副隊長さんのコメカミがピクピクとしている。こんな“挑発”に簡単に釣れるとは。

 

エリカ「さっきから言っている『繰り上げ副隊長』とか『成り上がり副隊長』ってどういう意味かしら?」

 

八幡「あん? 西住がいなくなったお陰で空席になった副隊長の椅子に座ることができた『ラッキー副隊長さん』に変えてやろうか? 良かったな、苦もなく重役ポジションに座れて超マジラッキーだったな」

 

エリカ「ッ! 何ですって!!」

 

まほ「やめろエリカ」

 

エリカ「ですが隊長!」

 

俺に掴み掛かろうとした副隊長さんを西住姉が止めた。良かったなラッキー副隊長さん、西住姉が止めなかったら“逆手に持ったフォークを潜ませた”清光と安定にどんな目に合わされていた事か・・・・。

 

まほ「私は君の能力を見込んで副隊長を任せた。自分を信じろ」

 

エリカ「隊長・・・・はい!」

 

チッ、流石のカリスマ性だな西住まほさん。すると西住まほさんが俺のいる席に近づき。

 

まほ「(ペコッ)我が隊の副隊長の態度で、不愉快な想いをさせてしまい、大変申し訳ありません」

 

みほ「っっ!!??」

 

沙・華・優「「「っっ!!??」」」

 

エリカ「っっっっ!!!???」

 

麻子「・・・・・・・・・・・・」

 

西住や武部達が驚き、副隊長さんに至っては“信じられないモノ”を見てしまったような驚愕した様相を浮かべた。まぁ『黒森峰戦車道隊長が一般の男子に頭を下げた』だなんて、事情を知らない人間から言わせれば驚くのは当然か、冷泉は黙々とケーキを頬張っていたが。俺も立ち上がって西住姉と対面する。

 

八幡「別に気にしませんよ。でも『戦車道は礼に始まり、礼に終わる』と言うなら、公共の場での礼を失した態度と言動は、改めさせて下さいね」

 

まほ「はい、以後気を付けさせます」

 

八幡「後、妹さんの言葉にちゃんと耳を傾けてくださいね」

 

まほ「・・・・・・・・・・・・」

 

八幡「西住」

 

みほ「えっ?」

 

八幡「“あの時の事”、ちゃんと姉ちゃんに伝えろよ」

 

西住が立ち上がり、姉に向かって顔を上げる。

 

みほ「・・・・お姉ちゃん」

 

まほ「みほ・・・・」

 

みほ「私、あの時の事、後悔していないよ」

 

まほ「・・・・・・・・・・・・」

 

みほ「あの時、みんなの事を見捨てていたら、きっと私は今よりも後悔していたと思うから・・・・だから私、後悔していないよ!」

 

まほ「・・・・そうか、分かった。エリカ、行くぞ」

 

エリカ「えっ!? あっ! えぇ!? は、はい!」

 

そう言って西住姉は茫然自失していた副隊長さんを連れて去っていった。さて、西住姉さんにメールを打っておこう。

 

沙織「ハッ! ちょっと比企谷! なんだったのアレ!?」

 

八幡「アレとは?」

 

優花里「西住殿のお姉さんが頭を下げた事ですよ!」

 

八幡「公共の場で無礼な態度を取った後輩の非礼を詫びただけだろ?」

 

華「確かに失礼な態度を取っていましたものね」

 

麻子「後輩の尻拭いをしたと言う訳か・・・・」

 

みほ「でも比企谷くん、逸見さんにあんな言い方は無いと思うよ、逸見さんが副隊長になれたのは・・・・」

 

八幡「そんな事分かっている。ラッキーとか繰り上げでなれるほど、王者黒森峰の副隊長の地位は簡単じゃないってことくらいはな」

 

みほ「それじゃどうして?」

 

八幡「別に、あの副隊長の“逸木”さんの態度にムカッとしただけだ」

 

みほ「比企谷くん、“逸見”さんだよ・・・・」

 

八幡「それに西住、お前だってあんな高圧的な言い方されて少しは反抗しろよ、あの手のヤツは会話で抵抗しないと付け上がるぞ」

 

みほ「私は、別に気にしないから」

 

清光「西住ちゃんが良くても、八さんや沙織ちゃん達、それに俺や安定が許さないよ」

 

安定「あんな言い方されて凄い腹が立つ」

 

沙織「そうだよ! みほ!」

 

麻子「だが比企谷さん達の言い分であの副隊長が殴りかかりそうな雰囲気だったぞ?」

 

優花里「そうなったら、大会出場が・・・・!」

 

八幡「まぁ向こうの隊長さんが止めたし、それにもしも殴りかかってきたら、清と安がちゃんと止めてくれるからな」

 

清光「勿論だよ八さん」

 

安定「任せておいて」

 

華「加藤さんと山本さんは何故フォークを逆手に構えているのでしょう?」

 

みほ(逸見さん、もしかしたら命拾いしたかも・・・・)

 

 

 

ーまほsideー

 

エリカ「た、隊長・・・・私のせいで隊長にとんだ恥を・・・・!」

 

まほ「気にしなくて良い」

 

エリカ「しかし! 隊長があんな一般生徒と!」

 

まほ「彼とは以前から面識が有る」

 

エリカ「えっ!? め、面識って何時からですか!?」

 

まほ「去年の、冬の初めくらいだったな」

 

エリカ「去年から・・・・」

 

まほ「あぁ、今度エリカにも改めて紹介する」

 

エリカ(隊長とどういう関係なのか、根掘り葉掘り聞いてやるッ!!)

 

まほ(みほのあの様子から見ると、彼の、比企谷提督の事を知っているのだろうか?)




能代、矢矧、酒匂、大典田、ソハヤのカップリングをお楽しみに。

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