やはり俺が“とある本丸鎮守府”の審神者兼提督で戦車道までやるとか多忙過ぎるだろう 作:BREAKERZ
ー本丸鎮守府・海岸ー
本丸鎮守府の海岸に佇む美しい二人の艦娘。
真っ白い肌に美しい黒い長髪と緋色の瞳に儚げな雰囲気をした、提督である比企谷八幡より少し年上の容姿をし、改造巫女服を着た艦娘『扶桑型一番艦 扶桑』。
姉の扶桑と同じ容姿と緋色の瞳と巫女服だが、髪型がボブカットにされた『扶桑型二番艦 山城』。
扶桑・山城「「・・・・・・・・・・・・・・」」
蒼龍「扶桑さん、山城さん・・・・?」
扶桑「あぁ、蒼龍さん・・・・」
山城「貴女も心配して・・・・?」
二人に近づいたのは、青みがかった瞳と髪を短いツインテールにし、緑色の着物に暗緑色のミニスカート風の袴を着た艦娘『蒼龍型一番艦正規空母 蒼龍』。
蒼龍「えぇ、左文字兄弟の皆さんが無事に帰って来てくれる事を祈りにきて・・・・」
扶桑「そうですか、では少し海を眺めていましょう・・・・」
大洗に向かった左文字兄弟の安否を案じる三人。
扶桑(お小夜・・・・)
山城(宗三さま・・・・)
蒼龍(江雪さま・・・・)
ー大洗学園・戦車倉庫前ー
『太刀 江雪左文字』。戦う事を忌み悲しんで“和睦の道”を求める刀剣男士。しかし一度戦場に立てば勇ましく戦い刀剣男子として“使命”を蔑ろにしない覚悟を持った戦士だ。
『打刀 宗三左文字』。長谷部や薬研と同じく第六天魔王 織田信長の刀剣だった。だが刀剣として使われる事が無く、籠の鳥状態だった刀剣男士。
『短刀 小夜左文字』。山賊に前の主の女性を殺すのに使われ、その主の息子が山賊に復讐する際に使われ、紆余曲折を得て足利将軍家の支流の武家細川家に使えた刀剣男士。
会長からの見学者の許可で戦車を見に来た三振りの内、江雪と宗三は女子生徒達に囲まれていた。
武部「あの! お二人は清くんイヤ、加藤くん達と同じ剣道道場の門下生なんですよね!?」
江雪「そうですよ」
佐衛門佐「では、お二人も剣術を嗜んでおられるのか!?」
宗三「えぇ」
あや「江雪さん、髪キレイですね!」
江雪「ありがとうございます」
近藤「宗三さんは目の色が左右違うんですね?」
宗三「はい、オッドアイですよ」
流石は江雪と宗三、キャイキャイ迫る女子達を軽くあしらってやがる。
みほ「あの、比企谷くん」
八幡「ん? なんだ西住?」
みほ「その子・・・・」
俺の後ろを指差す西住の指先を辿ると、いつの間にか“お小夜”が俺の後ろに隠れていた。
八幡「お小夜・・・・?」
小夜「・・・・・・・・・・・・」
どうやら知らない人ばかりでどう接したら良いか分からず、戸惑っているな。元々お小夜はあんまり人と接したり話したりするのが苦手な『コミュ障ぼっち』だからな。兄の江雪や宗三以外だと同じく細川家に使えていた“歌仙兼定”くらいにしか心を許していないからな・・・・仕方ない。
八幡「お小夜・・・・」
小夜「ある・・・・・・・八さん」
おぉ、お小夜に“八さん”って呼ばれるなんてなんか新鮮で良いなぁ。なんて感慨に耽るのは置いておいて、腰を落としてお小夜の目線に合わせ、お小夜の頭を撫でる。
八幡「(小夜の頭を撫でながら)大丈夫だお小夜。西住達はいきなり吠えたり噛みついたりしないからな」
角谷「比企谷ちゃ~ん、まるで私達を猛犬の集団みたいに言わないでくれるかな~?」
根気よく躾れば大人しくなる猛犬よりも質が悪そうな会長の戯れ言を華麗にスルー。安定もお小夜に近づく。
安定「大丈夫だよ、みんな本当に良い子達ばかりだから、ね」
お小夜「うん・・・・」
ようやく俺の後ろから出たお小夜に会長が近づく。会長が背丈で相手を見下ろすなんて珍しい光景だな。
角谷「やぁやぁ、“お小夜くん”でいいかな?」
小夜「・・・・・・・・・・・・」
清光「会長。“お小夜”って言うのは、小夜が呼んで良いって言った相手だけが呼べる名前なんですよ」
角谷「そっかゴメンね。じゃ“小夜くん”で良い?」
小夜「(コクン)・・・・」
角谷「それじゃお近づきの印にこれどうぞ♪」
会長がお小夜に向けて干し芋を渡した。ウチの会長って暇さえあれば干し芋を頬張っているよな。
小夜「(戸惑い)・・・・・・・」
八・江・宗「「「(コクン・・・)」」」
お小夜は干し芋を見て戸惑いながら、俺と江雪達を見る。俺も江雪達もにこやかに頷くと、お小夜は会長から干し芋を貰った。
小夜「ありがとう、ございます・・・・」
角谷「うんうん、戦車を見るの初めて?」
小夜「はい・・・・」
角谷「それじゃ今日は戦車を動かしたりするから楽しんでね♪ あぁ勿論お兄さん達もね♪」
江雪「はい」
宗三「楽しみにしております」
角谷「イヤ~それにしても、“細目”の江雪さん、“オッドアイ”の宗三さん、“三白眼”の小夜くん、“つり目”の加藤ちゃん、“タレ目”の山本ちゃん、“腐眼”の比企谷ちゃん。見事に特徴的な目の形をした人達が揃ったね~♪」
確かに特徴的な目ですね、しかもみんな生まれつきこの目ですから。アーイ、バッチリミナ~♪
角谷「西住ちゃん、小夜くん達に戦車とか見せてあげて」
みほ「えっ? 私?」
小夜「その、宜しくお願いします・・・・」(ペコ)
みほ「あっ、イエ、こちらこそ・・・・」(ペコ)
河嶋「お前達、教官が見えておるのだぞ」
蝶野「えっ? あ、えっ??」
しかし、蝶野教官自身はようやく俺<本丸鎮守府提督>がいたショックから立ち直っていた。
小山「あの、蝶野教官?」
蝶野「あぁ、少し位ならOKよ! 色々な人達に戦車を知ってもらうのは良いことだわ!」
教官から許可を貰い、西住達は自分たちの戦車を左文字兄弟に見せていった。みんなから少し離れた俺に蝶野教官が近づき耳打ちをする。
蝶野「(ボソボソ)少しお話が有ります・・・」
八幡「(ボソボソ)ここでは何ですから向こうで」
西住達が戦車を物珍しそうに眺める江雪と宗三、キラキラとした瞳で戦車を見つめるお小夜に気を取られている内に、俺と蝶野教官は倉庫の裏手に回った。
みほ「あれっ? 比企谷くん??」
清光「どうしたの西住ちゃん?」
みほ「えっと、比企谷くんがどこかに・・・。それに教官も・・・」
安定「あぁ八さんと教官、厠にでもいったんじゃないかな? それよりもさ、小夜達にどういう戦車なのか教えてあげようよ♪」
みほ「う、うん・・・」
ー戦車倉庫・裏手ー
蝶野「色々質問がありますが、何故貴方がここに?」
八幡「さっきも言ったでしょう。俺は“大洗学園の生徒”だと・・・」
蝶野「貴方が学生である事は知っていましたが、まさかこの学園に在籍していただなんて・・・」
ハァとため息をついた蝶野1尉は、頭を抑えるように手を置いた。まぁ“初めて戦車道を始める素人チームの教官として赴いたら、本丸鎮守府の提督がいた!”だなんて、どこの三流バラエティー番組の企画なんだよって思いたくもなるわな。
八幡「この学園にいる間は、俺の事は“1生徒として”接してください。勿論、鎮守府の事は伏せておいてください」
蝶野「了解しました。軍の方でも貴方が提督である事は1尉以上の階級を持った人間しか知らない事ですし、各学園艦の学園長や責任者、それに一部の生徒達<生徒会や戦車道の隊長クラス>しか知り得ない情報ですからね」
その情報統制に“穴”が有ると思うのは俺だけでしょうかね?
八幡「では宜しく頼みますよ。後、敬語は不要ですからね、『蝶野教官』」
蝶野「了解しま・・・イエ分かったわ、『比企谷くん』」
◯
俺と『蝶野教官』は西住達の方へ戻っていき、再び整列する西住達と俺達の後ろに左文字兄弟が並んだ。
秋山「(挙手する)教官! 本日はどのような練習を行うのでしょうか!?」
蝶野「そうね! 『本格戦闘の練習試合』、さっそくやってみましょう!」
ざわざわ、ざわざわ・・・・
小山「えっ?! あの、いきなりですか!?」
蝶野「大丈夫よ! 何事も実戦実戦♪」
なんてアバウトな・・・・あ、まさかこの人、山伏と同じ体育会系か? あ、そういや山伏と言えば、この間数珠丸達と修行に出て“デートをすっぽかした”って吹雪から聞いたな。
ー本丸鎮守府・鎮守府教室ー
睦月「(ヒソヒソ)ねぇ如月ちゃん。足柄さん、ここのところ何か不機嫌じゃないかな?」
如月「(ヒソヒソ)この間山伏さんとのデート、すっぽかされたらしいわよ「ズガンッ!」キャウンッ!」
如月の頭にチョークが命中して椅子から倒れる。
足柄「な~にを無駄話をしているのかしら~? 如月~~睦月~??」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!
如月「(すぐに立ち上がり敬礼)イエ!何でも有りません!!」
睦月「(同じく立ち上がり敬礼する)授業中に大変失礼したしました!」
他の艦娘達もビクビクしながら授業を受けた。
ー八幡sideー
『妙高型三番艦重巡洋艦 足柄』。“飢えた狼”と異名を持つ戦闘狂であったが、容姿で言えば黒髪ロングで、攻撃的なスレンダーボディ(出るところはちゃんとふくやかに出ている)の大人の女性。最近は“嫁ぎ遅れ”を気にする艦娘の先生役。そして山伏国広と善い仲の関係なのだが、あの修行バカの山伏が相手だから中々進展しないようだ。
しかし・・・『先生』、『黒髪ロング』、『ナイスバティ』、『男前な性格』、『嫁ぎ遅れ』。この単語を並べると、なぜか俺は足柄を放っておけ無く、何度か山伏との仲の進展を手伝っている・・・・ホントに何故だろうか? なんて考えていると蝶野教官が話を続けた。
蝶野「戦車なんてバァーと動かして、ダァーと操作してドォーンと撃てば良いんだから!」
八幡(オイ、教導隊! なんでこんなアバウトどころか感覚系人間を教官にしやがった!?)
後で直訴してやる!と心の中で決めていると、蝶野教官は地図を拡げた。
蝶野「それじゃ、それぞれのスタート地点に向かってね」
そして戦車道チームは各々の戦車に向かう。
清光「(ボソボソ)八さん、大丈夫かなこれ?」
安定「(ボソボソ)何か嫌な予感がする・・・・」
江雪「実戦形式で修行とは、中々思いきりましたね」
宗三「初めて戦車に乗る少女達は操作できるでしょうか?」
小夜「(干し芋を頬張る)ムグムグムグムグ」
清光達の声を聞きながら、俺は先ずDチーム(一年生)を見る。
優季「ど~やって動かすのこれぇ?」
桂里奈「知ってそうな友達に聞いてみよっか?」
あや「ネットで聞いた方が早いんじゃない?」
・・・・・・・・・・・・Bチーム(バレー部チーム)。
典子「ここで頑張ればバレー部は復活する! あの廃部を告知された屈辱を忘れるな!! ファイトォォ」
バレー部『オォーーーーーーッ!!』
・・・・・・・・・・・・Cチーム(歴女チーム)。
左衛門佐「初陣だーーーーーー!」
おりょう「“車懸りの陣”でいきますかねぇ・・・」
エルヴィン「ここは“パンツァーカイル”で」
カエサル「1両しかないじゃん・・・」
あぁうん、駄目だわこりゃ。もう不安しかない・・・。
蝶野「はい! みんな早く乗り込んで!!」
パンパンと手を叩いて急かす蝶野教官。
河嶋「我々も乗り込みますか?」
角谷「うん・・・・あっ、そうだ」
小山「会長??」
なんだ? なんで会長は俺に近づいてきてんだ?
角谷「比企谷ちゃん、一緒に乗ろう♪」
・・・・・・・・・・・・はい?
八幡「カイチョウ、イッタイナニヲイッテンスカ・・・・?」
ついに頭が沸いたんですか? だったら今すぐ戦車になんて乗らずに救急車に乗ってください、付き添いますよ。ついでにサボりますから。
角谷「どうせ見てても暇でしょう? だったら一緒に乗れば良いじゃん♪」
八幡「あのですね、俺は男ですよ。戦車道は乙女の武術なんですよ・・・」
角谷「練習なんだからそんなに固く考えなくても良いんだよ♪」
八幡「イヤでもですね。教官さんも・・・・」
蝶野「構わないわよ♪」
うおぉい蝶野1尉! 学園長のフェラーリ潰したこと、上層部に報告してやろうかっ!?
角谷「ささ、教官からの許可も貰ったし、比企谷ちゃんも乗ろう乗ろう♪」
いつの間にか俺の首根っこ掴んだ会長に引きずられる。えっ? まさかの拒否権認メズ?
清光「八さんしっかりね~~♪」
安定「頑張ってね~~♪」
江雪「(祈り手を作り)ご武運を・・・・」
宗三「僕達はここでしっかり見守っていますよ」
小夜「気をつけて・・・・」
八幡「お前らまで何言ってンだ助けろよ! 清光! 安定! 江雪! 宗三! オイお小夜!!」
お助け~~!と手を伸ばし、助けを求める俺の声は空しく響いた。
◯
小山「ホントにゴメンね比企谷くん・・・・」
八幡「もういいです、もう諦めました・・・」
流石は気遣い上手の小山先輩。その優しさに思わず涙が出てきますわ。ついでにその豊満な胸部に泣きついてもいいですか? いやセクハラではなく、純粋に泣きつきたいんです・・・・。
角谷「ウンウン、人間諦めが肝心だよ比企谷ちゃん。かーしまー」
河嶋「はっ!」
河嶋先輩が四つん這いになり、それを台にして会長が戦車に乗り込む。オイオイいくら会長の背丈じゃ戦車にあがれないからって河嶋先輩身体張りすぎだろう。
小山「しかし、いきなり試合なんて大丈夫ですか?」
河嶋「比企谷・・・」
八幡「言っときますけど、俺は戦車に乗ってる置物にしておいて下さいよ」
小山「(ヒソヒソ)でも比企谷くんが指揮とかしてくれたらこっちも助かるんだけど・・・」
八幡「(ヒソヒソ)俺は提督になってまだ半年位しか経ってない“新米”ですよ。しかも勝手が違う戦車の指揮なんてできません」
角谷「まぁどうにかなるから♪」
乗り込もうとする会長を尻目に、俺は倉庫に置かれていた“モノ”を見つける。まだ使えるな、一応念のために持っていくか・・・。そして各チームが戦車に乗り、蝶野教官が指示を飛ばす。
蝶野「じゃ、各チームそれぞれ役割を決めてくれる? 三名のチームは、“車長”と“砲手”、“操縦手”。4名はそれに加え、“装填手”。5名は“通信手”ね!」
と言う事は生徒会チームは4名だから“車長”と“砲手”と“操縦手”と“装填手”ですか・・・。
角谷「んじゃが河嶋が“砲手”で、小山が“操縦手”、私は“車長”兼“通信手”でもやろうか」
河嶋「会長、では比企谷は?」
角谷「んー、“装填手”でもやってもらおうかな? どうかな比企谷ちゃん」
比企谷「了解しましたよ・・・」
小山「比企谷くん、本当にゴメンね・・・・」
八幡「俺の事よりも、小山先輩はマニュアルを読んでおいて下さい」
もはや投げやりな俺に西住が話しかける。
みほ「比企谷くんも大変だね・・・」
八幡「おう西住、いやもう悟りの境地に入りそうだ。そっちは誰が役割やるか決めたか?」
みほ「うん、沙織さんが車長で、華さんが操縦手、秋山さんが砲手で、私は装填手」
八幡「そうか、まぁ西住・・・・」
みほ「ん?」
八幡「こんな事言われても仕方ないとは思うが、気楽にやれよ」
みほ「うん、ありがとう」
乗り込んでは見たものの、狭いし暑苦しい、しかも近くに女子がいるから動いて密着しそうで気が気でない。
蝶野《それでは、全戦車、パンツァーフォー!!》
とは言われたが、マニュアルを読み終えた小山先輩がたどたどしく操縦して発進した。
◯
小夜「(キラキラ)兄さま、戦車が動いています・・・!」
江雪「これほど大きく、力強そうな車が女性の手で動くとは、時代の流れを感じますね」
宗三「本来は戦の道具を競技にするとは、これも人の業でしょうね」
安定「見送ったけど、清光良かったの? 主を行かせて?」
清光「ま、大丈夫でしょ。主もやる気になればやる気になるだろうし」
蝶野「貴方達」
清光「何ですか?」
蝶野「戦車の活躍を見たいなら見晴らし良いところに行きましょう」
刀剣一同『コクン』
◯
河嶋「会長、快調に進んでいます」
角谷「(干し芋頬張り)座布団1枚!」
小山「(おそるおそる操縦に集中)」
八幡(ガタガタ揺れてケツが痛い・・・・)
そしてようやくスタート地点に到着した。
小山「はぁ・・・・」
八幡「お疲れ様です、小山先輩」
小山「ありがとうね、比企谷くん」
本当にこの人は苦労性だな・・・・。
蝶野《みんな、スタート地点に付いたようね! ルールは簡単、“全ての車両を動けなくするだけ”。つまり、ガンガン前進して、バンバン撃って、やっつければ良いだけ! わかった?》
角谷「イヤ~随分ザックリっすね♪」
八幡&小山「「会長に言われたくないんじゃ(ないですか)・・・?」」
思わず小山先輩とハモってツッコミを入れてしまったが、ザックリと言うかアバウトと言うか・・・。
蝶野《戦車道は礼に始まって、礼に終わるの。一同、礼!》
生徒会&八幡『宜しくお願いします!』
蝶野《それでは、試合開始!》
蝶野教官の号令で試合が始まった。さてはてどうなる事やら。
角谷「比企谷ちゃん? 作戦は?」
八幡「・・・・ノーコメント」
小山「比企谷くん・・・・」
八幡「俺はあくまでマネージャーです。現場の戦車の行動は現場に任せますよ」
河嶋「(小さく挙手)では会長、ここは取り敢えず前進して周囲を散策しながら西住が乗るⅣ号車を探す事を提案します」
角谷「うん、それじゃそれで良いかぁ」
まぁ妥当だな、他チームを地図でこちらが要る地点はバレているのだから動いた方が良い。
八幡(西住達が要る地点の近くに大きな橋が有るな、それに見晴らしも良い。一応拾ったモノを用意しておくか・・・)
~数分後~
河嶋「回り込めぇ!!」
いつの間にか俺達Eチームと他の三両は西住達のいるⅣ号を潰しに向かっていた。ついでに俺達の後ろをDチーム(一年生チーム)が付いてきた。
八幡(経験者であり家元である西住を先に潰したいと考えるのは当然だが、ただ闇雲に向かっていって勝てるかねぇ?)
すると、橋の上で立ち往生しているⅣ号車を見つけた。その後方に三突<バレー部>と八九式<歴女>がいたから多分あの2両に追いたてられてここに来てしまったって所か・・・。
八幡(さて、逃げ場の無い橋の上でどう切り抜ける? 西住みほ・・・?)
そして事態は以外な展開を見せた。Ⅳ号車の動きがまるで違っていた。たどたどしさがなく、まるで熟練者のような動きだ。五十鈴にあんな才能が有ったのか?
ー清光sideー
清光「流れが変わったね」
安定「うん、なんか西住さん達の動きがよくなった」
清光と安定、そして左文字兄弟も、双眼鏡で眺めながら、試合の流れが変わった事を感じていた。
ー八幡sideー
それからはあっという間に戦況が変わった。まずCチームがⅣ号車から放たれた砲弾でやられ、行動不能の旗が上がったのを皮切りに、Bチームが撃破された。
河嶋「フッフッフッここがお前らの死に場所だ!」
危ない笑みを浮かべた河嶋先輩が小物感溢れるセリフを吐いて引き金を引こうとした・・・・嫌な予感。
八幡「小山先輩バックッ!!」
小山「は、はい!」
怒鳴り声をあげた俺に驚いた小山先輩が急いでバックすると、こちらが放った砲弾は全く的外れな所に飛び、西住達の砲弾はギリギリかすった。
八幡「小山先輩、このまま距離を空けて下さい」
河嶋「オイ比企谷! 勝手に指示を「少し静かにしてください河嶋先輩(ゴォウッ!)」(ビクッ!) はい! 失礼いたしました!!」
小山「桃ちゃん、今の比企谷くんには逆らわない方が良いよ・・・・」
河嶋「(ガタガタガタガタ)も、桃ちゃんと呼ぶな・・・・!」
角谷(おぉ~、比企谷ちゃん“司令官モード発動”♪)
俺は横でガタガタ震える河嶋先輩を無視して、少し指を舐めて湿らせ、風の流れをみる。
ボォンッ!
その間、俺達の後方にいたDチームが砲撃を受けていないのに何故か旗が上がり退場していた。後で知ったが西住流にビビって逃げようとしたが、泥濘に転輪が捕まり、無理に動かそうとしてキャタピラが切れて、オーバーヒートして自爆したらしい。
八幡「・・・・・・・・・・・・」
風の流れを見た俺は持ってきたモノを取り出す。
角谷「比企谷ちゃんなにそれ? “発煙筒”??」
蝶野《DチームM3! Cチーム三号突撃砲! B八九式! 行動不能!》
八幡「(発煙筒に火を付けようとする) 小山先輩、俺が“これ”を投げたら、西住達の方に突っ込んで下さい」
小山「えっ、うん・・・・」
さて西住、何しろ俺は“素人”なんでね、ズルい手を使わせて貰う・・・!
ーみほsideー
みほ「ん? 比企谷くん??」
優花里が次の攻撃を発射しようとしているのを確認したみほは三八tを見ると、比企谷がⅣ号車に向けて“何か”を投げ、それはⅣ号車の車体に当たり足元に落ちる。するとーーーーーー。
プッシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ・・・・。
なんと大量の煙が巻き上がった!
沙織「えっ!? なにこれ?!」
優花里「これって、発煙筒の煙ですか?!」
華「煙が窓から・・・・ケホッケホッ・・・・!」
麻子「ケムイ・・・・」
巻き上がった煙は戦車のスリットから中に入り込み、西住達の視界を塞ぐ。
みほ(八幡くんの狙いって・・・まさか?!)
西住は八幡の思惑を察した。
みほ「急いで橋から脱出を・・・!」
グワシャンッ!!
指示を出そうとした西住達の戦車に何かがぶつかり、大きく揺れた。
みほ「まさか!?」
みほが外に顔を出すと、目の前に三八tがいた。どうやらコチラが煙に慌てている間に接近していたようだ。三八tから目の腐った男子、比企谷八幡が顔を出す。
みほ「比企谷くん・・・・!」
ー八幡sideー
八幡「よぉ西住、煙に巻かれた気分はどうだ?」
みほ「比企谷くん、戦場道では発煙筒は使わないよ」
あらそうなの? やだわ~そんな事全然知らなかった~(すっとぼけ)。
八幡「そうなのか、んでどうする? 何しろこちとらの砲手はノーコンだからこんな0距離まで接線したんだがな」
河嶋「誰がノーコンだっ!?」
足元の先輩は無視。
八幡「流石にこの局面で勝ちに行くか?」
みほ「・・・・・・・・・・・・・・・・」
西住が少し迷いがちに目を伏せるが、すぐに顔を上げる。
みほ「コチラも砲撃はすぐに出来るよ」
八幡「それじゃ試してみるか? 秋山と河嶋先輩、どっちの引き金が早いか。西部劇みたいな早撃ち勝負でもするか?」
俺の言葉に西住は手を上げる。
みほ「比企谷くん、私から提案が有るんだけど・・・」
八幡「それは俺と同じかもな。よし、同時に言うぞ」
西住が頷くのを確認した俺は西住と声を重ねる。
八・み「「引き分けにしないか?(かな?)」」
全く同じセリフを吐いた俺達はフッと笑う、どうやら交渉成立のようだ。一応会長達にも聞いておく。
八幡「会長、そう言う事になりました」
角谷「うん良いよ~」
会長は快く了承し、小山先輩も了承、河嶋先輩は不満気だが会長が了承したから渋々了承。西住の方を見るとアチラも了承したようだ。
八幡「(通信機を取る)蝶野教官、と言う事になりました」
蝶野《了解よ。それじゃこの試合は、AチームとEチームの引き分け! 回収班を派遣するので、行動不能の戦車はその場に置いてきて》
蝶野教官との通信を切ると、Ⅳ号車から武部達が出てくる。
沙織「もう! 比企谷ズッコイよ!」
華「いつの間に発煙筒を持ってきたのですか?」
優花里「(目をキラキラ)発煙筒を使って撹乱させて突撃だなんて、意表を突かれましたよ比企谷殿!!」
麻子「ケムかった・・・」
八幡「悪い悪い。つか、何でここに冷泉がいるんだ?」
Ⅳ号車から今朝会った小柄の黒髪女子である冷泉麻子が降りてきた。
沙織「えっ? 比企谷、麻子の事知ってるの??」
八幡「今朝死にかけながら登校しようとしていたからおぶってやったんだよ」
沙織「もう麻子! 人に迷惑掛けちゃダメでしょ!」
麻子「悪かったと思っている・・・」
八幡「武部は冷泉と知り合いなのか? つか何で冷泉が要るんだよ?」
沙織「麻子とは幼なじみなの。それで麻子ってば授業サボってお昼寝していたから私達の方で保護して、砲撃で気絶した華の代わりに操縦手をやっててくれたの」
今朝の女子が知り合いの幼なじみって、世間とは狭いね~。しかしなるほど、途中でⅣ号車の動きが良くなったのはそう言う事か・・・ん?
八幡「ちょっと待て。戦車の運転が出来るって、冷泉は戦車道経験者なのか?」
優花里「冷泉殿はマニュアルを読んで直ぐに操縦をモノにしたんですよ!」
沙織「麻子は学年首席だからね~」
マジかよ、そういえば園先輩も“成績優秀”って言ってたな。人は見かけによらないとはまさにこの事・・・! ん? お前が言うなって? 失礼な・・・。
ー角谷sideー
八幡が西住達と談笑している間、三八tの生徒会はーーーーーー。
河嶋「フッ、やはり彼女と比企谷に戦車道を受講させたのは正しかった」
角谷「作戦通りだね♪」
小山「これで上手く行くと良いですけど・・・」
ー八幡sideー
清光「八さん、お帰り~」
安定「どうだった初めての戦車は?」
ズビシッ! ズビシッ!
清・安定「「おぉ~~~~・・・!」」
戻った俺に近づいた清光と安定に俺は問答無用の脳天チョップを叩き込んだ。
八幡「テメェ等、人<主>を見放しやがって。脳天チョップの刑だ・・・!」
次の標的に宗三にも脳天チョップをしようとするがーーーーーー。
宗三「ヒラリ・・・」
ヒラリとかわされる。
八幡「(ジリジリ)おい宗三、大人しくチョップされろ」
宗三「(ジリジリ)慎んで、お断りします」
八幡「フッ!」
宗三「ヒラリ、ハラリ、ホロォリ・・・」
チョップを繰り出す俺の攻撃をヒラリハラリとかわす宗三。
みほ「比企谷くん、なんか楽しそうだね」
沙織「比企谷って私達に対する態度と、宗三さん達に対する態度が少し違くない?」
華「そうですね、まるで十年来の親友と接するみたいです」
優花里「男の友情ですね!」
麻子「眠い・・・」
角谷「ハイハイ比企谷ちゃん、ジャレてないで整列してね~♪」
会長に言われて整列する、本丸に帰ったら覚えてろよ。
蝶野「みんなグッジョブ、ベリーナイスっ! 初めてでこれだけガンガン動かせれば上出来よ! 特にAチーム! 良くやったわね!」
西住達『(テレテレ)』
蝶野「Eチームも最後は面白い一手だったわ!」
角谷「まぁ、あれは比企谷ちゃんの作戦だったんですけどね」
蝶野「そう、比企谷くんの・・・」
蝶野教官、俺の方をあまり見ないで下さい。
蝶野「後は日々、走行訓練と砲撃訓練に励むように、分からない事が有ったら、いつでもメールしてね」
河嶋「一同、礼!」
大洗戦車道『ありがとうございました!!』
一同が礼をし、蝶野教官が敬礼で返した。
角谷「それじゃ比企谷ちゃん、蝶野教官と左文兄弟さん達をお見送りしてね~。私達はお風呂に行ってるから~」
八幡「分かりました」
角谷「(ヒソヒソ)色々話しておいてね」
八幡「(ヒソヒソ)了解・・・」
会長なりの気遣いか・・・。西住達が解散し、俺は清光と安定、それに左文字兄弟と共に蝶野教官を見送ろうとした。
蝶野「今回の模擬戦で、戦車道をどう思われましたか?」
八幡「・・・・・・・やっぱり“競技の世界”だなって思いましたね、まぁ悪くないですが」
蝶野「そうですか・・・・もうすぐ全国大会。貴方もメンバーとして参加するんですよね?」
八幡「ま、一応マネージャーですからね」
蝶野「私も“審判”として参加しますが、公私混同はしないつもりです」
八幡「それで良いですよ。俺もあくまで“大洗学園の1生徒 比企谷八幡”として参加しますから」
蝶野「それを聞いて安心しました」
蝶野教官、蝶野1尉は顔を引き締め、姿勢を正し、俺に敬礼する、俺も顔と姿勢を正して敬礼で返し清光達も敬礼する。
蝶野「では、失礼したします。“比企谷八幡提督”」
八幡「お疲れ様でした、“蝶野亜美1等陸尉”」
蝶野教官は10式戦車と共に再び輸送機に乗り込み、大洗を去った。
江雪「では主、私達も本丸に戻っております」
八幡「あぁ、どうだった初めて見る戦車は?」
江雪「興味深いモノでした。戦の道具を恐れずに、楽しむ少女達の姿は微笑ましかったです」
宗三「しかし、彼女達のこれからを思うと些か心配ですが・・・・」
小夜「・・・・・・・・・・・・」
八幡「お小夜、どうだった?」
小夜「戦車、凄かったです・・・・」
八幡「そうか、なら良い」
俺達は江雪達を見送り。その後、自動車部の連中に差し入れ<MAXコーヒー&甘い菓子>を渡して、本丸に帰ろうと学校を出ようとすると西住達と鉢合わせた。
八幡「おう西住、お疲れさん」
みほ「比企谷くん達もお疲れ様。えっと、小夜くん達は?」
八幡「あぁ、あいつ等ならさっき帰ったぞ」
沙織「えぇっ! もう帰っちゃたの?! 私まだ江雪さんと宗三さんの番号教えて貰ってないのに!」
安定「沙織さん、一応言っておくけど、江雪も宗三も彼女持ちだよ」
沙織「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
清光「ついでに小夜も彼女持ち♪」
沙織「ガーーーーーーーーーーン」
江雪や宗三だけではなく、“見た目は年下”のお小夜まで恋人持ちだったのがこたえたようだな。
優花里「そうだ聞いてください比企谷殿! 私“装填手”になりました!」
八幡「そうなのか? しかし装填手って体力がいるんじゃないか? 砲弾って重いしな」
優花里「(力こぶつくるように)大丈夫です! 鍛えてますから!!」
お前は清めの音を叩き込む鬼戦士か?
八幡「それじゃ砲撃手は?」
華「私がやります」
八幡「五十鈴が? ちょっと以外だな」
華「砲撃をした時の振動と音が、快感でした・・・!」
安定「華さん、変な感覚に目覚めてない??」
俺も同意。
沙織「そして私が通信手で、麻子が操縦手になったんだよ!」
清光「あぁ、沙織ちゃんメール打つの早そうだもんね」
八幡「それは理由になるのか? しかし冷泉、参加するとは思わなかったぞ」
俺が言うのもなんだが面倒くさそうなの嫌いそうなのに。
麻子「単位が必要だからな・・・・」
八幡「あぁ、なんか切実だな・・・・」
麻子「あぁ切実だ・・・・」
みほ「それでね、私が車長になったんだけど・・・・」
八・清・安「「「やっぱり」」」
みほ「えぇっ! そんな簡単に納得しちゃうの?!」
八幡「イヤ西住以外いないだろう」
清光&安定「「ウンウン」」
優花里「比企谷殿達もそう思いますよね!!」
八幡「あぁ・・・っ!」
秋山に相づちを打っていると、スマホが震えてので確認すると、【要請連絡】が表示されていた。
八幡「・・・・清、安、直ぐに帰るぞ」
清光&安定「「了解」」
八幡「西住、悪いが俺達はこれでお暇する」
みほ「う、うん・・・」
八幡「また明日・・・・」
清光「じゃあね」
安定「みんなあんまり寄り道しないでね」
ーみほsideー
比企谷達を見送った西住達、しかし西住達は比企谷の真剣な眼差しが気になっていた。
沙織「比企谷って、スマホやタブレットが鳴ると凄い真面目な顔になるよね?」
華「はい、それに加藤さんや山本さんもですね」
優花里「何か有ったのでしょうか?」
麻子「さぁな、それよりも沙織、これから何処に行くんだ?」
沙織「行ってからのお楽しみだよ、みぽりん行こう♪」
みほ「そう、だね・・・・」
西住は比企谷達の帰っていった方を気にしていたが、直ぐに武部達と共に買い物に出掛けた。
次回、八幡にLOVEな女子が現れるかも?