丁稚雀《マスター》リライスの繁盛記   作:ゆっくりいんⅡ

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 大奥イベント終了&カーマ召喚記念ということで。前回雀になったリライスさん続投です。
 依代が依代なのとキャラが好み過ぎて衝動を抑えられんかった(性癖暴露状態)
 カーマメイン以外にもいくつか話を入れる予定です。
※注意:大奥イベントのネタバレを(多分)含みます。




短編 愛し方、愛され方とは

「私は愛の神にして愛欲の魔人、カーマ/マーラ。どんな欲望もダメさも受け入れ、愛してあげます。人間なんて大嫌いですけど」

 心底面倒臭そうに、しかし無限の包容力を持って彼女――女神カーマは手を伸ばす。それが自分の役割だからと、若干やさぐれた顔で。

「あーうん、なるほど。嫌だけど愛する、かあ」

 ああいう表情に心当たりはあるので、状況を無視して思わず共感してしまうリライス。自分だって人理救済、異聞帯の排除を好き好んでやっているわけではないのだ、代われるものなら是非とも代わって欲しい。

 その間に素敵な出会いや思い出はあったが、それはそれ。「最近先輩の目の濁り頻度が!?」などと後輩は心配しているけど、こちとら現在進行形でただの一般人なのだから仕方ないと思う。しかも代わってくれそうな人材は軒並み敵になったしねF○CK!!

 閑話休題(考えないようにしよう)

「ねえカーマ、一つ聞きたいんだけどさ」

「……徳川化が進んでるこの状況で、よく普通に喋れますね。まあいいですよ、一つと言わず答えられることなら何でも答えちゃいます」

「それはありがたいけど、大したことじゃないよ。貴方は全てを愛するって言ったけど、」

 

 

 カーマ(アナタ)のことは、誰が愛してあげるの?

 

 

「……………………は?」

 余りにも予想外だったのか、ポカンとした顔で間抜けな声を上げてしまうカーマ。自覚があったのかすぐにいつもの面倒臭げな表情に戻り、

「……バカなことを言うんですね、リライス。私は愛を与える女神であって、与えられるものではありません。そもそも、神の恋愛なんてクッソ面倒臭いしろくでもないものですよ?」

「あーうん、それは分かる」

 狩猟の恋愛脳(スイーツ)女神とかうっかり美の女神とかそこのパールヴァティーを見つつ(「ちょっとマスターさん!?」とか叫ばれてるが無視)、確かにめんどうくせーしヤベーけどと前置きして、

「それでも、あなたを愛してくれる人はいると思うよ?」

「……そういうのは自殺志願者(物好き)って言うんですよ。あといらないです、さっき言ったとおり人間とか大嫌いなんで。

 もう質問ないですか? ないですね。じゃあ、さっさと私に愛されちゃってください」

「うぐ……流石に、余裕無くなってきたかも……」

「マスター、大丈夫!?」

 これは戦いの最中、きっかけにもならないリライスの純粋な疑問。結末への道筋が変わる訳ではない、ないが。

 

 

 その後の顛末は同じ。ビーストⅢ/Lの幼体は、完全な羽化を果たす前に討伐され。

 性悪クソエロ尼(カーマ談)によって、カルデアとの縁を結ぶ羽目になった。

 とりあえずパールヴァティーへの嫌がらせを遠慮なくできるという前向きな理由を支えに、でもやっぱりやる気ないけど仕方なく召喚に備えるカーマ。そこでふと、決戦前にカルデアのマスターと交わした言葉を思い出す。

(私を愛する存在は必ずいる……ですか。猛毒に頭から突っ込むような物好きさんは、あなたなんですかねリライス?)

 

 

 それから数日後、場所はいつもの召喚部屋。ゴルドルフ新所長の悲鳴をBGMに(「これだからレイシフトなんかだいっきらいなんだーーー!!」とか叫びながら走り続けている)、召喚システムが起動され――

「……あー、呼ばれちゃいましたか。じゃあ改めて自己紹介しますね。

 私はカーマ、愛の神ですけど恋愛相談は期待しないでくださいね。破滅したいなら別ですけど。

 あと、嫌いなものはパールヴァティーです」

「それは知ってるよ。でも、こんなあっさり召喚に応じてくれるとは思わなかったな」

「縁が結ばれた以上、抵抗しても呼ばれますからね。面倒臭いのでさっさと諦めて来ることにしました」

「なるほど、らしいね。ともあれ改めてよろしく、カーマ。それにしても、その姿で来たんだね」

 召喚されたサーヴァント、カーマの姿は最初に出会った時と同じ、少女の姿である。どの形態でもこれだけは変わらない、死んだ魚のようなやさぐれ顔でリライスを見上げながら、

「成長するにはこの姿が一番だと思ったので。気分の問題だから変わるかもしれませんが」

「成長?」

「ええ、成長です。ほら、春日局さんがドヤ顔で言ってたじゃないですか。お前の愛には見守り、成長させる愛がねえだろうがーって。なのでそれを学び、成長するためにもこの姿でいようかと。そうすればより多くの愛し方(ニーズ)に応えられるでしょうし」

「言い方に大分悪意を感じるけど、まあ言ってたね。……あれ、それって止めた方がいいのかな?」

「これを止めると私の存在意義が死ぬので無理ですね、令呪でも無理なので速やかに諦めてください。

 もう一つはアレですね、マスターさんとの約束を果たしに来ました」

「ほえ? 私?」

「何とぼけた顔してるんですか、あんまりうつけすぎると愛して堕落させてあげちゃいますからね。

 まあそれは置いといて――言ったじゃないですか、私のこと愛してくれるって」

「……え、私そんなこと言ったっけ?」

「私を愛する人もいるって、マスターさんのことでしょう? それとも私は生理的に無理ですか」

「いや、寧ろ姿形含めて好みですけど」

「素直ですね、バカなんですか? では殺生院キアラのことは」

「何か知らんけど殺意がマックスマシマシで沸いてくるんだよね」

「じゃあ何も問題ないですね。おめでとうございます、マスターさんは女神から愛される権利(めんどうくさいもの)を押し付けられました。わーぱちぱち」

「自分の愛をそう言い切っちゃうのね」

「自覚はありますから、どっかの恋愛脳夫婦と違って。

 まあそんなわけで――面倒だけど覚悟してください(よろしくお願いします)ね、マスターさん?」

「はーい、まあお互い妥協点を探していこうか。よろしくね、カーマ」

 幼い姿ながら妖艶に微笑むカーマに、リライスは苦笑で応える。多分また一騒動あるんだろうなあと予感がしながら。

「……慣れてますね、マスターさん。ひょっとして女を惚れさせては捨てる達人ですか、きゃーこわーい」

「私女だからね、そんな経験ないからね? まあ、面倒臭いのに好かれるのなんていつものことだし」

「その清姫さん(筆頭)がこっちに猛スピードで来てますけど」

「あ、ヤバ」

 ちょっと待ってて。そう言い残して清姫の説得(ガチ)に向かうリライスの背を見ながら、

「……私の事は後回しですかそうですか。まあいいですけどね、嫌われものだし性格悪いのは自覚してますから」

 そう呟く顔は、微かに拗ねているようなものだったそうな。

 

 

 清姫の説得(ガチ)を終えて。

「ところでマスターさん。マスターさんは抑止力の代行者だったりします?」

「え、何急に。私ただの人類最後のマスターだよ?」

「ただのを付けるのはおかしいと思いますけど。いえ、人理救済とか異聞帯捻じ伏せたりしてきたじゃないですか」

「したねえ、もうしたくないなあ……」

「ガチトーンなのは流石に引きますね、まあいいですけど。で、毎度毎度都合のいい対抗策があるじゃないですか。私の件だったら、信綱さんの用意した花札とか」

「ああ、あるねえ。正直、そんなものあるの!? と思うことはある」

「そして終わったら疑問をポイ捨てなんですね、怠惰ですね。

 まあそんなこんなで毎回対抗策なんてものが都合良くあるのは、世界を吹っ飛ばされたら抑止だかアラヤだかの力が間接的にリライスさんへ働きかけてるのかなーって」

「まあ毎度都合いいなとは思うけど……仮にあったとして、証明のしようがあるかなあ」

「ないでしょうね、まああくまで仮説だからお気になさらず」

「だよね、寧ろあるならはっきり教えて欲しいし。で、それがどうしたの?」

「いや、抑止力に『諦めない心』の補正があるなら、それを失くせば簡単に堕ちるかなーって」

「それさらっと世界崩壊案件な件」

「いいじゃないですか、私にも愛を与えて一緒に堕ちましょうよ。あなたはもう頑張らなくて良くなる、私は役目を果たせて未知のものをもらえる、ほらWin-Winですよ」

「凄く魅力的な話だけど、そこに堕ちたらダメなのは流石に分かる」

「魅力的って言ってる時点で、マスターさんのダメ人間具合が分かりますね」

「正直、自分でもなんで防げてるのか不思議でならない」

「それも抑止力の後押しなんじゃないですか?」

「もうなんでも抑止力って付ければいいことになるね。深く考えるとマジでダメになるというか、死にたくなるけど」

「その時は死すら忘却する愛の世界に連れてってあげますね」

「愛って怖いなあ」

 

 

 




あとがき
 愛って何? 搾り取られるか過剰摂取させられるものです(ビースト論)
 というわけでやっつけですが、カーマ召喚編『アナタを愛する人は?』如何でしたでしょうか。
 はい、まだ育ててないのでWiki見てから書いてみました。多分キャラ違うかもしれませんが、許してくだせえ。今回の大奥イベント、メイン終わった時点で周回の必要ないからカーマさん育ててないのよ……
カーマ「私が大好きと言っておきながら、看過できないレベルのトロさですね。まあそんなところも愛してあげます」
 あ待ってカーマさん、あなたに溺れると続きが書けな――(何かに溺れる音)
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