「あの淫乱女王、女もいけるのかチュン」
「ケルトの英雄は大体どっちもいけるぞ」
「マジかチュン師匠、フェルグスの兄貴はともかく、クーのアニキも……?」
「ああ、もち」「変なこと吹き込んでんじゃねえよバ、師匠!」
「オイ今BBAと言いかけたか?」
この後滅茶苦茶死に掛けた(アニキが)
「ところでイベントとっくの昔に終わってまチュが、弁明はありまチュか?」
毎日投稿とか余裕やろと思ってた自分が浅はかでしたorz
旅館も大分繁盛し始めたある日のこと。
「先日のヘルズキッチンは中々ハードでした……ですが、料理への苦手意識は克服できたと思います!」
「苦手意識以前にトラウマ刻まれたと思うチュンが、ウチの後輩は精神面も頑丈だチュン。……ん?」
「あれは……紅女将さんと、どなたでしょうか?」
「……分かんないけど、胡散臭い感じの匂いがプンプンするチュン」
翁の能面を付けた人物? にリライスの経験則から来る直感が囁く、あれはろくでもねえ奴だと。
とはいえ、お客様だろう相手を無碍には出来ない。とりあえず挨拶しようと思うが、
「……待て。……近付くな、殺される、ぞ」
「あ、虎名主さん……?」
「この間は容赦なくボコってすまなかったですチュン」
「……構わ、ない。……アレは、ぼ、暴走した、俺が、悪い」
「先輩、危ないかと思ったけど凄く常識的な人です!」
「久しぶりに見た気がするチュン」
「……静かに、しろ」
「「アッハイ」」
叱られて二人? も虎名主の横に伏せ、女将と相手の会話に聞き耳を立てる。その後虎名主からの話も聞いたことを要約すると、
・話している老人は竹取の翁と言い、五百年前に宿泊した際持参物の『五つの宝』(竹取物語に出てくるアレ)を盗まれた。
・犯人は未だ見つかっておらず、宿側が責任を負うため借金を背負うことになった。
・借金の額は莫大で、毎年利息分を払うのが精一杯。また物取りを防げなかった評判が広まり、以来閻魔亭の客は激減したらしい。
とのこと。これを聞いて激怒したのは、意外にもゴルドルフ所長である。
「道理でおかしいと思ったわ! ここの帳簿を見させてもらったが、元旦の不自然な出費は借金の利息のせいか!
というか何故私を呼ばなかった!? 盗難の責をホテル側が負うなど、いつの時代の話だ!?」
「そりゃ神代のルールのままですよここ、隠れ里で彼岸寄りなんですから」
「さらっと恐ろしい事実だなそれ!?」
「そもそも盗難自体あったのが五百年前だチュン」
「紅女将、私達には内緒にしていたのですね……」
「嘘を吐いているわけじゃないから、清姫も分からなかったチュンね。
まあ、私達は極論『感謝の気持ち』さえどうにかすれば問題ないチュンが……それだと後味が悪いチュン」
「はい、紅女将さんにはお世話になっていますし、このままでは済ませられませんね! ……しかし、どうしましょうか?」
「すぐ思い付くのは借金の返済、あとは五つの宝を見つけるか代用物を用意するチュンね。前者も後者もキツイチュンが……」
「五百年前だし、証拠が残っている確率はかなり低いだろうな。だが、代用物を用意するのはバツグンにイケ美さんなアイディアだ」
「竹取物語に出てくる、五つの難題の宝ですね。しかし、そんな簡単に見つかるでしょうか……?」
「勿論、普通なら簡単には見つからないだろうさ。しかし、今はそれらを持っていそうな人がいるじゃないか? そう、サーヴァントがね」
「「「「あ」」」」
「そうでした、サーヴァントの皆さんなら情報、あるいはそのものを持っているかもしれません……!」
「……そう考えると、一番現実的なプランチュンね。では今後は宝を集めつつ、並行して改装も続けていくチュン」
「改築も続けるのですか? 目的が決まった以上、あまり意味が無いと思いますが……」
「いや巴殿、そちらも重要だろう。設計図を女将殿からお借りしているのだから、当時の状況を再現すれば見えるものもあるかもしれない」
「な、なるほど。さすが知恵の騎士、フィン・マックール殿。私には及びもつきませんでした」
「普段からそれくらい頭捻ってれば、残念なイケメン扱いされなくて済むんだけどチュン」
「ははは。いざという時に頼れる男であることこそ、美男子の条件なのさ」
「普段からやれって言ってるんだチュン。……とりあえず、行動開始だチュンね」
宝集め中……
「ぐっさんと三蔵ちゃんからは問題なくゲット、エリちゃんからも素材はちょろっと拝借したから、残りは二つで順調すぎるくらいだチュンね。
改築の方は残り天守閣だけで、着手は始めてるから今日中には終わりそうだチュン。……巴が鐘撞き銅を設置したのはよく分からんチュンが、女将さんと同じく嫌な予感しかしないチュン」
「頑張ってるようでちね、リライス」
「女将さん、お疲れ様ですチュン。休憩ですかチュン?」
「ちょっと見回りでち。お前様達が改装してくれたので、あちきも見ておくべきでちから」
「……ちょっとは休憩入れましょうチュン」
「そっくりそのままお返ししまチュ。お前様が休んでるとこ、あまり見ないでちよ」
「戦争真っ只中のアメリカ大陸横断に比べれば、休憩ある分楽ですチュン」
どっちもどっちである。
「では折角でチュし、私がお茶を入れて差し上げまチュ。休みの時くらいゆっくりしているべきでち」
「女将さんとゆっくりお話出来るなら、喜んで休ませてもらうチュン」
「……本気で言ってるみたいですチュンね。あちきなんかとお話しがしたいなんて、変わった人ですチュン」
「話し合って相手を知るのは重要なことですチュン。女将さんのことももっと知って、仲良くなりたいんですチュン」
「……マシュや清姫が人たらしと言っていた理由が分かりますチュンね。じゃあ、話してあげるでち。閻魔亭が今より大きかった時とか、あちしについても」
「改装した今より閻魔亭は大きかったんでチュンか?」
「そうでちよ、鶴の間という部屋がありまちて、とても華やかなものだったでち。
その部屋はお夕という腕のいい機織職人が専属で働いていたのでちが、『人間に私の姿を見られた! もうお嫁に行けないからその人間に嫁ぎに行きます!』と言って、辞表叩きつけていきましたチュン」
「鶴の恩返しって結婚エンドだったんでチュンか……?」
割とありそうな事案である。玉藻曰くイケモンの母親も狐との話もあるし。
続いて聞くのは、紅女将の話。地獄の成り立ち、迷い家へ迷い込んで直ぐに亡くなり、地獄の獄卒となって奪衣婆にこき使われたり、働きが認められて閻魔亭を任されるようになったこと、現世で人に捕まった時、等々。
「……ありきたりでチュンが……大変だったんでチュンね、女将さん」
「そんなことないでち、私は十分に恵まれてるでち。死後とはいえ、こんな立派なお宿を閻魔様に任されたのでちから。
寧ろ、お前様の方が今現在大変なのでちから、それに比べたらどうってことはないでち」
(死んじゃったのに、こういうのは報われるんって言うんでチュンかね……)
流石に口にはしない。彼女の眼を見れば分かる、これまでのことを本当に幸福なことだと思っているのが分かるからだ。
「じゃあ、次はリライスの話を聞かせてほしいでち。世界を救ったお話はどんなものでちかね?」
「現在進行形で再び滅びかけてますがチュンね……」
この先のことを考えると憂鬱で仕方ないが、それはともかくリライスは話し始める。カルデア・特異点での出会いと別れ、魔術王を名乗るビーストとの戦い、亜種特異点、(しょうもない)
「ざっくりですが、これが私達の今までの軌跡ですチュンね……って、女将さん?」
「う、グスッ……本当に、大変だったんでチュンね。リライス、ここまで腐らずに頑張って、偉いでちね……」
「ええぇ……あ、女将さん撫でるの上手ですチュンね」
「何なら毛繕いもしてあげまチュよ?」
「女将さんまで雀扱いじゃないですかチュン」
ガチで涙組まれた上に、抱き寄せられて撫で撫でされ始めた。何でやねんと思うが、気持ちいいからそのままにしておいた。
「……でも、そんな中で清姫を受け入れまちたね。つがいが女同士、お前様も別にそういう趣味はないのに……釣り橋効果ってやつでちか?」
「んー、まあそういうところがあるのも否定はしないですチュン」
どこかから複雑怪奇な感情の視線を感じるが、とりあえずスルーしておく雀リライス。
「……でも、一番は清姫がまっすぐに愛情を向けてきてくれたからだチュン。きっかけは私が安珍の生まれ変わりだからで、実際は違ったとしても――受け入れて、一緒に居たいなって思ったんですチュン」
「……お熱いでちね、清姫も幸せ者でち。料理の腕が思ったより上がっていたのも、お前様の存在が大きいですチュンね。
じゃあ、マシュはどうですチュン? あの子はお前様を慕っていまチュが」
「慕ってくれるのは嬉しいけど、可愛い後輩に傷ついては欲しくないですチュンね。でも、自分のエゴでマシュの決意を歪めたり、かるんじたりはしたくないですチュン。だからこれからも今までも、未熟な二人三脚で乗り越えていきますチュン」
「……強いでちね、お前様は。普通の人間なら、とっくの昔に心が折れてもおかしくないでち」
「大分やさぐれはしましたチュンけどね。気付いたら成人迎えてたとか笑えないですチュン」
マスターリライス、去年の暮れに二十歳になりました。
「
と、撫でられていたら清姫が突如部屋に飛び込んできた。
「チュン? 清姫?」
「愛 して まーす!!!」
「ぬおわチュン!?」
マッハで飛んできた清姫がリライスをホールド。なお、女将さんはいつの間にか離れていた。お陰で一人と一羽で部屋の中をゴロゴロである。
「おおお、清姫苦しいチュン……」
「ああ、貴方様にそんなに想われていたなんて、清姫は幸せすぎて死んでしまいそうです! 式はいつ挙げましょうか!?」
「ちょ、色々飛ばしすぎだチュン清姫。あ、マシュ助けてくれチュ」
「うぐ、ぐす、先輩……私、もっともっと頑張りますから! 先輩を全部から守れる最高の後輩になります!」
「いや、それ以上頑張ったら大変なことになるムギューーーチュン」
「微笑ましいでちね」
紅女将が自愛の笑みで混沌と化した場所を見ていると、
「あ、こちらにいましたかマスタ――ってなんですかこのカオスな状況!? そして清姫さんさっきまで裏山に居たのでは!? 令呪もなしに瞬間移動とか
「もうこの状況も玉藻の立場もツッコミはなしですチュン。というか清姫がどうかしたんですかチュン?」
「いえ、清姫さんにメドゥーサさんとアナさん、あと千代女さんが襲われたと話を聞いたので」
「え!?」
「……清姫、どういうことでちか?」
「わ、私にはとんと身に覚えが……」
「……玉藻、それはいつ起こった話ですチュン?」
「さっき襲われたという千代女さんの話は、ほんの五分前ですね」
「……あー、何となく分かりましたチュン。女将さん、裁判はもうちょい待って欲しいですチュン」
「? リライス、心当たりがあるんでちか?」
「まあ何となく、やらかしてる奴は心当たりが……というか鐘付き憧関連で考えれば自ずと分かりますチュン」
その後、調べてみたら巴が作り出した清姫のシャドウサーヴァントが犯人だった。
巴の弁明曰く、
「龍の首の玉を手に入れるには本物の龍から取るのが一番と思い、清姫さんのシャドウサーヴァントを生み出しました!」
「ドヤ顔で清姫と蛇系サーヴァントに被害多めのことやるんじゃねえチュン雀流奥義『つばさでうつ』!!」
「ぐっほあ!? 翼で撃たれただけなのにかなり痛い!?」
「マスター、私が傷つくのをそんなに気にしてくださるなんて……好き!!」
「ええ……清姫さん、それでいいんですか?」
おまけ
「さあ、最初っから飛ばしていくわよ!」
恋はドラクル♪
「う、相変わらず凄まじいですね……雀さん達は楽しそうですが……先輩?」
「ヤッベエ、エリちゃんこんなにイケてたのかチュン……ヒューヒュー、もっとやれチュン!」
「先輩!? お気持ちは分かりませんが、部屋が吹き飛ぶ前に止めましょう!? それと今褒めると、戻った時に悲惨なことになると思います!」
この後滅茶苦茶頑張って止めた(マシュが)。
おまけ2
「ははは、相変わらずマスター殿は苦労しておられるな」
「笑い話じゃねえチュン小次郎。というか何で同じ風呂に入ってるんだチュン、私メ、女だチュンよ」
「恥もなく入ってきたのはそちらだろうよ。それより感性まで雀寄りになっていないか?」
「フォウフォフォウ」(訳:全部終わるころには手遅れになっているかもしれないね)
「不吉なこと言うなチュン。とりあえず、あと一個がどこに手掛かりがないので煮詰まっているチュンが……小次郎、何か知らないですかチュン」
「力になりたいところだが、棒切れ侍の拙者にはとんと見当が付かぬなあ。出来ることといえば、この燕の子安貝を持って祈るくら――」
「雀流奥義、『みずかけ』!」
「ははは、その程度では効かぬ――ぬぐお!? 予想以上の威力!?」
「フォウフォウ」(訳:別の意味でも人外じみてきてるってはっきりわかんだね)
後書き
長らくお待たせしました(開幕土下座)
とりあえず、五つの宝は幾つかスキップしました。三蔵とかぐっさん先輩の話は、そのまんまになりそうなので……
なお、リライスが成人なのはこの作品だけの話です。懐古の蜘蛛イベントがあれば、飲むかもしれませんね(自棄酒しそうだけど)。
もう一、二羽で終わると思います。皆さん忘れ去ってると思いますが、けじめのためにも最後まで書ききります。
では、次回もよろしくお願いします。