丁稚雀《マスター》リライスの繁盛記   作:ゆっくりいんⅡ
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 パタパタ
「うーん、やっぱり上手く飛べないチュン。グラインドが限界チュンね」
「先輩は普段が人間なので、羽根の身体に慣れてないのかもしれませんね。代わりに落下しても大丈夫になりましたが」
「マシュがいきなり窓から放り投げた時は、鳥類なことも忘れて死ぬかと思ったチュン」
「すいません、先輩ならぶっつけ本番でも大体いける過去があったのでつい!」
「何でも出来るわけじゃないチュンよ。……この後輩、悪気ないのが性質悪いチュンね。
 まあ結局……走った方が速いチュン」ピューン
「先輩、見た目はポッ○みたいなのに速度はドー○ーみたいですよ!?」
「もうちょいマシな例えなかったのかチュン。私の首は一つだチュンよ」


第三羽 恥を知れい

「先輩、行きますよー。それ!」

「チューン――チュ!? あぶな、ギリギリだったチュン!?」

「すいません先輩、ちょっと高く投げすぎました!」

「安珍様の危機と聞いて!」

「いや天井掠っただけだチュン、気持ちはありがたいけど持ち場のやってくれチュン清姫」

「( ´・ω・`)ハーイ……」

 落ち込んで帰る清姫も可愛い、じゃなくて。二人が何をしているかというと、窓拭きである。梯子がないと届かない高い場所をリライス、それ以外をマシュがやっているのだが、

「それにしても、私が投げて先輩が滑空しながら窓拭きをするやり方は正解ですね。効率が違います」

「最初は雀虐待と思われたり、力加減を間違えて天井からバウンドする羽目になったりしたチュンけどね」

「先輩に怪我がなくて何よりです!」

「いやちょっとは反省しろチュン後輩」

 余談だが天井に激突しても、ゴム鞠のように跳ね返って互いにノーダメージという謎現象が起きている。呪いでなった雀の身体だが、色々謎過ぎて考えるのはやめた。

「しかし、上手く飛べないものチュンねえ。あとで他の雀達に教わるのがいいかもチュン」

「私はお手玉みたいで楽しいから構いませんが」

「先輩を玩具にするなチュン、BBかチュンお前は」

「そんな意地悪な事はしないので大丈夫ですよ!」

(あれクラスはシャレにならんチュン)

「でもそうですね、折角雀さんになったのですし、空を飛んでみた――」

 とか話していると、衝撃と一緒に雀達が空を舞っていた。

「何事ですか!?」

「衝撃で空へ……なるほど、そこからアルトリアの魔力放出と同じ要領で上がれば……いけるかチュン?」

「先輩、そこで閃いた! って顔してる場合じゃないと思いますが!?」

 この後、暴れる客の一人、虎名主を止めるために二人は現場に向かうのだが、

「人間、人間喰わせろオオォォォ……!」

「なりまチェン! 今まで何のために我慢してきたでちか!?」

「女将さん、助けに来たチュン!」

「オオオォォ……? ニン、ゲン? ニンゲンノ、ニオイガスル、スズメ……?」

「先輩、辛うじて人間カウントされているようですよ!」

「れっきとした人間だチュン」

「……そこの雀、喰わせろぉ! 左利きの人間の、右足の小指ヲォ!!」

「久々に左利きなのを後悔したチュン」

 この後、マシュと女将の二人で滅茶苦茶ボコボコにした。

 

 

「一大事チュン、一大事チュン!」

「この声は……雀の従業員さんですね! 先輩は私の頭に乗ってます!」

「語尾で判断してるのかチュン後輩。明らかに声質が違うチュン」

 なお、ぐだ子の声優は決まっていない。リヨ? あれはいいから。

「リライス、マシュ、丁度いいところに! 一緒に来て欲しいチュン、奉納殿にあの野鳥(ヤロウ)が現われたチュン! このままだと閻魔亭が全壊するチュン!」

「雀さんがそう言うだけの一大事ですか……どうしますか、先輩?」

「……ネタの予感はするチュンけど、お世話になってるし、とりあえず行ってみるチュン。私達で対処し切れそうになかったら、令呪を使って誰か呼ぶチュン」

「あ、雀さんの姿でも令呪は使えるんですね」

「出来なきゃディルムッドに自害(脅迫)なんてしないチュン」

「先輩、ディルムッドさんは色々トラウマのある方ですし、その、穏便に……」

「だからやったんだチュン」

「先輩!?」

 この先輩、雀だけど目がマジである。

「早くしてくれチュン! このままじゃ時間の問題だチュン!」

「わ、分かりました! 先輩行きま、痛い、痛いです!?」

「あ、ごめんチュンマシュ。まだ爪の力加減が難しいチュン」

「夫婦漫才してる場合じゃないチュン!」

「私女チュンよ? 一回ダヴィンチちゃんに生や(両性具有に)されそうになったチュンが」

「それ初耳なんですが先輩!?」

 ちなみに、割と本気で提案されたとのこと。無論、全力で断った。

 

 

『クエエエエエエエェェェェェ……!!』コケー!!

「来たチュン、先生お願いしますチュン!」

「……確かに、これは雀さん達にとって天敵? なのかもしれませんが……マスター、どうしま」

「何故か殺意の波動に包まれそうだチュン」

「先輩!? 変なとこだけ雀さんと似てきてませんか!?

 ああ、ダメです! マスターが前線に出るのは危険ですから!?」

「大丈夫チュン、この間の食材狩りで戦闘力は証明されてるチュン」

「それでも危ないですから!? というか(シールダー)の存在意義が危ないので守らせてください!!」

 すったもんだの末、マシュが天敵()を上手くしばいた。その日の夕食はから揚げが追加されたそうな。

 

 

「もてなすチュン、盛大にもてなすチュン!」

「よくやってくれたチュンマシュ!」

「だから先輩、何で雀さん(そっち)側にいるんですか!?」

「雀の本能かもしれないチュン」

「本格的に戻れなくなりそうなので来てください!」

「ははは、マシュも苦労しているでござるなあ」

「大変だチュンね」

「いや、お主のせいだからなマスター? あと、いつの間に某の頭上に乗っていたのか、ちと尋ねてみたいのだが」

「細かいこと気にすると禿げるチュン、小次郎。あ、逃げても斬らないで欲しいチュン」

「小次郎さん、燕返しならぬ雀返しはダメですよ!?」

「飛べない鳥に振るう刀はござらんよ」

「豚みたいに言うなチュン。というか飛べたらやるのかチュン」

 無論冗談でござるよ、とお茶で濁されてしまった。あと、マスターはマシュの頭上(定位置)に戻されました。

「そういえば二人とも、『雀の幸』は貯めているかチュン?」

「薪割りや掃除をしている時に、いつの間にか溜まっているあれですか?」

「それチュン。雀の幸は謂わばウチらからの『感謝の気持ち』を形にしたものだチュン。さっきのも合わせてもりもり溜まってるチュン」

「もりもり」

「もりチュン」

「フォウフォウ」

「チュン。だから日頃の感謝も兼ねて、盛大にもてなしてるチュン。あ、リライスお饅頭いるかチュン」

「いただくチュン」

「先輩、改めて見ると羽でお饅頭を千切るって、器用なことしますね……」

「ちょっと食べにくいチュン」

「あ、じゃあ私が食べさせてあげますね! はい、アーンしてください」

「だからそれペットの扱いだチュン」

 とか言いつつ、マシュに食べさせてもらってもっきゅもっきゅしているリライスである。

「それにしても、皆さん博識ですね? 難しい話もご存知というか……

 あ、すいません! 別に変な意味があるわけでは!」

「チュン、大丈夫ですチュン。ウチが博識なのは雀十傑の中で最も頭の回転が速い雀、金庫番の『五官』だからチュン。

 他の雀達も『秦広』、『初江』、『宋帝』、、『変成』、『泰山』、『平等』、『都市』、『五動転輪』。

 と、それぞれ親元からお名前をお預かりしているチュン」

「その名前は、地獄の裁判官である十王のお名前ですね。皆さんはそのご子息なのですか?」

「違うチュン、ただの従者だチュン。でも紅女将は閻魔大王の娘だチュン」

「閻魔大王の娘……え、マジかチュン。だから舌を斬るとか言われてたのかチュン」

「心配するとこそこですか先輩!?」

 そこから、このお宿の成り立ちや紅女将に関連する御伽話などを聞いた。その中に気になるワードもあったが、

「そ、そういえば獄卒の偉い方が一人、従者を欲しがってたチュン! リライス、もしここにずっといることになったら、その人にお仕えするといいチュン!」

(露骨に誤魔化したチュンね。まあ、無理に聞き出そうとしても無理だチュン)「考えとくチュン。ちなみに、なんて名前の方だチュン?」

「鬼神の『鬼○』様だチュン!」

「その名前はまずいんじゃ……!?」

「地獄に行ってもワーカーホリックになりそうチュン……というか、閻魔大王が孫だけじゃなく娘にも甘い可能性が出てきたチュン」

 後日、風の噂から耳にした件の鬼神が、「地獄に来たときは歓迎しますよ」と口にし、偶然それを知った某冥界の女王が焦りだしたとかなんとか。

 

 

「客間は全て解放、お客様も増えてきて中々の繁盛ぶりだチュン」

「たった一日で客間が全て解放されるのは驚きでちた……リライス、お前様本当に宮大工でも何でもないのでちか?」

「私も正直見くびっていましたねえ。サーヴァントの力添えがあったとはいえ、この速度は異常ですよ」

「チュン、物事を限界まで詰めて効率化しただけだチュン、難しいことじゃないチュン。とりあえず次は……」

「大浴場、だな。そもそも我々は温泉を求めての慰安旅行が目的だったしな」

「所長はお肌つるっつるにして、金の卵に間違えられるのを目指してましたチュンね」

「そんな意味の分からんことせんわ! というか貴様、遠まわしに私のこと太っていると言っているよな!?」

「寧ろ痩せてると思ってるんですかチュン。まあ所長は旅館の宣伝にも一役買ってくださったですし、解放されたら一番風呂は譲りますチュン」

「何、それは本当……いやいや違う、女将ならともかく何故お前に許可を貰わなければならんのだ!?」

「じゃあ所長が前線に立って温泉の問題を解決しますかチュン?」

「戦闘経験もろくにない私に戦えというのか!? 温泉からは嫌な気配がするし、普通に死ぬわ!」

「いっそ清々しいくらい戦力外宣言してますねえ」

「嘘を吐かないのはいいことです」

 開き直りで所長の評価が上がった。

「嬉しくないわ!」

「ええと、五官さん。その、温泉にはどんな問題があるんですか?」

「チュン、あっちこっちぶっ壊れてるチュン。それもあの羅刹が暴れたせいだチュン」

 以下雀と途中で加わった猿長者曰く、

・件の『羅刹』が酒と美少年と美少女に酔い、悪逆の限りを尽くした。

・紅女将と雀達が追い払ったが、温泉に残留思念が残っており、居座っているとのこと。

・残留思念は同じクラス・武器の『強い相手』に倒されないと納得しないらしく、

『相性の問題で負けただけだから、ぜーんぜん悔しくないですー!』

『私は私が納得するまで温泉で美男美女を求め続けるのです! さもしい現実なんていーやーだー!!』

 などと喚いているとのこと。

「……あの、それって……」

「………………はあ」

 リライス、心当たりがありすぎて思わず溜息。

「……とりあえず、ディルムッドに戦闘準備させるチュン」

 

 

 というわけで、荒れ果てた温泉浴場へとやってきたのだが。

『美少年はどこだあ~~~~……美少女は』

「オイそこの腐れ剣豪、こっち向けチュン」

『!? こ、この私好みの美少女ボイスは!? まさかリラ』

「雀流奥義の三、『しんそく』!」

『ごぼはぁ!? よ、容赦なさ過ぎじゃないリライ』

「おう黙れチュンサル女、今のお前に名前を呼ばせる気はないチュン」

『サル!? 流石に酷くないですかマジで!? というか前より荒んでない色々と!?』

「うるせえチュン、こちとら救った筈の世界が滅ぼされてやってらんねえだチュン、精神崩壊してないだけマシだチュン」

「マスター、おいたわしや……!」

 ディルムッドが何か涙してるが、それはともかく。

「それより、女将さん達に迷惑だけじゃなく温泉まで潰すとかどういう了見だチュン。下総での感動を返せチュンマジで。

 ……つーわけでディルムッド、正体とかどうでもいいから遠慮なくぶっ殺すチュン」

「……マスター、もしやあれは」

「名前を言うか負けでもしたら、カルデアにありもしないお前の女性遍歴をばら撒いてやるチュン」

「同じ二刀流の剣士なれど手加減はしないぞ! さあ来い地獄を作った羅刹よ!」

『ちょっと怖すぎじゃないリラ「あ”?」あと地獄じゃないです、ここは天国ですー!!』

「自分から地獄にしといて何言ってるんだチュン」

 この後、ディルムッド決死の覚悟によって易々と煩悩塗れの剣豪は斬られた。そして大浴場は、翌日には使えるようになったとさ。 




後書き
 毎日投稿、無理でしたorz
「サブタイトル、サル女だけじゃなく自分にも刺さってるチュンね」
 やめてえ!





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