前話で破壊したプロットが連鎖爆発を引き起こした結果、今後の展開に支障が出たため第二部十話を大幅(当社比)に修正しました。
具体的には、幻影旅団の警戒心を強調し、白音の失神理由を明白にした形になります。
とはいえ大まかな展開は特に変わっていませんので、読み返さなくてもたぶん問題はないです。ごめんなさい。
誰だプロットは破壊するものとか言った奴。
突然の爆音に痛撃された警戒心が振り向くと、扉の反対側、捕らえた三人の後ろの最奥で、黒い炎が渦巻いていた。
直径はおよそ三メートル。それなりに高い天井まで届くほどの、黒い炎の竜巻だった。その場の全員が突如の出来事による驚愕で固まる中、ボクは一拍先んじてその異様さに気付き、続いて現状を理解する。
竜巻の向こうに見知った『気』の気配。曹操だ。
炎に向いた視界の、その端に意識を向け、目視したその姿。鉄壁をぶち破り、飛び込んできたのだろう。竜巻の黒の中には壁材の鉄片がいくつも瞬いている。それで負傷したわけではなかろうが、トレードマークの漢服はあちこちが破れ焼けこげ赤色が滲み、おまけに口元からも垂れていた。浮かべた苦悶の表情を見るにそれなりのダメージを負ってしまったらしい。
黒い炎は、そんな奴の両の手から発せられていた。
感じた異様さの大本は、恐らくそれだろう。クロカのような優れた感知能力を持たずとも、それくらいはわかる。
曹操の能力であろうそれは、少なくとも『念』によるものではない。生命エネルギーではなくその逆、負のエネルギーとでも称すべき暗い『力』で燃えているのだ。黄昏時のか細い夕日すら蝕み、呑みこむ邪悪な熱気。ただでさえ薄暗い空間により深い暗闇を灯している。
当然自然現象であるはずはないし、魔法力に乏しい奴がいかにもな異様を生み出す魔法を使えるはずもないだろう。
となれば残る可能性。人間である奴が超常の炎を操るのなら、後は
それがおかしいのだ。奴がその身に宿す
奴の【
あの炎を発する能力は、【
二種の
しかし、それらの思考は一旦棚上げせねばならないだろう。潜考しかけたボクの警戒心は、瞬きの間もなくそれを発見し、引き上げられた。
ボクの中の、今日一日で今までにないほど溜まった
理解の直後、砂塵と炎の奥ですさまじい量の『気』と炎の邪悪が膨れ、弾けた。
二度目の轟音。ボクの臓腑までを揺らし、予感を確信させるに足るほどの威力を示したその余波が、視界を遮る一切を吹き飛ばした。砂埃だけでなく、黒い炎すら散り散りに掻き消され、攻防の跡が夕日に晒される。
体勢を崩した曹操と、見覚えのない
気配からして人間だ。それも念能力者。荒れた髪のその奥から覗く眼光は、何ものをも射貫くような鋭さを内包している。
突如現れたそんな奴が、超常の力たる
そこらの使い手が相手であれば、そうおかしな話ではない。だが、あれの使い手は曹操だ。一般的な基準では十分強者の域であり、才能に関しては間違いなく一級品。
並みの人外では手も出せないほどの障壁に、銀髪はあっさりと押し勝った。そして恐らく、その行いも全力によるものではないだろう。致命的な隙を晒している曹操を前にして、追撃するでもなくじっとボクを警戒しているからだ。
自負の表れ。目を凝らすまでもなく、その強さは伺い知れる。サンペーとかいうシロネ攫いの犯人と同等、あるいはそれ以上の実力者。少なくとも、あの一団に劣るものではないだろう。襲撃をかけたあの場面、放った『円』にコイツが見えていても、ボクは何の違和感も抱かなかったはずだ。
つまり、誘拐団の余裕はコイツだったのだ。
敵であることは明白だ。そしてどうやら、曹操の手に余るほどの強者らしい。
これは、早急に手を貸さねばなるまい。
「――は、ははうえ……ははうえーッ!」
八坂が開けた扉から、九重の狂騒。その後ろに続く赤髪のリアス・グレモリーを放り出して、彼女は八坂の胸に飛び込んだ。
「あ、あの、あのねっ!さっき……さっきへんなおじさんが、そうそうをいきなりぶって……」
「い、言い付け通り曹操と八坂様たちを待っていたら、突然あいつが襲ってきたんです!私たち、ど、どうすることも……できなくて……」
「大丈夫、大丈夫じゃ、九重、リアス。すべてわかった、安心せい」
負けず劣らず錯乱した赤髪もまとめて抱きしめ、八坂は顔をしかめる。
二人もの庇護対象を抱えたままでは、もう彼女に余裕はないだろう。誘拐団の時のように捕縛術だか何だかを仕掛けるということも、残念ながらできなくなった。
はやる気持ちを抑え、ボクは銀髪から視線を外す。殺気混じりのそれを側頭部で受けながら、抱いた二つの頭をなでる八坂を見据える。
目配せは正しく伝わった。気付くと彼女は一瞬だけ苦慮に唇を引き結び、やがて仕方なしと頷くと、目を伏せた。
「……にゃは」
思わず漏れる歓喜が、ボクの唇を丸く歪める。あの銀髪は、
心の疼きが、本気の戦いへの渇望が、今叶った。
これほど純粋な昂りは、もしかすれば初めて【
全身が歓喜に打ち震え、尻尾が服の中で暴れまわる。曹操のように弱すぎもせず、ネテロのように強すぎもしない。高まった期待にとっては理想的な具合の遊び相手。
再度、銀髪に視線を向ける。直前と全く変わらず構えて佇む奴に、ボクは殺気の抑圧を解き放った。反応して、僅かに身体が強張る銀髪。
クロカには、八坂という強大な守りが付いている。シロネも確保した。生け捕りという煩わしい条件もない。
相手が一人では後顧の憂いも何もない。あるのは一匹、『フェル』の全力を受け止められるだけの強さを持つ、ただの敵だけ。
無意識のうちに、ボクの身体は低く構えていた。軽く地に触れた両手が、四足獣のような体勢になる直前で止まる。
いつの間にかボクは、犬歯が剥き出しになるくらいの笑みを、その顔に浮かべていた。楽しくて嬉しくてしょうがない。そんな思いをもたらしてくれる鋭利な殺気の持ち主へ向けて、ボクはその時、地を蹴った。
互いの敵意がかち合い、型が様子見から滑らかに移行する。その所作を認めながら、ボクが二歩目を踏み出した時――
焦燥の叫びと黒い炎が、ボクと銀髪の両者に襲い掛かった。
「駄目だ!!そいつと戦うなッ!!」
曹操のそれだった。
全く想定外の横槍に一瞬思考が滞る。その一瞬で、回避の余地は消え去っていた。
とっさの防御姿勢。不浄の感覚と熱が全身を舐めまわす。ダメージが通ることこそなかったが、瞬間の硬直に合わせた攻撃はボクの身体を掬い上げ、押し返した。
いつかの窯焼きの要領で纏わりつく炎を吹き消し、着地する。予想だにしなかった攻撃とはいえ銀髪から注意を外してしまったことに歯噛みをしつつ、改めて前方を睨んだ。
――息を呑む。
眼前に、黒い炎の壁がそそり立っていた。最初の炎よりもずっと強固で範囲も広い。かなりの力を込められていることが見て取れる。
銀髪は疎か、捕らえた誘拐団もその向こうだ。姿は全く視認できない。奴らが何をしていたとしても、炎が邪魔で手出しができない状況。破ればそれが隙になるだろう。
いや、そもそも、
(何を――)
「何をしておるのじゃ曹操殿!?これでは曲者どもに救出の隙を与えたようなものではないか!?」
自身も炎の威力に飛ばされてきたのだろう。ほとんど墜落の体ですぐ隣に倒れこんだ曹操に、八坂は激しい困惑を言い放った。
ボクを含め、皆曹操の意図が読めない。全員の動揺、一部に心配の念を浴びせられる奴は、食いしばった歯から血を滴らせ立ち上がると、八坂に向けて容体にそぐわぬ鹿爪らしい顔を作ってみせた。
「申し訳ない。しかし、今は俺を信じてついてきていただきたい。時間が必要なのです」
血濡れの曹操は、その戦闘の傷跡に怯える赤髪の手を取った。抵抗の間もなく背とひかがみに腕を入れると、抱き上げる。
顔色を青から赤に変えた赤髪にニコリと微笑み、次いでボクとクロカに八坂へのそれと同じく真面目腐った面相を向けた。
「フェル、ウタ、そういうことだ。壁もそう長くは持たないだろう。走るぞ。できるだけ時間を稼ぐ」
「は……はあ!?何言ってんの!?時間稼ぎって……こっちは四人もいて、敵は一人なのよ!?そんなことするまでもなく、さっさと倒しちゃえばいいじゃない!……っていうか、あんた思いっきりフェルを攻撃してたわよね!?まさか敵に操作されてるんじゃ――」
「そうなればお前がすぐわかるだろう!力尽くは悪かったと思ってるさ!」
切羽詰まった物言いに気圧されるクロカ。曹操はその迫力をボクの眼に照らしつけ、続けて言った。
「……とにかく、今あの人と戦うのはまずいんだ。信じてくれ、フェル。頼む」
疼きを押さえつける、重さ。
「お前たちの命にも関わることだ」
心の天秤が傾いた。
理性で理解したための決断。しかし感情はその急転換についてゆけず、残滓がボクの意識を炎の壁に引き付けた。それが隔てた向こう側、あの眼差しで壁を見つめているであろう銀髪を意識する。
あれほど良質な相手が、この先どれだけいるだろう。何物にも憚られることなく戦えるような機会は、この先どれだけあるだろう。
二つの幸運がめぐり合うことは、そうそう起こらない。もしかすればこれが最後かもしれない。戦闘を求める己の根幹。力の顕示を望む欲求は踏ん切り悪く、『諦め』というものを知らなかった。
しかしボクは大きなため息を吐くと、炎から眼をどかす。
曹操に従うのは死ぬほど癪だ。加えて狂暴な本性も騒ぎ立てる内心だが、ボクと、何よりもクロカの命に係わるなどと言われれば、その程度の不服などあってないようなものだ。
それは単に感情より理性が強かったという、ただそれだけのことではあるが、ボクは当然の選択を為したことを無意識の奥深くでこっそり安堵して、その不承不承を喉奥から押し出していた。
「に゛ゃぁーもう!わかったよ!逃げればいいんでしょ?いいよもうそれで!……でも、もし臆病風の建前だったらオマエ、半殺し程度じゃすまないからね」
曹操はにやりと、いつもの調子で唇の端を歪め、中身の無い感情を告げた。
「ありがとう、わかってるさ。ウタもいいな?」
「……まあ、フェルがそう言うなら」
不満をありありと覗かせて、クロカはシロネを抱えなおす。全力で走っても決して落とさないよう、しっかりと位置を固定した彼女。曹操は九重を抱きかかえた八坂を一瞥すると、自身も一層盤石に赤髪の身を支え、走り出した。
炎の壁、正しくはその向こうの銀髪から逃れるため、錆びついた鉄の引き扉を蹴破る。ちょっとした城門ほどもある大扉が地響きを立てて倒れると、ボクたちはそれを乗り越え飛び出した。
それまでいたプレハブ建築と瓜二つの、のっぺりした外観の建造物がそこら中に建ち並んでいる。ここら一帯は、そういった無個性極まる様式が蔓延る倉庫街なのだそうだ。
右も左も変わり映えのしない景観。主道路らしき道は広いが人気はまるで無く、従道路はすべからく倉庫に挟まれ陰ばかり。整然として薄汚れたそこには街灯の一つも存在しなかった。
あるのは古ぼけた誘導灯ばかり。つまり黄昏から逢魔が時に差し掛かった今、暗闇に塗れたこの迷路は銀髪には厳しく、ボクたちには優しい逃走劇の舞台と化していた。
京都の気脈を司る八坂の地の利。人間の夜目どころではないボクたちの暗視能力。トドメに一人を除いて皆『絶』までできる。九重は多少精度に問題があり、リアスはそもそも使えないが、二人くらいはクロカの仙術でどうにかなるだろう。
完璧には隠せずとも、曹操の言う通り時間を稼げばいいのだ。どれだけ遅くとも夜が訪れるころには妖怪の応援も到着しているだろうし、それだけ暗くなれば銀髪がボクたちを発見することは非常に困難になる。
かなりの余裕をもって、銀髪の追跡を逃れることができるはずだ。
そういう腹積もりでの逃走だと、ボクは思っていたのだが、
「……遅い」
曹操の足取りは、その余裕を以てしても看過できないほどに遅かった。
「何か、ハア……ふう、言ったか……?」
脂汗を滲ませながら、息も荒く奴が言う。本人は恐らく平常の飄然を装っているつもりだろうが、その苦渋は明瞭に見て取れた。
体内にまで及ぶ負傷と疲労。そのうえで赤髪を抱いているせいだ。
重さよりもフォームが崩れていることが問題。割れ物のような扱いで注意を払いつつ走っていれば、それは普段と比にならないほどの負担になる。今の奴は、その負荷すら抱えきれないほどに弱っていた。
邪魔者にしかならない赤髪如きに何を拘っているのだ。
このまま奴のペースに合わせていては、銀髪から逃げ切れない。追いつかれてしまう。
そうなって再び対峙した時、理由だけ示して事情は隠されたまま、変わらずボクは『戦うな』と制止されるのだろうか。
これ以上のお預けは想像ですら苦痛で、我慢は不可能だった。
「のんびり走るなって言ったんだよ!何のつもりか知らないけど、その様で銀髪を振り切れるなんて、オマエ本気で思ってる?その邪魔な荷物、さっさと捨てるなりボクによこすなりしなよ!」
びくりと身を震わせ、怯える赤髪の気配。クロカの腕で眠るシロネに向いていた眼差しが、ボクに固定される。
威圧に気付いた曹操はそっと、いやのろのろと、位置を変えて赤髪の視界からボクを隠した。浮かべた不適を疲労で歪ませ、庇うように口にする。
「……おいおい……リアス殿を、脅かすなよ……何のための、時間稼ぎだと……」
「知らないって言ったろ!大体、走ってる間ずっと赤髪に構い倒して、ボクらにだんまりだったのはオマエじゃないか!こっちは必死に、始末したいのを我慢してるっていうのにぃ……そこまで言うならもう待たないにゃあ!さっさと吐け!その時間稼ぎの理由ってのを!嫌だって言うなら、頭開いてでも――」
「待てっ……!ああ、わかったよ。俺だって、あれに弄くられるのは……勘弁だ。……リアス殿も、少しは落ち着いただろうから、な……」
「はあ?なんでそこでリアス・グレモリーが出てくるのよ!?まさかあんた、そういう子供がタイプなの!?」
「こんな時に冗談はやめろバカね……くら眼鏡!今話すから、静かにしててくれ!」
クロカにとうとう仮面さえ剥がれ、取り繕うこともできず苦しげに息を切らす曹操。それでも言葉の通り最後の力で赤髪に微笑んで、八坂からも差し向けられる疑念の視線に返答した。
「ハア、まず、大前提だがな」
恐らくたぶん、目論見通り落ち着きを取り戻した赤髪に軽蔑の眼を向けられた奴が、微笑の痙攣を振り払い、言う。
「あの人は、誘拐団の一味ではない。俺の……その、知り合いなんだ。プロの暗殺者、さ」
数秒間、舗装された地面を蹴る靴音だけが響いた。
届いた言葉の意味がそれの言わんとすることにたどり着き、しかしよくわからないと停滞している。見つけた答えのその内容故に、合っているはずがないと別の解釈を探っていた。だが、どれだけ経とうが新たな解が見つからない。
つまりは、
「あんた……ッ!知り合いだからって……そんな理由で逃げ出してきたって言うの!?いくらなんでも嘘でしょ!?」
そうとしか取れない宣言だった。
仮にもハンターライセンスを持つプロのハンター。そんな奴が、『既知の仲だから』、などという甘ったれた身勝手で無謀な逃走を選択したという自白。普段の奴、案外と現実主義な面を知っている身からすれば、到底信じることができなかった。
それでボクたちが納得するとでも思っているのだろうか。そして何より、本気で言っているのだろうか。
どちらかと言えば疑問符のほうが大きい。一度否定された操作の疑いが再燃し、上に乗って懐疑に眉を顰めている。
だが一方曹操は、そんなボクたちの反応に目を丸くしていた。
その、言っていることがよくわからない、とでも言いたげな表情は、ボクたちのそれと違って純粋な疑問の色で首を傾げさせている。自身がおかしなことを言ったとは、本心から欠片も思っていないのだろう。
こちらから見れば奴の言動はどう考えても普段通りではなく、しかし奴自身はそう思っていない。むしろこちらの反応を不思議がっている。
おかしい。双方の認識がかみ合っていない。
奴とボクはさらに数秒して、同時に食い違いに気が付いた。
「ああいや、違うぞ!?さすがにそこまで腑抜けてはいない!」
「じゃあ何?その暗殺者ってのが、ボクたちよりも強いからってこと?」
そうであるなら、それは曹操の見立てが誤っていたというだけのこと。バカバカしいしい上に腹立たしいが、その後はすぐさまボクの望み通りの展開となっただろう。
しかし曹操はボクの回答に驚くでも感心するでもなく、その中間、何とも微妙な困り顔にてそう応えた。
「そうであるとも、言えるが……知らないか……?ゾルディック家を」
「何!?ゾルディックじゃと!?」
反応したのは八坂だった。
はっとして驚愕に叫んだ後、段々とその表情が歪み、苦々しげな呟きが漏れる。
「……なるほどのう、そういうことか。あの小童め……全く余計なことをしてくれる」
「……まあ、そうです……申し訳ない」
「それで貴殿らに怒りを向けるほど、妾は非常識ではないつもりじゃ。しかしまさか、これほどの強硬手段に打って出るとはな……」
何やら二人はわかり合ったらしい。だが残念なことに、その単語、『ゾルディック家』に聞き覚えはあれど詳細を思い出せないボク、それにクロカは、納得の理由を覗き見もできない。こじつけの類ではないらしいことに安堵、あるいは不満を抱いたのが精々だ。
その不完全燃焼めいた感情はどうやら曹操にも察せられる気配となっていたらしく、奴は除け者にしたボクたちを嫌味たらしく笑い、口にした。
「……伝説ともいわれる、世界最高峰の殺し屋一家さ。裏社会はもちろん、人外勢力ともつながりがあって、家族構成が……いや、これはいいか……。ともかく、そういう家だ」
はあ、ふう、と息を整え、続ける。
「あの人は、そんな一家の現当主だ。名前は、シルバ=ゾルディック。何年か前に、関わる機会が、あってな……人となりと、立場は幾らか知っている……。魔王の縁者を攫うような、イカレたことに手を貸す……少なくとも、そんな人じゃない。暗殺が目的なら、まだしもな。……白音は、死んでいないだろう?」
「それは……そうかもしれないけど……でもじゃあ、戦えない理由は何なのよ。襲ってきてるんだし、敵であることには違いないじゃない」
「……たとえ仲間じゃなくても、その誘拐団がボクらの暗殺を依頼したのなら同じことだよね?納得のいく説明をしてよ。頭開くよ?」
「……それくらいは、自発的に気付いてほしい、ものだな……。特にフェル、頭を開くべきは、お前だろう。……憎悪で存在から、忘れたか……?ようするに、だな――」
言葉と一緒に流れた汗が飛んできた。不快に拳が握りしめられる。
次の台詞に同じような語調が含まれれば、間違いなく一撃が後頭部に飛んでいただろう。気絶させ、万一の護衛役を投げ捨てて二人を担いでいたはずだ。
実際に、拳を据えるところまでは行った。もしも打ち所が悪ければ、左右に流れる倉庫のどれかに放り込んでやるとまで思っていた。
だが直後、矛先はきっちり九十度、角度を変えた。
クロカの感覚が、それを捉えたのだ。
「――ッ!!フェル!!右通路!!」
そのまま、何の気も無く素通りしようとしていた倉庫同士の間隙。向こう側の道路に伸びる暗闇に満ちたその隙間で、あの眼光が瞬いた。
認識の一瞬後、薄い電光の下に飛び出す銀髪、シルバ。驚きに目を見張りながら、しかし鮮やかに心臓へ伸びる貫き手を、ボクはクロカの注意の元反射的に躱す。そして、迫る巨躯を握った拳で打ち上げた。
主に腕力で放たれた攻撃は見事に腹へ突き刺さった。が、どうやら『気』で防御されたうえ、受け身も取られたようだ。上空へ飛ぶはずだった軌道が下がり、主道路をなぞって転がっている。大したダメージにはなっていないだろう。すさまじい反射神経だ。
「なッ……!!おい、フェル!!まさか殺して――」
「ないよ。仕留めそこなっちゃった。残念ながら、にゃ。それにしても……」
やっぱり、アレはいいものだ。
「『
自身の『気』を消すのではなく、見えにくくする『絶』の応用技、『隠』。その力量はボクの直感を誤魔化せるほどだ。クロカ抜きではこれだけきれいにカウンターを決めることもできなかっただろう。
貫き手の重さも鋭さも、躱して尚心を浮き立たせた。体勢を取り戻し、ゆっくりと立ち上がるシルバに熱視線を送りながら、足を止めたボクは低く構えて対峙する。
速度で勝れない以上、一度追いつかれれば単純な逃走は意味がない。どうにかしてあの時の炎のように足止めをするか、打倒する必要があるだろう。
さすがの曹操もそれはわかっているのか、荒い息の合間に苛立ち混じりの大きなため息を吐く。そしてようやく、それを
「えっ!?きゃあああぁぁ!?」
「ちょッ――ぶふっ……あんたね!何も言わずに投げ渡すのやめなさいよ!大事なお姫様じゃなかったの!?」
投げ飛ばされた赤髪を、クロカがどうにか受け止めた。シロネと赤髪の二人を抱え文句を叫ぶと、ため息だけでなく声色にも反映された苛立ちが返される。
「いいかウタ!それに、リアス殿も!時間がなくなったからな、結論だけ伝える!」
口から血の飛沫が巻き散った。
「シルバ氏の依頼主は沖田殿だ!どうにか連絡を取って、今のこの現状を伝えろ!あんたの勘違いだと……このままじゃ、白音やリアス殿も危険だと!」
煮え始めた興奮に、冷水。思いもよらなかった名前に、思い出したくもないその顔が蘇る。
こんな思いをせねばならないのは、まさかあの成体のせいだと……?
「そんな……!?本当に、沖田が……?」
「聞けば、わかるさ……!とにかく早く行くんだ!俺と、フェルとで時間を稼ぐから、その間に、どうにか話を――」
「ちょ、ちょっと!ならあんたじゃなくて私が相手するわよ!その様じゃあまともに戦えるわけないじゃない!」
混乱に呆然とする赤髪を下ろし、シロネを抱えたままでこちらに走る寄ろうとするクロカ。満身創痍の曹操は、その行動を遮った。
「今この状況で、一番警戒せねばならないのは、『念魚』だ。あれは恐らく、
そう言ってボクの肩を小突く。
「それに俺は、こいつの見張りもせねばならん、からな!……八坂殿、こういうわけです、ウタの見張りの方、頼みます」
「うう……そ、そこまで言われずとも、わかってるわよッ!でも曹操!もしもフェルに傷の一つでも付けたら、生き残ったとしても絶対殺してやるからね!!ほんとに……ちゃんと覚えときなさいよ!!」
「……わかってるさ。ほら、さっさと行って隠れてろよ?流れ弾に、当たらないようにな」
「いちいちうっさい!行くわよリアス・グレモリー。あんたに懸かってるんだから、ぼーっとしてないで!」
叱咤し、離れていく気配。その最中、葛藤に一瞬振り返ったクロカの言葉。
「……フェル、気を付けてね」
八坂と九重からも、同じような心配が耳に届いていた。だが反応できたのはクロカのそれだけで、しかも軽く手を振るだけのもの。
クロカとの共闘が叶わず、代わりに曹操が我が物顔でいること以上に、印象付けられたその感情は耐えがたいものとなっていたのだ。
「ピトー、殺すなよ……?」
ごく小さな声での耳打ち。
ようやく肩の上下に落ち着きを見せ始めた曹操が、ボクの前に立つ。ただ無言でその様子を視界に収めていた。
混じり合った二つの事項に勢いを増した苛立ちで、まっすぐと直視しながら。
「やあ、お待たせしましたシルバ氏。できることならもう少しお待たせしたままでいてほしかったところですが、お久しぶりです。二年ぶりくらいですか?」
「……ああ。正確には、二年と二か月ぶりだが。その節は世話になった」
ゆったりとした自然体で、シルバはそう応えた。重く、静かに響く声。
知り合いというのはどうやら本当だったようだ。ならばとボクは、感情を深呼吸で押し留め、告げる。
「ささっと説得してよ。貸しがあるなら今こそ使う時だよ、曹操」
「……だそうだが、どうです?」
返答は、空気を揺らすほど重い回し蹴りだった。
吹き飛んだ分の距離を瞬きの間に掻き消し、その勢いのままに放った攻撃。
速い。だが、来るとわかっている攻撃に当たるほど、ボクも曹操も未熟ではない。屈んで躱し、脇腹めがけて打撃をえぐりこむ。シルバはそれを、畳んだ腕で受け止めた。
重い攻防が合わさり、足元のアスファルトが割れる。動きが止まったそこを、回避に後退を選択した曹操の黒い炎が貫いた。
向かってくる奔流。その速度は遅くはないが、ボクとシルバの攻撃には遠く及ばない。余裕を持って躱せる程度の速さだった。
しかし、ボクもシルバも動かない。重さを重ねたまま、炎は狙い違わずシルバの巨体を呑みこんだ。だが、
「まあ……そうだよな」
瞬時に霧散した。シルバはまるで堪えていない。肉体どころか道着のような衣服にすら、焦げ目の一つも付いていない。
ボクのように『気』だけで防いだのだ。技量、身体能力、そして肉体能力も、人間とは思えないほど高水準。
やはりボクの眼に狂いはなかった。
膠着から一歩踏み込み、曹操から盗んだ『
コイツは、シルバは、『フェル』が本気でかからねば到底倒せないほど強い。
だからこそもどかしく、腹立たしかった。
こんな相手を前にして、全力を出すことが許されない。殺すまで戦うことを許されない。
今ここでどれだけ攻防を重ねようと、終わりには消化不良が約束されている。そんな戦闘など空しいだけだ。強者であることが身に染みてわかるだけにそれは激しい。ありえたかもしれない本気の戦闘を現実と重ね合わせ、延々失望するばかりだった。
そんな状況。戦わないほうが随分マシだろう。
しかし戦わざるを得ない。ボクにはなくても、シルバには戦う理由がある。それが成体の悪魔の依頼。
憎悪が膨れ上がるのも宜なるかなだ。
奴のせいで、ボクはやりたくもない単調な攻防をせねばならない。余力を残した攻撃を撃ち、余力を残した防御でやり過ごす。つまりは牽制を繰り返し、互いの決定打になりうる大技を殺すことで、シルバをこのやり取りに縛り続ける。戦闘の形を借りた、ただの時間稼ぎであり、交互にじゃれ合う組み手のようなものだ。
決着がない分、それは試合よりもたちが悪い。もしも本気で戦えたなら、それは夢のような時間だったろう。そんな思いが撃ち合うごとに大きくなっていく。
それはどうやら、八坂の頼みで早々に説得に入らねばならなかった誘拐団との戦いと合わせて、相当なストレスとなっていたようだ。時間が経つごとに二倍速で増していく負荷に、赤の奔流を求める衝動が堪えきれないほどに荒れ始める。道理を知らなければ、それから逃れることも叶わない。
溢れかえる精神疲労。いい加減、茶番に集中するのも限界だった。
「鬱陶しい、に゛ゃあッ!!」
「――うおッ!!」
半ばパターン化された競り合いの一瞬の隙間に、ボクは曹操に向けて『気』を放っていた。
幾らか力が入りすぎたが、もちろん殺すほどのものではない。ボクに援護――というかほとんどちょっかいみたいなものだが、備えていた奴でも、それは十分に防げる程度のものでしかなかった。
だが代わりに足は止まった。当然だろう。突然味方から攻撃を受けたのだから。
ボクは頬に迫る拳を紙一重に躱しながら、その奇行に動揺する曹操の憤慨を、苦心して意識に入れた。
「フェル!いくら気に入らないからって、この仕打ちはあんまりだろう!こっちは怪我人だぞ!?」
シルバへの攻撃とその後の対処、それに渦巻く業腹から容量を割き、怒鳴り返す。
「その自覚があるならおとなしくしてろって意味だよ!ちょっかいかけるくらいしかできないんじゃ邪魔なだけだ!それなら外で話の続きでもしてくれた方がボクの気も紛れるし、何倍もマシ!欲しければ神サマとやらに誓ってやってもいいけど?オマエの話が終わるまで、シルバは絶対殺さないって!」
叫ぶうちに十度の攻防をこなし、背で曹操のためらいを感じながら十一度目の肘打ちを見切る。受けて逸らし、型通りの掌底を返したところで、ようやく躊躇が諦めのため息に変わった。
「まあ、事実であることだし、甘えるのも、だな……。わかったよ、あー……そうだな、まずは『戦えない理由』か。全く、普段のお前ならそれくらい簡単に気付けるだろうに」
物言いにさらなる苛立ちを抱くボク。しかし曹操は気にも留めず、もしくは気付かずに、幾らか気迫の抜けた声で語り始めた。
「いいか、シルバ=ゾルディックは世界一の暗殺一家のトップなんだ。殺せば家の面子がどうなるか、他の家族がどう思うか、考えてみろ。戦争が始まるに決まっている。一家総出の報復だ。……言っておくが、相手は暗殺者だからな。手段も場所も時間も、選びはしない。気を休める間もなくなれば、いくら戦闘力で上回っていようともいずれ力尽きるだろう。人間なら、どうあがいてもな」
「……ッ!ああそう!人の世で生きるのも、大変だなッ!」
負荷のせいか少しやり辛くなった攻撃の合間合間で理解に努め、完了すると力任せにそう吐き出す。
つまりは聖剣を使ったあれのようなこと。ものの見事にはめられた経験があるだけに、反論はできなかった。
「だからまあ、我が儘姫がいてくれたことは運がよかった。それと、最初に俺が襲われたこともな」
場違いに呑気な苦笑をする曹操に手を出したくなるがシルバで我慢し、おとなしく続きを聞く。
「でなければ、剣豪悪魔殿が依頼主だと確信できなかっただろう。あの時俺は外で子供たちのお守りをしていたわけだが……御覧の通り、シルバ氏にとって俺は大した障害じゃない。やろうと思えば、誘拐団が狙った我が儘姫や、京都に対する強力なカードにもなる九重嬢を襲うこともできたんだ。
しかし狙われたのは俺だ。誘拐団の前には一度も姿を見せていないにもかかわらず……。依頼主が奴らだとすれば、それはありえない。知らない奴をターゲットとして指定することはできないからな。
俺の存在を知っていて、かつ疎ましく思っている輩。誘拐団でないとすれば、残る可能性はそれくらいだ。なら後は姫君に告げ口すればいい。大慌てで依頼をキャンセルしてくれるだろうさ」
「ふんッ!にゃるほど、ねッ!人の気分を滅茶苦茶にしといて、裏ではちゃっかりそんなこと考えてたわけだ!ホントッ!嫌味な奴!」
「誉め言葉として受け取っておこう。コツは冷静でいることだけだからな、ぜひ参考にしてくれ」
心の中でぶん殴ってから曹操に対する思考を閉じて、眼前に迫る拳に対処する。今の話を聞いても尚何事も言わず、組み手もやめようともしないシルバに抱く憤り。喉の中で唸りながら攻撃を弾き、返しを打ち込んだ。
その最中で、ふと気付き考える。
曹操が赤髪にことさら優しかったのは、少しでも告げ口の信用性を高めるためだ。時間稼ぎも本来は逃走や体力の回復などではなく、重要な説得をさせねばならない赤髪を落ち着かせる目的があったのだろう。
すべては奴の言う通り、成体に依頼を取り消させ、シルバとの殺し合いを回避するため。そのために赤髪を利用したのだ。
しかしだ、もし赤髪がいなければどうしていたのだろう。アイツの説得なくしてシルバを止めるにはどうするか。
あの場で赤髪を放置すれば、その方法が採れたのではないだろうか。
「それはつまり、赤髪がいなければあの成体を殺しに行けたってことッ?」
「……そうならなくてよかったと、心底思うよ」
ボクはまた、絶好の機会を逃してしまったらしい。
依頼人が死ねば、シルバもボクたちを狙う理由がなくなる。そうなればそうなったでそっち側の問題もありそうだが、憎きあの悪魔を正当に屠れる権利を前にすればそんなものは安いものだ。八坂に九重、それに何より赤髪という証人がいる。致命的な問題は免責されるに違いない。
そうなれば、いよいよもって赤髪が憎い。忌々しいあの赤がいなければ、さらに増加したこの三重苦を味わうこともなかった。
そう怨みを持て余し、想像上での赤髪にぶつけていた。だから、というわけではないだろうが、それに気付いたのは暇をしている曹操よりも早かった。
「し、シルバ=ゾルディック!今すぐ戦いをやめなさいっ!」
曹操の推察は真実であったらしい。罪悪感にでも駆られたのか、一人のこのこと倉庫の陰から赤髪が飛び出した。
「沖田も了承したから、依頼はキャンセルされたのよ!だから、だからもうやめてっ!」
己の身内が原因である、ということがかなり堪えているのだろう。声が震えて毅然になり切れていない。
その上でアイツはこの場に出てきたのだ。当然、言葉以外に何も考えていないことは疑いようもない。信じるに足る証拠すらないその宣言にシルバが従うと、アイツは本気で思っているのだ。
無能な働き者というほかない。ボクが何のためにこんなつまらない戦いを続けているのか、アイツはこれっぽっちもわかっていない。
苛立ちに拳を振るいながら、それだけでは発散しきれない残留の息苦しさを意識する。
こうまで苦労を無下にされては我慢の気さえ起らない。故に喉元までせり上がったそれを呑みこんでやる気はボクにはなく、私情半分ながらもそれを放出するため、赤髪に当たり散らしてやろうと思い立つことは当然の成り行きであった。
だが、怒りが頂点に達し、いつも通りの事務作業的攻撃がシルバに届いたその瞬間、身を蝕んでいた激情のすべてが弾けて消えた。
放った攻撃が跳ね上げられていた。
「ッ!」
シルバの防御の結果だ。明らかに手を抜いたそれではない。
今の今まで奴も組み手に殉じていたはずなのに。いきなり何をという驚きと疑問。しかしわずかに体勢を崩したボクは、奴の次なる行動でそれらすべてに納得を得た。
隙で俊敏なるバックジャンプ。距離を取った奴の両手に、今までが何だったのかと思えるほどの潜在能力を秘めた『気』が、稲妻のように瞬いていた。
量にも密度にも、それがもたらすであろう破壊力にも紛れもない本気が透けて見える。ボクをしてダメージ必至と思われるほどの威力。曹操や赤髪も巻き込んでの攻撃が、来る。
「――ッフェル!!避けろッ!!」
本気の声色にも従う気は起きなかった。
絶えずシルバを捉えていたボクの眼には、その内情と内心が見えていたからだ。
変わっていた。ボクと同じように、つまらなさそうに組み手に勤しんでいたその眼が、相手を害する熱い冷徹に。
シルバが、ボクと同じことを願っていたという事実。
「へぇ……!」
嗅ぎ取った戦意が、ボクの口角を引き上げた。崩れた体勢を地面に押し付け、構えた殺意の先には、両手の『気』を大玉にまで成長させたシルバ。
アレを、コロス。
枷が外れ、狂暴がいよいよ表に顔を出した。初めての対面時、心躍るあの感覚の続き。弾けた苛立ちのすべてが歓喜に置換される。
雑音はもはや耳に入らなかった。ただひたすら本気の奴と対決できるという思いが。
その首を狩り取り、四肢を引きちぎり、胴体を引き裂く。己の力で蹂躙し、いたぶれる喜びを久方ぶりに味わうことができる。それが、ボクの頭のすべてを埋め尽くした。
元よりボクの中にあった本性。キメラアントと混じり合った残虐性。
それでいっぱいになった脳内は、その瞬間だけ、一番大切なことも忘れ去っていた。
「フェルッ!!」
「――クロ……ッ!?」
燃え滾る意思が一息に凍り付いた。それまでの思考のおかしさに気付き、それを覆い隠すようにクロカの出現に対する疑問が広がる。
「なんッ……で、今――」
「ここで負傷すれば正体がバレるわ……!私が止めるから、フェルは支えて!!」
耳打ちされた前半に己の血の色を思い出す。『フェル』と『ウタ』を消してしまうわけにはいかない。クロカのために。
(早く……早くシルバを殺さないと、殺して、危険を――)
――違う。そうじゃない。クロカの――ボクの望みは――
決心はギリギリのところで纏まった。
背中で感じるクロカの存在に前を直視。同時にシルバの二つの大玉が放たれる。くっつき一つとなった『気』が荒れ狂い、迫るそれがボクの手に触れた。
途端、すさまじい威力と重さが全身を襲った。全力での防御でも手にかすかな痛みが覗くほどの攻撃は、ほんの少しでも防御の加減を誤ればすぐさま爆発、逸れて破壊を巻き散らすだろう。
それほどの精密さの維持は【
踏まえて考えれば、とても消滅まで持ちそうにない。これが単純な『念』による弾、『
手背に重ねられるクロカの手は『念魚』の時のように間違いなく大玉の『気』を消しつつあるのだが、それでも完全消滅までは持ちそうにない。
そう考えた直後、
嵐の中に電子音の連続が聞こえた気がした。決して冷静とは言えない思考の中で異音を耳にし、それでも全くの不動でいられるほどボクの精神力は卓越したものではない。
手の中で、『気』の均衡が崩れた音がした。
夏休み効果かなんなのか、前話でお気に入り登録がいっぱい増えました。うれしみ。
そんでもってさらにはなんと推薦までいただきました。うれしみ。
でも正直プレッシャーで胃痛がします。とはいえうれしみなのでたぶん私はマゾ気質だったのでしょう。新しい扉を開いていただきありがとうございました。今後も胃を荒らしていただけるように頑張ります。
つまりは感想ください。